バトルシーンをテンポよく描写する方法誰か教えてくれませんか。
突如として変な集団と対峙することになった私たち。相手はジリジリとこちらを囲むように展開していく。
「リシェル、戦力は?」
「家からこっそり持ち出した召喚石が二つ!」
「威力は」
「ガードの上からでも十分よ」
「ならソレを軸に――ッ!?」
「召喚なんぞさせるかよッ!」
「く……っ」
最速で突っ込んで来た大斧兵の攻撃を、フェアが何とか受け止める。だが、予想外の俊敏な動きに少し体制が崩れた。
「ルニア!」
「……!」
私の声に反応し、ルニアは瞬間的に宙に消える。
「……ふはっ?」
それと同時に男は膝から崩れ落ちる。気を失ったのではない。脚の『霊体』をルニアが弾き飛ばしたのだ。
この技の原理は簡単なもので、単に霊体化したルニアが男に体当たりしただけ。その結果精神とか気とかそういうスピリチュアルな力だけが普通に体当たりされた時のようにノックバックし、体当たりされた部分が無意識状態になる……というものだ。頭や手先など意識が集中しているところとか内蔵機能や反射など元々無意識な動作とかを止めることはできないが、今のように中々役に立つもので何かあったらとりあえず出すようにしている。
「らッ!」
そしてフェアが隙を逃さず押し返した。
さらにもう一丁、リシェルの一撃!
「ドリルブロー!!」
「ぐぎゃっ!!!」
トンネルでも掘る気かと言いたくなるようなドリルを装備した召喚獣が真正面から撥ね飛ばした。
……うん。地面に押し付けてすり潰したりしない辺りすごく有情。
「ふふん。ざまぁ無いわね」
「あと5人だね……!」
「……やっぱり普通のゴロツキじゃない」
「うん……。基本がしっかりしてる。こっちも気を引き締めて行くわよ」
「う、うん!」
「ルシアン、援護よろしくね」
今度はこっちの番だと言わんばかりにフェアが駆け出し、ルシアンが続く。
「リシェルは敵が射程に入ったら召喚魔法で仕留めて。私が突っ込むからナオは全体の補助を!」
「任せて!」
「ボクス」
隊と離れて回り込むように布陣してきた一人に差し向けるのは安心と信頼のボクス先生。普段の優秀さは戦場でも発揮され、呼び出した次の瞬間には男たちを敵と認識し上部の蓋を開いて銃口を露出させた。
「クソっ! 召喚士二人とは厄介な…」
「一斉突撃だ! 前衛二人を速やかに突破し召喚士を仕留める」
「させないっ!!」
「ぐおっ! ぐ……このガキ!?」
今度はフェアが相手をたじろがせる。
……そう。フェアは油断さえしてなければ真正面から大の男を押さえ込めるんだ。
「せいハッ!!」
「ガ………ッ」
横薙ぎの剣の一瞬後にさらに外側から捩じ込む上段回し蹴が、剣裁を受け両手が塞がった相手の顎を刈り取った。男は敢え無く撃沈。残り四人。
「くぅっ…!」
一方ルシアンは残念ながら突破されたようで…。
「オォォオォッ!!」
「ちょ、」
リシェルが召喚魔法で迎え撃とうとするも微妙に間に合わない。ここでも私のフォローが光れ(願望)。
「んっ」
「……」
再びルニアが向かっていく。だけど『走る』という小さな頃から身体に染み付いた行動を止めるのはルニアだけでは荷が重い。
「スワンプ!」
「ぬあっ!?」
『喚び出すだけ』なら召喚魔法より数段速い。
取り出したのは獣界の緑の召喚石。卓袱台程もある六本足の亀の召喚獣『スワンプ』が相手の足下に現れた。
コレにはさすがに相手も脚がもつれて地面に倒れ伏す。準備の整ったリシェルがそこに止めの一撃。
「チェンボル――っ!?」
「……フンッ!」
「!?」
リシェルの声を遮って男の野太い声がしたと同時に視界が黒く遮られる。
「何??」
煙玉か……?
