バカと女神とゲルテナと   作:東雲兎

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(∴)〈おい、デュエルしろよ。

ーー滅尽滅相‼︎ーー

という夢を見たんだ……

まぁ遊戯王ではよくあることか







第五画目

ーーーーーー辛いとか、怖いとか、そんなの我慢して蓋しちゃえばいいーーーーーー

 

とある■■の結論

 

◻︎ ◼︎ ◻︎ ◼︎ ◻︎

 

 

「……」

 

「ゴメンって明久、機嫌直してよ〜」

 

明久は、拗ねていた。イヴがその隣で笑いながら謝っている。

 

何故そんな事になっているのか、それは少し前に遡る。

 

イヴが、魚の胴体を彫像の砕けた後から見つけており、魚のカギを完成する事が出来た。そのカギを使う為、猫の間に戻っていた。

そこで事件が起こる。カギを壁に嵌めると、いきなり猫の声が多方向から聞こえ、その時明久が情けない声を出してしまい、イヴに笑われてしまった。そしてその笑いように、彼は拗ねてしまったのだ。

 

「本当にごめんってば…フフッ」

 

「悪いっておもってないよね⁉︎その反応!」

 

堪えきれずに笑みが零れる彼女は、ただでさえ恥かしいところを見せた明久への追い討ちとなっていた。

 

もういいよ、と明久がこの話題を打ち切るのと次の間が見えてくるのは同時だった

 

「でも、あの声…フフッ」

 

「もうやめてぇ!とっくに僕のライフは0よっ!」

 

 

 

 

◻︎ ◼︎ (∴) ◼︎ ◻︎

 

 

 

 

明久は手帳を見て、今いるフロアが何かと確認する。

 

 

ーー黄色の間、という事と、ここからの進み方は数字が必要であると、唇が重要だ、ということくらい。いつもの如く、直接的なヒントはない

 

「……役に立つのか立たないのかビミョーだよね。この手帳…」

 

愚痴を吐きながら、手帳を持つ右手ごとポケットに突っ込む。

 

ちなみに左手は、イヴが手を繋いできているので使えない。今の彼女は何かと上機嫌だ。それにより彼も感化されて、拗ねていたのを忘れて、機嫌が良くなり始めている。

 

しかし、彼の預かり知らぬ、いや、自覚していないだけなのだが…彼は、感情の機微に疎くなり始めていた。

 

 

閑話休題

 

 

 

上機嫌なのはいいが、いつ何が襲ってくるかわからない、と明久は気を引き締める。

 

さてといって、イヴに、左手に見える舌を忙しなく動かしている顔の絵と真っ白な絵のほうを調べるように頼む。

イヴは少し渋るも、素直に従ってくれた。

 

そして明久は、さっきから気になっていた逆の方にある異様な存在感を放つ唇を目指す。

 

その前に、何か書いてあるのに気がつく。寄って読んでみようとするが……

 

ーーー??注意ーーー

 

自らが余り漢字が得意ではないことを思い出す。

 

ーー後でイヴちゃんに読んで貰おう

 

そう考えて、漢字から逃げの一手を打つ。

 

その唇にたどり着き、詳しく調べようとするも、突然その唇が喋った

 

「ハラヘッタ、食いもんヨコセ」

 

言いながら、伸ばしていた明久の腕に噛み付く。

苦痛の声を上げ、慌てて引っ込めるが、その腕にはクッキリと歯痕がついている、そして深いところだと血も滲んできている。上着のポケットからバラの花びらがパラパラと5枚落ちる。

 

イヴが、さっきの声を心配して駆け寄ってくる。

 

明久は、とりあえずと先程、手帳をポケットに突っ込んだ時に見つけた、1週間入れたままだったポケットティッシュを取り出しその歯の痕の一部から出でいる血を拭き取る。

心配そうに覗き込んでくるイヴに、“大丈夫”と笑って答える。その様子に、少しだけ表情が和らいだ。

 

彼女は、彼にとって、精神安定の二柱の一柱とも言える存在だ。その存在に彼は、何度助けられたか。そんな彼女に、自分という重りが邪魔しているんじゃないかと。そう考えてしまう。そうなれば負のスパイラルに陥るだろう

 

それはさて置き、彼はーーまずは、イヴを励ますことに専念しよう。と結論づけた。

 

 

 

ーーー彼が逃げた漢字を、イヴに読んでもらうと。

 

 

「ーーも、もう、猛唇注意ーーだって」

 

「遅いって……もう事後だよ……」

 

