バカと女神とゲルテナと   作:東雲兎

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これからこのくらいか、もうちょっと遅いペースで更新する事になりそうです。

本当に申し訳ないです




第十画目

ギャリー、イヴの活躍により新たなトビラが出現した。

そこには明久の体力が回復するまで行かないことになり、久々の落ち着ける時間となる……筈だった。

 

休む明久をイヴが隣に付き添い軽い手当をしている。

しかし道具の無い状況ではハンカチで拭くくらいしか出来ない。何が言いたいのかというと……イヴが終始無言だったという事だ。

その様子に他2人も押し黙る。だが2人の思いは同じ一致していた。

 

「「(き、気まずい……!)」」

 

とっても情けない一致だが。

 

「(ど、どうするのギャリー。気まずすぎるよ!)」

「(知らないわよ!そうだ、明久あんた、一発芸でもしなさい。得意そうな顔してるじゃない)」

「(ちくわ大明神)」

「(どういう無茶振り⁉︎得意そうな顔って何さ!)」

「「(と言うか今の誰だ⁉︎)」」

 

どこまでいってもヘタレな男2人であった。

 

ふたりが醜い押し付け合いをしていると、唐突にイヴが声を出した。

 

「ねぇ、明久……」

「ひ、ひゃい」

 

…本当に情けない。

 

しかし当のイヴは何か言おうとし、結局なにも告げずに口を閉ざした。

 

「どうしたの?」

「うんうん…なんでもないよ」

 

その様子を不審に思いながらも、彼女自身があまり触れてほしくなさそうな雰囲気を醸し出していたので、今の明久には問い質す事が出来なかった。

 

 

 

✳︎ ✳︎ ✳︎

 

 

 

「目がチカチカするな。ここ」

 

例の部屋で明久が呻きながら目を擦る。

部屋の灯りが定期的に点減しているため目に負荷がかかっているんだろう。と適当に解釈する。

 

結局部屋にはゲルテナの作品が鎮座していただけで、それ以外に特筆するものはなかった。

 

明久が、作品の一つである金の骸骨のパズル的な作品に興味を惹かれ、触れようとした所でイヴに窘められている間

ギャリーは人の形にも見える木の作品をみながら考え込む。

 

はて、明久が木について何か言ってはいなかったか…?

 

数秒の要し、ハタと手をうつ。このイケメンがやるとシュールである。

 

「…時代を感じるなぁ」

「明久うるさい」

 

明久の呟きを封殺しながら木の作品の裏手に回る。

その行動を他ふたりが顔を見合わせて彼の行動を不思議に思っていると、

 

「あったわ!」

 

喜色の声音を出しながら、なにかを掲げる。

 

「ーー指輪……だよね?ちょっと大きいけど」

 

そうよと応えるギャリーの顔は見事なまでのドヤ顔だった。

ぐっと、殴りたいという衝動を抑える明久。

どれだけウザいかといえば、某運命(fate)で、某正義の味方(志望)の数少ない男友達であるワカメ並だとここには記しておこう。

 

閑話休題(それは置いといて)

 

ギャリーに引き連れられ、何処かへと向かう途中にその指輪は“マリッジリング”であると説明された。

 

「なにそれ?マリッジってなにさ」

 

明久には聞き慣れない単語であったため、名称を教えられても…と少しギャリーを批難する目で見る。

しかし、それがイヴにも当てはまるかと問われれば否だ。目敏く彼女の反応に気づいた明久はどういう意味かと尋ねた。

 

「結婚指輪の事を言い換えた言葉だよ」

「ついでに言っとくと、マリッジリングってのは和製英語……つまり日本で作られた偽物英語なのよ。イギリスではウエディングリングって呼ぶのよ」

 

ギャリーからの補足にイヴが頬を膨らませてそっぽを向く。その間明久は何かを思い出していた。

 

「あ、そっかそれであそこに向かってんだね?」

 

ふたりからの説明により漸く察する事が出来た。こんな事もすぐに理解できないとは、鈍い自分に溜め息をつく。

 

