バカと女神とゲルテナと   作:東雲兎

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ガチバトル回でございます。

なんでこうなったんやろ?


第二十一画目

イヴはその殺意を明確にし、蔓延らされだ謎を根こそぎ解いて行く。

 

騙されていたという怒りと、明久が危ないという焦りが彼女を駆り立てる。

 

それを諭すはギャリー。彼は焦っても仕方がないと少女を落ち着かせる。

 

「だから、あなたが倒れたら誰が明久を助けるっていうのよ?」

「そんなの分かり切ってる。でもそれ以上に私はアレを許せない」

「アレ呼ばわりとか……随分と殺気立ってるわね」

「この気持ちを貴方に分かられたくはない」

「そんなつもりで言ったんじゃないわよ」

 

ふぅ。とため息をつき、ギャリーが周囲を見回す中で、少女は静かにその炎をたたえた。

 

「そうだ。これ、渡しておくわね」

「なにこれ」

「お守りよ。大事になさい」

「なんでこんなボロボロのやつを……」

 

ぶつくさ言いながらも受け取るあたり素直ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして心配をさせている明久はというと、

 

「っ!」

 

迫り来る蔦をペインティングナイフで切り刻み、身の安全を確保していた。

 

しかしそこへメアリーがパレットナイフを持って斬り込んでくる。

 

ペインティングナイフを横薙ぎに振るい相手のナイフ自体は弾くも、ずい。とその顔を近づけられる。

 

「メアリィッ!なんで!なんで裏切った!!!!!!」

「裏切ってなんかないよ。ただ一緒にいたいだけ」

「ならどうして!」

「一緒にいるにはアキをここに捕らえるか、ギャリーかイヴを殺さないといけないの。でもアキってふたりのこと好きでしょ?だからアキが嫌がらない方を選んだつもりだよ」

「っ!」

 

蔓が襲い来る。その瞬間に明久はその場から飛びのいていた。

肩で息をつき、メアリーを睨む。すると声が聞こえてきた。

 

『おやおや、疲れてるね。大丈夫かい?』

「うるさい。というか喋れたのかよ」

『いつ喋れないなんて言った?禁則事項に触れるのは直接口を動かすことだ。それ以外なら大丈夫なんだよ』

「よーわからんというか口なんてあったのか」

『あるに決まってるでしょ、まぁいいけど。それよりも、手伝おうか?』

「いい、これは俺の問題だ」

『おお、カッコいいねぇ』

「それにあんたに頼むなんてのは俺が喚くか、泣くくらいあり得ない」

『ふふ、言うね。じゃ頑張ってね』

 

そうして気配が消える。それに合わせて、蔓が鞭のようにしなり、明久を襲った。

 

すんでのところで回避した明久は、メアリーから寒気のするほどの殺気を感じた。

 

「アキ、誰と話してるの?」

「別に、誰でもいいだろ」

「よくない!」

 

ピシリと空間に亀裂がはしる。

 

この感情を明久は知っている。これは嫉妬だ。

 

「アキは私の友達。誰にも渡さない!」

 

直後、真下から床を突き抜けてきた蔓が明久を叩き飛ばした。

 

「ゲボッ⁉︎」

 

天井に叩きつけられ肺から空気が吐き出される。ベチャリと床に崩れ落ちた明久は涙やらで滲む視界で、メアリーを捉える。

 

ユラユラと揺れる世界の中で、メアリーはゆっくりと近づいてきて、明久に手を伸ばす。

 

殺られる。そう思ったが、彼女の手は別のものを掴み取った。

 

薔薇。真っ白な薔薇を手に取った。

 

それはこの状況下では最悪の事だった。

 

「ねぇ、アキ。私のアキ。どうする?」

 

「返せ!」

 

不意をついて薔薇の奪い返そうとするが、メアリーにヒョイと後ろに飛んで躱されてしまった。

 

クルリと回って真っ白な薔薇にキスをするメアリー。

 

