「チクショウめ……チクショウめ、チクショウめ!」
今日、根本恭二は自身の持つ情報網からFクラスがDクラスに勝利したことを知った。その勝利に大きく貢献したのは姫路瑞希だという。
だが、そんなことは些事に過ぎない。根本が問題視しているのが……
「吉井……明久……っ!」
そう、吉井明久の存在だ。
「なんであいつがよりにもよってFクラスにいやがんだ!」
彼の名は二重の意味で学校に知れ渡っている。かたや悪評、観察処分者というレッテルを貼られている。
そしてもう一つ、美術においてすでに世界の舞台で戦っているという良い噂。
だが、根本は知っている。吉井明久そんな生易しいものではないと。
あれは化け物だ。何事に対しても感慨を覚える事はない。根本が明久の敵となれば徹底的に叩き潰しに来るだろう。
なぜならば、過去に根本は明久相手にあの手この手を使って陥れようとしたが、ことごとく失敗し、その果てにとんでもない悪夢を見せられた。その時の空虚な目が今でも忘れられない。
「どうする。どうするどうする!?」
頭を抱える根本。必死に頭を巡らせる。だが、名案など浮かぶはずはなかった。そこに這い寄る悪魔の影がひとつあった。
「『ねぇねぇねぇ、君、相当悩んでるみたいだねぇ?相談にの・ろ・う・か?』」
「だ、誰だ!」
いきなり声をかけられ、動揺する根本。それもそのはず、そこは根本の個人部屋だったからだ。
彼の親も根本のプライベートを尊重しているのか、気軽には入ってくることはない。
しかしその影は欧米人のように大袈裟なリアクションを取るばかりで、自身の正体について答えようとしない。
それに根本もそれの次の言葉で影の正体についての疑惑はすっかり吹っ飛んだ。
「『そんなに驚くことないじゃないかぁ〜。僕、ショック受けちゃうなぁ……せっかく吉井明久を封じる方法を教えてあげようと思ったのになぁ〜』」
「な、なに!?」
名案どころか普通の案ですら思い浮かばなかった根元にとって、それはまさしく天の助けだった。
いつもの根本ならばまずは疑ってかかっただろう。だが、今の彼は明久という恐怖によって判断力が極度に欠如していたのだ。
「ど、どうすればいい!あの悪魔をどうやったら出し抜ける!」
「『その前に、ひとつお願いがあるんだ』」
「な、なんだ!何をすればいい!」
「『簡単なことさ。僕と“ともだち”になってさえくれればいいんだ』」
「そんなことか!なる!いくらでもなってやる!」
「『ありがとう!お礼に、吉井明久の弱点を教えてあげる。イヴって娘を知ってるかい?』」
「イヴ?Aクラスのゼーゲンさんのことか?それがどうしたんだ?」
「『その子に吉井明久は弱いんだ。だからね?二人がギクシャクするように吉井明久に金髪の好きな娘がいるんだって噂を立ててやるんだ。そうすればイヴは噂の真相を確かめに噂の元である君の元を訪ねるだろうね。そこにつけ込むんだよ』」
ニヤニヤとあくどい笑みを浮かべるそれは、根本の考えをイヴをどうやって陥れるか。というものにすり替えた。
考え込む根本にそれは、ああ。と思い出したように声をあげた。
「『そういえば自己紹介がまだだったね!僕は青人形って名前なんだぁ。よろしくねぇ』」
『永遠に』
はい、彼が出演しました。これからも暗躍をする予定です。