サモンナイト4 妖精姫と呑気者   作:なんなんな

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ただ自分の執念のために実質初投稿です。
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第3話 ドキドキ、はじめての御使い ~A Cutie Angel~ ⑤ (原作三話)

「さて、気を取り直して」

 

 召喚レシピを聞いて早速誓約してスキンシップを図ってみたタマヒポに息を吐きかけられ気絶するというハプニングを超えて昼。私たちは星見の丘近くまで来ていた。私たちというのは、フェアと私とルニア、ブロンクス姉弟とグラッドさんミントさん、ミルリーフにポムニットさんという大所帯だ。当事者と保護者はまぁ当たり前と言うかなんというか。ミルリーフはその嗅覚と本能で親の手掛かりを見つけてくれることを期待して、ポムニットさんは本人がどうしてもということで一緒に来ることになった。応援はもちろん(?)、ケガしたときには手当なんかもしてくれるらしい。

 

「早速竜の子の母親かその手掛かり探しましょう」

「おー!」

「何仕切ってんのよ。あんたがヘマしたせいで遅れてるんだからね」

「ごめん」

 

 召喚して、これからよろしくお願いしますのスキンシップを取りに行った瞬間ムワっと一発。下手な儀式のせいで気を立たせてしまったのかもしれないが、それ抜きにしてもタマヒポには正面から近付いてはいけない。敵意が無くても口が臭いのは元からだからだ。もちろん、敵意が有る時はさらに臭くなる。というか毒性や溶解力を持つようになる。威力から考えると今回は半ギレだったのだろう。

 

「嫌に素直ね」

「素直が売りだから」

「何言ってんだか」

「でも、おかげでグラッド兄ちゃんの都合に合ってこうしてついて来てもらえるんだからいいじゃない」

「良いかどうかは働き次第よ」

「おいおい、俺だって一応帝国から一街守るに相応しいと任命されて来てるんだぞ。特に捜査や調査は得意分野だ」

「私も調査はしますが、もっぱら植物のことばかりだったので……グラッドさん、期待しています」

「もちろんです! 任せてください!」

「こんな辺鄙な街で仕事と言えば落とし物探しくらいだったからでしょ」

「あとはお前たちの関わった騒ぎだな」

「嫌味な男は嫌われるわよ。ね? ミントさん」

「確かに、嫌味なのはちょっと……」

「なっ!?」

「え、もちろんグラッドさんがそうだとは言ってませんよ!?」

「そ、そうですか! あはは」

「はいはい。それで、現場が見えて来たけど、何か分かる?」

「何か、って………」

 

 一際高い丘を超え、その向こうが正に卵の衝突地点。風圧で倒れた草は強かにまた起き上がっているが、えぐれて砂と石が露出したクレーターはまだその姿を崩す様子は無かった。

 

「……な、なんじゃこりゃあ!?」

「ま、衝突の痕ってことはパッと見で分かるわよね」

 

 目を丸くするグラッドさんの横で、リシェルは何故か得意げだ。

 

「怪我は無かったのか!?」

「幸運なことに」

「これだけのことがあったのに、街に居ると気付かないものですね……」

「流れ星みたいに見えたんじゃないの?」

「そのとき空を見てたら見えたかもしれんが……。それにしても、噂にもならないなんてな。確かにここは街道からも少し離れてるし何も無いしでそれこそ星を見るくらいの用事しかないが」

「その数少ない用事を正にその日に思いついちゃったんだから、正に運命ってヤツよね。それより、さあ、捜査開始よ!」

 

 ビシッと腕を挙げて号令。私たちもおーっと掛け声で応えてそれぞれに散らばり手掛かりになりそうなものを探し始める。

 そして時間だけが過ぎ去った。

 

「何か有った~?」

「砂と石」

「あと雑草ね」

「フェアちゃん、雑草という名の草は無いのよ。これなんかはお腹の調子を整える薬にもなるし……」

「そうだぞフェア。何事も無関心では良さを見逃して損をする。お、これは揚げると美味しいぞ。軍で習った」

「はいはい」

「似てるけど大きく違う種類で、それは食べちゃダメです。グラッドさん。惜しいんですけど……」

「あ、そうですか」

 