今度からは、キチンとわからないものを後回しにしないで、イヴちゃんに聞こうと心に誓った明久であったーーー

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー愛ってどんな感情なの?ーーーー

 

とある少女の疑問

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◻︎ ◼︎ ◻︎ ◼︎ ◻︎

 

 

 

ーーとりあえずのイヴの報告では、調べて貰った方には何もなかったとの事。なので何かあるとすれば真ん中の廊下の先だろうとふたりは推測する。

 

ふとイヴが何かを見つけた。

明久がそれをイヴの後ろから覗き込む、それは漢字で書いてあったが、彼でもなんとか読めるものだ。

 

「…忘れた頃に……?なぁにこれぇ?」

 

イヴの脳裏に一瞬だけ、AIBOという言葉がよぎった。それをすぐに消し去る。余計なことを考えなくなったお陰かどうかはわからないが、緑の間のことを思い出した

 

「…明久、廊下の真ん中を通っていって」

 

イヴからの命令に、頭にハテナマークを浮かべるが、指示通りに行動を始める。途中まで行ったところで、彼の右側から黒い腕が襲ってきた。のだが、明久に届くことはなかった。

 

そして襲われた側の明久はというとあまりの驚き様にフリーズをしていた。その様子に、イヴが思わず笑ってしまう。その笑いで正気を取り戻した彼が、ムッとしてまた進み始める。

 

ーー明久には悪いけど、つい笑っちゃうな…あ、こけた

 

第二波の腕に今度は尻もちをついてしまっている明久を、また堪えきれずに笑ってしまった。今度こそ、明久はほおを膨らませ拗ねる。彼が立ち上がる間に、イヴは彼のてをとって、引っ張って行く。明久がうわわっと言っている間に、さっさと廊下を抜けてしまう。

 

彼女は楽しいのだ。明久と共にいることが。

 

 

◻︎ ◼︎ ◻︎ ◼︎ ◻︎

 

 

彼と再会した時からもそうだったが、その感情が表面化した決定的なことは、おそらくあの指切りからだろう。あの指切りが、イヴと明久をただの友達からもっと特別な関係に昇華させたのだ。言わば同じ秘密の共有者のような関係

 

イヴは俗に言う《お嬢様》という奴だ。

 

学校も有名な私立小学校、しかもその中で同学年の中で、その比率の取れた顔立ちや仕草で、憧れの存在として、イヴは存在していた。友だちと呼べるほど親しい人はいないというよりも、近付いてくるこがいないのだ。休み時間は本を読んで時間を潰す。(その様子が他の子たちには近寄り難い人としての認識を深めているのだが)つまり彼女にとって社交性を身につけるはず学校とは牢獄にも等しいところだということだ。がそのおかげか、彼女は常に物事を、そして自分のことすら客観的に判断出来る、理性の怪物とも呼べるほどの精神を持つことになった。

 

しかし、明久との関係は彼女にとって革新的なものと言えた。他人事とは思えないーーはじめての友達というものだろうか、いや、もっと特別な人である。親友、心友と言うべきか

 

彼女自身、理性からそう判断している。

 

しかし、彼女の判断は、半分だけ正解といったところだ。彼女の感情の本質はもっと違うものだ。……その感情に気づくことが出来る日は、彼女に訪れるかどうかは定かでは無い。理性すら凌駕してしまう、その狂おしい程の感情にーーー

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

ーーー人形が天井から吊り下げられている。

 

明久は気味が悪いと思いつつ、当たらないように通り抜ける。その先には、黄色いトビラが見えた。

寄ってみるが、やはりと言うべきか、鍵がかかっている。しかし鍵穴が見つからない。ふと、顔を上げたイヴがトビラに暗号のようなものがある事に気がついた。どうやら計算式のようだ。

 

「え〜緑×赤+青=?……ハテナの所を求めればいいのかな?でも数字じゃないな」

 

明久が唐突に天井を見上げると、青や赤、緑といった服やズボンを履いている人形が目に入った。

 

「あの人形の色なのかな…?」

 

あてずっぽうの予測を立てるが、イヴに違うでしょと言い切られ轟沈する。残念と少々落ち込みながら、人形を調べてみる。見れば見る程、本物の人と見間違う程の出来だ。ーーボロボロではあるものの。

 

少し気味悪く思っていると、後ろから、何か重いものが落ちた音がした。咄嗟に振り返ると、人形が床に落ちただけだった。……どうやら、先程の彫像に襲われたことが尾を引いているようだ。激しく動いている心臓を宥めようとするが、イヴがその様子に気がついたらしく、明久の手を握ってきた。それを感じ、此処に来てからの口癖を思い出す。

