1000文字規制なんてあったんですね。
会合で起こった爆破事件により、それまで緊張が続いていた地球国家とスペースコロニー群“プラント”の間で戦争が始まったのだ。
宣戦布告したのは地球側。彼らは国家間で“地球連合”なる勢力を組織しプラント側への攻撃を開始した。
だが、その手法はあまりにも非情だった。
核である。
その日、農業用プラント「ユニウスセブン」は地球連合の放った核ミサイルにより破壊され、述べ24万人以上が帰らぬ人となった。
C.E.70年2月14日、後に「血のバレンタイン」と呼ばれる事件である。
プラント側はこれに対し激怒、二度と核攻撃を行わせないために「ニュートロンジャマー(NJ)」と呼ばれる核分裂を抑止する装置を地球へと向けて無数に発射。結果地球上では原子力を動力とする兵器はおろか発電所さえも機能しなくなり、深刻なエネルギー不足によって億単位の人々が命を失った。
また、NJの影響で通信やレーダーが使用不可能になったことで既存の兵器は弱体化。物量で勝る地球連合軍の勝利で終わると予想されていた戦争は、プラントの政府組織「Z.A.F.T.」が開発した人型機動兵器「モビルスーツ 」 の登場によって拮抗。どちらが勝つかの予想もつかないままに11か月が経過した。
そしてC.E.71年。連合軍が極秘に開発した"6機"のモビルスーツを起点として、戦局は大きく揺れ動くことになる。
機動戦士ガンダムSEED A.I.W. 1話
「じゃ、彼にもよろしく伝えておいてくれ。私はこれからモルゲンレーテの会議に行かなければならないからね」
「はい。では教授、失礼します」
宇宙コロニー、ヘリオポリス。その中のとある工業系カレッジの、これまたとある研究室から一人の少女が出てくる。
少女の若緑色をした髪は肩にかからない程度に整えられており、真紅の瞳は彼女の肌の白さを一層引き立てている。来ている長袖のレディースシャツと赤いベスト、そして赤チェックのロングスカートはどれも上質なもので、彼女のイメージを“大人っぽい”というものに演出している。
彼女は自らの髪を一度だけ手櫛で整えてから、廊下を歩き始める。
途中何人かのカレッジ生とすれ違うが、その中の少女たちと比べると、彼女はかなりの可愛い部類に入ることがわかる。すれ違う男子が皆彼女を目で追っていたことが、それが事実であると物語っていた。
そんな視線に気づかないままに、彼女は研究棟の出口へとたどり着き、ドアの前に設置されている端末に向かって学生証をかざす。
するとブザーが短く鳴り自動でドアが開く。端末のディスプレイには、「通行許可:メレアリス・オウルベル」と彼女の名が表示されていた。
所変わってヘリオポリス屋外。日よけのできる東屋で、少年――キラ・ヤマトは作業をしていた。
作業と言っても力仕事ではない。資料を片手に何やら忙しなくタブレット端末のキーボードを叩いている。
その傍らでは彼の宝物である鳥型のロボット、トリィがその姿をじっとみていた。
「よっ、キラ。こんなところにいたのか」
「ああ、トールか。それにミリアリアも」
「ええ。こんにちは、キラ」
突然声をかけられたので顔を上げてみると、そこには同じゼミの親友であるトール・ケーニヒと、その恋人のミリアリア・ハウが立っていた。
「まーた教授に何か頼まれたのか?」
トールがキラのディスプレイを覗き込みながら言う。
「うん。ちょっとプログラムの解析をね」
「キラ、最近頼まれごと多いもんね。この前も何か頼まれてたでしょ?」
「ああ、あれは教授の研究用プログラムのデバッグだよ。教授、最近はモルゲンレーテの方が忙しいみたいでさ」
「なるほどねぇ。ま、たしかにそっち関連で頼れるのはお前とアイツしかいないもんな」
「はは……」
アイツ。その言葉でキラは一人の少女を思い浮かべる。
メレアリス・オウルベル。キラたちが通うカレッジの中でも可愛いと有名な少女だ。
ただ、有名ではあってもあまり親しい友人が多い訳ではないらしい。彼女の大人っぽい雰囲気のせいで、どうやら同じゼミであるキラたち以外からは“高嶺の花”と認識されているようだった。
加えて彼女も割と自由奔放なところがあり、自分から友人を作りに行くこと自体が稀でもあった。
(でも、ボクたちはその数少ない親しい友人のカテゴリにいるんだよなぁ……)
そう考えるとキラは微妙にうれしくなった。
「キラ、ミリィ、トール。3人とも、こんにちは」
「え? あっ、メ、メレアリス?」
「お、噂をすればなんとやらってね。よっ、メレアリス」
「あ、メル。カレッジからの帰り?」
そんなことを考えているうちに、メル――メレアリス本人が現れたため、キラは素っ頓狂な声を上げてしまう。
