サモンナイト4 妖精姫と呑気者   作:なんなんな

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パイン飴おいしい(辞世の句)。

平日昼間投稿ですがニートではないです。

さて、内容は戦闘終盤〜夜会話まで。颯爽と登場した二人には活躍の場面を用意できませんでした。うっかり。


第2話 この子どこの子、迷子の子?〜You Little Dickends〜 ⑨ (原作二話)

「騒ぎが聞こえたから駆けつけてきたの!」

「悪い! 裏を取るのに手間取っちまったんだ」

「ムイムーイ!!」

「ミントさん」

「ポックル……ブレイクナッツ!!」

 

ミントさんの家の裏口から出てきたのか、私たちとは別方向……さっき弓兵がいたさらに奥あたりから現れた二人。そしてその召喚魔法に敵の注意が一瞬逸れる。

 

「これで……っ!」

 

その一瞬を逃さず、フェアが駆ける。狙いはあの大剣兵か。……なら、手前の邪魔な奴らは私達でなんとかしないとな!

 

「もう一度……ギルビット!」

「ィ゛ィィィィィィッッ!!!!」

「………!」

 

リシェルの召喚魔法と同時にボクスとルニアをけしかける。さっきと同じ、瞬間火力とインパクト任せの電撃戦だ。

 

「ぬぉっ!?」

 

対処が追いつかず浮足立つ敵兵。……イケる!

 

「っらァ!!」

 

畑から引き抜いた、丸々とした特大の大根を思いっきり振りかぶって顔面に叩きつける。これでまた一人。大根は持ち易さと重量が揃っている。一発の威力に関しては正規の武器に劣らない逸品だ。

 そうして私達が広げた隙をフェアが風のように抜けて行く。

 

「フッ」

 

敵の直前で体を大きく沈み込ませ、足払い、横薙ぎ、裏拳。全身をフルに使った三連攻撃。……しかし、どれも上手く防がれる。やはり、強い。

 

「子供騙しがッ」

「くっ!」

 

相手からの反撃を剣で受け止めるも、刃を返され押しこまれる。

しかし、一息に押しつぶそうと男が腰を入れたその瞬間――

 

「っアッッ!!」

「!!?」

 

まるで限界まで引っ張ったゴムが爆ぜるようにフェアの体が翻った。何が起こったのか見えなかったが……相手が膝から崩れ落ちているのを見れば、さっきのはフェアの攻撃だったことは分かる。

 

「ッ!!」

 

そうして無防備になった顔面にトドメの正拳。

 

「やったッ!!」

「勝てる……!」

「くっ……」

 

相手の大将の顔にも、流石に焦りが見える。

 

「まだやる気?」

「…………」

 

目を瞑り、唸り声ともため息ともとれる声を漏らす。

 ……そんな悩まなくていいからさっさと降参するか帰るかしてくれ………。

 

「ふふん、ちびってたじろいだのはそっンむぅ!?」

「(いらんこと言うな)」

「(むぅ……)」

 

もう相手『どう自分を納得させるか』みたいな顔してるんだから余計な一言で刺激したら大損だ。

 

「ふっ……ふはっ、ふははっ! ふはははははははは!!」

「(なんだこのおっさん!?)」

「(な、何急に笑ってんの!?)」

「っえりゃああぁっ!」

「ピィッッ!?」

「あぶないっ!!」

 

私めがけて放たれた大斧の一振りをフェアがなんとか受け止める。

なるほど、さっきの高笑いは奇襲のための作戦だったのか。しかもそのあとの踏み込み……一瞬で間合いまで入ってきた。見かけによらず素早さまであるようだ。

 ……てそんなこと考えてる場合じゃない。フェアが間に入ってくれなきゃ色々とぶっ飛んでたぞ……!

 

「くぅっ……!」

 

そしてそのフェアも辛そうで。……正面から力で抑え込まれたまま、さっきみたいに"抜け"られずにいる。

 

「そうか……やはり、そうなのか。こうして直に刃を交えて確信が持てたぞ……。貴様、あの冒険者の娘だなッ!!」

「え……っ!?」

「フンッ!!」

「きゃあぁっ!?」

「……!」

「甘いわッ」

「グっ……!」

「ナオっ!」

 

フェアが弾き飛ばされたと思ったら、私もやられていた……? さっきのは……キレて無意識のうちに掴みかかって、返り討ちにあった、のか?

 

「あなた……バカ親父のこと知ってるの?」

「知らいでか! 我らの計画が根本から崩れ去り、ワザワザこんな街にまで足を運ぶハメになった原因はその男……ケンタロウなのだからな!!」

「え………」

「あー………」

 

 この、私がこっちに来てからトップクラスでガチの騒動も結局は"それ"なのか……。

 

「我が名はレンドラー。『剣の軍団』を率いる『将軍』だ。小娘、貴様の名は?」

「……フェア」

「覚えておくぞ。フェアよ! あの男に与えられた耐え難き屈辱の数々、娘である貴様にも償わせる!!」

「……………」

 

いやそれは自称とはいえ騎士としてどうなんだ。

 

「退くぞ」

「は……はっ!」

 

 あるものは滴る鼻血を押さえながら、あるものは担ぎ上げられて大将のあとをついて去っていく。……これだけ見れば圧勝なのに、全く勝った気がしないっていうのはやっぱり、最後にあの『将軍』の強さを見せつけられたからだろうなぁ。

 

