機動戦士ガンダムSEED A.I.W.   作:ゆなつー

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前話に引き続き注意。


2-c

「……なっ、君は!?」

 

イージスのコクピットの中で、眼前のストライクが民間人を逃がすために動くのを見ていたアスランは驚いた。

風に揺れる若緑色の髪、白と赤を基調とした上品そうな服。極めつけに、白い肌を強調する深紅の瞳。

コクピットから出てきたのは、かつて彼が月の幼年学校に通っていた時に知り合った女の子をそっくりそのまま大人にしたような少女。

彼にとっての、女性の幼馴染。メレアリス・オウルベルがそこにいた。

 

『……やっぱり。アスラン、アナタなのね』

 

思わずあげてしまった驚きの声を繋いだままの通信が拾ったらしい。確信に満ちた声音でディスプレイに映る少女が呟いた。

 

「メル……何故、何故君が」

『それはこちらのセリフよ。アスラン、何故そんなものに乗っているの?』

「それは……っ」

 

工場で見たキラによく似た少年と、風になびく髪を抑えながらまっすぐと此方を見据えるメレアリス。かつて心を通わせ合った友人たちへの想いが溢れて、アスランは言葉に詰まる。

 

アスランがZ.A.F.T.に志願した切っ掛けは、血のバレンタインがその大部分を占める。その日農業プラントにいた彼の母が、撃ち込まれた核によって遺骸すら残さずに消えてしまったのだ。

突如として崩れ去ってしまった日常。続く筈だった明るい未来を閉ざされてしまった彼は、血のバレンタインの背景にあるナチュラルとコーディネーター間の争いを憎んだ。

核を撃ったナチュラルそのものを憎まなかったわけではないが、コーディネーターであるアスランの頭脳は幼いながらも既に敵を憎むことの空しさを理解してしまっていたのだ。

争いを終わらせるための力を。ただそれだけを欲して彼はZ.A.F.T.へと志願した。

当然、争いを終わらせる過程で自分も同じように他者の日常を壊すことになるというのは理解していたし、ある程度納得もしていた。だからこそ、友人が悲しむことになる前に争いが終わってほしいと願いながらこの戦争に参加したはずなのに。

 

「お、俺は……俺は……」

『……』

 

壊したくないと思い続けていた日常は、他ならぬ自分たちの手によって壊されていた。その事実がアスランに重くのしかかる。

そんな時だった。突如、金属を切り裂くような歪な音があたりに響き渡ったのは。

 

あまりの音の大きさにメレアリスは耳を塞いでその場に蹲り、アスランもコクピット内で顔を僅かにしかめる。音の発生源ではメレアリスたちのものとは別のストライクが、彼の仲間であるミゲルの駆るジンに2本の小型ブレードを突き立てていた。

ジンのモノアイが光を失い、銃を構えるべく上げていた腕が力なく降ろされる。搭乗者が居る筈のコクピットこそ無傷であるものの、こと巨人同士の戦闘では人間の急所である首の部分に刃物が刺さり火花を散らしている光景は死を連想させるものに間違いなかった。

 

「ミゲル!?」

 

通信は繋がっていないのにアスランは思わず叫んでしまう。だがその呼びかけに応えるかのようにジンのコクピットハッチが弾け飛び、中から見知った姿が飛び出していった。どうやら機体に見切りをつけて自爆シーケンスを作動したらしかった。

 

「……ッ、メル、コクピットに!」

 

このままではメレアリスが危ない。

自分でも気づかないうちに、アスランはメレアリスへと言葉を投げかける。その言葉に彼女本人ではなく同じコクピットに乗っていた男が反応し、素早く彼女をコクピットへと連れ戻しハッチを閉じた。

直後、かつてない規模の爆発が起こる。閃光や轟音と共に、多少離れているこちらのコクピットまで振動が伝わるほどの爆風。彼女がまだコクピットの外へ出たままだったら、間違いなく吹き飛ばされ絶命していただろうと予測できる威力。

20m超の巨人が持つエネルギーのほぼすべてを凝縮した爆発は、爆心地に立つストライク――アスランが見るモニターにはGAT-X105-2と表示されている――を一気にパワーダウンへと追い込むほどの規模だった。

 

「――このッ」

 

仲間自身は生き延びているものの、その機体を仕留めたのは間違いなくストライクの2号機。鮮やかなトリコロールから一転して味気ない灰色に戻るソレに向かって、アスランの駆るイージスがライフルの銃口を向ける。

 

『アスラン、やめて! 私の友達も乗っているの!』

「ッ!?」

 

トリガーを引く直前、未だ繋がっていた通信からメレアリスの叫び声が聞こえた。思わず硬直したアスランは同時に眼前の2号機にキラとよく似た少年が乗っていたのを思い出す。

ナイフを手に地球軍の士官へと迫った時の、アスランの名を呼ぶ懐かしい顔。呆然と此方を見上げるその顔は、思い返してみてもやはり幼馴染であり弟分であるキラのものに相違なかった。

 

「……くっ」

 

自然と、アスランの額には玉のような汗が浮かび始める。撃つべきか、撃たぬべきか。Z.A.F.T.兵としては撃つべき状況であるのに、アスラン・ザラという一個人としては撃つべきではないという2つの考えの板挟みになる。

そうなってしまえばアスランはもうトリガーを引くことはできなかった。自分はたった今メレアリスの日常を壊したのに、今度はもしかしたらキラの日常どころか命さえ奪うことになるのではないか。その疑念がアスランの中に渦巻き始める。

 

『アスラン!』

 

再度メレアリスの声。その懇願するような声音に、アスランは思わずイージスを反転させ、逃げるようにスラスターを吹かすのだった。

 




アスラン君、何を思ってZ.A.F.T.になんか入ったんですかね?
彼の行動に関してはちょっと「ん?」ってなることも多いので、基本的にはそれっぽい事考えさせるようにこれからもやっていこうと思ってます。
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