機動戦士ガンダムSEED A.I.W.   作:ゆなつー

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この話と次の話、ちょっと納得できない人いるかもしれません。申し訳ない。


2-b

「色が、変わった……!?」

 

ジンが振り下ろした巨剣を受け止めるストライク2号機の姿を、1号機のコクピットから見たメレアリスは驚いた。

ジンが跳躍するかしないかの瀬戸際で、キラたちの載った2号機の“灰色い”装甲が突如として鮮やかな“トリコロール調”の色合いへと変化していったからだ。

 

「フェイズシフト装甲! 間に合ったのか!」

 

相転移(フェイズシフト)装甲。ジンの突進の際、オリノが通信でラミアスへと叫んでいた単語だ。

メレアリスが察するに、そのフェイズシフト装甲を展開したために2号機の色が変わったらしかった。

攻撃を仕掛けていたジンが一旦離れ、同時に2号機は体勢を整える。

 

「……あ、あの機体……イージスも……」

 

メレアリスが視線を向ける先で、距離を取ったジンの後ろに立っていたモビルスーツの装甲が灰色から鮮やかな赤色に染まっていく。

レーダーに未だ“味方機”として識別されているその機体の名(GAT-X303 AEGIS)を、モニターが示していた。

 

「303も装甲を展開したか! まずいな……」

 

自身に言い聞かせるかのように呟くオリノ。

イージスが完全に色を変えるのとほぼ同時にその背後から2発のミサイルが飛来する。が、イージスは機体の向きを素早く変えると、頭部に搭載された機銃でいともたやすく撃墜してしまう。

 

「なっ、あの短時間でシステムの補助もなしに……!? 流石はコーディネーターか……!」

 

どうやらオリノはイージスがミサイルを撃墜した際の照準合わせ(エイミング)に驚愕しているようだったが、メレアリスにはよく分からなかった。

 

(口振りからすると、システムの補助ありきということのようだけど。そのシステムのアシストが利かない事を、この人は知っている……? ということは、以前からの機器の故障……いえ、システム自体が未実装なのかしら)

 

故障であるならば即座に先ほどの工場で直されている筈であるし、システムが十全に作動するのならばそもそもオリノの言動は無い。そこから考えられるのは、イージスのみか、或いは今メレアリスが乗せられているこのストライク1号機を含めたすべてのモルゲンレーテ製モビルスーツのコントロールシステムが未完成なのではないかという推論だった。

 

(願わくば、前者の方であってほしいのだけど……)

 

メレアリスが思考に埋没していると、突如としてコクピット内に警報が鳴りだす。レーダーロックを受けていることを示す音だった。

驚いてメレアリスがモニターを見れば、正面にはイージスが、こちらへ銃を向けて立っていた。

 

『GAT-X105-1。搭乗者、応答願う』

 

不意に、通信が入った。送信者は眼前のイージス。映像なし(SOUND ONLY)と表示される通信画像と共に流れてきた音声にメレアリスはふと懐かしさを覚えた。

 

「……こちらGAT-X105-1。敵軍が此方に何の用だ」

 

通信先を2号機からイージスへと切り替えて受け答えをしたのはオリノ。鳴り止まない警報の中で努めて感情を声に出さない彼の額には、薄ら汗が浮かんでいた。

 

『要求は一つだ。そのモビルスーツを放棄し、我々に投降しろ』

「……」

 

沈黙で返すオリノ。

 

『無駄な抵抗はやめろ。その貧弱な武装(イーゲルシュテルンだけ)ではフェイズシフト装甲に打ち勝つことはできないというのはお前たちのほうがよく知っている筈だ』

「……っ、だが、それは……」

『こちらも同じ、とは言えないだろう? 見えているだろう、こちらにはPS装甲を打ち破る武装(ビーム兵器)がある』

 

眼前のイージスが構えている銃を僅かに動かす。メレアリスにはそれが何であるかはわからなかったが、オリノが言葉を詰まらせる音が何よりも現在の状況を物語っていた。

 

「……」

『……』

 

オリノの沈黙と、イージスに搭乗するZ.A.F.T.兵の沈黙。自身の命の手綱を握られていることを察したメレアリスは体の動きどころか思考さえも停止していた。

僅か数百メートル先では、キラとラミアスの駆るストライク2号機とZ.A.F.T.のジンが戦闘を行っている。駆動音はまだしも、金属が硬いものにぶつかる音や装甲同士の衝突音は絶えず続いている。間違いなくここは戦場だった。