 今日は一段と露骨なグラッドさんに思わず笑いそうになるが、リシェルは面白くなさそうだ。お疲れムードの私たちやデレデレとデート気分なグラッドさんに見切りをつけ、自分に従順な(はずの)メイドと弟の方へ向き直った。

 

「ポムニット!」

「はいお嬢様、お茶の用意ができましたよ」

 

 しかし残念。こっちはこっちでピクニック気分。草の丈の低いところに敷き布をひろげてティーポット片手にニコニコしている。善意100%だ。

 

「……ルシアン!!」

「ご、ごめん姉さん」

 

 その手伝いで皿を並べていたルシアンも一睨みし、ついにいつもの怒り声。

 

「も~~、みんな真面目に探してよね!」

「真面目にやって砂ばっかりだったからちょっと参ってる。別に有っても得にならないけど、この辺に落ちてそうな、ミルリーフの卵の殻やアイツらの欠けた歯も見つからない。……やっぱり、向こうがキレイに片付けたのかも」

「それにそういうリシェルは何か見つけたの?」

「無いから訊いたんじゃない」

「そんなことだろうと思った」

「まぁ、一旦休憩にしようじゃないか。せっかくポムニットさんが用意してくれたんだし」

「ちょうどいい」

 

 収穫無しの捜索で浸かれた体と心を癒し、この後何をするにしても良い影響が有るだろう。それぬきにしても、こういう景色の良いところでピクニックというのは贅沢なものだ。

 

「一杯ちょうだいポムニットさん」

「はいどうぞ。クッキーもありますよ」

「私も、いただきますね」

「ん~、美味しい! まだまだお菓子じゃ敵わないかも」

「そう? 私はフェアの作るお菓子もなかなか……互角だと思う」

「姉さんもおいでよ。これ、好きなやつだよね」

「そうだけど~、う~~、……ん? どしたのミルリーフ」

「ピィイ……」

 

 プライドと欲望の間で苦悩するリシェルの足元で、ミルリーフが遠くをじーっと見つめている。フェアと食べ物が大好きなはずが、すぐこっちに来ないのは珍しい。そう思っていると「ピッ、ピィッ」と何かを報せるように大きく鳴き始めた。

 

「……反応、ってやつ?」

「そうよ! ふふん、休憩中止!」

「見てるのは……向こうの繁みね」

「ピギャッ!! ピイ!」

 

 さすがに私たちもカップを置いて立ち上がり、ミルリーフの示す方へ注意を向けた。

 

「反応が有ったは良いけど……」

「あんまり楽天的ではいられないかな」

 

 ザワザワガサガサと木の葉が揺れ、たくさんの決して穏やかとは言えない気配が近付いて来る。ポムニットさんとミルリーフがクレーターから見て丘の反対側に隠れ、他それぞれが武器を手に取っていざという時の備えが終わってすぐ、気配の先頭の一つが茂みから飛びだしてきた。

 紫色の髪をした少女。ただし、普通の人間ではないようだ。

 

「あ、あれ……!?」

 

 しかしその特徴を頭の中でまとめて結論を出す前に残りがドッと押し寄せた。金属、モーター音、火薬の臭い。機界召喚獣の軍団だ。

 

「awedrfikol...」

 

 飛行しているモノ、機械の脚で走っているモノ、そして見慣れた種類のモノも居る。それらが容赦なく少女を追って、攻撃を加えている。しかし少女もただやられるだけではない。何か光の弾のようなものを撃ち出して迎撃している。

 

「ボクスに、他の機界召喚獣と……天使?」

 

 腰から生えた翼と二つに結んだ髪の先のほうに浮遊する光の環、それに光を操る戦い方。真偽はどうか分からないが、一旦そう結論付けた。

 

「嘘、こんなにたくさん……」

「それより、どうしましょう!?」

 

 私たちが驚いているうちにも天使は追いつめられる。元々の疲労も有るようだし、その上障害物が無い丘に出て来てしまった。数の有利を活かされて、囲まれ、ついに小さな手榴弾のようなものの爆発に吹き飛ばされてしまった。

