千の呪文の男がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:ネメシスQ

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 今回もナギ君の出番少ないです。というか、いつになったら戦うんでしょうかね、彼。多分もうちょいなんですが……
 あと、今回冒頭部分でとある『ネギま!』キャラの名言を引用させていただきました。幾分形は変えてますけどね。多分皆さんお気づきになられると思います。



神の宴

 

 

 日が傾き始め、うっすらと茜色で染まる街の中を、アイズ達は歩いていた。

 

「あー、遊んだぁー! アイズはどう? 楽しめた?」

「うん。楽しかったよ」

「えへへ、そっかぁ。よかった~」

 

 控えめではあるが、確かに笑みを見せたアイズに、ティオナは喜びを露にする。

 同様に、二人の後方を歩いているティオネとレフィーヤもその様子に喜色を見せていた。

 アイズを元気づけるために街へ繰り出していた彼女達は、時間も時間なために本拠(ホーム)への帰路についていた。

 

(自分の気持ち……)

 

 リヴェリアの助言と、ティオナ達との買い物の中で、アイズは一つの答えを得ていた。

 ただ、強くなることしか考えてこなかった。ただ一つの悲願(ねがい)を叶えるために、限界を越えて、どこまでも。

 だからこそあの夜、アイズはあの少年を追うことができなかった。

 弱者を振り返り、足を止めている余裕などないと、そう思っていたから。

 

(みんなが、気づかせてくれた)

 

 自分には強くなる事以外、何もなくなった。そう思っていた。

 けれど、それは間違いだった。

 自分にも、強くなりたい以外の気持ちが存在していたのだ。

 その気持ちがあったから、ダンジョンに行こうとしても、体が言うことを聞かずにいたのだろう。

 自分の気持ちに素直になって考えた時、答えは驚くほどすんなりと浮かび上がってきた。

 

(私はあの夜、あの子に謝りたかったんだ)

 

 自分が傷つけてしまった、幼心の自分を思い起こさせるあの少年に、謝りたい。

 それが今のアイズの気持ちだった。

 今朝までは、自分が何をしたいのかも分からずにいた。

 けれど、今なら分かる。今度は、あの少年を追いかけられる。

 それに気づかせてくれたのは、リヴェリアであり、ティオナ達であり、そして……もう一人。

 

(ナギ……)

 

 先日、仲間になった赤毛の少年。

 彼は、友のために、自分の意思をまっすぐ貫いた。アイズが足踏みした中、躊躇うことなく一歩を踏み出した。

 その姿を思い出し、アイズの中に再び悩みが芽生え始めた。それは、朝にリヴェリアに吐露した気持ちと同じもの。

 眩しさに溢れたナギと比べた、今の自分に対する疑念。

 もし、自分が謝ることができたとしても、結局は元通りになるだけではないのか。

 これまでの、黒い炎に突き動かされ、強さだけを求めて闘い狂う、【戦姫】とも揶揄される自分から、あの少年に怯えられた自分から、何一つ変わらないのではないか。成長していないのではないか。

 

(私は変わりたい……のかな?)

 

 今朝のリヴェリアの言葉が脳裏を過る。

 モヤモヤが消えない。あの少年に謝りたいというのは紛れもない本心だ。

 しかし、そこからどうすればいいのか、答えが出ない。

 

「アイズ」

「ティオナ……?」

 

 唐突にティオナが俯くアイズの前に顔を突き出した。

 何事かと顔を上げ、ティオナの名を呼ぶ。

 

「アイズ、まだ何か悩んでるよね?」

「えっ、と……」

「また顔俯かせてたよ。もう、そんなに隠そうとしなくていいのに」

「……ごめん」

 

 落ち込んだ自分を気づかってここまでしてもらったのに、再び悩み始めてしまったことに、ティオナ達に申し訳ない気持ちが膨らむ。

 

「もう、また謝る~」

 

 そんなアイズに、ティオナはぶすっとした表情を作る。

 

「あたしは最初からアイズの悩みを取っ払おうだなんて思ってないよ」

 

 その言葉に、アイズは目を見開く。

 

「あたしはただ、アイズの気分が少しでも晴れたらいいなって、誘っただけ」

 

 そう。ティオナはただ、アイズの笑顔を引っ張り出してやろうとしただけだ。

 悩みそのものを拭い去ろうとは思っていなかった。

 それは、アイズ自身にしか出来ないことだから。

 

「大きな悩みなんて、簡単に吹っ切れるものじゃないよ。そういうものは、一旦胸に抱えておいて、一緒に進んでいけばいいんだよ」

「えっ?」

「そんで、できることからやっていこ!」

 