「結構理解スピードがここに来て上がってるように思ってたんだけどなぁ」

「しょうがないわよ。あの絵にこれ(指輪)がない事に気付いたのは、あなたがイヴを叱ってる時だもの」

 

ああ、あの時かと明久が思い出し、イヴの方は苦虫を噛み潰したような顔に自然となる。あまり彼女にはいい思い出では無いようだ。

 

そうしている間にも、一行がたどり着いたのは《嘆きの花嫁》《嘆きの花嫁》が飾られていた場所だった。

少し考えれば分かる事だろうにと明久は自分を叱る。

指輪を持っていたギャリーは真っ直ぐに大きな手に向かう。

 

「ギャリー、そっちは右手だよ?」

「……あら本当ね。黒くて分かりにくかったわ」

 

あぶないあぶないと笑い、既に左手の側にいるイヴへと指輪を投げた。

それを危なげに受け止め、流れ作業の様に手の薬指に嵌め込む。

 

その瞬間、明久の目の前で絵画の中にいる新郎新婦の顔が、明るく、朗らかに綻び、幸せいっぱいの絵に変貌した。

花嫁が手に持つブーケを上に放り投げる。ブーケトスだ。

フワフワと落ちてくるピンクの花束がイヴの手元へと収まった。

 

「あら…イヴ、良かったじゃない」

 

いつの間にか明久の認識外でイヴの隣へと移動していたギャリーの言葉にイヴ、明久両名は首を傾げる。

その姿にフフと笑ってからまだまだ未知が数多い子どもふたりに説明する。

 

「花嫁からブーケを受け取ると、好きな人と結婚できるって噂があるのよ」

 

意味を理解するのに一瞬、その後更に一瞬の硬直、そして顔を耳まで真っ赤になるイヴ、それを微笑ましい様子で見つめるギャリー。

 

ーーそんなふたりを見て、明久はある考えに思い至る。

 

「(もしかしてイヴちゃんはギャリーの事が…………)」

 

確信と呼べる物でも無いのだがもしそうならば、迷路の部屋を出た時、いやギャリーとここであった時から感じていた違和感の説明がつく。

 

「ああ……そうなんだ」

 

それはとても喜ばしい事だ。と彼は内心感じている痛みを殺しながら、彼の中でお似合いのふたりに微笑むことに努めた。

 

 

 

✳︎ ✳︎ ✳︎

 

 

 

ブーケを持って未だ調べていなかった最後の通路を進む。その先には、不気味な絵画が壁に掛けられていた。

 

「今更不気味も無いけどさ」

「……誰に言ってるの?」

「いや独り言」

 

最近多くなったな彼。

 

 

それは置いといて、不気味な絵画は、たまに見かける数少ない喋る作品だった。

 

『えへへ へへへへ はな……おはな いいなぁ…そのお花くれたら ここ 通してあげるよ…えへへ』

 

喋り方や、姿にしては普通の要求だと面食らうが、イヴにとってはあまり良くない物の様だ。

渋々ブーケを絵画に渡した。

 

『えへへ ありがとう……いいにおいだなぁ…えへへーーーそれじゃあいただきます』

 

途端、絵は豹変した。

その変わりように一同がそれぞれの形で驚く。

 

『あー おいしかった えへへ』

 

満足そうな声を出しながら元の姿に戻る。

 

『ありがとう ありがとう 約束だからね ここ通すよ』

 

嬉しそうなまま、絵画がトビラへと変貌する。ここの世界の住人は、どんな奴でも義理堅い。そう明久が勝手に判断する。

 

 

 

ーーーその後、ギャリーが散々トビラを通過するのを嫌がり、結局無理矢理引っ張っていったのは余談だろう。

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

「狭っ!」

「ちょっと明久、耳元で叫ばないでよ!」

 

ギャリーに叱られた。解せぬ……使い方これでいいんだっけ?

