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第1話 普通とは
普通とは、特筆すべき属性を持たない状態のこと。「特別」「専門」と対比される概念である。類義語として、「尋常」「並み」「人並み」「十人並み」「月並み」「凡」「平凡」「平々凡々」「凡庸」「類型」などがある。
―――以上、Wiki◯ediaより抜粋。
普通という言葉がそこら中に転がっているように、普通の高校生という人種もまた、日本中、世界中に存在している。
それはここにいる高校三年生、
かと言って友達が居ないわけではなく、夢は普通のサラリーマン。
そして中学、高校の6年間、願い続けてきた物は、彼女でも、大金でも無い。
「…二次元行きてぇ…」
「今日もか…お前その言葉1日1回は必ず言うよな。今ので何回目だ?」
「2191回。心の中で言ったのも含めれば21910回目だな」
「数えてたんかい…」
「1日10回は願うようにしてる」
二次元行きてぇなどと呟くこの少年が、先程紹介した茅野君である。
もう一人のこの少年は…友達Aとでもしておこう。
「てかもうすぐ俺ら大学生なんだよなぁ…実感湧かねーや」
「まぁ、それなりに楽しめれば俺はそれでいいや」
「安定してんなぁ…」
「お褒めに預かり恐悦至極」
既に合格通知は受け取り、入学まで残り1週間、今日も2人でカラオケに行ってきたばかりである。ホモではない。
もう1度言っておこう。ホモではない。
偶々今日は予定の合う奴が居なかったのだ。
「明日はどーすんだ?」
「秋葉原」
「あぁ、言ってたなそんな事。土産頼んだ」
「駅の写真を撮ってきてやろう」
「誰得だよ…」
「強いて言うなら駅オタク得?」
他愛もない話をしながら、人通りの少ない道を自転車で走り抜ける。
3月も今日で終わりだというのに、未だ厚めの上着が必要な程度には肌寒い。
日はとっくに沈んでいるため、余計に寒さが沁みる。
そんなこんなで自宅に到着し、友人に別れを告げて家の中に入る。
「ただいまーっと」
「お帰りー」
出迎えてくれたのは母、茅野
某声優さんと苗字までモロ被りだが、いたって普通の主婦である。強いて言うならちょっと抜けているところがあるくらいか。
「遅かったな。夕飯は先に食ったぞ?」
「はいよー」
リビングで国民的週刊漫画雑誌を読んでいたのは、父、茅野
二次元への理解は深く、暇な時は共にゲームをする事もあるが、大抵負ける。曰く、
『お前の攻め方は分かりやすい』
との事。
飯を食い、皿を洗い、自分の部屋に肩掛けの鞄を放り込む。
部屋の大半はライトノベル、普通の小説、特撮玩具などで埋まっており、更に目を引くものが、明らかに手作り感の溢れる小さな社であった。
「二次元神様」と書かれたそれは中学生の時に作った物で、作って以来毎日欠かさず手を合わせている。年明けの初詣も最初はここだ。
「なむなむ…っと」
ノラ◯ミという漫画に影響を受け作ったのだが、これが中々愛着の湧く出来になり、最近は賽銭箱も追加した。1円玉と5円玉以外入れた事が無いが、その辺りは許して貰おう。
参拝(?)を済ませるとノートパソコンを起動し、高2の春頃から続けているオンラインゲームにログインする。
「さーて、本日のデイリークエストは…」
日曜夜に放送している御長寿アニメのあの人を意識した口調で、クエストを進めていく。
最後のモンスターを倒し終わりリザルトを表示したところで、ログアウトして明日の準備をする。
とは言え財布などの小物を鞄に入れるだけなのだが。
……さて。
ここまで読んで頂ければ大体分かって貰えただろう。
見ての通り、この少年は至って普通である。
少年と呼べる年なのかって?細かいことを気にすると禿げるぞ?私が言うのだから間違い無い。
……そんな目で見ないでくれ。自分で言ってて泣きそうになってるんだ。
私が誰なのか、察しの良い人ならもう気付いているだろう。残念ながらこの少年には全く気付いてもらえないまま2年が経過しているが、そんな事はどうでも良い。
「うーし準備完了。目覚ましセット完了。我ながら完璧」
鞄はベッドの脇に置き、とりあえず10時まで携帯弄って寝ようと思いつつ自作の社に目を遣る。
願い続けていればきっと二次元に行ける。そう思って作った物だが、あの時の俺は中学生、右腕が突然疼きだしちゃったりするお年頃だ。願えば行けるなどとは随分甘い考えを持っていたものである。まぁ今もお祈りは続けているがそれは置いておいて。
――現実は非情だ。
どこかのゲーマー兄妹も言っていた。「人生はクソゲーだ」と。
実際その通りだと思う。勝ちすぎた者は妬まれ、省かれる。負け過ぎればこの世で生きていく事すら叶わなくなる。
だからこそ俺は普通が好きだ。
普通でいれば何も言われる事はない。
将来は公務員になり、独身貴族でもやっていれば良い。気楽なものだ。
……本当に、気楽なものだ。
「……なーに真面目に考えてんだか。気持ち悪っ」
ネガティヴな考えは早々に打ち切り、ベッドに寝転がってネットサーフィンを楽しむ。
これが俺の日常。これが普通。
そんな俺の「普通」が木端微塵に砕け散るのは、
―あと9時間ほど、先のお話。
少しはマシになった…?のでしょうか…
ご指摘などなど、お待ちしております。