 

「どうしましょうって、助けに――」

「待って、新しいのが出て来た」

「女の子……?」

 

 遅れて茂みから出て来たのは、天使より少し背が高いくらいの緑髪の少女——のように見えるが……。

 

「いや……」

 

 この世界では初めて見るつやつやしたエナメル生地の服(しかも緑色に光を放つラインが入っている)。ヘルメットのように整いすぎるほど整ったおかっぱ頭。それに、片腕が異様に大きく、腰からはコイルのような突起とコードが伸びている。人間離れした無機質な印象に、機界召喚獣を伴って現れたことを見ると……アンドロイドか何か?

 もう少しよく見ようと目を凝らしたところで、それまで天使と召喚獣たちの戦いに注意を向けていた少女もこちらの存在に気付いた。表情の無い透り抜けるような瞳が私たちを右から左へ撫でる。

 

「UNKNOWN視認...Lotus,機体反応無シ∴否定...龍の子,確定∵否定材料無シ...対処決定:FIRE」

「jdrvbhrfbv!!!」

「くっ……!」

「ひぇぇぇっ!?」

 

 アンドロイドの号令と共に弾丸がバラバラと撒き散らされ地面にめり込み、槍の刃先に火花を散らし、私の肩口に一本の傷を作った。小型なために、威力は絶望的なほどではないのが救いだ。

 

「いきなり撃って来た!?」

「これは迷ってる場合じゃない」

「反撃、行くわよ!」

「ルシアンはその子を!」

「うん!」

 

 フェアとグラッドさんが敵の攻撃を掻い潜って飛び出し、ルシアンが盾を構えてその後に続き、私はその援護。リシェルとミントさんは召喚魔法の詠唱。

 

「スラストファング!」

 

 その声に応え、巨大で鋭利な大剣のような牙を持つ猪のような召喚獣、ブレイドボアが現れる。ただでさえ力強い突進に魔力を上乗せした一撃で敵のボクス一体を跳ね飛ばし、装甲を凹ませた。その続けざまにリシェルの詠唱も完了する。球形の分厚い装甲を纏った本隊に、二本のアーム、その先に鉄球が付いた重機型召喚獣。しかもどういう原理か浮いている。

 

「ジオクェイク!!」

 

 リシェルの魔力を受けて排気口から炎が吹き上がり、アームが赤熱する。地面に叩き落とされた鉄球がクレーターの中に更に二つの小さなクレーターを作った。

 しかしその派手さに比べて効き目は薄く、一体も戦闘不能にできていない。

 

「くそっ、やっぱ同じ界じゃ効きにくいか……」

 

 ただ"喚ぶだけ"の召喚術に対して、召喚魔法は召喚獣を魔法陣に繋がれた存在の希薄な魔力体に近い形で喚び出し、召喚士の魔力をを上乗せすることによって威力の増強を図っている。しかしこれはそれぞれの界の理をこちらに持ち込む行為に他ならず、同界のモノならば攻撃対象でも瞬間的に強化してしまう。そのため同界の召喚獣に対して召喚魔法の効き目は薄く、こちらに存在を固定されているユニット召喚でも元の界に深く関わる魔力攻撃などを行った場合は異界の存在に対して放ったときより効き目が薄くなる……らしい。ミントさんから少し前に聞いた話だ。

 

「でも十分よ! 隙はできた!」

 

 ルシアンが天使を抱え上げミルリーフたちの方へ退くのと反対に、フェアがまだ湯気が上がっている爆心地を駆け抜け、リーダーらしいアンドロイドに襲い掛かる。

 

「ドリルブロー...」

 

 しかしその前に一発。相手も召喚魔法を放った。見覚えのあるドリル機。当たりはしなかったが、フェアの足が一瞬止まる。

 ……囲ませはしない。グラッドさんのカバーに続いて、誓約したばかりのサモナイト石を輝かせ、例の問題児が姿を現す。タマヒポは何を考えているのか分からない顔をしているが、どちらに従うべきかはすぐに分かったようだ。それとも途中で気絶したもののスキンシップで多少なりともなついてくれたか。低空を浮遊するメカに唸り声を上げた。

