何で四人パーティー(チート二人)で、しかも水面鏡でケンタとメリアとエリカは団欒可能やねん……。ライくんなんかマトモな家族の思い出 餃子だけやぞ!?
関係ないですが昨日スーパーで買ったラム肉めっちゃ臭かったです。
店に戻った私の仕事は席の掃除と花瓶や鉢植えの手入れだ。床や玄関の掃除はルシアンが。フェアはテキパキと朝食の準備こなし、リシェルはテーブルをトントンと叩いてその催促をする。
「ねぇ〜ご飯早く〜〜」
「はいはい、もうちょっとでできるから待ってて」
「マジ良い御身分だな。リシェルは」
「だって実際良い身分だしあたし〜」
「ぐぅの音も出ない」
「いや、そこはもう少し食い下がってよ。……はい、できたよ」
「待ってました!」
「いつも通り、やっぱり美味しそうだなぁ…!」
「ほら、ナオも一旦仕事置いt…ってもう座ってるし」
「もたもたしてるとリシェルに盗られるから」
「そこまで食い意地張ってないわよ!」
「三日前のおやつのあの蒸しパンは忘れない……」
「う……でもあの時はたまたま特にお腹がすいてたのよ!」
「八日前の朝のウィンナーも忘れない………」
「ちょっ……! 意外と細かいわねあんた…っていうかアレはちょっとしたおふざけみたいなもんでしょ!」
「はいはい! 下らない言い合いしてないで、さっさと食べよ。ほら、手、合わせて」
「……」
「いただきます」
「「いただきまーす」」
今日のメニューは、自家製パンのトーストにスクランブルエッグと野菜スープ……と、牛乳(?)。どれも絶妙な仕上がりで私の舌鼓がボンゾ状態だが、特にトーストは外はサックリ中はふんわりの完璧な食感に、小麦の素朴な甘みと香りが広がるパン屋顔負けのクオリティーだ。おかげですっかり朝パン派になってしまった。
「美味し」
「ナオさん、いつもだけど食べるの速いね…」
「あんたも相当食い意地はってるわよね」
「否定はしない」
「フェアさんの料理美味しいもんね。街の人たちもワザワザここまで来るし。いつもお昼どきにはお客さんでいっぱいになってるんでしょ?」
「うんうん。それに、ただ味が良いだけじゃなくて、何か温かみも感じるし」
本当に、この立地で商売できているのは奇跡と言ってもいい。このトレイユ、帝国旧街道の傍の山地の裾にへばりつくような立地をしている古い宿場町だ。街道は街から見て南東。当然、街の市がたつのも南東の門前とその付近で、経済的にも文化的にも人口的にも南側が中心だ。対して、この店は街の北端の更に外れ。不利どころの騒ぎじゃない。
「エヘヘ、煽てても何も出ないわよ?」
「えーっ! 何も出ないの!? 褒めて損した!」
「あんたねぇ……」
「ごちそうさま」
「ってもう食べ終わってるし」
「でも食器の音とか全然しないよね。パンのクズすら残ってないし」
「フェアは料理が得意で、私は食べるのが得意。……運命、感じない?」
「何言ってんだか…」
「でもそれ名案かも! フェアの旦那になれば毎日おいしい手料理食べ放題だもんね」
「逆に旦那ができれば、私らにこうしてご飯 作ってくれなくなるかも……?」
「それは由々しき問題ね。……そうだルシアン、あんたがフェアと結婚しちゃいなさい!」
「え……っ!? えええーっ!?!?」
ルシアンの顔が真っ赤に染まる。照れやすい性格というのもあるが、……どうやらフェアのことが好きなようだ。私は、リィンバウムに来て十日もすれば思い至ったのだが……肝心のフェアが全く気付いてないから哀れなものだ。
「どこの誰とも知れない奴に取られるより、あんたが旦那になればあたしもここに来やすいし」
「私も住み込み従業員続け易い。と言うか今と殆ど変わらずに暮らせそう。……あ、そういう時はちゃんと空気読んで出ていくから安心して?」
