ベル君じゃなくてベロ君なのは間違っているだろうか 作:人希望
人間に成れなかった『永遠の少年』ベロは、長い間世界中を彷徨い、何時しか迷宮都市オラリオへとたどり着いた。
この少年の容姿は、短めの青い髪で旋毛の辺りが寝癖のような刎ねた髪型。
凛々しい眉で、目元は大きい釣り目に、耳はほぼエルフ耳。
動き易いツナギのような赤い服に青いベルト。
そして先の尖った黒い靴を履いている。
そして指が三本だ……。
はっきり言おう、異様に目立つ。
ベロは優しい心を持った少年だが――田舎者でもある。
そして、この都市へたどり着いたばかりの彼は今、お金も持っていなかった。
そんな時、街中で荒くれ者風な男達の話し声が聞こえた。
「ダンジョンは儲かるなあ、宝の山だぜ」
「おうよ、無限に湧いて来るしな。魔石さまさまだぜ」
(へぇ……そうなんだぁ)
少年ベロは理解する。
どうやら、この街ではダンジョンに潜れば暮らせそうな気がしてきた。
ベロは、ダンジョンを探す事にする。
それは道を歩いているオジサンに訪ねると簡単に教えてくれた。
「おいらベロってんだ。おっちゃん、ダンジョンってどこだい?」
「あぁ、あの摩天楼施設(バベル)の地下さ。分かりやすいだろ、ベロ?」
「うん、ありがとう、おっちゃん」
ベロは、先程とは違う風体の荒くれ者達が、バベルの地下に入って行くの見つけると、こっそりとついて行く。
そうして、地下一階の広い円形で輪っかのような広い空間から、ベロはダンジョンへと降りて行った。
しかしそこは地下なのに壁面や天井自体が光を放ち明るい通路になっている。
ベロはそれに見惚れて、荒くれ者達からはぐれてしまう。
すると、ベロは人とは少し違う異形な動物に遭遇した。
ベロは良く知らずに話し掛ける。
「ね、ねえ、君、魔石を知らないかい?」
『ゴアアアアアアアアアッ!』
「うわ、やめてくれよ。やめろってば!」
そいつはイガイガの突いた棍棒を持っており、それを振りかざしベロへと襲って来た。
ベロはこれまで多くの死線を越えてきており、持ち前の運動神経と動体視力ですべての攻撃を難なく躱す。
しかし、その異形な動物は攻撃を止めなかった。
「しょうがないなあ、君が止めないからだよ?」
優しいベロだが、仕方なく直接攻撃することにした。
彼は――変身した。
バキバキと体が作り変えられるように変わっていく。
そう、人間に成れなかった妖怪人間の姿に。
その姿も『異形』。
はっきり言って妖怪人間の姿の『異形』さは、目の前のモンスター『ゴブリン』を優に上回る。
全身は濃い緑色、鋭い黄色の爪が足と手の指各三本から伸びている。
腹部と足首部分は蛇腹な甲羅が重なった風になっている。
手足の関節部分が、一回りコブ状に大きくなって見えており、その体の異形さを強調していた。
その姿で、ベロは目の前の異形な動物へと一歩近づいた。
しかし――モンスター『ゴブリン』の方が逃げ出していった。
「ふう、よかった」
本当にそれでいいのだろうか……。
彼がそんな溜息を付いた時の事だ。
彼の後ろに冒険者達が現れたのだ。彼らはその見た事のない『モンスター』に驚愕する。
「お、おい、なんだあれは……」
「ゴブリン、じゃない?! ……見た事ねぇぞ」
ベロの妖怪人間の姿の『異形』さは、正にモンスターと勘違いされてしまっていた。
(……ど、どうしよう……、いやここは逃げるしかないよぉ)
ベロは戦意を持たず後退し始めたが、冒険者達は剣を抜き放ち、やる気満々でベロへと襲い掛かって来た。
「おらぁぁぁぁーーー、この化け物がぁぁぁーーーー!!」
「そいつ、きっと、超レアなスーパーキングゴブリンだぜぇっ! イタダキだぁぁぁっ!」
ベロは、第一階層でいきなりLv.2とLv.3の冒険者達を相手にするはめになった。
凄まじい速さの二人の剣がベロへと襲い来る。
だが、妖怪人間ベロの経験値と身体能力はそれを優に上回っていた。
二人の剣を左右の手の三本の指で、其々掴むと握力で握り折る。
二人の冒険者達は、その光景に驚愕する。
「ウソだろ!? 第一階層にこんな強いモンスターが出るなんてよぉ!」
「悪夢だぁぁ、逃げろぉぉぉぉぉっーーーー!」
だが、冒険者達は逃げた二人だけでは無かった。
その光景を見ていた他の、冒険者達もベロへと襲い掛かって来たのだ。
「おい、なんかスゲェエグイのがいるぜ、皆でぶっ殺せっーー!」
「「「うおおおおーー!」」」
さらに、接近戦は不利と見て、中遠距離の火炎魔法を見舞われる。
ベロは火炎を食らいつつ、最速で間合いを詰めて接近戦に持ち込み、武器破壊か峰打ちで冒険者達を退けて行った。
そうして、襲って来ていた冒険者達の流れが切れる。
ベロは、これで助かったと思ったが――そこへ【ロキ・ファミリア】の遠征組が降りて来たのである。
少年ベロはまだ知らない。
そこに、迷宮都市オラリオ内最強の女性剣士が居る事に――――。