投稿速度倍にしようとしたら内容量が半分になってしまいました。キリが良かったから仕方ない……?
卵型の謎物体に代わってクレーターの中心に現れたのは、これまた謎の生物だった。身体から光を放っていて、細かいところはあやふやだが、トカゲっぽい全体に角や翼?が有って、フェアの言うように竜の子どもに見えないこともない。
「竜って……あの、すっごく強い召喚獣の?」
「そう考えればこの派手な演出(?)も納得」
「確かに、魔力は十分だけど……」
「その辺はなんだっていいわよ。ほら、チチチ……っ。おいでおいでーっ♪」
「えっ」
またこの娘は考え無しなことを……。
「ピギィッ♪」
「お……」
それまで不思議そうにぼんやりと周りを見回していた竜の子は、リシェルの声に振り向いて嬉しそうに一声鳴いた。
「飛んだ!」
……と言うより、浮いた?
「ピギャ、ピギャ♪」
「あははっ、かわいーっ! 甘えてきてるよ」
「ヵヮィィ…」
「確かにかわいいけどさぁ……」
「あ、光消えた」
体表から発せられていた光が収まり、形がハッキリする。思ったより鱗っぽくない、どちらかと言うとスベスベとした質感をしていることを除いては、なるほど、確かに竜の子だ。
「ピィ」
「うん、こうして見るとますます竜の子ってカンジよね」
「そうかなぁ、何か、ピンク色だし女の子っぽい感じ」
「じゃあメスの竜なんじゃないの? 良かったじゃん。オスの竜より大人しいかもよ」
「え、飼うのん?」
「え、当たり前じゃない?」
理解できないことが理解できないという表情。
「あのねぇ……このコは竜なんだよ? 犬や猫と同じように飼ったりなんてできっこないって!」
「そんなのやってみなくちゃ分かんないじゃないのよ!」
「やってみてダメだったら?」
「えっと…」
「それに、捨てられて行き場が無いとかだったらしかたないけど、このコはそうじゃないんだよ。どういう事情かは分からないけど、卵で落ちてきたんだよ。今頃親が捜してるかもしれないわよ」
「でも結局今居ないじゃん。それに…じゃあ、アンタたちはこんな生まれたばっかの赤ちゃん放っぽって帰るワケ?」
「ぬ……」
リシェルらしからぬド正論に思わず言葉が詰まる。ここで『見捨てる』と宣言できるほど私は冷血じゃない。
「それは――」
「ピギイィッ!!」
「何!?」
さっきまでの大人しさとは打って変わってフェアの言葉を遮り突然けたたましく鳴いた竜の子。その視線の先を見ると、暗がりに何やら動く影が複数人。
「…この場から離れた方が良さそう」
「……そうだね」
不穏な空気を感じ取った私たちはすぐさま町へ引き返そうとしたんだけど……
「………」
まぁ、すんなり帰してくれるってことも無く。
「あなたたち、誰?」
現れたのはやはり複数人の男たち。それも、変に整った装備をした怪しげな一団。いや、こうして少年少女の前を通せんぼして取り囲んでいるんだから『怪しげ』じゃなくてストレートにアウトな一団だ。
「その竜の子をこちらに渡してもらおうか。それは、我らのものだ」
「ちょっとちょっと、いきなりやってきて何言ってんの!?」
「……さすがに何言ってるのかは理解できるけど――」
「アンタはこんな時でも揚げ足を……」
「――ちょっと喧嘩腰過ぎやしませんかねぇ?」
「そうだよ。そんなそこらの野盗より剣呑な雰囲気出されてちゃ信用できるものもできないじゃない。あなたたちがこのコの保護者だって言うなら、まずは挨拶の一つや説明が有っても良いと思うんだけど?」
「何で『我らのもの』と言い切れるのか、ならどうして空から降ってくるようなことになったのか。……帝国軍人でもない人間が何でそうデカい顔してご立派な武装してるのか」
野盗は普通、いわゆる一般人より小汚い格好をしているものだ。偶に小金持ちで装備を整えているゴロツキも居るが、それはそれで自分の好きなようにカスタマイズするため、上半身に比べ貧弱すぎる下半身装備だったりと歪な武装になる。ましてや仲間同士で装備を揃えるなんて有り得ない。
だが、コイツらは違う。皆、頭の天辺からつま先まで同じ暗い灰色と曲線のパターンで統一された明らかに上等な鎧を身に着けている。よく見れば、剣や斧なんかの武器も同じだ。どう考えても何かロクでもない団体さんだ。
「………」
「わわっ!?」
「け、剣なんか抜いて、なんのつもりよっ!?」
「もう一度だけ言う。その竜の子をこちらに渡せ!」
「それしか言えんのん? アホなん?」
「こっちはまず事情を説明してって言ってるじゃないの!」
「そうですよ!」
「…………」
男は尚もこちらの言葉に応えず、脅すようにジリジリと近付いてくる。
「ふーん……話すつもりは無いってことなんだ?」
「フェア」
「うん。とりあえず、コイツらには渡さない」
「それが良い。話もマトモにできんヤツらが竜なんか手に入れたらどうせロクなことにならない」
「……よこせっ!!」
どうやら本当に話にならないバカだったらしい。
苛立った男は竜の子を抱いているリシェルに襲い掛かる。
「きゃあああっ!」
「ッ……!」
「な……っ!?」
力任せに振り降ろされた剣だったが、リシェルに届くことは無く。割って入ったフェアにしっかりと防がれていた。
「今、殺そうとしたわよね……??」
「ぐ……っ」
「どんな理由があるか知らないけどね……ここまでされちゃ、じっとしてられないわ……ッッ!!」
剣を止めた姿勢からの強烈なショルダーチャージ! しかも身長差のせいで男の鳩尾を抉るカタチになる。うわぁ……コレはエゲツない。大の大人が吹っ飛んで尻もちをついた。
良いぞ。もっとやれ。
「く…っ! ……始末しろっ!!」
そして相手はその情けない姿勢のまま仲間に指図する。それでもしっかり従うのだからこの軍団は侮れない。
「…畜生以下には変わりないけど」
「絶対好きにさせるもんですか!」
かくして私たちは怪しげな集団と真っ向からドンパチすることになったのだが……そこで私はとりあえず目の男が立ち上がる前に脚を殴り潰しておいた。相手は殺す気で来てるから残当。
竜の子の服ってどういう仕組みなんでしょう……