サモンナイト4 妖精姫と呑気者   作:なんなんな

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多腕メカはロマン。それぞれの腕が多関節で伸び縮みするとなお良し。そんなMSを考えていると一週間経ってました(半ギレ)。

それにしてもこの主人公はよく喋る……いつか酷い目に遭わさなきゃ(カルマまみれ並みの思考)。


第3話 ドキドキ、はじめての御使い ~A Cutie Angel~ ① (原作三話)

 剣の軍団との戦いの次の日。やはりと言うべきか、店にはグラッドさんとミントさん、ついでにポムニットさんがやってきて、洗いざらい喋ることになった。

 

「なるほどな。あの竜の子は、お前らが最初に見つけた時から得体の知れん連中に狙われていたっていうことなのか」

「………」

「そんな危険な騒ぎに巻き込まれてらしたなんて……。どうして、隠すようなことをなさったんですか!?」

 

珍しく噛んだり気の抜けたりしてないちゃんとした叱責。その真剣さに、フェアも姉弟も何も言い返せない様子。

 

「……ナオさんも………」

 

私もか!? ……うん、そりゃ、私もか。

 

「何かと手助けして頂いてるのは重々承知しておりますが、そもそも悪いことをする前に止めてくださってもいいのに……いつも傍でぼーっとしてるんじゃなくて」

 

えっナニそれは。

 

「 ………確かに、敢えて昨日襲われたことを隠してたのは、それだけ考えれば良いことじゃないです。でも、その時の私達の判断じゃ、自分たちで解決できそうな問題で むしろ大勢に話して大事にする方が余計なことに思えました」

「『自分たちで解決』って……現にとんでもない強さの敵が出てきてしまいましたのでしょう!?」

「だから、それは 昨 日 の 午 後 の話で、隠し事をしたのは 昨 日 の 朝 以前。隠してたのは 一 昨 日 の 夜 襲われたことでしょうに。一昨日の夜襲ってきた敵は妙には妙だったけどさして強くなかった。コトの重大さに気づいたのは隠した後です」

「ですが……もっと強い敵が現れるかも、なんてこともすぐ思い――」

「それももちろん可能性として考えてました。その結果としてコトをできるだけ広めずに、そもそもそういう輩が嗅ぎ付けてこないようにしようという結論になった。もっと言えばあの竜の子がそれほどまでに執拗に狙われる存在だって知ったんも、あのオッサンが襲ってくるほんの直前です。種類やら世話の方法やらも今日の朝に訊くつもりだった。……その上で、どうするかも詰めるはずだった」

「…………現に竜の子が外に出ちゃったり見つかっちゃったりしてるじゃありませんか」

「かわいそうな一人ぼっちの小動物見つけて『あ、これは実はもの凄い力を秘めた至竜の子で何か因縁を抱えてるせいで大軍団に追われてて家で大人しくさせようとしても幻術を使って抜け出しちゃうし相手もその少しの騒ぎを嗅ぎ付けて即座に攻めて来れるだろうから普段から利益至上主義でコトを知らせたら十中八九竜の子にとって厳しい結果になるだろう金の派閥の父親に直通のメイドさんに包み隠さず話そう』なんて考えられる人間がいたらぜひ連れてきて欲しいですが」

「………っ……そんな――」

「確かに、筋は通ってますし……ポムニットさん、ここは抑えて……」

「しかしですねぇ――」

「むしろ、竜の子を拾ったことに対する責任をとろうとして、よく考えてると思いますよ? ですから、ね?」

「むむむむむ………分 か りました。責めるようなことを言って申し訳ありませんでした」

「……いや、私もつい必要以上にキツい言い方しました。スミマセン」

「まぁどっちにしろ街の近辺に怪しい奴らがいたってんなら、竜のこと抜きにしても駐在騎士であるオレに一声かけといて欲しかったな」

「はい……」

「ごめんなさい」

「それは、素直に落ち度だと思ってます」

「……ええっと、それはそれとして」

 

何故か目をそらすグラッドさん。私達はマジにとっちゃったけど、さっきのは割と軽い冗談みたいなつもりだったんだろうか。

 

「さて、じゃあ、問題はこれから先どうするかってことだ」

「ですね」

「そもそも、いったいあの連中は何者なの? ヤケに強いしエラそうだし」

「ただのゴロツキや野盗の類いではないよなぁ。戦闘能力も装備も」

「特に、戦いかたの方は妙にしっかりしてたよ」

「『剣の軍団』の『将軍』……昨日の手下八人が最大戦力なんてことは、まず無い……?」

「あれだけのされてまだ次回以降来る気満々だったってことは、そうなんでしょうね……」

「っていうか、一昨日襲ってきた奴らと繋がってるんでしょ?」

「そう考えないと『昨日邪魔してきたガキ』だったっけ? ……その言葉がおかしくなるしね」

「でも、最初に戦った悪者たちとあのおじさんの軍団は鎧の形も雰囲気も全然違ってた気がするけど」

「まぁ、オッサンの方が、自分で言ってる通り騎士っぽかった」

 

 話にも全く応じず初っ端っから殺しにきた一昨日の……そうだな、仮に『畜生の軍団』としよう……それらと、一応話はできて手加減も見えた剣の軍団とではヘドロと泥水くらい違う。

 

「あくまで ぽい だけだけども」

 

しかし、結局やってることはどっちも悪党だ。

 

「……ともかく、仲間ってことは確定してるけど、それでもあの二つが同じ組織とは考え辛い」

「"縦並び"じゃなくて"横並び"……とかかしら? それぞれはそれぞれで動いてるけど、それらをまとめるもっと上の組織が居て……っていう」

「地理的にも経済的にも手広くやってる、けっこう大きい……」

 

