ギャリーは頭を痛めていた。
イヴは殺気を漏らしていた。
彼らの側に明久とメアリーはいない。
なぜこうなってしまったのかは先ほどの事を語らねばならない。
◇◆◇◆◇◆◇
ギャリーは胃もたれのような気持ち悪さを感じていた。
その原因は明久とその両隣にいる少女だ。
「ねぇ、イヴ。メアリー。動きにくいんだけど?」
「お散歩お散歩楽しいなぁ!ね?アキ、イヴ!」
「……うん」
正確にはなぜかイヴがメアリーに対して戦闘態勢を勝手にとっているだけであり、メアリーはただひたすらにこの状況をたのしんでいるだけであった。
その板挟みになっているはずの明久はしきりに歩きにくいと困るだけ。
直接的な被害はその空気に触れさせられている第三者。
つまりはギャリーに襲いかかる。
「胃が痛い……」
「え?ギャリーなに?」
「なんでもないわよ」
そんなこんなで進んでいたが、ふと気づけば、道が二手に分かれていた。
「……どっち行く?」
「こっち!」
「あっち」
見事にイヴとメアリーの意見が決裂する。
少しの膠着。そして引っ張り合う二人。
「いであいであ!」
「こっち!」
「……あっち」
明久はギャリーに助けを求めるが、肝心のギャリーは微笑ましいような、痛みに耐えるような顔をするばかり。
「アキ!ほら行こ!」
「ヴェ?あうん」
流される形でメアリーに行く先が決まった。ギャリーにしかみえなかったが、イヴが舌打ちするのが妙に怖かった。
メアリーの言う先に進むと扉がありすぐさま拘束から脱した明久が調べに行く。
「うーん、開かないなぁ……しょうがない、イヴちゃんの言った方に行こうか」
「ちぇー」
唇を尖らせるメアリー。そして密かに小さくガッツポーズを取るイヴ。それが見えたのがギャリーだけだったのもギャリーの胃を責めるのだが……
来た道を戻り、今度は横道に曲がる。その先にも同じように扉が待ち構えていた。
目の色を変えた明久は皆の前に立ち、ドアノブに手をかける。
「……みんな、準備はいいか?」
「うん」「ええ」「……ん」
順にメアリー、ギャリー、イヴが応え、それを聞いた明久はゆっくりと扉を開ける。
そしてその先にあったものは……ぬいぐるみの部屋だった。
◇◆◇◆◇
一行はぬいぐるみの部屋で、鍵を手に入れた。
「可愛かったねぇー」
「メアリーが言うなら可愛いんだろうね」
明久は彼女の言うことは肯定している。
あくまで否定はしない。
それを見てイヴは嫉妬した。
そうやって隣を歩いていけている事に。
先を行く二人が途方もなく遠く感じられた
そんな彼女の背をギャリーが押す。
「行きなさいな、負けちゃダメじゃない」
「……む、負けてないもん」
ギャリーから離れようとしたイヴだったが突如として地響きによって動きを止められた。
「な、なに?」
「っ!イヴちゃん!」
何かを察知した明久が咄嗟にイヴをギャリーの方向へ押し飛ばす。そして突如として床から巨大ないばらの壁が出現する。
それは確実にイヴ、ギャリー。そしてメアリーと明久を分断した。
「この!」
初めに行動したのは明久だった。
ペインティングナイフをいばらへと差し込もうとするが固すぎたのか火花を散らして弾かれた。
しかし諦めずに何度もペインティングナイフを突き立てる。
メアリーに止められてようやく止めたが、その手は真っ赤に腫れて、皮が破けてしまっていた。
「……くそ、大丈夫二人とも」
「ええ、けどそっちに行けそうにないわね」
「それよりも明久、そっちの手を出して!」
イヴに急かされて、明久は腫れた方の手を差し出す。するとイヴはその手にハンカチを結んだ。
「応急処置。でも無理はしないで」
「了解。えっとこの場合はぜ、ぜ……」
「善処?」
「そう善処。善処するよ」
「善処じゃなくて絶対するの!メアリー。見張っといて」
「うん!わかったー!」
こんな時にまで呑気なメアリーはハッと思いついたように明久に道を指し示した。
「あの扉の向こうにこれを壊せるものがあるかもだね!行こう!待っててイヴ!」
「あ、待てってメアリー!イヴちゃんもギャリーもまた後で!すぐ戻ってくるから!」
明久とメアリーはそのまま扉の方へと走って行く。
それが事の顛末だった。
◇◆◇◆◇◆◇
「……じっとなんてしてられない。何か出来ないか探しに行こう」
「そうねぇ、明久達帰ってこないし……行くしかないかしら」
座り込んでいたイヴは突如として立ち上がり握りこぶしを作る。ギャリーも流石に待つのに飽き飽きしていたのかすぐに賛同した。
道を逆走し、部屋につながる扉の前までもどる。
そして戸を開ければそこには不気味な人形たちが鎮座する空間が広がっていた。
「これが可愛いなんてメアリーの趣味を疑うわ……ホント」
「それは個人の自由。そこを他人が干渉すべきじゃない」
「わかってるわよ」
肩を竦めるギャリーにため息をつき、本棚を調べるイヴ。その棚に違和感を覚えて力を加えてみる。
するとその本棚は横にスライドし、抜け穴を見つける事が出来た。
「行くよ」
「ええ」
二人でその穴を潜って先へと進んでいった。