 ティオナの言葉を聞いて、アイズは目から鱗が落ちる思いだった。

 無理に吹っ切らなくてもいいのだと。そう思うだけで、気持ちが大分楽になった。

 ナギの事を思うと、何故だか胸がモヤモヤとするのは変わらない。

 ティオナの言う通りだ。この悩みは簡単に吹っ切れるものではない。

 何が答えかは未だ出ないけれど、今はただ、この悩みを胸に抱えて前に進もう。

 まずは自分にできることから、あの白髪の少年に謝ることから、始めていこう。

 

「ティオナ……」

「ん?」

「今日はありがとう……本当に」

「え、えへへへ。何か照れるなぁ……どういたしまして、アイズ!」

「ティ、ティオナさん! アイズさんに抱きつく必要はないんじゃあ……!」

「レフィーヤも素直になった方がいいんじゃない? 私も抱きつきたいですー、って」

「べべ別に、そんな事かか考えてなんててて……!!」

「動揺しすぎよ……」

 

 アイズに抱きつくティオナにレフィーヤが嫉妬し、ティオネがからかう。

 そんな日常が、今のアイズはとても幸せに思えていた。

 

 

 

 

 しばらくして、アイズ達は館の全容が見える位置まで戻ってきた。

 四人固まって談笑しながら、ホーム沿いに出る街路を曲がる。

 

「あれ、馬車?」

「何でうちの本拠の前に?」

 

 見慣れない乗り物が館の正門に止まっているのを見つけ、怪訝に思うティオナとレフィーヤ。

 近づいてみると、これまた見慣れないドレス姿のロキが馬車に乗り込もうとしていた。

 

「あれ? ロキ、何その格好!? 髪型まで変えちゃって!」

「ロキがそんな格好するなんて珍しいわね。どこか出掛けにでも行くの?」

「お~、帰ってきおったか四人娘。ま、そんなとこや。ちょいとこれからガネーシャんとこの『宴』にな」

「あれ、でも前は『神の宴』には興味ないと言ってたような……」

「ま、そうなんやけどな。今回は一つお楽しみがあるんや。待っとれよドチビ、弄り倒したるわ。ウヒャヒャヒャヒャ」

 

 相変わらずよくわからない事を口走るロキに、どうせよからぬ事を考えているのだろうと、アイズ達はジト目を向ける。

 

「ほな、行ってくるわ」

 

 それからすぐに商人から借りたと思われる豪奢な馬車に乗り込むロキ。

 その時になって、ようやく御者席に「何で自分が……」とばかりにがっくりと首を折るラウルの姿に気づき、アイズ達は憐れむような視線を送った。

 

「ご飯は適当に食べといてなー!」

 

 その一言を最後に、ラウルの振るった鞭の音とともに馬車が発進し、通りの向こうへと遠ざかっていく。

 

「そろそろ中へ入りましょ」

「うん」

 

 馬車の窓から手を振るロキを見送っていたアイズ達は、その姿が大分小さくなったところで、館の正門に向き直る。

 

「……?」

 

 その時、アイズは視界の端に何か見覚えのある色が映った気がした。

 

(今のは――)

 

 再度振り返り、確認してみるが、周りに変わったものは特に何もない。

 気のせいだろうか、とアイズは首をかしげる。

 

「おーい、何してるのアイズ? 早く中に入ろう?」

「あ、うん……」

 

 ティオナに促され、アイズは頭の中の疑問に蓋をして、門を潜る。

 庭園を抜けて館の中へ入ると、やや落ち着きのない様子のリヴェリアがアイズ達を出迎えた。

 

「ああ、帰ったか、お前達。おかえり」

「ただいま」

 

 リヴェリアの出迎えの言葉に、アイズ達も返事を返す。

 

「ところでお前達、ナギを見なかったか?」

「ナギを? うーん、見てないけど……どうかしたの?」

 

 出迎えの挨拶を交わすや否や、リヴェリアがナギの行方について質問する。

 皆して記憶を掘り返してみるも、心当たりはない。

 何かあったのかと尋ね返すティオナに、リヴェリアが少し心配そうな声音で事情を説明する。

 

「ああ。実は今朝出掛けたっきりナギの姿を見なくてな。夕飯までには帰ると言っていたから、そろそろ帰ってくる頃だとは思うんだが……なにか嫌な予感がしてな」

「あ……」

 

 その話を聞いて、アイズは思い当たることがあったのか、声を漏らす。

 

「何か知っているのか、アイズ?」

「うん。もしかしたら――」

 

 アイズは自分の心当たりをリヴェリアに話す。

 その話を聞いて、リヴェリアは頭を抱えた。どうか問題は起こさないでくれ、と呟いているのが聞こえる。

 数分前、アイズが館の門の前で視界に捉えた色は、ナギの髪の色と同じ、燃えるような赤色だった。

 

 

 

 

 辺りが暗闇に包まれ、星の輝きが増していく時間帯。

 とある特徴的な建造物の前で、ロキを乗せた馬車が停車した。

 

「相変わらず奇天烈な形しとるなぁ……」

 

