南の島から帰ってきた俺は、久々に店を開こうと準備をしていた。
飛翔「天衣さん。準備はどうですか?」
天衣「問題ないぞ」
飛翔「もうじき、辰子さんが買い出しから帰ってきますので、それまで休憩してて下さい」
天衣「分かった」
天衣さんは、奥の部屋に引っ込んだ。暫くすると、辰子さんが買い出しから帰ってきた。
辰子「ただいま~」
飛翔「お帰りなさい辰子さん」
辰子「今日は、ブリとシメジが安かったよ~」
辰子はそう言いながら、買い物袋を渡す。
飛翔「ありがとうございます。なら、今日のメニューはこれですね」
そう言うと、飛翔はメニュー表に書き出した。飛翔の店では、その日仕入れた食材でメニューが決まるので、毎回メニュー表に書いている。すると、天衣さんが出てきた。
天衣「帰ったか辰」
辰子「ただいま~天衣ちゃん」
飛翔「それじゃあ、開店しますよ」
そして店を開店した。いつも通りに客の入りはいい。そして、あっという間に閉店時間になった。飛翔は学生なので、夜の6時~10時までの4時間しか営業していない。
飛翔「ふ~!お疲れ様」
辰子「疲れたよ~」
天衣「いつも思うが、本当に人気だな。飛翔の店は」
飛翔「地道にやって来ましたからね。天衣さん、すみませんが暖簾を下げてきてもらっていいですか?」
天衣「分かった」
飛翔に頼まれて、表の暖簾を下げにいく。すると、誰かに声をかけられた。
「まだやってるかしら?」
声をかけたのは、1人の女性である。パンツスーツ姿で、いかにもキャリアウーマンって見た目だ。
天衣「一応閉店の時間なのだが・・・」
すると、中から飛翔が出てきた。
飛翔「大丈夫ですよ。1人くらいなら。天衣さん、そのまま暖簾は下げてください。扉に立て札を出しときますんで」
天衣「分かった」
飛翔「では中へどうぞ」
そして、女性は中に入る。飛翔も立て札を出して中に入る。
飛翔「ご注文は?」
「取り合えず、お酒もらえるかな?」
飛翔「熱燗で?」
「お願い」
取り合えず熱燗を作る。
飛翔「お待たせしました」
女性に熱燗を出す。
「後、この鰤としめじの味噌バター風味をもらえるかしら?」
飛翔「分かりました」
注文を受けて、料理を作る。
飛翔「お待たせしました」
料理も出して、飛翔は一服する。すると、店に誰かがやって来た。
燕「やっほ~飛翔君」
飛翔「燕先輩、どうしたんですか?」
やって来たのは燕。彼女がここに来るのは珍しい。
燕「ほら、明後日にはKOSが始まるでしょ?メンバー決まったかなって思って」
飛翔「そう言えば、締め切りは明日一杯でしたね」
南の島とかで、色々とあって忘れていた。
燕「その様子じゃ、忘れてたみたいだね」
飛翔「面目ない」
燕「じゃあさ、一緒に・・・」
そこまで言うと、燕は店にいた女性を見て言葉を失っていた。
飛翔「燕先輩?」
飛翔は、燕を見る。
燕「お・・・」
飛翔「お?」
燕「お母!?」
『えええええええ!!!!????』
その言葉に、飛翔や天衣は驚いていた。辰子は、寝ている。
飛翔「つ、燕先輩のお母さん!?」
俺は酒を飲んでいる女性に聞く。
「ええそうよ。燕ちゃんの母親で《松永ミサゴ》よ」
飛翔「いや!いくつで産んだんですか!?」
飛翔がそう言うのは当然である。彼女の見た目は、どう見ても二十代後半に見える。
ミサゴ「あらそう♪こう見えても40歳よ?」
天衣「嘘だ!」
その言葉に、天衣はそう言う。
ミサゴ「本当よ」
燕「けど、何でお母がここに?」