ただでさえ夜で光量が少なかったのを、煙でさらに遮られて完全に周りが見えなくなってしまった。
「グッ…退却! 退却だ!」
そのまま散り散りの方向に逃げる足音が聞こえ、煙が晴れた頃には私たちしか居なかった。脚を潰したヤツとか気絶したヤツとかはどうしたんだろうか? 仲間が担いで一緒に逃げたんだろうか。
「ケホっケホっ! か、勝ったの……?」
「そうみたいね……」
「煙幕に毒が仕込んである可能性も」
「何でアンタはそう縁起でもないこと言うかなぁ」
「と、とくに気分悪くなったりしてないし、大丈夫よ。……多分」
「当たり前よ」
何が当たり前なのかは私には分からないけど、とにかくリシェル的には大丈夫なようだ。
「それよりもルシアン、アンタ何あっさり突破されてんのよ」
「うぅ……ごめんなさい」
「しかたないよ……向こうの方が随分と身体が大きかったし」
「アンタはそんな奴相手に鮮やかに一本とってたけどね」
「………」
「………」
「それにしても何だったのアイツら? 妙にキッチリしてたけど」
爆弾を投下していくスタイルは例え謎の集団に襲撃された後でも変わらないらしい。頼もしいんだかそうでもないんだか。
「分かんないよ……。でも、一つ二つ向こうの町かそれよりも遠くから来たんでしょうね。あんな連中の噂、聞いたこと無いもの」
「何にせよロクでもない」
「そうだね……。この子を任せていい相手じゃなかったよね」
「ピギィ……」
竜の子がリシェルの腕を抜け出してフワフワと浮かび上がる。
「え、なに? この子、私にすりよってきたりして……」
「フェアさんが守ってくれるって分かってるんだよ」
「ピィッ!」
「この中から迷わずフェアを選ぶとは…意外と抜け目ないわね」
「確かに」
「何言ってんのよ」
単純な刷り込み現象ならリシェルに懐くはずだ。だけど、この竜の子はフェアに懐いた。…ということはこの中で一番強くて面倒見の良い人物を正確に見抜いたということだ。
「…ちょうどいいわ。その子はアンタが面倒見なさいよ」
「えぇっ!?」
「連れ帰るまでは予想できたけど、こうも丸投げとは」
「人聞きの悪いこと言わないでよ。こんなにかわいいの、アタシだって自分で飼いたいわ」
「でも、ウチじゃ父さんが…」
「竜の子なんか見たら絶対『ほぅ……』とか言って汚い笑顔浮かべて次の日には出荷してるんだから!」
それはブロンクス氏の人柄を改悪しすぎでは……。
「それに、フェアさんと居る方がこの子も安心できると思うし……」
「そぉそ。こんなにアンタになついてるのよ…?」
「ピイィ」
「う……っ」
あぁ…あの上目遣いはフェアじゃ耐えられないだろう。
「おねがいっ!」
「っ……はぁ。…手放すときになって駄々捏ねないでね?」
「……ってことは?」
「しょうがないから私が面倒見るわよ。でも、あくまでもこの子の親が探しに来るまでだからね!」
「やったぁーっ♪」
「ま、それ以上も無茶言えないか」
「リシェルが自重した…」
「うるさいわねぇ……」
「はいはい、騒いでないでもう帰るわよ」
「ピギャァっ♪」
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リシェルたちといつもの溜池で別れ、家についたのは月がもう空の真ん中を通り過ぎた頃だった。道理でナオがやたらあくびをするワケだよ。
腕の中で眠っちゃってた竜の子をとりあえず私のベッドに寝かせてから、明日の朝の仕込みもあるからすぐに台所に向かう。明日も仕事だ。私にどんな変わったことがあってもお客さんには関係ないのよねぇ。
「お疲れフェア。竜の子は?」
「うん。ベッドに寝かせといた」
「…はぁ、コレは明日は寝坊確定?」
「あーあ、今日もちょっと遅かったのに…。……それにしてもナオ、やっぱり戦いのとき落ち着いてるね」
「いや、うーん…落ち着いてはないけど。割と心臓ドキドキしてるし。でも慣れて…慣れてはないけど見慣れてると言うか……」
「……?」
「名も無き世界に『ゲーム』ってのが有るん。この場合は『テレビゲーム』かな」
「げーむ…」
「そ、簡単に言えば、ルールがキッチリしたゴッコ遊びで物語を体験する機械」
「ゴッコ遊びねぇ…」
「名も無き世界に魔法は無いけど名も無き世界のゲームの世界には魔法も妖怪も大戦争も有るから。私くらいの年の子なら魔法で戦うとか戦略立てるとかは寧ろこっちの人より経験豊富だと思う。何日も不眠不休で戦い続ける人も居るらしいし。私も五.六回は世界救ってる」
「でもさ、ゴッコ遊びはゴッコ遊びでしょ? 実際に経験するのとじゃ感覚が違うでしょ」
「確かにその辺は。『ゲームと現実の区別』はよく言われること。……ただ、最近はFPSというものが有りましてね、体力さえ付いてくれば……ね。特に私のジョブは筋力が要らないサモナー」
「へ、へぇ……」
(もしかしてナオって実はかなり尖った人なんじゃ……?)
「あぁ、そう、ゲーム的には今日みたいなのはたいてい大波乱の幕開け」
「えっ」
「そんでフェアがもし男の子だったら竜の子が可愛い女の子に変身して更に二.三人の女の子がやって来てモテモテになる」
「何よそれ……」
こうして私は竜の子と暮らすことになった。悪いヤツらを倒した高揚感も有ったし、何よりひとりぼっちの竜の子をほっとけなかったから。それに今までも面倒なことはたくさん経験してきたから。
ナオの意味深な言葉もその時は冗談だと軽く流したんだけど……結局は言った通り大騒動になっちゃったんだから私の人生はとことん普通と縁遠いのかもしれない。
スワンプとボクスはサモ2をプレイしてるときに特にお世話になった召喚獣です。