機動戦士ガンダムSEED A.I.W.   作:ゆなつー

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大学の試験があるため、次の投稿は8月となるかと思います。


3-a

シグーから飛来した銃弾が2号機の胴体部分へと着弾する。

 

「うあっ……!」

 

激しい衝撃がコクピットを襲い、キラは堪らず声をあげる。

ディスプレイには損害状況が表示されるが、既に展開されていたPS装甲のお陰で機体の損傷は少ない。

 

「効果なしだと?」

 

依然としてヘリオポリス上空を飛び回るシグー、その操縦者であるクルーゼは戦艦からの攻撃に対する回避行動をとりつつライフルに特殊弾薬を装填する。

乗機であるシグー含め、Z.A.F.T.の兵器群が通常兵装として採用している実弾薬は共通である。その弾薬が連合製のモビルスーツに対してほぼ無力であったことに少なからず衝撃を覚えるが、今はそれよりも眼前の敵(GAT-X105)を倒しうる手段を見つけることが先だった。

 

「ぶ、武器は……!?」

 

一方のキラは、装着したばかりのバッテリー兼専用兵装――ランチャーストライカーパックによってもたらされた武装を調べていた。

PS装甲がある分多少の被弾は問題ないだろうが、それはストライクだけの話だ。足元にいる友人たちが、いつ流れ弾の被害にあうかわからない。

 

「……ビーム砲とバルカン、ミサイルか! なら……!」

 

シグーに対してレーダー照射。それまで緑色で点滅していたカーソルは小さなブザー音と共に対象を捕捉する。

それと同時に、キラはトリガーを引く。

肩部のガンランチャーから2発のミサイルが発射され、クルーゼの駆るシグーへと向かっていく。

 

「……誘導弾か」

 

艦砲射撃を回避しつつ、追いすがるそれらのミサイルを銃撃で破壊したクルーゼは、今一度2機の敵モビルスーツへと向き直る。

ミサイルで攻撃してきた一機は依然としてこちらへの攻撃の機会をうかがっているようだったが、もう一機は片膝立ちの姿勢のまま動かず、こちらの攻撃に反応するそぶりも見せない。

一見して同型機のようではあったが、兵装の多少の違いも顕著だった。

 

「……動かない方は未完成、ということか? ならば」

 

未完成品は破壊し、使えそうな方を持ち帰る。

続く言葉は心の内で呟き、クルーゼはレーダー照射対象を変更すると同時にフットペダルを踏み込む。

 

「こっちに来たっ!?」

 

未だストライカーパックの装着が出来ていない1号機に乗るメレアリスは、ロックオンアラートの中で動揺の声を上げる。

幸い、メレアリスもキラと同様にストライクを操縦することは可能のようだった。慣れないながらも即座にPS装甲を展開したのち、カメラ類に損傷の無いように顔部分を腕によって防御する。投げられた石から顔を守る人間の行動と同じだ。

それに数瞬遅れる形でシグーの放った銃弾が1号機を襲う。

 

「ああっ……」

 

初めて味わう衝撃に、メレアリスは思わず声を漏らす。ディスプレイに映る損害状況はほぼ無傷であることを示していて、そのことに少しだけ安堵した。

 

『オウルベルさん! 聞こえる!?』

「……ラミアスさん!? 」

 

突如入った通信は、どうやら1号機の背後にあるトレーラーからのようだった。

 

『1号機の装甲から跳ね返った銃弾で、トラックのフレームが歪んで開かないの! そっちで抉じ開けて!』

「えっ!?」

 

運が悪いとしか言いようがなかった。

メレアリスは悪態をつきそうになる自分自身を抑えながら、言われた通りに行動すべく操作をアシストからマニュアルへ切り替えようとする。

が。

 

「それでは宝の持ち腐れだよ」

『メレアリス!?』

「あ……っ」

 

メレアリスの眼前には、既にクルーゼのシグーが迫っていた。

キラの呼び掛けでそれを認識したメレアリスは切り替えを中断し、回避行動をすべく1号機を立たせるが、間に合わない。

シグーの重斬刀による一撃が1号機へと振り下ろされる。

 

