サモンナイト4 妖精姫と呑気者   作:なんなんな

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今回で舞台説明が終わりました。原作一話の前半ですね。ちょっと説明がクドすぎる気がしますが。

次回から話が動き出します。竜の子誰にしようか。


第0話 いつもの朝〜Humming Days〜 ④ (原作一話)

 ワンランク上の朝食を求めてやって来た暇な老人やらちょいセレブやらで店が賑わう頃。私は裏庭で配達の準備をしていた。ボクスに連結されたリヤカーに積まれる大量の荷物。察しは付くかもしれないが、中身は弁当。こっちに来てしばらく経った頃に私が提案したものだ。種類は具沢山ホットドッグと牛丼モドキの二つ。

 仕事が忙しいとか身体がわるいとかで店まで来れない人向けの商品…という体の主力商品である。石工組合さんとかすごくオイシイです。

 

「ふぅ。量が増えるのは、売上的には良いんだけど……。さて、ルニア、おねがい」

 

日陰でアリを眺めていた少女が顔を上げ、トコトコとリアカーの前までやってくる。

 

「……ぇぃ」

 

そして、小さな声とともに両手を広げた。すると一瞬だけだが弁当箱が淡く光る。……これで防腐もバッチリだ。

 

「ありがと」

「……ぃぃょ…」

 

 ルニア…霊界サプレスから私が喚んだ、半天使半悪魔の子。無口だけど、私にはそこそこ懐いてくれている…はず。

 天使の祝福によって、風邪なんかの軽い病気の治療から今みたいな防腐まで万能に活躍してくれるかわいい相棒だ。そして、私よりもねぼすけ。どれくらいねぼすけかというと――

 

「………」シパッ

「うグッ」

 

仕事が終った瞬間 霊体化して私の中で二度寝するくらいだ。これで夕方ごろにやっと起きて、私が寝る頃にはまた眠る。

 サプレスの住人は、リィンバウムに存在するだけで結構な魔力を消費するらしい。だから、墓場や森の奥などの魔力が溜まりやすい場所に屯していたり、物や人間に取り憑いたりする。

 じゃあ、今私はルニアに憑かれてるのかと言えば、そういうわけでもないらしい。『私の中』と表現したように、精神世界(?)の中に入っているそうだ。よく分からないんだが、ルニア自身もなんとなくの感覚でやってることらしいし、霊界召還術専門の召喚士の知り合いもいないからどうしようもない。

 この入られる瞬間が、また独特な痛みを伴う。水面に体を打ち付けたときみたいな。……まぁ、仕事を手伝わせるだけ手伝わせて何の礼もしないのは心苦しい。どんなにルニアがおとなしいといっても、ギブアンドテイクは大切だと思う。だからこうして大人しく寝床になっている。

 

「行こ、ボクス」

 

眠たがりな私たちとは対照的に、不動で待機していたボクスに軽く声を賭け、出発する。

 …ボクスへのお礼としては できる範囲で手入れと改良をしている。喜怒哀楽が分からない…というより、感情が有るのか不明だから、ちゃんとお礼になってるか少し不安だけど。

 

  ――――――――――――――――――――――――――――

 

「サンライトと秋風二つ」

「はい。サンライトエッグ一つに、秋風のパスタ二つですね」

「あ、クリーンと安らぎも」

「サンライトエッグ一つ、秋風のパスタ二つ、クリーンサラダ一つ、安らぎポタージュ一つですね。承りました」

「店員さーん、お水おかわり」

「はい。失礼します。……どうぞ」

「こっちの料理まだですか?」

「申し訳ありません。もうしばらくお待ちください」

 

 配達から戻ればそこから昼過ぎまではあっという間だ。朝食ラッシュの後片付けが終わったらすぐ昼の準備。準備が終わったら昼食ラッシュ本番。

 席数はそんなに多い方じゃないけど、とにかくメニューが豊富でその上 一人が多種の料理を注文することに繋がりやすい小皿系が充実しているせいでオーダー確認がかなり辛い。

しかも、アットホーム…と言えば聞こえは良いけど、端的に言ってしまえば客に遠慮がない。『○○の××抜き』とか、量の増減は当たり前。しまいにはメニューに無い料理を要求してくることもある。

