機動戦士ガンダムSEED A.I.W.   作:ゆなつー

12 / 13
遅れてすみません。グランドオーダーが悪いんです、ええ。
そう、グランドオーダーは悪い。色んな意味で。


3-b

それまで弾幕を凌ぎながら反撃を狙っていたクルーゼは、回避の合間に先ほどの未完成品が何やら動いていることに気付いていた。しかし、さすがの彼もよそ見をしながら攻撃を避けられるわけではない。結局注視はできず、次にまともに意識を向けたのは件の未完成品からのロックオンアラートが鳴り響いた時だった。

 

「……くっ」

 

頭部のバルカンによる援護射撃か。

回避動作をわざと大きくして意識をそちらへ向ける隙を作ったクルーゼは、その時初めて自身の予想が外れていたことに気が付く。

 

「何……ッ!?」

 

視界に映るのは未完成品、のはずだった1機。無手だったはずのその機体(GAT-X105-1)が、何やら銃器を構えてこちらへと向けている。

只ならぬ気配を感じ取ったクルーゼは、ノータイムで回避行動へと移る。その瞬間、クルーゼの駆るシグーの右脚部装甲の一部が弾け飛んだ。

 

「ぬおッ!?」

 

被弾。同時に伝わる衝撃に意識せず声が漏れる。そして、チャンスを逃すまいと今度はもう1機――先程から弾幕を張っていた機体(GAT-X105-2)が攻め込んでくる。

 

「チィッ」

 

2号機の肩口にある砲身から大量の実弾がばら撒かれる。

それに対し、急激な挙動でかかるGに耐えつつ、クルーゼは自身のシグーに出来うる限りで最速の回避を命令する。果たして、回避はギリギリ間に合った。一瞬ではあるがクルーゼは安堵のため息を溢す。

 

「未完成ではなく、装備をしていなかったということか……!」

 

今一度1号機を見やれば、背部に追加武装らしきものを取り付けてこちら(シグー)へと銃口を向けている。先ほどの射撃から察するに実体弾ではなくビーム兵器だ。

携行型の小型ビーム兵器はエネルギー面での問題もあるため、Z.A.F.T.製モビルスーツには実装されていない。それを平然と装備しているあたり地球連合軍が如何にMS開発に力を注いでいるかということも容易に想像できる。

やってくれる。

クルーゼは心のなかでそう吐き捨て、尚も迫る攻撃を紙一重で躱していく。

2対1の射撃戦、戦艦を含めれば3対1。それでもクルーゼは落とされない。先程は完全な不意打ちであったために不覚をとったが、意識していれば捌くことも不可能ではないのだ。それほどの操縦技術をクルーゼは持ち合わせている。

 

「やはりPS装甲相手では歯が立たんか!」

 

しかし、攻撃面は彼の実力に関係なく手詰まりである。隙をついて放った銃撃は2号機に着弾するが、ダメージが入ったようには見えない。

 

「……やむを得ん」

 

数分後、クルーゼはそう呟くと即座に相手から距離を取る。ジリ貧でしかない戦闘をこれ以上続けようとは思わなかった。

機体を反転させ、入ってきたシャフトへと向けて一気にバーニアを吹かす。背後から射撃を受けるが、難なく躱しながら突き進んでいく。

そして、そのまま後方を一瞥することも無くヘリオポリスを後にするのだった。

 

 

 

 

 

ヴェサリウス機内。アスラン・ザラは自身が奪取したGAT-X303 AEGISのOSを書き換える作業をほぼ終わらせようとしていた。

流れていくプログラム用の言語や数字。それらはすべてアスランが新規に入力、または改変した物だ。一般人ではおよそ考えられない速度でアスランのプログラミングは進んでいく。

 

(……メル……キラ……)

 

しかし、当の本人は意識を別の方向へと向けていた。それでもプログラミングにミスはなく、彼の実力の高さが伺える。

 

――何故そんなものに乗っているの?

