機動戦士ガンダムSEED A.I.W.   作:ゆなつー

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1-b

時を同じくしてヘリオポリス港内。

本来中立であるオーブに属するはずのこのコロニーに、ある戦艦が寄港していた。

 

「……」

 

その戦艦のブリッジに一人の男が佇んでいた。

ノーマルスーツの形状からして、所属は地球連合軍。しかも、そのカラーリングから察するに、いわゆるエースパイロットのようだった。

 

「ふむ、これで本艦の仕事も最後となるな。フラガ大尉、貴様も今回の任務ご苦労だった」

 

同じくブリッジにいた艦長らしき人物に男は声をかけられる。

ムウ・ラ・フラガ。それが男の名だ。前の戦闘での功績から、『エンデュミオンの鷹』の異名で知られる程のエースパイロットでもある。

 

「はっ。航路何もなく、幸いでありました」

 

ムウはそう受け答える。実際、今回の任務は戦闘配置に就くことすらなく終わってしまったのだ。

 

「うむ。……にしても、今回の件。これで本当に戦況が変わるといいのだが」

「……ええ」

 

艦長の言葉にムウもうなずく。

今回の任務は、今後の連合にとっては正に中核であると言っても過言ではない程の重要な計画に関係していた。

 

「艦長!」

 

少し遠くから聞こえてきた声に反応して2人は顔を向ける。見れば、6人の青年がブリッジの出口付近で艦長へ敬礼していた。今回の任務でムウ達が護衛してきた兵士たちだ。

 

「うむ」

 

艦長が敬礼を返すと一斉にブリッジから出ていく。

ムウはその様子を見ながら、前々から思っていたことを口にした。

 

「あんなひよっこ共がGのパイロットとは……」

「確かに些か思うところはあるが、あれでMSパイロットのトップガン達だ。大丈夫だろうさ」

 

艦長も暗に同意しているのか、若干ながら声が先程よりも低かった。

 

「ところで、周辺のZ.A.F.T.艦に何か動きは?」

「2隻、この船をトレースしている艦がある。……なぁに、気にはかかるが、ここは中立のコロニーだ。一度入ってしまえば連中もそう簡単に手は出せんだろうさ」

「中立国、でありますか。聞いてあきれますが」

「この時世だ、どこの国も一筋縄ではいかんのだろうよ。……オーブも地球の一国ということさ」

 

まるで自分の領域ではないといわんばかりに艦長は首を振る。

 

「ともかく、ここまで来て何か起こるということも無いだろう。フラガ大尉、後はゆっくり休むといい」

「……はい、ありがとうございます」

 

答えるムウの脳裏には、一人の男の影がちらついていた。

 

 

 

 

 

再びコロニー内。

メレアリス達4人はモルゲンレーテに向かうべく、まず自動操縦型四輪駆動車(オートビークル)のターミナルへと向かっていた。

 

「ん? あれは……」

 

ターミナルに着くとトールが何かを見つける。

その声につられたメレアリスがトールの視線の先を見ると、そこでは数人の少女が何やら騒いでいた。

 

「ちょっとフレイ、いい加減教えてよ!」

「サイ・アーガイルから手紙貰ったって本当?」

 

数人の中でも一番に目を引くのが、フレイ・アルスターという少女。いわゆる恋バナというやつなのか、2人の少女と共にあーでもない、こーでもないと喋っていた。

乗りもしないのにターミナルで何を騒いでいるのかとメレアリスは少しだけ顔をしかめるが、実際にそれを苦言として口に出す気にはならなかった。

 

「えっ……サイが?」

 

隣にいたキラが呟く。どうやら軽くショックだったようだ。

ちなみにサイ・アーガイルと言うのはメレアリスやキラの1つ上のゼミ生だ。

 

「あ、フレイ!」

 

フレイの友人であるミリアリアは小走りにフレイに駆け寄る。

 

「ミリィじゃない! どうしたの? 」

「これからモルゲンレーテに行くの。……あ、そうだ。今日のサークルなんだけど……」

 