「――っ」

 

悲鳴にすらならない掠れた息がメレアリスの口から吐き出され、同時に咄嗟の判断がメレアリスの手を――ひいては操縦幹を動かした。

そうして次の瞬間、経験したことのない衝撃がメレアリスの全身を襲う。爆発とは違う、物がぶつかった衝撃だ。

 

「ほう、防いだか」

『メレアリス!』

「ううぅ……」

 

1号機は、メレアリスが命令した通りにシグーの重斬刀をハイブロックで防いでいた。

機体腕部に大きな負担がかかったことによる警報がディスプレイに映るが、メレアリスの視界には入らない。

 

「ぅぁああああああッ‼」

 

叫びと共に操縦幹に付属するボタンを押し込む。

すると、ストライクの頭部に装備されている自動バルカン砲(イーゲルシュテルン)が唸りを上げ眼前のシグーへと弾丸を発射する。

 

「むッ!」

 

意表を突かれたクルーゼは即座に機体を後退させ、1号機から距離を取る。しかし、尚も1号機――メレアリスは射撃をやめようとしない。

 

「来ないで……来ないでッ!」

 

ともすれば先程の攻撃によって死んでいたかもしれないという心理的な負担は、メレアリスにとって予想以上に大きかった。

もちろん、PS装甲が展開されている限りは理論上物理的ダメージに対してはほぼ無敵に近い防御力をストライクは有している。しかし、彼女がその事を知る由もない。せいぜいが頑丈な鎧程度に考えている。

加えて、2号機とは違い装備もなく、PS装甲を維持するためのエネルギーも既に半分を切っているこの状況がメレアリスをパニックに陥れていた。

 

「重斬刀にも耐えうる装甲、加えて頭部にバルカン砲……連合も脳無しではない、か」

 

数発という僅かながらの被弾をしながらもメレアリスの射撃から距離を取ったクルーゼは一言呟く。

損害状況は軽微だが、もし一瞬でも反応が遅れていたら損害は無視できないものになっていただろうと予測できる威力。そして、シグーの主兵装すらものともしない程の装甲。

Z.A.F.T.のジンやシグーとは違い、対モビルスーツ戦闘を明確に意識していると言える敵の機体に、厄介なものが現れたとクルーゼは舌打ちした。

そんなクルーゼのシグーに向かって今度は戦艦からミサイルが飛来する。

 

「ええい、鬱陶しいッ」

 

それを避けるべく、クルーゼは更に機体を後方へと下がらせざるを得なかった。

 

『メレアリス、落ち着いて! ねえ!』

「はぁっ、はぁっ……キ、キラ?」

 

その間に、キラの呼びかけによってようやくメレアリスが落ち着きを取り戻す。ディスプレイには既にイーゲルシュテルンの残弾数低下の警告が表示されていた。

 

『大丈夫? 怪我は!?』

「どこも怪我してないわ、大丈夫よ。……ごめんね、情けないところ見せちゃった」

『そんな! 情けなくなんかないよ。僕だって怖いんだ……謝るようなことじゃないよ』

「……そういってもらえると助かるわ」

 

言って、メレアリスは操作をマニュアルへと切り替える。途端に制御難度が上がるが、動かせない程ではない。慣れればもっと直感的に操作できそうだった。

 

「キラ、これから後ろのトレーラーを抉じ開けるから、その間だけあの敵を近づけさせない事ってできるかしら?」

『え……うん、わかった。やれるだけやってみる』

「ありがと。お願いね」

 

キラとの通信を一旦切断し、メレアリスは1号機をトレーラーの方へ向き直させる。

そして、機体を屈ませながらコンソールを取り出し、高速で入力を始める。

 

「……OSは弄るなって言われてたけど。照準システムの補正くらいは大目に見てもらいたいわね」

 