ミサゴ「仕事が早めに終わってね。けど、時間も時間だし外食しようと思ってこの店に入ったのよ。まさか、燕ちゃんの知り合いだったとは知らなかったわ」
燕「そうだったんだ」
説明を聞いて、燕は納得した。
飛翔「けど、そんなに驚く事ですか?」
飛翔はそう言う。そう思うのは当然だ。いくら仕事で忙しいとは言え、あの反応はまるで数年ぶりに会ったリアクションだ。
燕「あ~、そう言えば飛翔君には話してなかったね」
ミサゴ「聞いても、反応に困るとは思うわよ?」
飛翔「反応?」
俺は、燕先輩とミサゴさんにお茶を出す。どうやら、話が長くなりそうなので、天衣さんに辰子さんを送って、先に帰るように言った。そして天衣は、辰子を背負って店を後にした。
ミサゴ「私と燕ちゃんは、実に8年ぶりに会ったわ」
飛翔「8年ぶり!?」
流石に、思っていた年数と違ったので、飛翔は叫んでしまった。
飛翔「何で8年も」
ミサゴ「実は、久信君が株に失敗してね」
燕「私のお父の名前だよ」
燕が説明する。
ミサゴ「それで、かなり莫大な借金を作って」
燕「しかも、借りたとこが悪くて、私が借金代わりに連れていかれそうになったのよ」
飛翔「・・・・・・」
その言葉に、飛翔はどう反応したらいいか困っていた。
燕「飛翔君、ここは笑うとこだよ」
ミサゴ「そうよ。今は別々に住んでるけどね」
飛翔「アハ・・・アハハハ」
最早苦笑いしか出来なかった。どうやら、離婚はしていないみたいだけど、一緒に住むのは今のところ考えていないミサゴさんであった。借金はまだあるが、副収入の納豆で、大分減ったそうだ。
飛翔「でも、納豆が副業とは驚きました」
燕「お父の本業は、九鬼の技術者だからね」
飛翔「へ~。それは凄いですね」
燕先輩の父親は、かなり凄い人らしい。
燕「それはそうと飛翔君。明日の昼頃また来てもいいかな?KOSの事で話があるし」
飛翔「ええ、ならまた店に来てください」
燕「分かったよん」
ミサゴ「さて、私もそろそろホテルに戻ろうかしら」
燕「お母、まだホテル暮らしなの?」
ミサゴ「そうよ。借りるにしても、家を空ける事の方が多いし」
どうやら、ミサゴさんはホテル暮らしみたいだ。
飛翔「ですが、お金掛かりませんか?」
ミサゴ「確かにそうね」
飛翔「・・・・・・」
すると飛翔は考える。
燕「どうしたの飛翔君」
飛翔「いや、もしミサゴさんがいいなら、家に住みませんか?」
ミサゴ「貴方の家に?」
飛翔「はい。俺が雇う形になりますが、それでいいなら」
飛翔はそう提案する。確かに飛翔は強いが、刀がなければ一般人と同じである。普段刀は辰子に預けている。だが、いつでも辰子会えるとは限らない。天衣がいるが、彼女も川神院等に出掛ける事もあるので、ずっといるわけではない。ならば、もう1人くらい雇っておいて損はない。
燕「確かにいいかも。そうすれば、飛翔君も守れるし、お母に会いやすくなるよん♪」
嬉しそうに、ミサゴに受けるように期待する燕。ミサゴも、自分の子供にその様な期待された視線をされれば、引き受けない訳にはいかない。
ミサゴ「それなら、お世話になるわ」
飛翔「よろしくお願いします。これが、家までの地図と合鍵です」
ミサゴ「1度ホテルに戻って、明日には行くわ」
飛翔「分かりました」
そしてミサゴは、ホテルへ帰っていった。燕も自分の家に帰る。途中で、『お店じゃなく、飛翔君の家に行っていいかな?』と言われたので、明日駅前で待っているように伝えたのであった。