「……? …………!!!!」
「何言ってんのよ! ホント何言ってんのよ!」
だからこうして無茶振りするのは、実は二人の仲を応援しているからなのだ。……嘘だけど。
「何って、ねぇ?」
「夫婦といえb――」
「そこまでですっ!」
勢い良く玄関を開き、いまいち迫力の無い声で怒鳴り込んで来たのは、長い紫髪のメイドさん。
「おはようございますポムニットさん」
「おはよう」
「あ、おはようございますナオさん、フェアさん」
「朝から騒々しいわよポムニット」
「えう、申し訳ございませんお嬢様……じゃなくって!!」
「まぁそうイライラせんと。コーヒーでも飲んで落ち着いて」
「あ、ありがとうございます。……えうぅ、苦い………」
「ナオったら全然コーヒー入れるの上手くならないわねぇ」
「はい、お砂糖」
「ありがとうございます」
「ふふっ。ポムニットさんはかわいいなぁ」
「き、急に何言い出すんですかっ」
照れ隠しか、ぷいっと横を向いてティーカップを傾ける。
「アチッ……」
「ぷっ、ポムニット……」
「あはははっ」
「わ、笑わないでくださいまし…」
「ごめんなさい、フフ、いや、ナオさんと同じことしてたから」
「運命、感じますね」
「へぁっ!?」
「いや、あんたの運命安すぎでしょ! 何? その台詞気に入ったの?」
「あといちいちキメ顔で言うのが……クッふふ」
「笑わないでくださいまし」キリッ
「ブッファッ」
「それッ…フヒッ…反則………!!」
「ナオさん! からかわないでくださいましっ!」
「お許しくださいまし」
「もうっ! もうーー!!!」
「何をやっておるのだポムニット!!」
先程と同じく玄関が勢い良く開かれ、先程とは違ってなかなか迫力の有る声が響く。
「パパ!?」
「えうっ!?」
テイラー・ブロンクス。リシェルとルシアンの父親で、金の派閥の召喚士。専門は機界。しかも街の相談役でこの店のオーナーでフェアの父親のこともよく知っているらしい。そして妻とは別居中。一部の意地汚い女性のみなさん、玉の輿を狙うなら今ですよ。
「リシェルとルシアンを連れ戻しもせず、自分も一緒になって馬鹿騒ぎしておるとは何事だ」
「はっ……! そうでした! …お嬢様、おぼっちゃま! 朝っぱらから勝手にお屋敷を抜け出した挙句に他所様の家で朝ごはんをいただいちゃって、あまつさえ旦那様に黙って婚約しようとするなんて言語道断ですよっ!」
「……お前は後で説教だ」
「ポムニットさんをあまり責ないであげてくださいまし」キリッ
「…………」
「アッハイスミマセン」
「ゴホン……それよりも、フェア、お前 何様のつもりだ?」
「………」
「雇われ店長の分際でうちの娘らに仕事を手伝わせるとは」
「それは違うわ!」
「そうだよ父さん! 僕たちが自分から手伝うって……」
「それに娘さんはほとんど仕事してないです!」
「……………」
「ホントスミマセン」
「…何を勘違いしているのか分からんが、当然お前たちにも後で説教だ。そして今は、こいつの店長としての心構えを問うているのだ。……フェア、お前とリシェルが幼馴染なのは不本意ながら認める。それに、リシェルがいい加減な性格をしているのも事実だ。だが、お前にもいくつか言わねばならんことが有る。私は、大人として毅然とした態度で生活するようにと、店を任せるときに言った。そして、それはお前も了承したはずだ」
要するにウチのバカ娘を甘やかさないでくれ、ってことか。
「……………すみません」
「…なんだ? その態度は。何か不満があるのか」
「……無いです」
「ふん、まったく……都合の悪いことを言われるとすぐ反抗的な態度をとるのは父親そっくりだな」
「わたしとアイツを一緒にしないで……!!」