 馬車から降りたロキが見上げるのは、象頭人体を模した、巨大な像。

 まともな神経を持つ者ならば己の目を疑ってしまうようなこの建造物こそ、【ガネーシャ・ファミリア】の本拠、『アイアム・ガネーシャ』だ。

 入り口が胡座をかいた股間であることも相俟って、構成員達にもっぱら不評な建物である。

 今も『ガネーシャさん何やってんすか』『ガネーシャさんパネェっす』といった神々の声が聞こえてくる。

 そんな巨人像を並んで眺めていた御者の青年に、ロキが声をかける。

 

「それにしてもラウル、自分女の扱い上手くなったなあ。エスコート、バッチグーやったで」

「は、はあ……恐縮っす」

「悪いんやけど、もうちょい付き合ってくれんか? 遅くなるかもしれんけど、うちが帰るまで待っとって。もちろん報酬は弾むで」

 

 わかりました、と苦笑する御者のラウルに、頼んだでー、と笑い返したロキはドレスを翻し、建物の中へ入っていった。

 『神の宴』――その名の通り、神のみが参加を許された会合であるが、その実態は、特に目的意識もなく、ただ騒ぐために開かれるだけのものである。

 ただし、中には【ファミリア】の近況報告を織り交ぜて情報交換をする者もおり、都市内外の情勢や特定の派閥に近づくための集会としても重宝されていた。

 もっとも、ただ騒ぎたいだけの神がほとんどなのは言うまでもない。

 

『俺が、ガネーシャだ!』

『イェー!!』

 

 長い廊下を抜けた先にある大広間では、舞台の上でこの建物のモデルでもある神ガネーシャが、宴の主催者として挨拶を行っている。 

 主催する神の【ファミリア】の規模によって内容も環境もがらりと変わる『神の宴』だが、今回は都市上位派閥の【ガネーシャ・ファミリア】が主催するだけあって、かなり質の高いものとなっていた。

 

「おうおう。盛況やなー」

 

 給仕の青年からグラスを受け取り、ロキは会場内を見て回る。

 滅多に宴に顔を出さないロキが――それも珍しくドレス姿で――歩いていれば、他の神々の目に留まるのは必然。

 すぐに(ひと)が集まり、にわかに騒々しくなる。

 

『あちゃー、ロキ来ちゃったよ』

『残念女神頂きましたー』

『それにしても見事な無乳だ』

『あんな断崖絶壁、他じゃお目にかかれないぜ』

『噂じゃ、自分の眷族に「特徴:無乳」で認識されたらしいぞ』

『ちょ、その話詳しく!』

 

 ゲラゲラ笑う一部の神達だが、にこりと微笑むロキを見ると、ピタリと止んだ。

 

(帰ったら潰す)

 

 そんな意思がロキの顔からありありと伝わり、彼等は足並み揃えて逃げるように会場を去っていった。

 けっ、と吐き捨て、手に持ったグラスをぐいっと煽る。

 

(逃げるくらいなら、最初から喧嘩売るなっちゅうの。それにしても……)

 

 気ままに歩き回りながら、目当ての神物の姿を探す。

 

「見当たらんな、あのドチビ……ガセやったか?」

 

 ロキとしてはその目当ての神物が来ておらずとも、それはそれでよしと考えているのでさほど気にはしないが、やはりせっかく来たからには、かのロリ巨乳の惨めな姿を存分に笑ってやりたい。

 漏れ出しそうな邪笑をなんとか堪えながら、ロキは広間を歩く。

 

「おお、ロキじゃないか」

「ん? ディオニュソスか。自分も来とったんやな」

 

 ロキに声をかけたのは、柔らかい金髪を首まで伸ばした、富国の王子を思わせる細身の男神だった。

 

「せっかくの宴の場だからね。情報収集も兼ねて足を運んだんだ。私の【ファミリア】はロキのところほど、強くも非常識でもないからね」

「ほお~?」

 

 ディオニュソスと呼ばれたその神が、品のいい笑顔を見せてそう言った。

 一方で、その立ち姿には僅かな隙もなく、食えない奴だとロキは勝手に印象づけている。

 

「あらぁ、ロキ。お久しぶり。元気にしてた?」

「おおぅ、デメテル……い、いたんか」

「ああ。今の今まで私と話していてね」

 

 おっとりとした微笑みを見せるのは、ロキにはない豊かな胸を持った女神のデメテルだ。

 あまりの胸囲差(せんりょくさ)にロキは思わずたじたじになる。

 しかし、性格の大らかなデメテルは、あらゆる意味でその懐が大き過ぎるため、ロキは彼女に一欠片の反感も抱くことができない。

 

「ロキ、あなたの【ファミリア】の調子はどう?」

 

 デメテルがロキに【ファミリア】の近況を尋ねる。

 