 

「“大丈夫”」

 

そう口ずさむ。不思議とうるさかった心拍音が鳴りを潜めたーーうん大丈夫と、イヴに笑いかけてから落ちてきた人形を調べる。一見他と変わらない様に見えるが、彼の直感が何かを感じ取っていた。

 

ーー彼、吉井明久の思考は、とんでもない方向へと飛躍する事がある。しかしそれは、彼の直感が原因である。彼は元々直感が優れており、ただ本質を見抜くということが出来るのだが、それは他者にとってあまり気持ちの良いものではないと、彼自身無意識のうちに理解していた。

だからこそ、それによって降りかかるであろう不幸から自分を守る為に、前意識の部分が直感とまったく逆の思考を植え付けていたのだ。

故、彼は彼自身も気がつかないが、不安定な少年である。つまり明久はイヴとは逆にメンタル面が脆いという事でもある。

 

 

閑話休題

 

 

明久は人形の服に緑の糸で数字が刺繍されていることに気がつく。

 

「緑の18…だね」

 

おそらくは、さっきのトビラにあった暗号を解くためのカギだろう。…という事はーー

 

「どこかに赤と青の数字があるってことだよね」

 

おそらく正解だろうと彼の直感が囁いている。但し、それが何処にあるかが問題だ。

 

それを探さなければ、と考えながら道を戻っていくが、途中で、暗号のトビラとは逆方向にまたトビラが見えた。

 

はて、あんなものがあったかな。とイヴに引っ張られて余裕が無かったから見逃したのかと判断しつつ、近よるとトビラの隣にその部屋の名らしきものが記されていた

 

《ウソつきたちの部屋》

 

ハテナマークを頭に浮かべて、その意味が何なのかと考えるが、すぐ諦める。こう言うのはイヴの仕事だ

 

部屋の中では、六つの人の絵画が壁にかかっている。

 

「……?なんだろ………?」

 

イヴと相談すると、取り敢えず更にトビラがあるので中を見てみる事になった。

 

奥では、中心には石像があり、床に剥がせそうなタイルが所狭しと広がっている。明久がそれを見たのち、イヴに向き直る

 

「どうする?」

 

「……絵の方を調べてみよ」

 

トビラを閉めてから、端の方の絵から調べ始めるが、その絵の下に何か記されているのが目に入った。

 

『石像の正面に立って西に3歩、次に南に1歩、そこが正解』

 

絵の証言に、一瞬だけ面食らい、違和感に気づく事が出来なかった。

 

「一応手がかりだし、やってみようか」

 

イヴにそう提案するが、あまりいい反応は返ってこない。しかし試さない訳にはいかない。何か分かるかもしれないのだ。

 

タイルの部屋に入り、石像の正面に立つ。そして1歩1タイルとして西に……

 

「明久、そっちは南だよ」

 

ーーー気を取り直して、今度こそ西に…西に……

 

「そっちは東……西はあっちだよ」

 

しょうがないなといった様子のイヴに、明久はほおを掻きながら苦笑して誤魔化す。

改めてイヴの指した方に向き直る

イヴが石像に刻まれている文に気がつくのと、明久が西に向かって歩み始めたのは同時だった

 

西に1、2、3歩。次に南に1歩と進んだ際に足元にあるタイルを剥ごうとする。

 

イヴは、石像の文を読み切り、それが何を意味するかを理解すると、血相を変え明久へ叫んだ。

 

「待って!明久‼︎」

 

「えっーーー」

 

が、数瞬遅かった。タイルが嵌っていたところから何か明久の顔に向かって噴出される。

明久がそれがガスだと気がつく前に吸い込んでしまった。

 

刹那、身体に異常が生じる。

 

とてつもない悪寒、胃の中のものが逆流して来るような感覚、その生理的な欲求には抗えず喉まで迫り上がってきたものを口から吐き出す。

しかし口から出た物は吐瀉物ではなく赤黒い血だ。しかも血が喉に絡まり呼吸が出来ない。

咄嗟に指を突っ込んで取り除こうとするが、うまく行かない、息が出来ず焦りが募る、その焦りが失敗に繋がる。

 

その間にイヴが駆け寄ってきて、明久の背中を思いっきり叩く。その衝撃で喉を遮っていた血が体外へと排出される。

 

「はぁ…はぁ…助かったよイヴ……」

 

明久は肩で息をしつつ、イヴへと礼をいう。

だがイヴは逆に申し訳無さそうに謝ってくる

 

「ごめんなさい……もっと早くに石像の文字に気づくことが出来てたなら」

 

