金髪の少女がお弁当を持ち、鼻唄を歌いながら学校の廊下を歩いている。その可憐な姿に男女関係なく目を奪われる。
彼女が訪れたのは美術室。そこにいつもの彼がいた。彼はキャンパスに向かって筆を走らせる。見慣れた光景で、それでいてとても懐かしい。
「アーキ!ご飯だべよぉー!」
「メアリー、いきなり抱きつかないの」
アキと呼ばれた少年は少女、メアリーに目もむけないまま淡々と筆の動きを止めた。
「むー、いいじゃない。誰もいないんだから!」
「いるかもよ?」
「うんうん、いないよ。みんなが教えてくれた」
「また、その力を使ったの?」
ジロリと白い目で見られてメアリーはたじろいだ。そして、瞳を右往左往させた後、上目遣いで言い訳を始めた。
「う、い、いいじゃん。減るものじゃないんだし……」
「少しでも君が消える可能性があるんなら、僕はそれを公認するはずがないだろう?君まで消えちゃうなんてこと、絶対に許さない」
明久はメアリーを睨みつける。メアリーは「うー」と唸りながら、涙目で俯く。
明久はそんな彼女にため息をついて、優しく抱擁する。
「はいはい泣かないの。全く、泣き虫だなぁ」
「誰のせいよ〜」
ゴロゴロと喉を鳴らしながら、明久に撫でられるメアリー。そして、彼の描いていた赤い薔薇を見て、
「で、何か弁明はあるの?」
「別にないよ。僕としてはあれで嫉妬するメアリーを見たかったってのもあるけどさ」
一転、メアリーは光の灯さぬ瞳で明久を見つめた。先ほどまでとは違う冷たい笑顔で明久の何も映さない瞳を覗き込む。しかし明久の言葉を聞いて、冷たかった笑顔は暖かいものへと変化した。
「ふーん。嫉妬して欲しかったんだぁー」
「そうだよ。君の全ては僕に向いてないと」
「言われなくても向いてるよ」
ニパリと笑顔を咲かせるメアリーは明久にあと1センチくらいでキスができるほど顔を近づかせる。
「それでも心配になるのが人間なんだ。わからないかい?」
「……なんかわかる気がする。私は人であれと創られたものだから。そういうのも理解できる気がするの」
「そうか、楽しみだよ。君が完成するのが」
そこで明久はようやく笑顔を見せた。それはどこか欠けたような笑顔であったが、それでも笑顔には変わりない。
それにメアリーは満足したように頷いた。
「アキの笑顔は世界最高の芸術だよ」
「それはそれは、光栄だね。僕からすれば君の方が最高の芸術だと思うけどね」
そう言いながら明久はメアリーの豊満な胸に触れる。そこには確かに鼓動する命があった。くすぐったそうにメアリーは触れている手に自身の手を添えた。
「大好きだよアキ。世界で誰よりも」
「大好きだよメアリー。世界で二番目に」
「大丈夫。イヴのことなんて必ず忘れさせてあげるから」
「へぇ、出来るかな?」
「出来るわよ」
「例えば?」
「例えば」
メアリーは明久の唇に自身のそれを重ねた。
「こんな風に」
「足りないね」
「なら何度でも」
そして二人は深く重なった。
そうして彼らは溺れていく。深い深い海の底へ。手を差し伸べるものなど、もはや存在しないが故に、黒と黄は沈み続けるのだ。しかしそれが彼らにとっては幸せなのだ。それだけは真である。
スミマセヌ、メアリーとの絡みがあんまり思いつかなかった……!