 

「ン゙ん゙アーーー」

「knbyvtjkjh..」

 

 黄色に曇った息が吐き出され、装甲の表面や関節から煙が上がる。ネタ性で選んだつもりだが、かなり戦力になってくれそうだ。

 そうして感心しているうちにフェアは態勢を立て直す……どころか一足飛びにアンドロイドの目の前まで迫る。

 

「はぁッ!!」

「緊急防御>>>一転攻勢」

「!?」

 

 やはり異様に大きな片腕は重要な武器だった。フェアの一閃をギンッと音を立てて受け止め、更に変形。うなりを上げるドリルが顔を出した。サイズこそドリトルのドリルブローより慎ましいが、こっちは一発で終わりではなく精密正確に武器として使用してくる。しかも、相手の動きの勢いや起こりを正確に読んでインファイトするタイプのフェアにとって、軽く触れるだけでも破壊力を発揮するドリルは(いつかは克服してしまうのだろうけど)今のところ弱点とも言える。

 

「……ルニア!!」

 

 弱点は補うのが仲間というモノ。ルニアの悪魔的部分が火を吹く。暗黒魔力弾。同界が効きにくいのと反対に、機界と霊界、鬼界と獣界の理は相反し互いに"こうかばつぐん"だ。

 さらにもう一つの新戦力、スライムポットも呼び出す。車輪や脚に絡みついて行動阻止。ついでにスワンプもボクスも出してしまえ。ミントさんもここぞとオヤカタを喚び出した。

 

「戦力誤算...帰還優先...Flash!!」

「うわっ!?」

 

 カッと目の前が真っ白になる。バタバタと音がして、目の調子が戻った頃には敵の最後の一機が茂みに逃げ込むところだった。

 

「ううう……チカチカする」

「………」

 

 ルニアがフェアの前でフワリと舞った。天使の力による祝福。浅い傷や目眩ならすぐに治る。

 

「ん、ありがと、ルニア」

「ちょっと、私もー」

「あんたは特に怪我してないでしょ」

「だってそれ気持ちいいんだもん」

「ルニア、てきとーにやっといて」

「テキトーって何よ」

「そりゃ特に必要無いもの。力を使うのだって疲れるみたいだし。それで、あの子は……」

「気を失ったみたいです」

 

 件の天使はルシアンが無事避難させ、ポムニットさんの膝元で眠っていた。目立った傷は無い。それとも治癒能力か何かで治ったのだろうか。

 

「それにしても、何だったんだあいつらは」

「あれだけたくさんの機械兵器に、機械人形……並みの召還師に扱える量じゃないわ」

「それに、龍の子に反応してた」

「やっぱりあいつらの仲間だよね」

「機界のモノで構成された、三番目の軍団か」

「とすると、それに攻撃されてたこの娘は……」

「この子も、……天使ってことで間違いないですかね?」

「恐らくは……昔霊界召還士の先輩に見せてもらった天使と翼や環の魔力の感じが似てるので、他の種類の召喚獣が形だけそうなったものじゃないと思います」

「天使がその辺をフラフラしてるなんてそうそう無いですよね?」

「あんたの相棒は魔天使だけどね」

「サプレスの召喚獣というだけで珍しいのに、特にこうしてはっきりとしたカタチを持っている存在は珍しいですね。ルニアちゃんも、この子も」

「じゃあ、何か特別な事情が……。もっと言えばミルリーフの関係者」

 

 攻撃的な軍団と敵対していたことからして、ミルリーフについて何か知っている味方と見るのが自然だが、ひょっとするとどちらも私たちにとっては敵で潰し合いをしているだけかもしれない。天使の正義が私たちに理解できる正義だとは限らない。最も、これは私の頭の中だけで留めておくべき低確率で無駄に不穏な考えだ。

 

「そうなると大きな収穫ね」

「目が覚めたら訊こう。今はとにかく手当して休ませなきゃ!」

 

 予定より大仕事になってしまったが、その分予定より大きな関係者という手掛かりを得た。また一仕事。グラッドさんが天使を負ぶって、私たちは店へと帰った。




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