満面の笑みでミリアリアを会話の中に入れるフレイ。

彼女はミリアリアと同じサークルに所属している、キラやメレアリスの1つ下の少女だ。カレッジではメレアリスと並んで可愛いと評判の人物で、メレアリスが“高嶺の花”なのに対して彼女は“アイドル的存在”というイメージである。

 

「……失礼、乗らないのであれば先に使わせてもらえるかな?」

 

ミリアリアたちの会話が終わるのを待っていたメレアリスたちの背後からそんな声が聞こえる。

メレアリスが振り返れば、そこにはサングラスをかけた女性と、それに付き従うように男性が二人。

 

「え? ああ、すみません。どうぞ」

「ありがとう」

 

一番後ろにいたキラがそれに反応し、道を空ける。それに倣い全員が道を空けたところで、件の3人は手早くビークルに乗り込み走り去る。

 

「……確かに此処にいたら邪魔になるわよね。ミリィ、私たちもそろそろ行きましょう?」

「あ、うん。じゃあフレイ、また後でね」

「ええ、またサークルで。私も用事があるから行くわ」

 

フレイはミリアリアに手を振ると、先ほどから一緒にいた2人の少女と共に歩いていく。

メレアリスたちはミリアリアがフレイを見送るのを待ってから、空いていたビークルへ乗り込み、目的地を設定する。

 

「にしてもさぁ、キラ。お前、フレイのこと気になるのか?」

「え、ええっ!?」

 

突然のトールの問いかけに慌てるキラ。

 

「いやさぁ、さっき『フレイがサイから手紙を貰った』とかなんとかって話を聞いたとき驚いてたろぉ?」

「いやっ、それはその」

 

トールのいかにも意味ありげな話し方と、ものすごい慌てっぷりのキラ。そんな二人の会話にメレアリスも参加する。

 

「あら、キラはああいうタイプの子が好きなのかしら」

「メ、メレアリスまで!」

「いやー意外ですなぁ。まさかキラがねぇ」

「ちょっと、二人ともやめなよー」

 

ミリアリアも冗談気味に加わって、キラ以外の3人は笑いあう。

 

「違うって! そういうのじゃ無いよ!」

「ふふっ、はいはい。……でもキラ、本当にそういうのじゃない方がいいかもね」

「え……?」

「あー、キラは聞いたことない? フレイって親が決めた婚約者がいるのよ」

「……うん、ちょっとだけ」

 

ミリアリアの言葉に少し暗めな表情を見せるキラ。

 

「でも意外、メルはこの話知ってたんだ? こういう話(恋バナ)、あまり興味ないのかと思ってたけど」

「あら、これでも女の子のつもりよ? 興味がないと言えば嘘になるわ」

「人の恋路って誰でも気になるよな。……それにしてもキラくん。婚約者がいるって話を知りながらフレイに思いを寄せるとは……これは熱いドラマの予感!」

「だぁっ、だから違うってば!」

 

再び騒ぎ始めるトールとキラ。その傍らで、メレアリスは全く別のことを考えていた。

実は先ほどメレアリスが言おうとしたことは、フレイの婚約者の話ではない。それどころか、そういった話は聞いたこと自体なかった。ミリアリアへの応答通りメレアリスも人並みに恋愛話は好きではあるつもりだが、何しろする機会が少ないのだ。

では何を言おうと思っていたのか。それは、彼女がコーディネーターに対して強い偏見を持っているかもしれない、ということだった。

 

コーディネーター。その言葉が意味するのは、C.E.15年を境に誕生し始めた新たな人種。キラやメレアリスはこれに属している。

彼らの特徴は、赤ん坊として生まれる以前に遺伝子を操作された結果、優れた免疫力や運動能力、学習能力を獲得していることが主である。その証左に、コーディネーターが居住している“プラント”では地球よりも文化的、及び技術的に優れた部分が数多く存在している。

 

しかしそんな存在が生まれれば当然それに反発する者も出てくる。遺伝子を操作されていない天然種の人類――ナチュラルと呼ばれる者たちの一部が結成したブルーコスモスという団体だ。

