バカと女神とゲルテナと   作:東雲兎

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アンケートですが、送られてきたメッセージによさそうなのがあったのでそれにさせていただきました。ご協力ありがとうございました!


第一画目

春の陽光に照らされて、桜が散り始めた文月学園に続く道を明久とイヴは共に歩いていた。その歩幅はどちらが合わせるでもなく統一されていた。

 

「……なんというかさ」

「うん?」

「綺麗なものでも見続けてるとさすがに飽きがくるよな」

「そうかな?」

「ただの戯言だから気にしないで」

「でもさ、それはゲルテナも同じだったんじゃないかな?」

「げ、あいつとかよ」

 

心底嫌そうな顔をして、明久は天を仰ぐ。

そんな明久に微笑を浮かべたイヴは見えてきた校門の方を指差した。

 

「あ、西村先生がいるよ」

「げ、鉄人か……」

 

違う意味で顔を顰めた明久と共にイヴは西村先生の元へと向かう。

 

「先ほど鉄人と聞こえたのだが」

「聞き違いですよ鉄人」

「ほぅ、西村ブートキャンプがしたいのか吉井。よしよし、その心意気を買い、俺も全力で教鞭を取ろう」

「謹んでお断りさせてもらいますよ。というかそんなやる気があるんなら世界でもとってくりゃいいのに」

「いつでも取れるものを貴重な時間を割いてまで取るか」

「わぉ、強気発言」

「おはようございます。西村先生」

「うむ、おはようゼーゲン。たまにお前たちは同じように登校してくるな」

「マンションが隣ですから」

 

無表情で、淡々と事実を告げるイヴ。それは無機質な人形のような一面を見せていた。

 

それを見ていた明久は相変わらずかと一種の安堵を覚えたが取り敢えず、話を変えるために行動を始める。

 

「で、鉄人は何やってたの?」

「鉄人言うな。いやなクラス分けをこうして手渡しているわけだが、お前たちのはこれだな」

 

そう言って手渡してきたのは、吉井明久と書かれた封筒。イヴの方にはイヴ・L(リーベ)・ゼーゲンと読めた。

 

明久は取り敢えず中身を見ることにした。糊付けされていない口を開き中身を取り出せば、そこにはデカデカとFの文字が主張していた。

 

「ですよねー」

「うむ、お前はFクラス(底辺)だ」

「ゼーゲンさんは?」

「私はAクラス」

「わぉ、流石全国3位。格が違うね」

 

彼女が全国偏差で3位を取っていたことを思い出しながら明久は取り敢えずべた褒めする。

そんなことで顔がほころびそうになるのを必死に抑えている彼女に苦笑をこぼし、さっさと校内へと歩き出す。

 

それを追いかけるようにイヴも続いた。

 

それを眺めていた西村(鉄人)は溜息を吐く。

 

「まったく、あの目にはどうにも慣れんな」

 

あの真っ黒な目には。と口の中で噛み潰す。

 

「願わくば、彼らに幸あらんことを」

 

そう彼は呟いた。

 

 

 

 

 

 

「へぇ、ここがAクラス……」

「なんというか……散財のしすぎのような気もする」

 

目の前の大きな部屋への率直な感想を述べるイヴ。それに苦笑を漏らす明久は、イヴを入り口まで送り届けてから自身のクラスの元へと歩き出す。

 

「じゃ、また」

「うん」

 

簡単な挨拶を交わし、明久はイヴの前から立ち去る。

 

ズンズンと進んでいくと、色々とクラスが見えたが、どれもまあまあ立派なものだった。

 

ならばFクラスはどうなるのかと少しだけ期待してみた。

 

だが、明久がたどり着いたのはおおよそ教室とは思えないものであった。

 

「これがFクラス……噂に違わず酷い設備だことで」

 

カバンを背負い直し、教室の入り口を開ける。

 

「さっさと座れこのウジ野郎」

「雄二、僕の名前は吉井明久だ。ゴリラには覚えるのは難しかったかな?」

「ゴリラどころか猿にも負ける知能のやつには言われたかねぇな」

「それは暗に自分がゴリラと認めてんだよね?ならさっさと動物園に帰りやがれ」

 

一瞬の空白。

 

そして無言で胸ぐらをつかみ合う男ふたり。明久よりもひと回り背が高い男の名は坂本雄二はイイ笑顔で拳を握る。明久も同様だ。

 

「そこまでにせんかふたりとも」

「(ブンブン)」

 

それを仲裁したのは可憐な少女と見間違うほどの容姿を持つ木下秀吉である。

それを肯定したのは土屋康太、通称ムッツリーニだ。

 

「いやいや、さっきのは完全に雄二が悪いでしょ」

「いや、テメェが反論してきたのが悪い」

 

ローキックをしあう。そこに乱入者が現れた。

 

「だからやめなさいって!」

「みぎゃぁっ!」

「ぐおっ!」

 

彼らを瞬殺した少女、島田美波はふんすっとナイチチを張る。

 

「初日からそれって変わらないわね。こうなることくらい覚えなさいな」

「うっさい全身兵器。ない胸を張っても虚しいだけ……いでぁいであ!」

「最近さらに兵器化に磨きがかかってるな」

 

一瞬のうちに明久にヘッドロックをした島田に対して慄く雄二。

 

そんな中で、先生が入ってきた。

 

「みなさん、席についてください」

 

パンパンと手を叩き、皆に席……と言うよりも座布団に座らせる。

 

「これから1年間君達の担任になる福原です。どうぞよろしくお願いします」

 

たん。と教卓に手を置いた瞬間、その教卓が崩れる。

 

「……替えの教卓を持ってきます。その間、自習をしていてください」

「なんというシュールさ」

「しゃあない。これがFクラスだ。座布団があるだけ温情があるってもんだ」

「最悪すぎるだろ」

「何が最悪って、この学園に入ったことが最悪だわな」

「言えてら」

 

カカカッ、と軽快に笑う明久と雄二。

 

そこへ、ガラリと教室の扉が開かれた。

 

そこにいたのは……

 

「あの、遅れてすみません。保健室に行っていたら遅くなってしまって……」

 

明久の幼なじみでもある姫路瑞希がそこにいた。

 





イヴの名前は、イヴ・リーベ・ゼーゲンとなりました。
通常はイヴ・L・ゼーゲンと表記します。

それぞれドイツ語です。リーベは愛、ゼーゲンは祝福、恵。といった意味合いです。

ご協力ありがとうございました!
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