……すすまないなぁ
少年はカチカチカチと、トビラに仕掛けられたダイヤルを回す。
名を吉井明久と言った。
ふと、彼は回す事を中断し、背後に極めて平常を装った声で呼びかける。
「ねぇ、女性の絵って12枚だったっけ?」
「そのくらいだった気がするわ。イヴは憶えてる?」
曖昧な答えを返したのは、高めで少々丸まった声質ではあるが、れっきとした男性の声。
その主はギャリーという、髪がどことなく海産物を彷彿とさせる男性だ。
彼は明久と背中合わせの状態で通路を見張っている。
それは何故か……と問われれば、原因はこのフロアに入った時まで遡る。
彼らがマネキンの並ぶ廊下を抜け、このフロアへと足を踏み入れた後のことだ。
絵画らの前を通っていた時、またもやゲルテナの作品である《赤い服の女》が出現したのだ。
その時はなんとか振り切れたものの、何時また現れるか判らないため、こうしてギャリーに警戒してもらっているのだ。
そしてギャリーがチラリと目を向けたのは、明久の隣でベッタリと離れない女の子。
宝石の如く、赤く輝く瞳を持つ少女のイヴ。
明久の手をずっと握っている方とは反対の手でダイヤルを2から回す。
「14枚だったよ」
「あれ?そうだっけ……あ、動いた奴も入れるのか」
彼女のいった通りに、ダイヤルの数字が4になると、カチリとトビラが解錠された。
明久から「流石だね」と称賛され、笑って照れるイヴ、その姿はまさしく年相応といったところだろう。
だが、ギャリーは聞いていた。彼の前で無邪気に笑う彼女から紡がれた決意を。
あの場所、明久と別れて行動したあの迷路で、自分に告白してくれたイヴの願い。
『私は、明久の役に立ちたい。その為だったら、なんでもする。明久が喜んでくれるんだったら笑顔でいるよ』
懇願にも近い独白に、ギャリーは息を呑んだ感覚を今でも覚えている。
何故そこまでの決意が出来たのか、これも恋というものが成せる技なのか……恋などした事のないギャリーには想像できない。
だからこそ、彼等の時間を邪魔するのはギャリーにとっても偲びないのだが、そうも言っていられない状況になった。
「ごめんけど、2人共早く中に入って。何か近付いてくるわ……」
途端に緊張が走る。明久は迅速にトビラを開けて部屋へと入り、他の2人を中へ招き入れる。
そして誰も見ていないかを確認しつつ、音を極力立てぬように閉めた。
「ふぅ、なんとか見つからなかったみたいだね」
明久は、ほっと息を吐き、バクバクと聞こえる心拍音を抑える様に、体の力を抜く。と声をかけられた。
「明久、こっちに」
振り返ればイヴが手招きしている。手元には花瓶がひとつ。彼女がバラをさせと目で語っている。
断る理由も無いか。と明久は判断し、白いバラをイヴに預け、自分は既に捜索に入っていたギャリーと合流する。
胸の痛みを表面に出さ無いように。
もうちょいテンポ良く、もしくはペース早めに書いていった方が良いのかな?
誤字脱字があればご指摘下さい。