「うちはまあ、順調やな。みんな元気やで。元気過ぎて逆に心配な時もあるけどな。いつか派手にスッ転びそうで、こっちは冷や冷ややわ。デメテルの方は?」

「ありがたいことに、うちの【ファミリア】も色々なところにご贔屓にしてもらっているわ。先日、うちで野菜が沢山とれたから、今度ロキのところにもお裾分けしに行くわね」

「おお、ありがとなー」

 

 野菜や果物を栽培して売り出す商業系の【デメテル・ファミリア】の評判は上々なようだ。

 

「ディオニュソスはどうなん? あまり大した噂は耳にせんけど」

「可もなく不可もなく、といったところかな。まあ、落ちぶれない程度には頑張らせてもらっているよ」

「ディオニュソスったら、さっきからはぐらかしてばかりなのよ。ずるいわ」

 

 ロキの知る限りでは、【ディオニュソス・ファミリア】は中堅どころの派閥であり、Lv.2冒険者を複数抱えつつも、あまりぱっとした印象はない。

 主神の性格も関係してか、他派閥と比べて情報漏洩の防止が徹底しているようだ。

 

「ロキのところは遠征から帰ってきたばかりなんだろう? 何か面白い話はないのかい?」

「自分のことは何も言わんくせに、ずけずけとよう言うわ。ま、確かに面白いことはあったけどな」

 

 ディオニュソスに呆れた目を向けつつも、ロキは最近拾った少年についての話題をあげる。

 

「遠征自体は大した収穫なく終わったんやけど、その後で面白い子供を拾ってなぁ。うちの眷族にしたんや」

「へえ、新人が入ったのかい? 君みたいな大手では珍しいじゃないか」

「そうね。よほどその子があなたのお眼鏡に叶ったのかしら」

 

 ここしばらくは募集していなかったロキが、新たに仲間に引き入れた子供。

 その存在に、ディオニュソスとデメテルは関心を寄せる。

 

「まあな。あいつは規格外の才能の持ち主や。それこそ、アイズ以上のな」

「! あの【剣姫】よりも?」

「せや。あいつはいずれこの世界の誰よりも強くなると、うちは確信しとる」

 

 これでもかと言うくらい件の少年を褒め称えるロキに、デメテルもディオニュソスも目を見張った。

 あのロキがここまで評価する子供とは、一体どんな人物なのだろうかと。

 一方のロキも、内心で思考を巡らせていた。

 

(出来ることなら、ナギの情報はなるべく隠匿しておくべきなんやけどな)

 

 『イレギュラー』『特別』『異世界出身』などなど、娯楽に飢えた神々がアホみたいに反応するであろう単語のオンパレードとも言える存在のナギ。

 そんなナギについての情報を他者に明かすのは、あまりよろしくない行動と言える。

 しかし、一方でそれは有効な戦術ともなるものであった。

 

(遅かれ早かれ、ナギはいずれ表舞台に晒される。けれど、今からナギの〝才能〟を強調しておけば、ナギの最大の秘密――『異世界人』やっちゅうことまでは頭が回らんはずや。ま、そもそも普通に思いつけるようなことでもないんやけど、一応の保険やな)

 

 つまるところ、ナギの〝才能〟という一点を全面的に押し出し、その他の秘密を覆い隠そうと言う魂胆である。

 ナギほどの実力であれば、いずれはどうやっても目立ってしまう。

 ならば今のうちから手を打っておこうというのが、ロキの作戦であった。

 

「へえ、君がそこまで評価する子か……一度会ってみたいな。どんな子なんだい?」

「私も気になるわ」

 

 案の定ナギについて食いついてきた。しかし、何がなんでも、という程ではないので、ロキの作戦は功を奏していると言えるだろう。

 ロキは内心でほくそ笑みながら、質問に答える。

 

「ん~、一言で言うと、小生意気な小僧やな。いかにもヤンチャ坊主っちゅう感じの。こいつがまたやること為すことハチャメチャでなぁ」

「あら、男の子なの? かわいいのかしら」

「まあ、顔立ちは整っとるな。将来有望なんは間違いないわ」

「その言い方だと、まだ幼いようにも聞こえるけど?」

「せや。赤毛のヒューマンの子でな、まだ十歳やねん」

 

 十歳。その年齢を知り、今度こそ驚愕を露にした。

 

「その歳で才能を示しているのかい? 末恐ろしいね。ぜひとも一度会ってみたいな」

「そんなこと言ってもあいつはやらんで」

「そんなことは重々承知だよ……」

 

 勧誘は許さん、と告げるロキに、肩を竦めるディオニュソス。と、その時、ディオニュソスの目がある一点で留まった。そして、その顔が驚愕に彩られる。

 しかしロキは、同じようにナギに会いたいと主張するデメテルの方に顔を向けていたために気づかない。

 

「もう、会わせてくれてもいいじゃない。ねえ、ロキ」

「そのでかい胸であいつを誘惑せえへんかったらな」

「あん、いじわる」

「誘惑する気満々やないか!」

 