彼らがコーディネーターに反発する理由は実に多種多様。生来の能力の差から来る嫉妬だったり、倫理観の問題から来る存在の否定だったり。或いは、周りに合わせているだけの者もいるだろう。

『青き清浄なる世界のために』をスローガンとして活動する彼らは、全世界でコーディネーターの排斥運動を行っている。その手法は、村八分や不買運動に始まって集団リンチや殺害までとかなり手広い。

 

そんなブルーコスモスにフレイの父親が所属しているらしいというのをメレアリスは噂に聞いたことがあった。もちろん父親がそうだからと言ってフレイもブルーコスモスであるとは断定できないが、どちらにせよ父親の影響は少なからずあるだろうとメレアリスは思っていた。

 

「……考えすぎならいいけど」

 

誰にも聞こえないような小声でそうつぶやき、溜め息を吐いて、メレアリスはビークルを発車させた。

 

 

 

それから15分程して、メレアリス達はカトウ教授――彼女たちのゼミの教授だ――が担当しているモルゲンレーテの研究室へと到着する。

 

「じゃあ俺が聞いてやるよ! 他ならぬ親友のためだしな!」

「いいってば! そういうんじゃないって言ってるじゃんかぁ!」

 

ビークルに乗ったころにはじまった騒ぎは結局研究室のドアを開けるまで続いていた。

 

「やあ、来たか」

 

騒ぎを聞きつけたのか、メレアリスたち4人が室内へ入ってすぐに一人の少年が顔を出す。

 

「ええ。こんにちは、サイ」

 

メレアリスが挨拶する。続いて残りの3人も挨拶をするが、キラだけが顔をひきつらせていた。

先ほどのフレイたちの会話にも出てきた、サイ・アーガイル。彼は短めのブロンドの髪と、色つきの眼鏡が特徴的な人物だ。性格は温厚で、怒ったところを見た人は少ない。あまり自己主張をしない人物でもあるので詳しいことはわからないが、少なくともメレアリスはそう判断していた。

そして、そんな控えめな人物がカレッジでも可愛いことで有名なフレイに送ったのが。

 

「……手紙、ね」

「うぇっ!?」

 

メレアリスはクスリと笑う。

彼女がつぶやいた言葉に、キラは図星といわんばかりに驚く。

 

「ん? キラ、どうかしたのか?」

 

サイがそんなキラに声をかける。

 

「い、いや、なんでもないよ」

「なんでもないわけないだろー? サイ、キラ(こいつ)が聞きたいことがあるんだってよ!」

 

ごまかそうとするキラにトールが後ろから飛びつきながら横槍を入れる。

 

「なんだい、聞きたいことって?」

「ほ、本当に何でもないんだ! 気にしないで!」

「おいおい、いいのかよキラ? 聞けばいいじゃんかよー」

 

男3人の会話を聞きながら、メレアリスは自分のバッグから端末を取り出して近くのPCに接続しようとする。

と、不意にメレアリスは視界に見慣れない人物を捉える。

全身を包むような黒っぽい服装に、深く被られた帽子。辛うじて顔の輪郭と金髪だというのがわかるが、それだけでは性別はわからなかった。

 

「……ねぇ、バスカークくん。あの人は誰?」

 

メレアリスは丁度近くにいたカズイ・バスカークという少年に聞いてみる。

彼とメレアリスはあまり親しくないが、会話を交わす事が多々ある程度には面識があった。

 

「あ、ああ。教授のお客さんらしいよ。ここで待っててくれって言われたんだってさ」

 

いきなり話しかけられたカズイは多少驚いたようだったが、メレアリスへとハッキリ答えを返す。

 

「なるほどね。教えてくれてありがとう」

「気にしなくていいよ。……あ、あのさ、オウルベルさん」

「なにかしら?」

「あ、いや、その……カズイ、でいいよ」

 

カズイは少し顔を赤くしながらも、メレアリスに向かって言う。なるほど、確かに今この研究室にいるカトウゼミのメンバーのなかで唯一メレアリスが名前で呼んでいないのが彼だった。

 

「ふふっ、いいの? それじゃ、これからはそう呼ばせてもらうわ。私のことも、メレアリスでもメルでも、好きな風に呼んでくれていいわよ。ありがとね、カズイ」

 

