——明久が倒れた。それはイヴとギャリーに途方もない影響を与えた。もちろん悪い意味でだ。
それはギャリーにとっては不意打ちに近いものであり、イヴにとっては最悪の一歩手前の出来事である。
とりあえず、廊下では危険だと言うことで近くの部屋、本棚が何個かあるだけの部屋へと駆け込み、安全を確かめた上で明久をその床に横たわらせた。
その後ギャリーはイヴに膝枕をされながら介抱されている明久の体調を確かめるべく熱や脈拍を調べて行く。その中で明久が荒い呼吸で肩を上下させるのとある症状を確認し、明久が倒れた時の状態と照らし合わせる。すると思い当たるものがあったのか、ギャリーはなにがあったのかを大まかに悟る。
「過呼吸…かしら?極度のストレスからくるやつの」
今更ながら、当たり前なのかもしれない。どんなに靭くても明久はまだ子どもなのだ。彼らの置かれている極限下の状況ではこうなったとしても不思議ではない。
しかしこれは明らかに———
「気付けなかったアタシの失態ね……まさかここまで追い詰められていたなんて」
「……そうだね。ギャリーのせい。そして私のせい。明久がこんなになったのはギャリーと私の両方がこの人の心に気づいてあげられなかったから。ごめんなさい明久……私、なにもできなかった……」
イヴは自身の額を明久の額にそっと落とす。
明久は彼女の支えである。イヴにとって、たとえ自らが死を迎える事になろうとも守らなくてはならない存在なのだ。それが追い詰められた上で倒れたのだから、彼女に悪影響を及ぼすのは想像し難くない。
「イヴ。厳しいようだけど、悲しんでる暇はないわよ?」
「分かってる……明久が次を許してくれるなら、絶対に取り返してみせる」
「その通りよ。じゃあ明久を見ておいてね?アタシはこの部屋を調べてくるから」
「うん………うん?」
イヴが一瞬の隙を見せた瞬間、ギャリーはスタコラと離れていく。—————途端イヴは慌て始めた。
「お願いまって!2人にしないで!」
「……イヴ…ちょっと前から思ってたんだけど……あなた、妙なところでヘタレよね?」
「ゔっ……」
ギャリーがじと目をしながら言ったセリフに思い当たる節があったのか、二の次の言葉が出てこなくなったイヴは膝を揺らさないように、器用に上半身のみをわたわたしたのち、人差し指同士をつつかせあいながら目をそらした。
「だ、だって、明久が起きた時どう話しかければいいかわかんないもん」
「もんって、さっきまでのセリフを吐いた娘とはおもえないわねぇ。それに今までだってしてきた事じゃない?なにを今更……」
「あ、あれだって私、緊張してたんだから!」
「そうには見えなかったけど?」
「だって明久が痛い思いをして、なんであいつらがなにもされないのかって思ったり、明久が苦しんでるのになんであいつらは苦しまないのかって考えてたりすると、頭がスーッとしてきて…………ゆるさない…」
「ああ、ごめんなさい。変なスイッチを入れかけたわ。お願いだから下唇を思いっきり噛むのをやめなさい」
ブツブツと「絞首斬首銃殺釜茹で溺死電気石打ち生き埋め鋸……やっぱりいちばん効くのは火あぶりかな?」などと灯りの灯らない目で呟く彼女に少々寒気を感じるも、話を元に戻す。
「とりあえず、明久は任せるわよ?」
「むわぅ…」
ギャリーの一言で戻ってきたのか唸るように応えたイヴに苦笑しつつも、その場を離れた。
結局、イヴひとりで対応する事になった。
◇◆◇
倦怠感を纏った男は目の前の女に向かって言った。
「オレはそんな些細な事を気にすることは出来ないさ。
女は問う。
「なら、何のために?」
男は笑って言う。
「それは君には秘密だよ。
その対応に女はやはり顔を沈ませながらも男と対面し続ける。
「大丈夫、任せなさい。万事上手くいくさ」
男は励ますように笑い続ける。
「オレが全部やるからさ」
男は女の額に唇を落とした。
「君は僕のそばに居ろ」
男は妖艶な笑みへと顔を歪ませた。
リトルノアが面白すぎて、書く時間がなくなるという……
いや、書きますよ。書いてみせますよ?
それはさておき、今回は明久の前では頼り甲斐のあるイヴが彼が見てない間にヘタれていたらと言うものです。
……完全に作者の罪ですね。
好きな人の前ではしっかりしつつも、想いの人が見てない時に緩くなるのが書きたかったんですハイ。
ヤンデレつつも、少しヘタれているのが個人的に好みだったというだけです。
ふと思ったんだけど、このままだと原作ヒロインの秀吉の立場がないような……
わたくし、未だに秀吉がヒロインと思っていたり…いや他の子も好きですけどね?