メレアリスはそんなキラに一度だけ怪訝そうな視線を向けるが、すぐにミリアリアたちの方に目を向け、
「ええ。教授に頼まれていたものを渡してきたの。まぁ、代わりの物をもらうハメにもなってしまったけど」
と若干ながら苦笑し、手に持っていたものを見せる。
そこにあったのは、また何らかのプログラムだと思われるディスクが4枚。
「え、また頼まれたのかよ?」
「まぁね。
「うっわ、しかも4枚って。メル、あなた大丈夫なの?」
「半分は私のじゃないわ。そこで呆けてるキラの分を預かってきたのよ」
「えー? ボクの?」
キラは思わず嫌そうな声を上げてしまう。
「そ、アナタのよ。……とは言ったけど、それ、まだ途中でしょ?」
メレアリスが視線を向けた先にはキラのタブレット端末。それというのは、どうやら昨日教授に頼まれたプログラムの解析を指しているようだった。
「うん、まだちょっと時間かかりそう。昨日預かったものなんだけど、とにかくデータ量が多くて……」
「キラでも一日で捌けない量って……何のデータなのよ、それ」
「うーん、わからない。何かの機械のフレーム構造みたいなんだけど……工業用アームのモノにしてはすごく珍しいんだよね」
「ちょっと見せて。……本当ね、こんなの見たことも無いわ。この精密さだと、作業用ロボットでもなさそうだし」
「うん。なんというか、もっと人間の動きに似せてるような感じがするんだ」
メレアリスもそれに同意し相槌を打つ。
「これ、あとどれくらいかかりそう?」
「そうだなぁ……まだ結構かかるかな。これで4割くらいだし」
「成程ね。……ならいいわ。こっちの4枚は私がやっておくから、気にしないでそっちを片付けて」
「えっ、そんなの悪いよ。これだって期限は今日までなんだし、どうせそれも期限は短いんだろ? もしデータ量がこれと同じレベルだったら、とてもじゃないけど4枚なんて……」
キラがメレアリスを心配するが、メレアリスは心配ないとばかりに微笑む。
「悪いと思うなら、それを早く片付けて手伝ってくれると助かるわ。先ずはそっちに専念して。期限に間に合わない方がまずいでしょ」
「……わかったよ。ありがとう、メレアリス」
「どういたしまして。……じゃ、私はここで失礼しようかしら。またね、3人とも」
「え、もう行っちゃうの?」
にこやかに手を振って立ち去ろうとするメレアリスにミリアリアが声をかける。
「モルゲンレーテの研究室に行こうと思ってるの。コレを片付けるのならあっちの方が早いから」
「なら丁度いいや! 俺とミリィも行く予定だったんだ。一緒に行こうぜ」
「あら、そうなの? じゃあそうしようかしら」
メレアリスがそう言ってキラたちの方に向き直った時、
『――続きまして、速報です。現在カオシュンでは、7㎞程離れた地点で激しい戦闘が行われ……』
キラの端末から流れていたニュースが戦争の話題へと移り変わる。
「戦争、ね。いつ終わるんだか」
メレアリスがつぶやく。
「速報って言ったって、地球で言えば7日前の情報だろ? 今頃、カオシュンも落ちてるんじゃねーのか?」
「本土に近いよね? 大丈夫なのかな……」
トールの発言に不安がるミリアリア。
本土というのは、現在キラたちが生活しているこのヘリオポリスが所属している地球上の国家、オーブの事である。
「バカ、ガールフレンドを不安にさせるような事言わないの」
「そ、そうだよトール。それに、
メレアリスの呆れたような声にキラも便乗する。友人の不安そうな顔を見るのは心苦しかったし、何より自分がそう思いたかったというのもある。
そして、それと同時にキラは自分の古い友人の事を思い出す。
(アスラン……)
アスラン・ザラ。月の幼年学校で親友同士になった同い年の少年だ。キラとは家族ぐるみの付き合いをしていたほど仲が良かった。
キラの気づかないうちに空を飛び始めていたトリィも、実は彼からのプレゼントであった。
(……「本当に戦争になることはないよ。プラントと地球で」、か)
別れ際にアスランがキラに向かって言った言葉だ。それはキラの不安を払拭するための気休めの言葉だったのか、それとも本心からの言葉だったのか。幼かったキラにはわからなかった。
「キラ?」
「……えっ? わぁっ!?」
ふと名前を呼ばれて我に返ると、目の前にはメレアリスの顔があった。あまりにも距離が近すぎて、キラは驚いて後ろへすっこける。
「あたた……」
「何やってんだか。じゃ、またね」
そんなキラに苦笑したあと、メレアリスは再度立ち去ろうとする。ホント何やってんだよ、と笑いながらトールがそれに続き、ミリアリアも笑いながらそれについていく。
「ま、待ってよ! ボクも行く!」
起き上がったキラはそんな3人についていこうと大急ぎで荷物を片付けるのだった。