「いっちゃった……」

「やれやれ、なんとかなったか……」

「なんとかなってないでしょ! どうして捕まえてくれなかったのよ!?」

「む、無茶言うなよ。あれだけの数、俺一人でどうにかできないし……数が少なくても、あのオッサンがなぁ」

「なっさけないわねぇ!」

「情けないのは認めるが、それよりあのオッサンが強すぎるんだよ。見たか? あの足運び……あんなのその辺の兵士じゃ何人まとまってたって勝てる気しないぞ」

 

連戦で疲れてた&会話しながらだったとはいえあのフェアのインチキ殺法を余裕で封殺してたしなぁ。

 

「追い払えただけでも良しとしなくちゃ……。この子も無事に守れたんだし、ね?」

「ピィッ」

「………そうね……ま、しかたないか」

 

リシェルも実際にアレと対面した手前、大人しく納得せざるを得ないらしい。

 

「……………」

 

 が、今回は逆にフェアの方が何か不満顔で……。

 

「大丈夫? フェアちゃん、どこか怪我したの?」

「また、なんだ………」

「え……?」

「またしても……ことごとく……例によって……今回の敵の元凶もバカ親父だって言うの………!!!?」

「フェアちゃん? ちょ、ちょっと!?」

 

フツフツとヒートアップしていき、遂には怒鳴るような大声に。

 

「ダメ親父の……っ……どさんぴんーーっ!!」

 

  ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 戦いが終わって。

 誤魔化してたこと、隠してたことも、グラッド兄ちゃんやミントお姉ちゃんと明日ちゃんと話し合うことになった。

色々と怒られるだろうし、これからどうするか……なんて難しい話もしなきゃいけない。

それはしかたないと思う。……実際、わたしたちだけじゃ解決できないことが起こっちゃったワケだし。

 でも、それとは別にもっと嫌な気分になることがある。

 

「また……ダメ親父の起こしたことの後始末………」

 

 このなんともいえない胃のムカムカは、きっとナオの淹れたマズいコーヒーだけのせいじゃない。

 

「………ふーむ……」

 

 そのナオは向かいの席でいつも通り眉間に皺を寄せながらコーヒーを飲んでる。……そんなに美味しくないならちゃんと淹れ方覚えるかわたしに頼むかすればいいのに、なぜか自分でテキトーに淹れるんだから………。

 

「しかも今回は相当の団体さんでしょ? ……もう、本当に嫌になっちゃうわよ………。もちろん、あの子が厄介とか、出会わなきゃ良かったとかそういうことじゃないんだけど」

「それは分かってる。(……むしろ思わない方が珍しいけど)」

「え?」

「いや、なんでも。うーん……でも、今回のことに関してはそのダメ親父のやったこともしかたないんじゃなかろか? あのレンドラーとかいうやつらの計画って、たぶん竜の子を使ってろくでもないことするって話……」

「……そうね。そういうところも含めて今まで通り、クソ親父なのよ」

「……あー」

「何言いたいか分かった?」

「いろんなことに首突っ込みすぎ、と?」

「そう。首を突っ込んで大暴れするだけしてそのあとすぐどこかに消えちゃうらしいわ。自分のこと『ヒーロー』とか言ってたし、"悪い"ことを見たら放っておけないんでしょ。あ、『ヒーロー』って分かる? 名も無き世界の言葉らしいんだけど」

「うん。正義の味方とか英雄とかそんな意味で使われてる。……しかし、ヒーローか……自分でそれを言うのは、ちょっと、な」

「だから……自己満足なのよ。何か出来事があって、それを力でねじ伏せたらそこで『ヒーロー』になったつもりで満足しちゃう。相手は壊滅も、ましてや反省もしてなくて『アイツに邪魔された!』としか思ってないから、親父がどこかに立ち去れば同じことをまた繰り返すし、……わたしが………娘が居るって分かれば」

「フェアに仕返しする、か……」

「そもそも、フラフラ旅してる親父がパッと見たときに『悪いこと』だと思ったとしても、それが本当に悪いことなのか分かったもんじゃないでしょうに」

「社会の仕組みとかな……。でも、それもどこまで考慮するかも難しい。実際に良くないことで、早くしないと手遅れになることもある」

「……そうだけど……。結局、極端すぎるって話なのよ。親父はその辺をどっちがいいか全く考えずに全部ソッコーで叩き伏せてんの。バカなんだよ」

「バッサリ言ったなぁ……」

「これでも言い足りないわよ」

 

 ダメ親父が関わった事件の相手の全員がわたしの居場所をつきとめるわけじゃない。ううん……むしろ割合で言えばほんの少しだと思う。

それでも今までけっこう沢山来たし、その中で完全に『余計なこと』をされたらしい人たちも少なくなかった。ということは、悪人も普通の人もひっくるめて、やっぱりダメ親父に迷惑をかけられた人は多いんだと思う。

 

「……なら、満足するまで言いな」

「え……」

「私も、愚痴くらいは聞いたげたいと思う。それでストレス……不満がちょっとでも軽くなれば良いし、もしかしたら……人に話すことで今まで見えてなかった面が見えてくるかもしれない」

「………」

「どう?」

「……長いわよ?」

「………まぁ、うん。途中で寝ないように頑張る」

「もうっ。……そうね、どれから話そうかしら?」

 

 ……せっかくだから満足するまで話そう。ナオも、自分から言ってきたんだしちょっと長過ぎても許してくれるよね。




きのこもたけのこもどっちも別に好きじゃないです(全ギレ)

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