 

メレアリスに問いかけられた言葉。それがアスランの頭の中で幾度となく反芻され続けていた。

あの時どうして答えられなかったのか、そもそも何故彼女がヘリオポリスにいたのか。オーブに籍を置いていることはアスランも知っていたが、コロニーに住んでいたとまでは知らなかった。

 

『本当に戦争になることはないよ。プラントと地球で』

 

かつて何も知らなかった自分が二人の幼馴染に、それぞれ別の場面で言った言葉だ。その言葉にキラは曖昧に頷き、メレアリスは「きっとそうよね」と微笑んだのをアスランは覚えている。

 

(そういえば、泣いていたな。どちらも)

 

彼がその言葉を口にしたのは、場所は違えど両方とも別れの挨拶の際だ。当時単身でプラントにいた父親のパトリック・ザラに母子共々呼び戻されることになり、突然月を離れなければならなくなったのだ。

今まで離れ離れであった父とまた三人で暮らすことができるようになるかもしれない。それ自体はアスランにとって最高に嬉しいことであったが、友人と別れなければならないのはひどく辛かった。しかし、自分だけが月に残るわけにも行かない。結局、母親に連れられながらも別れの挨拶として友人たちの家を回った。

 

「そっか……プラントに」

「ああ……」

 

一番辛かったのは、やはり幼馴染二人との別れだろう。弟分でもあったキラはまるで世界の終わりのような顔をしていて、胸が締め付けられるような思いだった。

 

「キラも来ないか?」

「えっ?」

 

そんな顔をさせたくなくて、思わずそんな言葉が口から出ていた。

 

「プラントは僕達コーディネイターが住む場所だ。コーディネイターだからって変な目で見られることなんてないんだ」

「それは、そうだけど……」

「なら!」

「……ボクのお母さんとお父さんは、コーディネイターじゃないから。だから、ごめん」

「! そうか……」

「また、会えるよね?」

「……ああ。きっとまた会える。いや、会うんだ」

「……うん!」

 

その後、再会の約束の証としてトリィをキラに贈った。キラは驚いていたが、大事そうに抱えてお礼を言ってくれた。涙声ではあったが。

自分もその時は鼻の奥につんとした痛みを感じていたから、もしかしたら涙ぐんでいたのかもしれない。今となっては良い思い出だ。

 

(で、最後にメルに会ったのは……病院か)

 

別れの日の数日前から、メレアリスはコペルニクスのとある病院に入院していた。詳しい事情は今も分からないままだが、アスランの記憶に残るメレアリスはおとなしいものの病弱ではなかったし、何かの検査入院か軽い病気にでもかかっていたのだろうと結論づけている。

何を話したかは、キラの時と違ってあまり覚えていない。緊張していたからだ。

 

(……結局、伝えられはしなかったな)

 

やや自嘲気味な思考がアスランの頭を過る。あの日、アスランは胸に秘めた淡い恋心を幼馴染(メレアリス)に伝えようとしていたはずだった。

しかし、いざ彼女の前に出るとそんな心づもりも吹き飛んでしまった。緊張で体を固めたまま事務的なことしか話せなかったような気がする。

しかし、それでよかったのだろうとも考える。あの時想いを伝えたところで彼女とは離れ離れにならなければいけなかったし、何より今の自分には婚約者がいる。父の意向で決まった婚約であったが、それでも相手の女性を蔑ろにすることなど自分にはとてもできないだろう。

 

(……それにしても、どうしてよりによってヘリオポリスに……)

 

連絡を取ろうにも自分は訓練校にいたし、するつもりもなかった。だから、てっきりオーブ本国で暮らしているのだろうと思っていた。加えて、キラだってあそこにいた。そこにたまたま連合の試作モビルスーツがあって、たまたまそれを自分たちの艦が察知して。……なんという巡りあわせなのだろうか。

 

「……うわっ!?」

「! すまない。ついそちらまで弄ってしまった」

 

コクピットの外、搭乗用通路でデータ解析をしていたZ.A.F.T.の技術士たちが驚いた声を上げた。その声によってアスランは我に返る。どうやら、自分が無意識にOSだけでなく周辺のデータまで弄っていたらしい。

 

「い、いえ、大丈夫です。もう終わりますので」

「そうか。……にしても、よくもこんなOSで……」

 

時間をかけて弄ったことで、ハード面は高い完成度を誇るもののOSはそれに反して急造された未完成品だったということは理解できた。しかし、そうだとしてもいくらなんでも酷すぎる出来だ。

こんな状態のものを実戦に投入する気だったのかと呆れかけたところで、MSデッキが俄かに騒がしくなる。どうやら、アスランたちの隊長――クルーゼが帰還したようだった。

 

『隊長機着艦完了!』

『左腕部、及び右脚部に損害! メンテナンス急げ!』

(隊長が被弾!? そんな……いや、まさか)