「石像に?」

 

イヴに支えられつつ石像の所へ戻り、イヴの指さすところに目を向けると確かに文字が刻まれていた。

 

『なかまはずれが ひとりいる』

 

「そして此処に入る前の『ウソつきたちの部屋』て言うのと合わせて考えると、本当のことを言っているのは1人だけ、それ以外は全部ウソつきってことになる」

 

つまりは、

 

「ウソつきを選べばさっきのようになるって事か」

 

「うん、もっと早く気がつくべきだった……ごめんなさい…」

 

ギュッとスカートを握って、後悔を滲ませた声で明久に謝る。

 

だが明久はイヴの手を取り、にっこりと笑う

 

「でも、僕じゃ気がつく事すらないし、それにイヴちゃんがいなかったら、僕死んでたかも」

 

だから

 

「おかげで助かりました。本当にありがとう!」

 

その感謝の言葉は、すんなりと彼女の心に落ち着いた。

その言葉で、彼女は安心すらしてしまった。

イヴ自身なぜそんな風に思ったのかわからない。

ただひたすらに心地よい安心感に包まれた

 

彼女の理性がなぜかと考える前に、明久に促されふたりで絵画の部屋まで戻る。

 

「左の絵から調べてみようか」

 

どうやら、絵を調べようとするとその下に証言が浮き上がるようだ。それらを纏めると…

 

まず緑の服の発言。『石像の正面に立って西に3歩、南に1歩そこが正解』

 

次に茶の服の発言は、『石像の正面に立って東に4歩、次に北へ2歩そこが正解』

 

黄の服は、『白の服が言っているのは本当だよ』

 

黄の服とトビラを挟んで反対側の青の服の証言。『本当のことを言っているのは緑の服だけだよ』

 

その隣の白の服の発言は、『石像の正面に立って東に2歩、南に2歩そこが正解』

 

最後に、赤の服は、『黄の服に同意!』

 

すべてのヒントが出揃ってから、明久は真剣な顔でふむ、ともらして

 

「さっぱりわからん」

 

と早々に諦めた。そんな明久にイヴは呆れたように、

 

「明久、もうちょっと考えようよ…」

 

「僕が出来ると思うの?」 「全然」

 

イヴからの即答にまたもや吐血する明久。イヴはその様子に若干の愉悦を無意識のうちに感じるが、今は捨て置こう。

 

さて、この問題は、場所の指定以外には肯定の証言、つまりは、赤、青、黄の服の証言が鍵となる。

彼らが正しいとすると、最低でも2人の正直者が存在する事になり、石像の文と矛盾が生じてしまう。これにより、3人に触れられている絵の証言も必然的にウソとなる

 

という事は、正直者は、誰にも触れられることのなかったーーー

 

 

「茶の服が正直者……!」

 

明久が驚いたようにイヴを見る。

 

「もうわかったの⁉︎」

 

スゴイよ!とイヴの思考スピードに驚愕する。一方イヴは、手放しに褒められて顔を紅くする。それを誤魔化すために先に石像のある部屋に走っていった。

 

明久は、それを追いかける前に、茶の服の絵に向かって

 

「ありがとう、おかげで何とかなりそうだよ」

 

にぱっと笑ってからイヴの後に続いた。

 

その時、茶の服が彼に手を振るように動いた気がした。

 

 

 

◻︎ ◼︎ ◻︎ ◼︎ ◻︎

 

 

 

明久が部屋に入ると、既にイヴがタイルを剥がすところだった。それを見て彼は慌てるが、めくった後も別段変化はなかった。

 

「青の4だって!」

 

嬉しそうにそのタイルを掲げて、見せつけてくる

 

「よっしゃ」

 

拳を握って喜ぶ。イヴと喜び合おうと笑って手を叩く。

 

ーーーそれも束の間

 

背後のトビラの向こう側から暴力的な音が聞こえてきた事によって冷水を浴びせられた様に凍りついた。

 

「っ!」

 

弾かれたように振り返り、トビラを破る様に部屋を飛び出る。

 

「……あっ……」

 

 

ーーーーそこには、赤、紅、朱、部屋全体にそれが飛び散っている。そして絵画達が赤色の中心に向かって一様に、『ウソつき!』『ウソつき!』『ウソつき!』と罵っている。ーーその中心がある場所には本来なら、茶の服の絵があるべき場所、しかしそこにあるのは無惨にも切り裂かれ、破られ、額縁以外原型を留めていない。

 

「ーーオェッ」

 