 そして、フェアはそれら全てに出来る限り応じるスタンスだ。膨大な種類のメニューはそうして産まれたものでもある。そして、そういうサービス精神が、このふざけた立地で店をやっていける理由でもある。私はこのハードワークを甘んじて受けるより無いのだ。

『飲食系のバイトするくらいなら親に媚びる方がマシ』あっちの世界の知り合いが度々言ってたことだが、今更ながら共感できた。

 

 

「クッソお疲れ様でしたァ〜〜」

「ご苦労様」

 

 そんなワケで、朝食を食べてからここまでずっと働きっぱなし。朝と対照的に昼食は仕事の合間合間にサンドウィッチを摘むだけ。……いや、そのサンドウィッチもかなり美味しいから別に良いんだけど。

 

「そもそもなんで皆して真昼に昼ご飯食べるのん。別にもっとバラついても良いはず」

「仕方ないでしょ。そういうものなんだから」

「もっと朝起きてすぐくらいに昼ご飯食べても誰も文句言わない」

「とりあえず私が言うわ。…それ朝ごはんじゃない」

「朝ご飯は別に食べる」

「じゃあ朝ご飯と一緒に昼ご飯も食べるってこと? 朝からどれだけ食べるつもりよ」

「パンの切れ端とキャベツの芯」

「質素すぎでしょ。ちなみにどっちがお昼ご飯よ?」

「キャベツ。あ、でも今日のキャベツの芯はちゃんと貰ってきたもの」

「『今日の』って何よ『今日の』って」

「いつもはゴミ捨て場から拾ってくる」

「いや、益々おかしい。……と言うか、ちょっとした冗談を実話みたいに話すのやめない? なんか聞いててお腹痛くなってきた」

「うん。私もフェアが思ったより乗っかってきてちょっと戸惑った。しかもややこしい割にそんなに面白くない話だったから言ってて恥ずかしくなった」

「だったらやめとけばいいのに…」

 

 そして、逆に昼を過ぎてしまえば暇なものだ。夕食は家でゆっくり食べるという習慣があるようで、客も疎らになる。外で夕食をとるのはちょっと特別というか、気取ったことらしい。……飲み会は別だというが、あいにくこの店では酒は扱っていない。

 ウチでもお酒呑めるようにしたらもっと儲かるか…いや、仕事終わりにワザワザ坂登ってたら呑む気も失せるか。

 

 

「――しばらくお客さん来ないかなー…」

「だいたいそうだと思う。…いつもの?」

「うん。じゃあ……」

「店番は私がする。お客が来たら呼ぶ」

「お願いね」

 

フェアはぴょんと跳ねるように立ち上がって、店の裏に行った。

 この場合の『いつもの』というのは稽古のことだ。具体的に何の稽古かといえば…武術の色々だ。基本は剣術と体術だが、何と言ってもフェアはどの武器でもだいたい人並み以上に扱える。最近では、近くに潜伏していた盗賊団にリシェルがちょっかいをかけてしまって乱闘騒ぎになったときに活躍した。

 そして、ストレス発散の手段にもなっている。マナーの悪い客や悪質なクレーマーが来た後なんかは丸太をバルディッシュで叩き斬る姿を見ることができる。

 今 裏か聞こえてくる音は軽くてリズミカルだ。これは……双剣で吊り木でも叩いているのかな。だとしたら、今日は結構機嫌いいんだな。さっきもバルディッシュのことを言ったが、フェアは機嫌が悪いときほど重くて大きい武器の稽古をする。朝からブロンクス氏に小言を言われてたからちょっと心配だったんだけど、このぶんなら、あまり気にしてないみたいだ。

 

 客の居なくなったテラス席に座り、不味いコーヒーを飲みながらぼんやりと景色を眺める。中々リッチな気分になれるのだ。散々立地条件にケチをつけてきたけど、景色だけは良い。何と言っても坂の町の一番上の更に一段上だからな!

 

「だから客が来るのも早く分かるんよなぁ」

 

 昼なんか坂道を登ってくる人の流れが見えて、『いらっしゃいませ』も言わないうちからうんざりさせられる。

 今だってそうだ。坂を登ってくる三人の人影が目に入ってしまった。やれやれ。ヒトがせっかくゆっくりしてるっていうのに。

 リシェルなんて来ちゃったら何かしら忙しくなるに決まってるじゃないか。




この作品の方向性が決まりました。
『立地厨主人公』の『ほのぼのファタジー』で、テーマは『親愛』
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