 先程はデメテルの豊かな胸にたじたじだったロキだが、今はそれをからかえる程度には余裕を見せていた。

 しかしそんな余裕も、次のディオニュソスの言葉で崩れ去る。

 

「と、ところでロキ。ちょっといいかな?」

「あん? どうしたんや、いきなり?」

 

 唐突なディオニュソスの言葉に、眉を潜めるロキ。

 ディオニュソスはロキの背後を指差して、言った。

 

「今、話に出ているその新人って……もしかして彼の事かい?」

「はあ? 何言うとんのや? あいつがこないな所にいる訳――」

 

 何をバカなことを、とロキがディオニュソスの指の先を振り返ると、そこには、

 

「うんめえ! ロキの奴、一人だけこんな美味ぇもん食いにいきやがって。お、こっちもいける!」

 

 手当たり次第に料理を頬張っている少年の姿があった。その特徴は、今しがたロキが挙げたものとぴったり一致していた。

 まぎれもなく、件の少年――ナギ・スプリングフィールドに相違なかった。

 

「何やっとんじゃこのボケー!!」

 

 神の力を封じているとはとても思えない速度で、ナギの首根っこを掴んで会場を出ていくロキ。周囲の神達には、急に一陣の風が吹いたようにしか感じられなかっただろう。

 去っていくロキの姿を見送りながら、ディオニュソスはなるほど、と呟く。『神の宴』に忍び込むとは、確かにかなりぶっとんだ子供だ。

 それから数分して、ロキはひどく疲れた様子で帰ってきた。

 今ごろこの会場の外では、「ラウル! こいつのこと見張っとり! 絶対目ェ離すんやないで! ナギィ! 説教は帰ってから存分にしたるから覚悟せえよ!!」と突然ナギの身柄を押し付けられたラウルの戸惑う姿が見られることだろう。

 

『あれ? あいつさっきここで見たよな? 何でまた入り口から入ってきてんだ?』

『ちょっと外に用事でもあったんじゃないか?』

『まあ、そうだよな』

『つか、すげえ疲れてね?』

『この短時間で何があったんだ……』

 

 何故か再び入り口から入場してくるロキの姿に疑問を覚え、遠巻きに様子を窺う神々もいたが、正確な事情を把握している神はいなかった。

 ロキはそれを見てほっと胸を撫で下ろした。

 そしてすぐさま、先程まで話をしていたディオニュソス達の元まで接近する。

 

「ロキ、さっきの子は……」

「ええか、自分らは何にも見なかった。それがすべてや。わかったか?」

 

 ナギについて尋ねようとしたディオニュソスだが、尋常でないオーラのロキに黙って頷くことしかできない。いつも柔和な雰囲気を崩さないデメテルも同様だった。

 

(これでなんとか証拠隠滅完了や。他の神達(やつら)は気づいてなかったみたいやしな)

 

 ディオニュソス達が黙っていればナギが『宴』に忍び込んでいた事実は隠し通せる。ロキは全力でナギの潜入をなかったことにした。

 ナギをラウルに預けて、わざわざ会場に戻ってきたのはこの為である。

 

「じゃあ、うちはそろそろ行かせてもらうわ」

「あ、ああ」

「え、ええ。またね、ロキ」

 

 疲労を隠せない表情のロキが、ディオニュソス達に背を向ける。

 ナギへの説教もしないといけないし、今日はこれでもう帰ろうかと考えた。

 しかし、視界の端に見覚えのある顔を捉え、考えを改める。

 

(――せっかく見つけたんやし、挨拶だけでもしていくか)

 

 そしてそのまま、本来の目当てであった女神達の元へ歩いていった。

 

「聞きたいことがあったのだが……聞きそびれてしまったな」

 

 そんなロキの後ろ姿を見送りながら、ディオニュソスはぽつりと呟いた。

 

 

 

 

「よお……ファイたん、フレイヤ、ドチビ」

「あら、ロキ。こんばんは」

「本当、久しぶりね。いつ振りかしら」

 

 ロキの挨拶に返事を返すのは、美の女神であるフレイヤと、右目に大きな眼帯をした麗人――ヘファイストス。そして、

 

「何しに来たんだよ、君は……って、何か君、様子がおかしくないかい?」

 

 ロキが常に目の敵にしている、幼い容貌ながらも、巨大な胸を宿す女神――ヘスティアである。

 ヘスティアもまた、自分をおちょくるロキが大嫌いなのだが、今日に限ってちょっかいをかけてこないロキを胡乱げに見つめた。

 

「まあ、ちょっと色々あってな……今はドチビをからかう気力もないわ。まあ、せっかく見つけたんやし、挨拶には来たけど」

 

 ため息を吐くロキに、何があったのか気になるヘスティアだが、ロキの全身から詮索するなというオーラがこれでもかと醸し出されているので、それ以上何も尋ねることはなかった。

 

