大成「準備はいいかな?」
飛翔「ええ、いつでもどうぞ」
「それでは、私が審判を勤めます」
審判を勤めてくれる黛道場の修行僧。
「ルールは、相手が戦えなくなるまでです。ですが、相手に重症を与えればそこで終了とします」
簡単にルール説明がされ、そのまま後ろに下がった修行僧。それが合図になり、大成が刀を抜いた。
大成「いつでも来なさい」
飛翔「では、遠慮なく」
そう言われて、飛翔も刀を抜く。すると、辺りを重たい空気が包み込む。
「こ、これは!?」
「体が・・・」
修行僧達は、飛翔が出した圧に呑まれていた。それは、沙也佳も同じである。
沙也佳「あっ・・・(まともに喋れない!?なんで!)」
由紀江「沙也佳、貴方にはやはり辛いですね」
由紀江が沙也佳の側にやって来た。そして、沙也佳の前に立つと、先程まで沙也佳を襲っていた圧が消えた。
沙也佳「あれ?」
その事を不思議に思う。
由紀江「無事みたいですね。飛翔先輩がくれた、この球のお蔭ですね」
見ると、由紀江の手にはビー玉くらいの大きさの球があった。
沙也佳「お姉ちゃん、これは?」
由紀江「これは《気消球》です」
沙也佳「気消球?」
聞きなれない言葉に、沙也佳は首を傾げる。
由紀江「私も、詳しい効果は分かりませんが、試合前に飛翔先輩に渡されたのです」
飛翔『まゆっち。恐らく俺の気が周りを包み込むと思う。そうなれば、沙也佳ちゃんには辛くなると思う。だから、これを渡しておく。これは気消球と言って、相手が放つ気を無効にできるんだ。それが、剣圧や殺気でもだ。これを持って、沙也佳の側にいてあげてくれ』
飛翔にそう言われたので、由紀江は試合開始早々に沙也佳の元に来たのである。
大成「流石だね。君のお父さんと戦った日を思い出すよ」
飛翔「・・・その時は、どっちが勝ったんですか?」
大成「勝負はつかなかった。いや、つけなかったと言った方が正しいかな?」
その言葉に、飛翔は意味が理解出来なかった。
飛翔「どういう事ですか?」
大成「彼も私も、あれ程面白いと思える戦いは初めてだった。だから、次に会った時に決着をつける事にしたのだが・・・」
そこまで言うと、大成は寂しそうな表情を浮かべる。
飛翔「でしたら、父さんに代わって自分が決着をつけさせてもらいます!!」
そう言うと、飛翔は更に気を高めた。
大成「やはりか。やはり君は彼の息子だね」
そう言うと、大成も先程より強い気を放出する。そして・・・
大成「黛流奥義、十二斬!!」
飛翔「フェイテッドサークル!!」
お互い繰り出した斬撃が衝突する。ぶつかった瞬間風圧が巻き上がり、辺りを煙で包んでしまった。
沙也佳「な、なんにも見えないよ」
そう叫ぶ沙也佳。徐々に煙は晴れていく。そこで見たのは、服に切り傷がついてる大成と、無傷の飛翔の姿だった。
沙也佳「うそ・・・」
由紀江「まさか、父上の本気の攻撃を喰らっても無傷とは・・・」
飛翔と大成の姿を見て、2人は驚いていた。
大成「やはりか。彼に防がれた事はあったが、やはり君にも通じないみたいだね」
飛翔「いえ、素晴らしい斬撃でした」
大成「ハハハ。謙遜する事はない」
そう言いながら、大成は立ち上がる。
大成「次で終わらそうか。これ以上続けると、周りにも迷惑がかかるからね」
飛翔「わかりました」
そして再び刀を構える。
大成「黛流奥義・・・」
飛翔「黒刀・・・」
お互い気を高め、大成は今出せる最大の技を放った。
大成「阿頼耶!!」
先程とは、比べ物にならない程早い斬撃が飛翔に襲い掛かる。しかし飛翔は避ける事はせず、刀を抜く居合の構えのまま動かない。それを見た由紀江達は、飛翔に向かって叫ぶ。
沙也佳「危ない!!」
由紀江「避けて下さい飛翔先輩!!」
そう叫ぶが、既に斬撃は、飛翔の近くまで来てた。その時だった。飛翔の表情が一瞬だがニヤリと笑っていた。大成と由紀江の2人だけが、その表情に気が付いていた。
飛翔「斬乱!!」
連続で刀を振る。連続で斬撃が大成が放った斬撃にぶつかり、残った斬撃が大成に襲いかかる。そして飛翔は、刀を横一文字に払って剣圧を飛ばした。そして見事に大成に命中したのであった。
大成「・・・見事だ」
そう言って、大成は力尽き倒れたのであった。
「そこまで!!勝者川盛飛翔殿!!急いで大成殿の治療を始めろ!!」
修行僧達は、大成を部屋に運んで治療を行うのであった。飛翔は、刀を鞘に納めて修行僧に返すのであった。それと入れ替わりに、由紀江達が飛翔の所にやって来た。
飛翔「ごめんなまゆっち、沙也佳ちゃん。大丈夫とは思うけど、お父さんに怪我させちゃって」
由紀江「いえ、勝負事ですし父上も分かっていると思います」
沙也佳「でも驚きましたよ。飛翔さんって、物凄く強いんですね。お父さんが負けたの初めて見ました」
沙也佳にとって、自分の父である大成があそこまで本気で戦う姿を見たのが初めてであり、負けた姿を見たのも初めてである。
飛翔「いや、大成さんは強かったよ。俺が今回勝ったのは、経験の差かな?」
沙也佳「経験ですか?」
飛翔はそう言いながら、空を見上げた。飛翔の過去を知っている由紀江は、飛翔の表情がどことなく寂しそうに見えたのであった。すると、女性が飛翔達の所にやって来た。
「由紀江、沙也佳」
沙也佳「お母さん!」
やって来たのは、由紀江達の母親だった。
「川盛飛翔さんですね?由紀江と沙也佳の母親で《黛紗紀代》と申します」
飛翔「初めまして。川盛飛翔と言います。大成さんの事は申し訳ありません」
飛翔は紗紀代に謝る。
紗紀代「気にする事はありません。あの人が、貴方のお父さんとの約束事をいいことに、少しハメを外したんですよ。後程、ゆっくりとあの人とはお話をしますので♪」
物凄くいい笑顔でそう言う紗紀代。その表情を見た飛翔は、心の中で大成に向けて合掌をするのであった。因みに飛翔の後ろにいた由紀江と沙也佳は、自分達の母親の表情を見て脅えていた。
飛翔(もしかして、黛家で一番強いのは、紗紀代さんなんじゃないか?)
紗紀代を見て、そう思わずにはいられない飛翔であった。