機動戦士ガンダムSEED A.I.W.   作:ゆなつー

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「この機体だけでも……私にだって、動かすくらい!」

 

女性の技術員に助けられて入ったモビルスーツのコクピット。その操縦席の傍らでキラは未だ混乱していた。

無理もない。つい数時間前までは何も知らずに友人と談笑していた一般人がいきなり銃撃や建物の崩壊に巻き込まれたのだ。逆に平静でいられる方が驚くべきことでもある。

 

「スリープからアクティブへ、メインカメラをオンに……」

 

件の技術員が呟きながら機器を操作する。と、今まで無機質な様相をしていたコクピットに周囲の景色が映し出される。モニターが起動したようだった。

 

(……アスラン……?)

 

キラは左側のモニターを見やる。そこには先ほどキラ達を襲った赤いノーマルスーツの少年が向かっていったモビルスーツが映し出されていた。

キラが最初に襲い掛かってくる少年を見た時、バイザーから見えたその顔は古い親友のそれに良く似ていた。

だから呟いたのだ。幼年学校時代に、家族を除けば最も行動を共にした時間が多かっただろうその存在の名を。

果たして、その呟きと同時に少年は動きを止めた。何か呟いたようだったが、それは周囲の騒音のせいで聞き取ることができなかった。

 

(いや、そんな。まさか……)

 

もしかしたらという思いは浮かぶものの、それを裏付けるものが少なすぎる。それに、もし彼が本当に親友だったら。その親友は、銃を手に取り人を撃つ――もっと直接的な表現をすれば、人殺しをしていることに他ならない。

再会の喜びと、変わってしまった友人への疑念。自分の見間違いであればという微かな願いも相まって、キラはどうしようもないほどに狼狽していた。

 

「システム、起動……!」

 

不意に女性の声とブート音。

機体情報を映し出すらしいディスプレイをキラが見れば、そこには

 

 

GAT-X105-2 STRIKE

 

General

Unilateral

Neuro - Link

Dispersive

Autonomic

Maneuver

 

Synthsis System_

 

 

機体及びシステムの名らしき文字列が表示されていた。

 

「ガン、ダム?」

 

キラは呟く。それは、システム名と思しき文字列の頭文字をつなげた呼び方。

本来の機体名は上に表示された『STRIKE(攻撃)』なのだろうが、キラにはこちらの方がこの機体に合っている呼び方のような気がした。

 

「立ち上がるわ。掴まって!」

「は、はい」

 

その言葉にキラはシートをつかむ手に力を込める。

技術員が左脇、操縦桿の後方にあるデバイスを前側へと押し上げる。するとディスプレイに表示されたメーターが徐々に上がっていく。

メーターの表示が通常域(グリーンゾーン)へと入ったところで、技術員が何やらボタンを操作する。

その操作に従って、キラたちの乗ったモビルスーツはゆっくりと、しかし力強く上体を起こす。

モビルスーツの姿勢と共に、徐々に回転していくコクピット。モニターに表示されている視覚情報もそれに伴いどんどん変化していく。

その中に。

 

「……えっ、メレアリス!?」

 

こちらを見て呆然とした表情をした見知った少女と、キラの隣にいる技術員と同じ服装をした男性が映し出された。

 

「オリノ! 無事だったのね」

 

キラの声に反応してモニターを見やった技術員も見知った顔を見つけて安堵の声を上げる。

どうやら2人とも無事らしく、キラたちから見て右側に横たわっているモビルスーツの上にいた。

だが、10秒もしないうちに男性がメレアリスへと何やら声をかけ、メレアリスはそれに応ずるように男性へと肩を貸す。

そして、先ほどのキラ達と同じように、2人でモビルスーツのコクピットへと入っていった。

 

「105は2機とも無事……でも、303は……」

 

技術員が先ほどとは逆のモニターを見やる。そこには、キラたちと同じように立ち上がろうとするモビルスーツの姿があった。

が、搬入口の施設が爆発したのか、モニターの映像が一気に炎で埋め尽くされる。

人であれば視界が遮られたことに驚き動きを止めるだろう。実際コクピットの中のキラたちは驚いて硬直してしまっていた。

しかし、動作しているのはモビルスーツという機械の巨人だ。機械に意思などあるはずもなく、『立ち上がること(スタンドアップ)』を命令されたコンピュータは忠実に立ち上がるための動作を実行していく。