 

話を戻そう。あの怪しい絵が通してくれた先は、いま僕達がいる。細長い、部屋というよりも通路といったほうがいい位の細く狭い部屋だ。

 

危険は無いだろうか……?と、ここに来てから疑心暗鬼になることが多くなった様な気がする。

仕方が無いかな、ふたりがこんなに危ない目に遭わされてるんだ。

 

っと、手帳を見るの忘れてた。白い蛇の絵の仕掛けに気付けたのはこれのお陰だったし……あれ?そう言えばこれって誰のだったっけ?

 

確か表紙は読め無いけど、その裏は少し読めた気がする。

相変わらず、変な形してるよね。アルファベットって……

えっと…ぎ、ぎゅ…じゃないぎゃ、ら?り?りー

ーーーえ?

 

ギャリー……?

 

どう、いう事?

 

 

 

✳︎ ✳︎ ✳︎

 

 

 

 

明久の様子が少しおかしい。多分ギャリーは気が付いてない何か小さい……手帳かな。それを見てからギャリーをチラチラと盗み見る事が多くなった。

なにがあったんだろう……明久のあの目は疑惑とか怪しいものを見つけたときとかの目だ。でもそれを懸命に振り払ってるって感じがする。頼もしいと思ってしまうけど、それと同時にこうも思う。

 

相談してくれればいいのに……

 

明久はあまり人を頼ろうとしない。

自分の中で勝手に解決しようとしてる。どんなに自分に危害が及ぼうとも……周りの人に危害がいかない様にしながら、人が嬉しいと思う事をしたがる。

明久はどこか変わった。でも明久は明久だ、彼が傷付くのは見たく無い。なら私が盾になれば良い。そう思っていたけど、それだと明久が悲しむ。

それはダメ、だから私は動けない。けど、だからこそ頼って欲しい。明久が私やギャリーが傷付くのが嫌だと言っていたけど、私だって明久に怪我して欲しくない。

貴方が笑ってくれるだけで、嬉しくて、世界が輝いて見える。

だから、貴方が笑える様に私は……貴方の道具に都合の良い道具に成ろう。

 

 

 

✳︎ ✳︎ ✳︎

 

 

 

明久が先行して細い部屋の出口のトビラをくぐる事になった。

もちろん明久が意見をごり押して決めた事だ。

 

「“大丈夫”行こう」

 

呪文の様に呟き、雰囲気を変えた明久は躊躇いなくトビラを開け進む。

 

「ーーっ」

 

だが、その進みはすぐに止まった。

イヴはどうしたのかと明久の肩からその先を覗き見ると……

 

巨大な白い顔が額縁の中から不気味にこちらを観ていたのだ。

その下にずらりと並んだマネキン達も含めた視線にイヴの体は硬直する。

 

「うわっ何よこれ!気持ち悪い」

 

ギャリーの悲鳴じみた声に、明久は我にかえった。

情けないと自分を責めながら、硬直していたイヴに気がつく。

咄嗟に彼はイヴの手を握る。

 

「大丈夫、行こう」

 

トビラの前と同じ台詞を口に出すが、その声音は優しく、その時に向けられた笑顔はイヴの身体を和らげた。

 

「……うん、行こう」

 

イヴも彼の手を握り返し明久に引っ張られながらマネキンの道を進んで行く。

 

ギャリーの目には、その光景は自分が守るべき光の様に眩しく、暖かく映った。

 

『本当はそうなのかな?』

 

ーーその声が彼の思考を否定するまでは

 

「ーーっ!なに……今の?」

「ギャリー、どうかした?」

 

あたりをキョロキョロとしていた彼に、それを不審に思った明久が呼びかける。

 

明久の声に拭いきれぬ疑惑が含まれていることなど、つゆ知らず。「なんでもない」と応える。

 

ーーーそれを白い顔の絵画が見つめているなど、三人が知るよしなどない。

 

 

✳︎ ✳︎ ✳︎

 

 

ーー謳われるは祈り。それは夢物語。たが彼はその夢物語(ご都合主義)を求め、白から黒へと染まった。

 




今回はほのぼの回(えっ

イヴに少し余裕が戻ってきました。

……明久が色々勘違いしました。
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