 

信じられない、そう思った一方でアスランの頭には幼い頃のキラの顔が過る。

基本的にいつも受け身で弱々しい印象のあったキラだが、そんな姿とは裏腹に彼の能力は軒並み高水準だった。運動や勉強はもちろんのこと、機械関連ではロボット製作などのハード方面であればアスランの方が得意だったが、ことソフトウェア面においては兄貴分であるアスランよりも得意だったことは記憶に残っている。

キラなら、もしかしたら自分よりも高度なOSを短時間で組めるかもしれない。いや組めるだろう。そうであるなら、もしかしたら隊長機に損害を与えたのは。

 

(……やめよう)

 

そこで思考を無理やり中断してアスランはイージスのコクピットを離れる。隊長機が戻ってきたのだから、恐らく次の行動に関するブリーフィングがあるはずだった。その時考え事をしていて何かを聞き逃すことなどあったらそれこそ洒落にならない。

半ば現実逃避気味にそう考えながら、アスランはヴェサリウスのブリッジへと向かった。

 

 

 

「ミゲルがコレを持って帰ってくれて助かったよ。でなければ、いくら言い訳したところで地球軍のモビルスーツ相手に機体を損ねた私は大笑いされていたかもしれん」

 

クルーゼの声がブリーフィングに参加している兵たちの耳に響く。アスランの予想は的中し、程なくしてブリッジへの招集命令が下ったのだ。

クルーゼの背後にあるホログラフのディスプレイには先の戦闘記録――ミゲルの駆るジンとストライク2号機が戦闘した際の映像だ――が映し出され、参加していたアスランはおろか、映像を持ち帰ったミゲル・アイマンでさえもその映像を注視していた。

 

「奪取した機体に搭載されていたオリジナルのOSについては君らも既に知っての通りだ。なのに何故、この機体だけがここまで動けるかは不明だ」

 

その言葉にアスランは軽く首肯する。

映像のストライクは、Z.A.F.T.の主力であるジンを上回る速度でコロニー内部を駆け回っている。万に一程の確率であろうが、あの機体だけ最新のOSが搭載されていた可能性だって存在するのだ。とすれば、地球連合軍がこれ以降に生産するモビルスーツはあれほどの運動性能を誇るのかもしれない。

 

「だが我々がこんなものをこのまま残し、放っておくわけにはいかんということはハッキリしている。捕獲できぬのであれば、今ここで破壊するしかあるまい。無論戦艦もだ」

 

そこまで話してクルーゼは一旦言葉を切る。アスランを含め、彼の眼前に立つ部下の面々は真剣な表情で彼の話に耳を傾け、尚且つその視線はディスプレイへと向けられている。誰も反対意見など無いようだった。

 

「敵戦力は未知数な部分も多い。侮らずにかかれよ」

「「「ハッ!!」」」

「ミゲル、オロールは直ちに出撃準備。D装備の許可が出ている。今度こそ本当に息の根を止めてやれ!」

「「了解!」」

 

クルーゼの副官的存在であり、ヴェサリウスの艦長であるアデスから指示が下される。指名された2人は即座にブリッジを離れ、自分たちのモビルスーツへと向かって行った。

 

「……アデス艦長、私も出撃させてください」

 

アスランは、何とかもう一度あのディスプレイに映る2号機に接触したかった。乗っていたのは本当にキラなのか。それを確かめたかったのだ。

しかしその申し出に、アデスではなくクルーゼが反応する。

 

「アスラン? 君には機体がないだろう。それに、君は先ほどモビルスーツの奪取という重要な任務を果たしてきたばかりだ」

「ですが!」

「今回は譲れ、アスラン。あいつらも君に劣らず悔しい思いをしてるんだ。特にミゲルは先の戦闘で屈辱を味わったんだ」

 

なおも食い下がろうとするアスランを今度はアデスが諭す。そこまで言われてしまえば、アスランに反論する余地はなかった。

 

「……はい」

 

どうにかして確かめたい。

了解の返事を返す口とは裏腹に、アスランの頭はフル回転していた。

 




諭吉でもジャンヌは引けなかった。赤王様を引けたから満足どころか本望ですが。

それはおいといて、今回の解説ですが、特に思い当たる点はこちらとしては無いです。なので、疑問点がありましたら感想欄にて教えていただければ幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。