そして20秒ほどで全工程が終了、モビルスーツ――GAT-X105-2 STRIKEが大地に立った。

その直後、105-1――ストライク1号機もまた、同じように立ち上がる。

 

「こちら105-2ストライク! 1号機……オリノ少尉、応答を!」

 

その姿を見て、硬直から立ち直った技術員がコンソールを叩き、通信を始める。

すると一瞬のノイズの後、先ほどメレアリスと共にモビルスーツのコクピットへと入っていった男性の顔が映し出される。

 

『こちら105-1。ラミアス大尉、無事でしたか!』

「ええ、ねんとかね。そちらは?」

『足をやられましたが、それ以外では今のところ問題ありません。それと少女を一人保護しました』

「ええ、こちらもモニターから確認したわ」

「……そうだ。メレアリスは? メレアリスは無事なんですか!?」

 

オリノの言葉にキラが反応する。

先ほどオリノと共にいたのは見ていたのだが、それもかなり短い間のことであったために今のメレアリスの状態がわからなかったからだ。

 

『君はさっきの……そうか、君も無事だったのか。心配することはない。彼女は無事だよ』

『キラ、良かった! 怪我は無い?』

「メレアリス! ああ、大丈夫。僕はなんとも……っ、何だ!?」

 

不意にキラ達の耳に聞こえてきたのは、爆発音のような音と、バーナーで何かを炙るかのような音。それが2機のストライクと同じく立ち上がったモビルスーツのスラスター音だとキラが認識した頃には、ソレはすでにストライクの頭上へと飛び上がっていた。

 

「くっ……303はZ.A.F.T.兵により強奪! オリノ少尉、私たちはなんとしてもこの2機を守らなければ!」

『303もですか! となると、残ったのはこの2機のみですか……』

「オリノ……いえ、なんでもないわ」

 

303¨も¨という言い方に、技術員――ラミアスと呼ばれた彼女――はその意味を問おうとする。しかし、奪われた303が飛んでいく方向を見ると、遥か彼方にジンと共に飛び去っていく3機のモビルスーツがモニターに写し出されていた。

 

「まずはアークエンジェルと連絡を取りたいけど……」

『ノイズが酷いですね。港側が電波妨害されているのでしょうか』

「そうね……」

 

ラミアスは小さく舌打ちする。

 

『仕方ありませんね……取り敢えず、工場施設から出ましょう。このままだと崩落に巻き込まれかねません』

「え、ええ」

 

オリノの言葉に頷くラミアス。だが、その声はキラにはどことなく震えているようにも聞こえた。

 

(……この人、動かしたことがないのか?)

 

まるで初めてビークルを運転する人みたいだ。

そう思ったキラの疑問はすぐに確信へと変わった。

「姿勢制御はオート、スラスター噴射……」

 

直立姿勢のまま、ストライクは指示通り空中へと浮かび上がる。工場区が足元に来る位置まで上昇したところでアポジモーターが自動制御され、ストライクの巨体はそのまま前方へと進む。

そしてシステムにアシストされる形でその跳躍は無事終了するはずだったのだが。

 

「……あっ、あのっ、足元にっ!」

「え……? あっ!?」

 

モニターに映ったのは、ちょうどストライクが着地するであろう地点に存在した建物。このまま着地してしまえば恐らくは踏み潰してしまうだろう。

いち早くその存在に気付いたキラがラミアスへとそれを知らせると、彼女は慌てて回避しようと機体を操作する。

 

「うわぁっ!?」

「くっ」

 

スラスターを急に噴かした結果としてくる浮遊感と慣れない着地の衝撃に、思わず二人は驚く。

結果的に何とか建物を破壊することは免れたものの、ストライクは正常に着地することがかなわずバランスを取るために前方へと歩行を開始する。

 

『大尉!?』

「あ、オリノ……いえ、なんでもないわ。慣れないから少し戸惑っただけ」

 

気を取り直したラミアスがストライクの歩行速度を緩めるべく機体を操作する。

 

『そうでしたか。では、我々もそちらに』

「了解。モビルスーツの足元に気を付けて」

 