メレアリスは軽く笑いながら、そう返す。

彼女は確かに友人を作ることに積極的ではないが、だからといって作りたくないと思っているわけではない。

実際、名前で呼び合うような友達が増えるのはメレアリスにとっても嬉しいことだった。

 

「……! う、うん」

「……? 顔が赤いけど、体調でも悪いの?」

「え? あ、いやっ、別にそういうわけじゃ」

「ふふっ、変なの」

 

そんな彼女の笑みに、更にカズイは顔を赤くしてしまう。

キラがフレイに憧れているように、カズイもまたメレアリスに憧れているようだった。

 

 

 

程なくして、全員がそれぞれの作業に取り掛かる。

トールやミリアリア、カズイとサイの4人は論文用に作成しているパワードスーツの調整を行い、キラとメレアリスの2人は教授からの頼まれごとを消化。

途中、何か手詰まりがあれば2人がパワードスーツの方にも参加するといういつもの流れだった。

 

「ちょ、ちょっとこれ、動かないんだけど……」

 

実際の挙動を確かめるためにカズイがパワードスーツを装着して起き上がろうとする。しかし、件のスーツはほとんど動かない。

 

「俺のところはミスはなさそうだけどな。カズイ、お前が下手なだけじゃねーの?」

「でも、さっきまではカズイも動かせてたわよね。やっぱりどこかミスでもあるのかな」

「うーん、そうなのかも知れないな。僕が調べて……」

「メレアリス、キラ、ちょっとこっち見てくれ」

「今行くわ」

「今度はどうしたの?」

「実はさ……」

 

サイが言いきらないうちに、既に手伝いを呼びに行っていたトールがメレアリスとキラを連れてくる。

2人はトールから簡単に経緯を聞くと調整用のデバイスをいじり始める。

 

「……ああ、これかな。バランサーの数値がおかしいんだ。これ、昨日設定したプリセットと一緒だし。調整の後に変更しないと」

「それにここ、コードの関数値が間違ってるわ」

「あ、本当だ。じゃあこの2つを修正すれば……」

 

2人は手慣れた手つきで修正を行っていく。

数十秒後、2人がデバイスから手を放すと同時にカズイがゆっくりと立ち上がる。

 

「あ、動いた」

「ひょー、一発解決。さっすが我らがゼミのプロフェッショナルズ」

「よくそんな短時間で原因がわかるわよね。すごいなぁ、2人とも」

「運よく1発で見つかっただけよ。普通はこうも行かないわ」

「そうだよ、たまたまだって」

 

メレアリスとキラはそう言いながら、それぞれの作業へと戻っていく。

 

「メレアリス、そろそろこっちが片付きそうだから1枚くれる?」

「あら、随分と速いのね。わかったわ、ちょっと待って……」

 

メレアリスが預かっていたキラの分を返そうと自分の机の上にあったデータディスクに触れたその時。

突然、爆発音とともに巨大な振動が研究室を襲った。

 

「うわあっ!?」

「な、なんだぁ!?」

 

キラの驚く声にトールの声が重なる。カズイはパワードスーツごと転倒し、サイは慌ててカズイが着ていたパワードスーツの装着を解除する。

 

「何かしらね、この揺れ。工場の方で問題でも起こったのかしら? ……ミリィ、平気?」

「何ともないわ、大丈夫。隕石でもぶつかったのかな」

「ともかく、一旦避難しよう。エレベーターは途中で止まったりでもしたら大変だから、階段を使おう」

 

サイの言葉に全員がうなずいた。

 

 




オートビークルとかいう名称は勝手につけました。名前判らないです。

あと、フレイのブルーコスモスくんだりも独自解釈。まあ人種的、民族的な問題と言ったらこんなもんでしょうという勝手な推論です。

で、動かないパワードスーツの関数値のあたりも適当に理由をでっち上げています。作者はその道の人でないので、プログラムに関数値を使って、それが動作に影響を及ぼしてるのかどうかまでは分かりません。問題があるようでしたら、気づいた方、知識のある方、ご一報ください。
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