「アキ、選んで。私と一緒にここに残るか。それともギャリーかイヴの薔薇を代わりに渡すか」

 

「……っ!!!」

 

なんと残酷な選択なのだろうか。明久はそう思わずにはいられなかった。前者を選べばふたりと約束を違える事となり、明久にはとてつもなく辛い事だ。後者を選んでもそれは同じだ。

 

どちらにしろ。メアリーにとってはハッピーエンドだ。

 

「さぁ、選んで……!」

「くっ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、あげるわ」

 

「………………え?」

 

明久の背後から差し出された青い薔薇。いるはずのない。その持ち主の名前を彼は叫んだ。

 

「ギャリー……っ⁉︎」

「ようやく追いついたわ明久。全く、心配させないでよ」

「いや、そんな事よりっ!ギャリーが薔薇を渡す必要なんてない!」

「あら、あるわよ?」

「なにが!」

「あたしにとって、貴方達は守るべき存在だからよ」

 

だからね。と明久の頭を優しく撫でる。

 

「大人として貴方達を守らせて?」

 

メアリーと薔薇を交換したギャリーは儚く笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで新しいおもちゃを買ってもらった子どものように青い薔薇を持ってくるくるくるりとその場で回るメアリー。

 

「ふふっ、ありがとギャリー。この瞬間だけは感謝するね」

「勝手になさい。でもお願いがあるの」

「なぁに?」

「この子達が美術館を脱出するまで邪魔をしないで欲しいの」

「いいよ」

 

あっけらかんと言い放つ彼女に、顔をしかめるギャリー。

 

「本当でしょうね?」

「うん。そういえばイヴは?」

「後で追いかけてくるわ」

 

そ、とあまり興味なさげに返すメアリーはさっさと奥へと行ってしまう。

 

「……なんで」

「ん?」

「なんでこんな事したんだよ!」

「何でって、そんなのさっきも言ったじゃない」

「俺は大丈夫だった!俺はっ、俺は強いからっ!」

「……バカね。強いとか弱いとか。人はね、強くなんてないの。みんな弱くてちっぽけだけど。そんな中で他の人を思いやる心があるの。それを人は強さっていうのよ。貴方はそれを履き違えないで」

 

そっと明久を抱きしめるギャリー。

 

「ねぇ、明久。貴方の心は、どこにあるの?」

「っ!」

 

そこへイヴが落ちてきた。

 

それを予測したようにキャッチするギャリー。

 

「む、おろして」

「はいはい」

 

イヴは明久を視認した途端駆け寄り抱きしめる。

 

「明久、大丈夫だった⁉︎あいつになにされてない?」

「……うん」

 

「さあ、先に進みましょ!」

 

微妙な空気が流れる前に、ギャリーが締め、先行する。二人はともに進むしかなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……」

 

幾ばくか進んだところで、突然ギャリーが苦しみだした。

 

「ギャリー!」

 

真っ先に駆け寄ったのはイヴ。彼女は頼れる相棒として彼を信頼していた。だからこそ、彼女にとって不測の自体は動揺を誘うのには充分だった。それは端から見れば好意を持つ人物への心配にも見えた。

 

崩れ落ちるギャリーはイヴに痛む胸を押さえながら確認を取る。

 

「大丈夫よ。イヴ、お守りは持ってるわね?」

「え、あ、うん」

「ならそれで明久を守ってあげなさい……」

「そ、そんなの当たり前じゃない。なんで今更」

「今だからこそよ……明久……」

「……」

「イヴを……守ってあげてね……」

「……うん……うん。わかった。わかったから生きてよ!お願い。お願いだから!」

「……大丈夫。少し、休む……だけだから」

 

壁を背に、ゆっくりと瞼を閉じてゆくギャリー。その命の灯火が消え行くのを明久は肌で感じていた。

 

「あ、ああ、あああああっ!!!!」

 

喚く明久。その目前でギャリーの命は消えた。

 




ギャリー脱落。

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それではまた次回をお楽しみに
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