半ばパニックになりながら行ったイーゲルシュテルンによる攻撃だが、その際にメレアリスは一つだけ確信した。OSが未熟なのに加えて、そのほかのシステムも良くはない。

 

「コンピュータ予測による射撃補正機能がついているのは良いけど、処理が間に合わないんじゃ意味ないじゃない……!」

 

恐らくは弾薬その他を浪費しないためなのであろうが、如何せん予測するにも判断材料が多く設定されすぎている。一定の方向に一定の速度で動く物が相手であれば問題ないが、そんな的は現実的ではない。あまりに正確な照準を求めるあまり、逆にそのせいでコンピュータの判断が遅れ、結果的に命中精度を下げているらしかった。

 

「出来すぎてるシステムっていうのも考え物ね……っと」

 

ストライクの腕がコンテナのの蓋部分を引きはがしにかかる。その様子をモニター越しに一瞥し、メレアリスは再びディスプレイへと目を向ける。とりあえずの措置ではあるが、ネックとなっている判断材料の数を1/4ほど削ってみる。

 

「後は試してみてからだけど……時間があるかしらね」

 

実際のところ、これで照準がどの程度改善されるかはわからない。レーダーを見れば、シグーは未だ近づいてきてはいない。どうやらキラは頑張ってくれているようだった。

1号機がコンテナを半分ほど抉じ開けたところでメレアリスは行動を中止させる。中には武器らしき銃器が一丁、そして得体の知れない赤と黒でペイントされた機械が入っていた。

 

「……キラのとは違う装備?」

 

モニター後方に映る2号機には、緑を基調としたカラーリングのストライカーパックが装備されている。背部に格納されている大きな砲身から察するに、あれは恐らく遠距離戦を想定した装備なのだろう。そう考えながらメレアリスは1号機の向きを反転させて機体を座らせる。そして同時並行で換装シークエンスを起動させてから、前方の戦闘の様子を改めて確認する。味方らしい戦艦から放たれるミサイルを回避したり撃ち落したりしているシグーに向けて、キラはできるだけ邪魔をするようなタイミングで攻撃を入れている。シグーはその対応をしているようで、こちらにはアクションを起こそうとしていないらしかった。

 

「AQM/E-X01 Aile striker。この状況で役に立つのならいいけど」

 

程なくして、シークエンスが正常に終了したことを知らせる音が鳴る。そして、同時に表示されていたバッテリーの残存電力が回復していくのも確認できる。

それらへの反応もそこそこに、メレアリスは同じくコンテナに入っていた銃器を、1号機に両手で構えさせる。と、そこでディスプレイに写る情報から手にしている武器の特徴に気づく。

 

「ビーム兵器……? とすれば、実弾よりも弾速は上よね」

 

つまり、見てから避けられるものではない。本来であれば実弾兵器もそうではあるのだが、先程シグーに至近距離射撃から逃げられたばかりなので少しナーバスになっていた。

ともあれ、気を取り直して狙いを定める。照準システムはまずまずの出来上がりだ。今の状況であれば上出来である。

シグーはこちらの動きに気づいたようだが、戦艦と1号機が張る弾幕を回避することで手一杯のようだった。お陰で、メレアリスとしても狙いやすい。

 

「……捉えた!」

 

ロックオンが完了した瞬間、それまで緑色だったカーソルは赤に変色しブザーが鳴る。それと同時にメレアリスは勢い良く操縦捍のスイッチを押し込んだ。




照準システム云々は独自設定となります。原作2話でアスランがイージスに装備されているイーゲルシュテルンを発射した際の描写を元にしてでっち上げました。
また、イーゲルシュテルンの弾薬はケースレス弾薬(但し、現代の物とは異なり様々な虚弱性を改善したものとする)を使用しているという設定でいきます。そうでないと、今回の場合薬莢が落ちて怪我人が出るやもしれないので。

7/18:不自然な文章を改稿。2重表現でした。
また、『1-d』のあとがきにて、『なぜストライクが2機なのか』の説明を追加。気になる方は是非。
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