しかし、だというのに、彼女の耳には僅かな喧騒すら入ってこなかった。

 

「……条件がある」

 

長い沈黙の後、オリノが僅かに体を震わせながら声を絞り出す。

それと同時に戻ってくる周囲の音。派手な金属同士の衝突音がメレアリスの聴覚を刺激した。

 

『聞こう』

「……先ほどの工場で、民間人の学生を保護した。今コクピット内にいるんだが、せめて彼女は逃がしてやってくれないか」

「……えっ!?」

 

オリノの出した条件に驚いたのはメレアリスだった。てっきりオリノは要求をはねのけると思っていたからだ。

たかが学生一人と、おそらくは軍の最重要機密であるモビルスーツ。天秤にかけるのであればほぼ確実にモビルスーツに傾く筈だった。

 

「な、なんで……!? どうして!?」

 

どうして(メレアリス)を優先するのか。言葉にならない問いは続きを察したオリノによって解を与えられる。

 

「……私は技術者であり軍人だ。それ相応の覚悟と誇りを持って此処にいる。しかし、君は民間人であり未来ある若者だ。平和を望んで此処(ヘリオポリス)にいる君を、これ以上軍人の都合に巻き込むわけにはいかない」

「そ、そんな……」

 

それは彼の矜持だった。

力ある者は、相応の覚悟を持たねばならない。平和のために力なき者を、平和を望む者を代償としてはならない。

損得を考えればそれは明らかな悪手だった。聞く者が聞く者ならば、「とんだ甘ちゃんだ」「軍人失格だ」と罵るかもしれない。

しかし、それは一人の人間としては十分に“正しいこと”の範疇であるはずだ。だからこそ、

 

『……良いだろう。その民間人がモビルスーツからある程度離れるまでは待つ』

 

オリノほどではない長考の後、Z.A.F.T.兵は了承の意を返してきた。

その返答にオリノは短く息を吐いた後、再び問いかける。

 

「……信じて良いんだな?」

『ああ。Z.A.F.T.の名に懸けて、約束は守ろう。……だが、妙な真似をした場合は』

「言われずとも、この状況では出来んさ。……ハッチを開ける」

 

イージスのパイロットの警告を途中で遮って、オリノはコクピットのハッチを開けるべく機器を操作する。すると前方を移していたディスプレイの電源が落ち、10秒もしないうちにハッチが完全に開ききる。

 

「さあ、行くんだ」

 

彼の言葉と共にコクピットの前にストライクの手が移動してくる。恐らく、メレアリスを地上に降ろすためだろう。

この機械の手に乗れば、この恐ろしい戦場から遠ざかることができる。相手の言葉を信じるならば少なくとも離脱の途中で殺されてしまうことは無いだろうし、どこかのシェルターに入れてもらえれば生き延びることができるに違いなかった。

 

(でも……)

 

そこまで考えて、メレアリスは改めてオリノへと目を向ける。まだ衰えを知らない若い顔と、その瞳に宿る確かな決意。工場で足に怪我を負ったせいか息が少し乱れている。

ここで自分がいなくなった後、彼はどうなるのだろうか。ナチュラルとコーディネーターという、ある意味では人種を起因とした戦争の真っただ中だ。捕らえられた後は殺されはせずともそれに近い仕打ちを受けるのではないか。それに、このモビルスーツも共にZ.A.F.T.の手へと渡るのだ。たとえ捕虜から解放されたとしても、友軍から厳しい叱責を受けるかもしれない。

――それも全部、自分(メレアリス)というたった一人の民間人のせいで。

 

「……ッ」

 

嫌だった。自分のために、ともすれば命まで懸けようとしてくれている人物を、何も恩返しせずに見捨てるのは。

だからだろうか。

 

(……さっきから聞いてた、あのパイロットの声。もしかしたら……)

 

メレアリスはとある考えを実行に移そうと思い立つ。

 

「……通信の音量、最大まで上げておいてもらえますか?」

「何? ……いや、わかった」

 

何かしらの決意を感じ取ったのか、オリノは何も聞くことなくメレアリスの頼みを受け入れる。

その姿に一度頭を下げてから、メレアリスはコクピットから外へ出るべく足に力を入れた。

 

 




オリノさんのは完全に個人の考えです。彼が軍人らしくないとか、頭おかしいとか思うかもしれませんがごめんなさい。作者が話を次の展開に持っていくためにこんなことやらせてます。
この点に関しては、どんだけ批判されようともしょうがないですね。
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