「……っ」
「あんな、なにもかも放りだして他人に押し付けるような人間と……」
「………ふん、まぁ、よかろう。ならば働きによってそれを証明してもらうことにする。今日言ったこと、忘れんようにな。 帰るぞリシェル、ルシアン」
「はい……」
「……………」
「…早く行きなよ。また叱られちゃうよ?」
「……ごめん」
「気にしないで」
「フェア……」
「そう。リシェルらしくない」
「そうよね。……また昼にでも来るから」
いや、それは流石に自重しなさすぎだと思う。
「はぁ……急に来るからビックリしちゃった。テイラーさん」
「見事な八つ当りだった」
そもそも、フェアの歳がこっちの世界では『一人前』とされる年齢だからと言っても、店を任せるという発想はおかしい。だいたい、この歳になったら働き出しはすれど、それは手伝いや弟子入りのようなものなのが普通だ。対してこの店では、年端も行かない若造が仕入れから調理から接客から何から何まで全部やらなきゃならない。私がいなかったら完全に一人だ。
その上 他所の娘の素行にも配慮しろなんて無茶振りにも程がある。
「…でも、いままでなんだかんだで面倒見てくれたのはテイラーさんなんだよね。そりゃ、お金持ちなんだからわたし一人くらい余分に養ってくれてもいいじゃん、って思ったことは有るけど。……あの人もバカ親父に相当迷惑かけられたみたいだし、わたしのこと良く思ってないのも仕方ないかな………」
バカ親父……度々話に出したが、主に反面教師としてフェアに大きな影響を与えている人物。フェアの逆鱗。冒険者(?)だったらしく、各方面に敵を作っては大暴れしていたという。
フェアが五歳のとき、フェアの双子の妹であるエリカの病気の治療法を探すため、彼女を連れて旅に出た。そして、フェアはここに一人で取り残された。…私としては『病気の治療のために双子の片方だけ連れて旅に出る』というのが意味不明なのだが、ここは異世界……私の理解を超えた事情も有るのかもしれない。
だが、問題なのは手紙もよこさないということ。よっぽどのクズか死んでるかのどっちかだろうけど、バカ強かったらしいからクズ説が濃厚。
そしてそのクズっぷりは一人残されたフェアにも存分に作用した。まず、引き取り手が無かったこと。親が普通に人付き合いしていたなら、この平和な街のこと、引き取り手ならいくらでも出るはずだ。それが、ブロンクス氏が嫌々引き受けるしか無かったというのはどう考えても異常。次に、父親に恨みを持つ輩が仕返しに来たのが一度や二度じゃないということ。重大な事になる前にブロンクス氏が対処してきたそうだが、幼いフェアに与えられたストレスは計り知れないだろう。
これらは全て聞いた話でしかないが、聞いた話の全てが汚点だというのは、フェアの父親がクズであると言う根拠とするには十分な事実だろう。
これで実はいい人で、クズっぽい行動には深いワケが有ったとかだったら……それは、小説にでも書き起こして売ったらベストセラーになるんじゃないかな。
「……まぁ、だからってそのイライラをフェアにぶつけるのはお門違い」
「ナオがそう言ってくれるのは有り難いんだけどね。……はぁ。ちょっと気分転換して来るよ」
「あー、じゃ、芋の皮むきはやっておく」
「ありがと」
まだ朝だというのに疲れた足取りで、フェアは勝手口から出ていった。
全く、バカ親父やリシェルほど奔放じゃ困るけど、もう少し開き直ってもいいのに。良い奴ほど苦労するってのはどの世界でも同じらしい。
説明に字数使い過ぎ感が有りますが、主人公が周りをどう捉えてるかを定めるのは重要なことだと思うのでこんな形に。それに、盛り上がってきてから『召喚術とは…』とか基礎的な説明しだしたらテンポ悪いですしね。