「本当に久しぶりね、ロキ。貴方の【ファミリア】の名声はよく聞くわよ? 上手くやってるみたいじゃない」

「いやぁー、大成功してるファイたんにそんなこと言われるなんて、うちも出世したなぁー。まあ、確かに今の子達はちょっとうちの自慢なんや」

 

 ヘファイストスに称賛され、ロキは照れ臭そうに頭に手をやる。やはり自分の眷族を褒められるのは嬉しいものだ。それが最大手の鍛冶師系【ファミリア】の主神からとなれば尚更だ。

 

「あ、そうだロキ。君に二つほど頼みがあるんだけど」

「ドチビがうちに? 何や、言うてみい」

 

 今思い出した、といった様子でヘスティアがロキに尋ねる。

 ロキも今はわざわざヘスティアをからかう気にはならないのか、素直に応じる。

 

「じゃあ一つ目。ちょっと聞きたいんだけど、君のところの【剣姫】……ヴァレン某に、付き合っている男や伴侶はいるのかい?」

 

 その質問に、ロキは先程までの疲れた様子など微塵も見せずに即座に回答した。

 

「あほぅ、アイズはうちのお気に入りや。ちょっかい出す奴は八つ裂きにしたる」

「ちっ!」

「何でそのタイミングで舌打ちすんのよ……」

 

 いっそ意中の相手でもいれば、愛しい自分の眷族がフリーになったのに、と黒い思考とともに舌打ちするヘスティアを、ヘファイストスは呆れたような目で見つめる。

 

「これが一つ目の頼みか? じゃあ、もう一つは何なんや?」

「あ、うん。実はこっちの頼み事っていうのが本題でね」

 

 ロキに促されたことで意識を引き戻し、本題を口にするヘスティア。

 

「最近君のところに、ナギ君っていう赤毛の男の子が加入したよね? その子についてなんだけど……」

「――おい、ドチビ。どこであいつのことを知った? あいつに何かしようってんなら、容赦せんぞ」

 

 ナギの名前が出た瞬間、ロキから多大なプレッシャーが放たれる。

 ロキからのプレッシャーをもろに浴びたヘスティアは、慌てて二の句を告げた。

 

「べべ、別にあの子に手を出そうって訳じゃないよ! ただお礼を伝えてもらおうと思っただけで!」

「お礼? 何でドチビがナギに?」

 

 その言葉に、ロキは思わずきょとんとする。

 ナギとヘスティアの間に関係性など全く見えてこない。

 自分の知らない間に何があったと探るような目付きでヘスティアを見つめる。

 

「実は昨日の朝、その子が僕の眷族の怪我を治療して、本拠まで送ってきてくれたんだ。その時はろくに話もできない内にさっさと帰ってしまってね……だから、ちゃんとお礼をしておきたいと思って。でも、他派閥の子供だからそうそう会えないし……それで君に伝言を頼もうと思ったんだ」

「…………嘘は言ってないみたいやな」

 

 いつも目の敵にしている相手だからこそ、よく知っている。目の前の女神が嘘をつけるような性格ではないことを。

 同時に、いつの間にヘスティアの眷族と関わりを持っていたのか後でナギに問い質しておかねば、と心に刻む。

 

「へえ、ロキが新しく引き入れた子供かぁ。興味あるわね」

「私も気になるわ」

「ま、それについてはまた今度な」

「何よ、話してくれたっていいじゃない」

「あいつは秘密兵器みたいなもんやからな。簡単に教えたらつまらんやん」

 

 好奇の眼差しを向けるヘファイストスとフレイヤを尻目に、ロキは適当にその場を言い繕う。

 実際、ヘファイストスに話すのは別段問題ないのだが、もう一方が厄介なのだ。

 

(できる限り、この色ボケ女神に目ェつけられんようにしとかんとな。時間の問題やろうけど)

 

 フレイヤの男癖の悪さは、神々の中では周知の事実だ。その上、子供達の『魂の色』を識別できるというチートスキルまで所持しているのだ。ナギほどの才能があれば、まず間違いなく目をつけられるだろう。

 ナギがロキの庇護下にある以上、奪い取るような真似は出来ないだろうが、ちょっかいを出されるのは気に食わない。

 ナギの実力からいって、有名になるのはそう遠くないことだろうが、できる限りナギをフレイヤから遠ざけておきたいというのが、ロキの本音だった。

 

「仕方ないわね。まあ、ロキの【ファミリア】の子ならすぐに噂になるでしょうし、気長に待つことにするわ」

「それもそうね」

 

 先程ヘスティアに向けたプレッシャーから、ロキが相当新しい眷族を大事にしていると悟り、ヘファイストスはすんなり引き下がる。

 フレイヤの方も、ナギ本人に出会っていないからか、それ以上追求はしなかった。

 

「ところで、さっきから何か騒がしくないかい?」

「ん? んー、確かに何かどたばたしとるなぁ」

 