通信の後、今度はオリノとメレアリスが乗ったストライク1号機が同じようにスラスターを吹かして飛来する。ラミアスの警告が利いたのか、こちらは危なげなく着地。それとほぼ同じタイミングでキラたちが乗ったストライク2号機がようやく歩みを止めて直立する。

ラミアスが何やら操作すると、モニターに2号機の足元が映し出される。そして、その中に。

 

「……ああっ!? サイ! トール! カズイ……!」

 

キラは思わずモニターに向かって名前を呼ぶ。そう、モニターには必死に逃げる彼の友人たちが映し出されていた。

 

『ミリィも……!』

 

開きっぱなしになっていた1号機との回線からもメレアリスの呟きが聞こえてくる。恐らく彼女もまた1号機のモニターから同じ映像を見ているのだろう。

 

「――くっ!?」

「えっ!?」

 

突然聞こえたラミアスのうめくような声に、キラが正面のモニターを見やったのとほぼ同時。2号機のコクピットにアラームが鳴り響く。

キラが視界にとらえたのは、工場で幼馴染に良く似た人物が乗り込んだ機体と、その隣に並んだ機体。

Z.A.F.T.が擁する主力MS、ジンが此方へと手に持った銃を向けていた。

 

――レーダー照射。言い換えればロックオン。

 

警告音が示している物をキラが理解するよりも早く、向けられた銃は轟音を立てて込められた弾丸を発射した。

が、威嚇射撃だったのだろう。発射されたのはグレネード弾かそれに準ずるものらしく、2号機の立つ地点の周囲へと着弾したそれは爆風を起こす。

 

「くぅっ……!?」

「ああっ」

 

如何に鋼鉄で作られた巨大な機械と言えど、その姿形は人間のそれと大差無い。着弾と爆発による振動はキラたちの載るコクピットへと確実に伝わり、彼らを容赦なく襲う。

 

『大尉っ!』

『キラ!?』

 

通信の音声がコクピットに響く。その声で我に返ったキラが見たのは、ジンがライフルをマウントし、反対側の腰部にマウントされていた巨剣を引き抜く姿だった。

 

「き、来ます! 移動を!」

「え? くっ……!」

 

ラミアスが操縦桿を操作、ストライクが覚束ない足取りで移動を開始するのとジンが剣を構えるのが同時。

スラスターの爆音とともにジンが突進してくる光景に、キラはあまりの緊張で思考を一瞬停止する。そんな中、

 

「うわっ!?」

 

ラミアスが回避のためにストライクを空中に浮かせた事で発生した浮遊感に驚きの声を上げた。

そしてその驚きが終わらないうちに、今度は着地時の衝撃がコクピットの中の二人を襲う。

操縦していたラミアスは着地が予想できていたために耐えることができたが、キラはたまらず体勢を崩し情報ディスプレイの前へと体を乗り出す姿勢になってしまう。

 

「下がりなさい! 死にたいの!?」

「す、すみません!」

 

間髪入れずにキラは謝罪し、体勢を戻そうとしながら正面のモニターを見やる。そこには、再度剣を構えながらこちらへ突進してくるジンの姿があった。

 

「うわぁぁぁぁっ!?」

 

思わず叫ぶキラ。通信の音声が何やら喚いていたが、パニックによって思考が停止してしまったキラには届かなかった。

キラが邪魔になっているせいで碌に機体を動かせないラミアスは、焦りの表情を浮かべながらもとあるスイッチをONにする。

 

【PHASESHIFT-ARMOR ACTIVATED】

 

システム音声がコクピット内に鳴り響き、スイッチ上部に"PHASE SHIFT"の文字が浮かび上がる。

突進の勢いを殺さずに跳躍してくるジン。落下と同時に手に持った巨大な剣を振り下ろす。

ラミアスはそれを、ストライクをハイブロックさせることで受け止めた(・・・・・)

 




ロックオンにレーダー照射、レーダーロック。だいたい飛行機の方のACEで聞いた言葉を使ってます。だから実際は違うかも。

あと、PS装甲がオンになると通知音声が鳴るって設定にしてます。別に変なことじゃないよね? wi-fiが利用できます、みたいなもんです。

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