あまりの惨状に、吐き気を我慢できず戻してしまった。なぜこんな事になったのか、疑惑、疑問が頭の中をまわりつづける。

 

「明久っ!」

 

その時、あちらの部屋からイヴが戻ってきて、部屋の惨状など気にも留めず明久に駆け寄った。

イヴに背中をさすられながら茶の服の絵を壊した者らを睨みつける。

 

「……で……なんで……なんでっ…なんでっ!なんで殺したぁ‼︎」

 

咆哮にも等しいそれは、追い詰められた少年の痛々しい嘆きの叫びだった。

大丈夫という言葉で誤魔化し続けてきた結果、彼の中に溜まり続けていたものが止めどなく溢れ出てくる。

 

そのあまりの痛々しさに、咄嗟にイヴは耳を塞ぎかける

 

 

「なんでっ!その人が本当のことを言ったってだけなのに!それだけで殺したのかァ!」

 

絵画達を泣きながら罵りわめく、ついに膝をつき啜り泣き始める。「なんで……なんで……なんで………」とうわ言のようにつぶやき続ける。

 

イヴは、震える明久を後ろから抱き締める。

その時、イヴの心にある思いが芽生えた

 

ーー明久は……この人は、私が守る

 

呪いのように、その想いは、彼女の根源に入り込んだ。その原理は至極単純、たった一つの感情からの価値観。その感情こそ憎悪と同等ともされる激しいものだ。その想いの名はーーーーーーーー

 

 

 

◻︎ ◼︎ ◻︎ ◼︎ ◻︎

 

 

 

完全ではないものの、イヴのおかげで落ち着いた明久を引き連れ、彼女は廊下を通り抜ける。残るの赤の数字を捜すためだ。イヴはある目星をつけていた。

 

彼女は、舌を動かす顔の絵の前を通過し、真っ白な絵画を調べる。

 

と、端の方に赤で9という数字が刻まれている。

 

その発見で、やっと明久が笑顔を浮かべた。それにイヴがほっとして喜んだ。

 

 

ーーー数字を携えて黄色のトビラにもどる。

 

「緑が…確か……」

 

イヴが思い出そうしていると代わりに明久が、

 

「緑が18、青が4、赤が9だよ」

 

驚くべき記憶力を発揮した明久の述べた数字を基に式の答えを導く。

 

「166!」

 

その3桁の数字を入力すると、鍵の開く音が聞こえた。

 

イヴは先行しようとしたが、明久が止める

 

「僕が先に行くよ」

 

イヴは当然断ったが、明久は譲らず、

 

「こういうのは僕の役目だ」

 

と言ってトビラの前に躍り出て、先に部屋に入った。

 

部屋の中では、緑、いや葉の色が出迎えた。

木のオブジェのようなものが鬱蒼と立ち並んでいるのだ。奥に絵が飾られているが……木とリンゴの絵だろうか

 

イヴが何かに気がつき、それに手を伸ばす。手に取るとそれはリンゴだった。真っ赤な、イヴのバラのような色のリンゴだ……木で出来てはいるが。

 

ーーリンゴ……?

 

瞬間明久の脳裏にあるものが浮かび上がる。

 

ハラが減ったと言っていたあの唇を。

 

「イヴちゃん!ついてきて!」

 

いきなりの大声にイヴは目を白黒させるが、それを気にせず彼女の腕をとり、引っ張って、走り始める。人形を払いのけ、廊下を駆け抜け、その唇の元にたどり着く。

 

リンゴを受け取ろうと、彼女を見ると胸に手を当て肩で息をしている。明久は彼女が自分よりも体力が遥かに少ないことを失念していた。

 

「ご、ごめん!急ぎすぎた!」

 

彼女の呼吸が落ち着いたところで、次は気をつけてと注意されつつ、リンゴを渡された。

 

それを唇に与えると……

 

 

「おまえイイヤツ、くちのなかとおってけ」

 

とあんぐりというレベル以上の大口を開けてくれた。

 

「ここを通るんだ……」

 

少々怖いが、そっと足を舌の上運ぶ。安全を確認したのちイヴに手を伸ばす。イヴはその手を取り、口内へと足を踏み入れた。

 

そして2人はその奥へと消えていったーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最近、雑学をよく知る機会がありましてこの下のやつも、それです。まぁ飛ばして貰っても構いませんが……




色々ありますが、まず、チワワは元々食用だったとか、

精神の機微とか、そういうのに疎くなるのって、ストレスへの精神の防衛機能らしい

Wi-fiの名称は、“The Standard for Wireless Fidelity”が由来らしい

といったところですかね
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