 ヘスティアが耳に手を当てながら言った言葉に、ロキも同意する。

 話し込んでいて周りに注意を払っていなかったせいで今頃になって気づいたが、【ガネーシャ・ファミリア】の構成員達が忙しなく動き回っているのが見えた。

 何があったのだろうか、と辺りを見回していると、ヘスティアが何かに気づいて指を指した。

 

「ねえ、ロキ……」

「何や、ドチビ?」

「あそこで走り回っているのって、ナギ君じゃないかい?」

「はあ!? まさかあいつ――」

 

 ヘスティアの言葉に嫌な予感が膨れ上がる。

 即座にヘスティアの指の先を確認すると、

 

「待てー!」

「へっ、そんな動きで俺が捕まるかよ!」

「ブフーッ!?」

 

 案の定、ナギがお肉片手に【ガネーシャ・ファミリア】の構成員達に追いかけられていた。

 

(ラウル━━!? 見張っとけ言うたやろがー!! ナギも懲りずに何でまた入って来とんねん!!)

 

 先程のように、構成員達にバレない内ならまだよかった。しかし、すでにナギは見つかってしまっている。

 ロキの頭に、不法侵入、無銭飲食、器物損壊、その他もろもろの余罪が次々と浮かび上がり、滝のように汗が流れ出す。

 

「へえ、あの子がロキの新しい子供かぁ……」

「なるほど、ロキが可愛がる訳ね」

(ぐぬっ、気を付けていた側からこれかい……こなくそ! いや、落ち着け……今問題なんはあっちの方や……)

 

 ヘファイストス、そして、ただでさえ見つかってほしくないフレイヤにまでその姿を見られてしまった。

 その事に色々と思うところはあるが、現状その事にまで頭を回す余裕はない。

 なんとか頭を切り替えて思考を巡らせる。

 

(いずれにせよ、このままやとマズイ……何とかせんと……)

 

 自分とナギの関係性がバレた時が最後だ。何とかして誤魔化さなければならない。

 

「――――い、いやあ、うちの子供とちゃうんやないかなぁ? た、他人の空似とか? 世界にはそっくりな顔が三人はいるっちゅう話やし……は、はははっ」

「ロキ……さすがにその言い訳は苦しいわよ。あんた思いっきり吹き出してたじゃない」

「ファイたん突っ込まんといて!」

「何をひどいことを言っているんだロキ! 自分の子供に対して他人のフリをするだなんて――」

「ドチビは黙っとれ!!」

 

 余計なことを口走ろうとするヘスティアの口を物理的に塞ぐ。全力で誤魔化しにかかったロキだが、容易く看破される。さすがに苦しすぎたようだ。

 むーむー、とヘスティアが声にならない声を上げる中、ロキは脳内で対応策を構築していく。

 

(ま、まあ、ナギが早々捕まるとは思えんし、このままあいつが逃げ切れば万事オーケーや。あいつがうちとの関係を口にしない限り、後はどうとでも誤魔化せる。頼むから余計な事言うんやないで、ナギ……!)

 

 ロキは祈るような気持ちでナギを見る。

 しかし、現実は無情だった。

 逃げ回るナギは目敏くロキを見つけると、顔をそちらに向けて叫んだ。

 

「あっ、おいロキ! てめえ、何自分だけしれっとパーティーに戻ってきてんだ! ずりぃぞこんちくしょう!」

(ドアホー!! 言ったそばからこれかい!!)

 

 尽く期待を裏切るナギに、ロキは頭を抱える。

 他の神も例外に漏れず、ロキの名前に反応した。

 

『おい、ロキの名前が出たぞ』

『ということは、ロキの眷族か!?』

『おいおい、これって結構やべえんじゃねえの?』

『神の宴に子供が潜入するなんて前代未聞だしな。しかもよりにもよってガネーシャの本拠に』

(ペナルティ)は確実だな。お疲れさまでした~』

(うぁああぁぁああああぁああああ!!)

 

 もう言い逃れはできない。完全にロキとの関係がバレてしまった。

 こんな下らない事でギルドから(ペナルティ)を食らうなど、恥にも程がある。

 

「こうなったら、うち自ら捕まえたるー!!」

 

 もはや形振り構ってなどいられない、とロキも捕縛班に加わる。

 

「おおっ、ロキも追いかけてきたか。ずいぶん盛大な鬼ごっこじゃねえか! いいぜ、捕まえてみな!」

 

 そうして、【ガネーシャ・ファミリア】総勢とロキによる鬼ごっこが開始された。

 構成員の青年が飛びかかる。ナギが避け、青年がテーブルに突っ込む。

 呑気にテーブルにある料理を頬張り始めるナギに、背後から忍び寄る。影分身に踏まれる。

 構成員達がナギを囲み、一斉に飛びかかる。ナギがジャンプして避け、同士討ちに遭う。

 

「俺がガネーシャだ!」

 