 整った装備に人材はもちろん、オッサンの『ワザワザこんな街にまで足を伸ばす』という言葉。……それはつまり連中は元々別の、それもかなり遠い所にいた(もしくは移動を続けている)ということを表す。なら、それだけの旅費を出せる組織でなければならない。宿やら食糧やら……筋肉質の男の集団なんて金がかかって仕方ないはずだ。

 盗賊行為で賄っている可能性もあるけど……そっちはそっちで軍の監視やその地元の盗賊団なんかを相手に勝ちを重ねてることになるからかなり厄介。

 どっちにしろ――

 

「あのオッサン級のヤツがあと何人か居てもおかしくない……?」

「き、昨日のお話だけてもとんでもない組織なのにまた飛躍的に物騒になって……っ!!」

「そう取り乱さんで」

「これが取り乱さずにいられますかっ! すぐにでも旦那様に報告を――」

「報告してどうするのん? ブロンクス氏が一騎当千の戦いを見せて敵をみんな倒せるとでも?」

「……っ」

「だけど、確かにこの問題はもう俺たちの手にはあまるだろう。軍本部に報告して、然るべき処置を取るべきだと思う」

「そ、それです! 是非にそうしてくださいまし!」

 

『然るべき処置』……ねぇ………。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!? そんなことしたらあの子はいったいどうなるの!?」

「どうもこうも……当然、軍が保護することになるだろうな」

「そんな……」

「まさかリシェル、この期におよんで『竜の子〈珍しいペット〉を手放すのが気に喰わない』なんて、いつもの調子で思ってるんじゃないのんな?」

「違うわよ! 軍で、ちゃんと面倒を見て……ううん、子供として"かわいがって"もらえるか……って、それが心配なの」

「心配はいらないさ。マトモなやつじゃなきゃ面接で落とされてる。竜の子を物あつかいしたり、虐めて喜んだりするやつなんかいないって」

「ウソだっ!!」

「うぇっ!?」

 

急に大声出してどうしたんだいこの子はっ!?

 

「ぼっちゃま……?」

「僕は知ってる……本で読んだから知ってるんだ。帝国軍には、珍しい召喚獣を研究してる施設がある……。あの子は、きっとそこに連れて行かれちゃうんだ!!」

 

激しい口調でまくしたてる。ルシアンのこんな姿は初めて見たんじゃなかろうか……。

 

「それ、ホントなの? グラッド兄ちゃん?」

「まぁ、そりゃ……軍の宿舎やらその辺走り回らせてるわけにもいかないし、専門家が関わることにはなるだろうが………」

「ひどいじゃない!!」

「いや、研究所だからってべつに酷いことするつもりじゃ……」

「あたしには分かるわよ。『負荷に対する耐久』やら『極限状態を再現することによる最大魔力測定』やら………新しかったり珍しかったりする召喚獣の研究なんて………!!」

 

 そうか……召喚士の娘だもんな。どんなものなのか知ってるのも不思議じゃない。確かに、名も無き世界でも医学薬学の分野じゃ数え切れないくらいのネズミやカエルや微生物なんかが実験の下に死んでる。機械だって何万回もハンマーで叩きつけられたり限界までボタン連打されたり加熱と冷却を繰り返されたりだ。

 ……リシェルがマトモに父親に師事せずに道楽に召喚術を使っているのには、そういう理由もあるかもしれない。

 

「グラッドさんを責めないであげて。殆どの召喚士……ううん、他の分野も含めた全ての学者にとって『至竜』は貴重な研究の対象になるの。『金の派閥』だろうと、私の『蒼の派閥』だろうと……それは同じの――」

「だったらどこにも渡さないわっ!!」

「お嬢様………」

「善処はする! そうならないように俺がかけあう!!」

「かけあってどうにかなるの!?」

「…………」

 

まぁ、田舎の駐在さんがどうこう言ったところで本国の研究者様が耳を傾けるとは思い難い。

 

「それは……っ」

「そんなのイヤよ!! それじゃあ、アイツらに捕まるのと変わらないじゃないのよ!?」

「………っ」

「リシェル……言い過ぎよ」

 

 オーバーヒート気味になったリシェルをフェアがたしなめる。……確かに、恐らく皆の平和を守ろうと軍人になったグラッドさんの目の前で『悪党と変わらない』なんて言うのは酷なもんだ。私もさっきブロンクス氏をこき下ろした手前何も言えないが。

 

「なにがっ――そりゃ、でも……」

「お気持ちは分かります お嬢様。ですが……わたくしは、やはり軍に任せるべきだと思います」

「なんでよ……!」

「お嬢様があの竜の子のことを心配しているように、わたくしもまた、お二人とフェアさん、ナオさんのことを心配しているからです」

「……っ……ポムニット………」

「私も、まぁ、軍に保護してもらうんは……かなり客観的な判断をすれば……自分たちで拾って昨日今日と世話して、そうやって芽生えた愛着とか感情移入とかを全く抜きにして考えれば………そうなるべきだとは思う」

「………」

 

怒りとも悲しみともつかない視線が刺さる。

 

「少なくとも……その研究所か、グラッドさんの要請が聞き入れられてまた別のところに行くか……とりあえず、収まるところにおさまってしまえば他の誰の手に渡るより確実に皆が安全になる。フェアもリシェルもルシアンも私も、ポムニットさんもグラッドさんもミントさんも……この街や国全体のことを考えても」

「それは……そうだけど…………」

 

勢いを失い口ごもるリシェル。フェアも唇をキュッと結んで俯いている。ルシアンなんかは今にも泣き出しそうだ。

 

「俺ができる限りを尽くす! だから、辛いだろうけど――」

「とは言えじゃあ軍に連絡するのに賛成かって言えばそれには反対なんですけれどもね」

「「――は?」」




(でもBADENDの予定は)ないです。

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