 ガネーシャ自ら捕えにかかる。

 

「おっ、おっちゃんその仮面カッコいいな!」

「むっ、わかるか少年。そう、この俺がガネーシャである!」

 

 仮面を褒められ、自己アピールしている内に取り逃がす。

 

「おとなしく捕まれやー!!」

「やなこった!」

「ぶへっ!?」

『アポロンを踏み台にしたぁ!?』

 

 ロキが突撃する。とある男神の顔を踏み台に避ける。男神が怒って捕縛班に加わる。

 

『あの子供が逃げ切るのに一万ヴァリス!』

『怒ったアポロンがもう一度踏み台にされるにエリクサー十個!』

『疲労困憊のロキたんを俺が慰めるに星の欠片(スター・チップ)全部!』

『賭けになってねえじゃねえか』

 

 終いには、賭けを始める者まで出始めた。

 会場は混乱を窮め、同時にこれまでにない盛り上がりを見せる。

 

「うわぁ、こんなカオスな宴、見たことないよ」

「ていうか、あのナギって子、すごい身体能力ね。相手は仮にも【ガネーシャ・ファミリア】の精鋭達。それを手玉にとってるなんて」

「ふふ、やっぱり面白い子ね」

 

 大捕物には参加していない、ヘスティア達が遠巻きに見守る。

 しかし、その顔にはどこか楽しそうな表情が浮かんでいた。

 元々暇を持て余して下界に降りてきた神々だ。場を盛り上げてくれるナギの存在に、好感を抱きこそすれ、悪感情など沸いてこなかった。

 

「どうしたどうした! もっと本気で来いよ!」

『上等だこのガキー!』

「いいぜ、いいぜ、いいなオイ! 盛り上がってきたぞ!」

 

 挑発するように笑うナギに向かって、ロキ達はナギに痛い目を見させんと、一致団結して突っ込んでいった。

 

 

 

 

 十分後。

 「飽きた」といって会場を出ていくまで、結局誰もナギを捕まえることは叶わなかった。ナギを追いかけ回していた者達は例外なく疲労困憊で床に突っ伏している。

 

「ああっ、やっぱり中にいたんすか!」

「おっ、ラウルじゃねえか。なんだ、ずっと外にいたのかよ」

 

 入り口から外に出ると、そこにはナギの見張りを命じられたラウルが立っていた。

 お前も中に入ればよかったのに、と告げるナギに、そんな恐れ多いことできるのは君だけっす、とツッコむ。

 

「おいこらラウル! 何すんなり逃げられとんねん!」

「ご、ごめんなさい!」

 

 なんとか復活して後を追ってきたロキが、八つ当たり気味にラウルを怒鳴る。

 

「罰としてしばらくナギのお目付け役に任命する。拒否は許さん!」

「そ、そんなぁ~!」

 

 あまりの罰に泣き言を言うラウル。早速最初の仕事だ、とナギを本拠まで送る役目を仰せつかる。

 ロキはガネーシャと話をつけるために残るとのことだ。もちろん、その後でロキを迎えに戻るようにも言ってある。

 

「じゃあ、先に戻ってるぜ。疲れてるみてえだし、あんまり無理すんなよ」

「誰のせいやと思うてんねん!」

 

 全く悪びれないナギに地団駄を踏む。ロキは不機嫌そうに足音を鳴らしながら、そのまま会場の中に戻っていった。

 それと入れ違うように、一柱の神が、外に出る。

 

「なるほど……彼が、そうか」

 

 通りを歩き去るナギの後ろ姿を見つめながら呟いた声は、風に乗って消えていった。

 

 

 

 

 結局、ロキの嘆願もあり、【ガネーシャ・ファミリア】に借り一つということで事なきを得た。

 ガネーシャがあまり細かいことを気にする性格でなかったことが幸いしたのだろう。そうでもなければ、自分のファミリアの本拠を神の宴の会場になどしないだろうが。

 しかし、(ひと)の口に戸は立てられず、名前こそ特定されていないが、どこぞの【ファミリア】の眷族(こども)が神の宴に乱入して大暴れしたという噂が、迷宮都市(オラリオ)中を駆け巡った。

 その噂を耳にした某ハーフエルフのギルド職員は、「絶対あの子の仕業だ……」と大層頭を抱えていたそうな。

 

 




~おまけ~

「ラウル、あんたナギのお目付け役に任命されたんですって?」
「御愁傷様。これ、使ってくれ。【ディアンケヒト・ファミリア】謹製の胃薬だ」
「リラックス効果のあるアロマよ」
「ヤンチャな子供のしつけ方の本。どこまで効果があるかわからないけどね」

 次々と同僚からプレゼントを渡される。

「こういうのもらうより、代わってもらう方が嬉しいっす」
「「「「や、それは無理」」」」

 満場一致で断られた。
 騒動の種(ナギ)のお目付け役に任命されたラウルの明日はどっちだ!?

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