AtoZの所持者≪改≫   作:GENERAL

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何だかずいぶん長くなってしまいました。


第10話 変身、満を持して…?

 モンドグロッソ二日目、決勝戦。

 日本対ドイツの試合が行われようとしている会場では、とある騒動が起こっていた。

 

「ええい、まだ見つからないのか、織斑選手は!」

「申し訳ありません、どうも『あの情報』が何処かから漏れたようで……」

「何が何でも探し出せ!クソッ、何の価値も無い弟の為に抜け出すとは……」

 

 1時間前、大会主催国である日本政府に一通のメールが届いた。

 長々とした名乗り口上から始まったその文の内容を要約すると、

 

『織斑千冬の弟は預かった。返して欲しければ奴の決勝出場を辞退させろ』

 

 というものだった。

 

 当然このようなふざけたメールに日本政府が対応するはずもなく、決勝戦の準備は着々と進められていた。

 そう、ほんの40分前までは。

 

 しかしメールの内容に不審を抱いた役人の一人が確認すると、本当に誘拐事件が発生していた事が判明した。

 だが姉である千冬と違い、弟の方にこれといって特筆すべき才能もなかった為、日本政府はこの情報を秘匿、何事もないように見せかけて大会を始めようとした。

 ……だがしかし。

 

「情報が漏れるなどありえん……一体何者が……」

 

 20分前、何者かにハッキングを受け、しかもそのメールの文があろうことか織斑千冬のISに転送されてしまった。

 控室にいた千冬は部屋を飛び出し、ISで飛び去ってしまったとの事だ。

 

 会場ではいつまで経っても試合が始まらない事に観客が苛立ち、いつ暴動が起きてもおかしくない雰囲気になっていた。

 

 

 

 

            ◆    ◆    ◆

 

 

 

 

 ――織斑千冬は焦っていた。

 世界初にして世界最強のIS操縦者をここまで焦らせたのは、男性の権利を主張する過激派テロリストであった。

 

 ISの登場により女尊男卑となった世界の頂点に立つ千冬に対し、決勝を前にして逃げ出した臆病者のレッテルを貼ることが出来ればと考え、弟である織斑一夏を会場から攫ったのだった。

 

「どこだ……一体どこにいるんだ……一夏……!」

 

 じっとしていられず飛び出してきたは良いものの、どこに攫われたのかなど検討もつかず、千冬はひたすら空を飛び続けていた。

 

 その時。

 

「着信……?まさか……!」

 

 最悪の知らせを想像し、そんな筈は無いと頭を振って考えを吹き飛ばす。

 震える手で空中投影ディスプレイの応答ボタンを押すと、声が響いてきた。

 

「あー……あー……マイク音量大丈夫……聞こえたら返事をお願いします」

 

 聞こえてきた声は若い男……いや、一夏と同じくらいの年齢だろうか?

 かなり若いであろう事は想像できた。

 

「聞こえている……貴様、何者だ?」

「おっ、本当に通じた。あー……俺はまぁ……ドイツ軍所属の名もなきファンです。弟さんの捜索、協力させていただきたい」

 

 ドイツ軍なのに何故日本語で話しかけてきたんだ?そもそもコイツは何者だ?

 ……いや、今はそんな事はどうでも良い。

 

「協力してくれるのか!?」

「うっ……こ、声が大きいです……」

「あ、あぁ……すまない……」

 

 恐らく向こうで耳を抑えているであろう相手に対し、トーンを落として謝罪する。

 

「まぁ協力するって言ってももう場所は掴んでるんですわ。座標を送るんで来てください。もう終わってるかもしれないけど」

「分かった、すぐに向かう」

 

 通話が終了すると同時に送られてきた座標は、近くの廃工場を示していた。

 

「罠の可能性もあるが……今はこれしか方法がない……」

 

 それにあの声から悪意は感じなかった。

 この場所に一夏がいることを信じ、私は全速力で向かうのだった。

 

 

 

 

            ◆    ◆    ◆

 

 

 

 

 ――40分前、ドイツ軍IS部隊、シュヴァルツェ・ハーゼの訓練場にて。

 

「……胸騒ぎがする」

「?どうした、いきなり」

 

 訓練中だった咲とラウラは動きを止め、話を始める。

 

「うーん、なんつーか……イライラする……いやムカムカする?……うーん……」

「風邪でも引いたんじゃないか?」

「いやそういうんじゃなくて……あぁクソ、ここまで出てるような気がするのに……」

 

 咲が原因不明のもやもや感に苛まれ、訓練どころではなくなっていた。

 

「あ゛ーもう!気持ち悪い!ちょっと吐き出す!」

「吐き出すって……あぁ、アレか」

 

 手に魔力的な何某をかき集め、空に向ける。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

 

 野菜人の王子よろしく、大量のエネルギー弾(直径はやっぱり10cm)を空に放つ。

 青白い弾幕(笑)は天を目指して飛び続け、やがて崩れて消えてしまった。

 

「ふぅ、スッキリ……してないな。まだもやもやしやがるぜチクショウ」

「本当に風邪ではないのか?今までこんな事なかっただろう?」

 

 心配そうに話しかけてくるラウラ。

 

「熱はないっぽいし……怠いってわけでもないし……とにかくもやもやするんだよ」

「ふむ……分かった、一度寮に戻るといい。疲れが出ているのかもしれん」

「疲れ……ねぇ?」

 

 言われてみれば確かに、ここ最近しっかり休んだ覚えがない。

 気付かないうちに疲労がたまっていたのだろうか。

 

「んー……じゃあ少し休んでくるわ。ゴメンな組手の途中なのに」

「そんな事はどうでも良い。早く治すんだぞ?」

「ハハハ……善処いたします、大尉殿」

 

 芝居がかった口調と共に敬礼し、寮へと戻った。

 

 

 

 

            ◆    ◆    ◆

 

 

 

 

「……治んねえ……」

 

 自室に戻って大人しく寝ていたが、もやもやが取れない。

 むしろ悪化している。

 熱はなかったし、体調管理用のスキャナーも使ったが異常はなかった。

 

「……そういや今決勝の時間じゃん」

 

 どうせ寝ているだけだし、何となくテレビをつける。

 すると、

 

「……アレ?織斑選手いなくね?」

 

 ドイツ側は準備完了しているようなのだが、いつまで経っても日本側が現れない。

 若干ブーイングも聞こえてきた。

 

「なんかあったの……づっ!?」

 

 突如、猛烈な頭痛に襲われる。

 

「ぎっ……あ……なんだよ、コレ……」

 

 痛みと共に、頭の中に直接情報がねじ込まれる。

 黒い宇宙、青い星、島、町、廃工場。

 次々と映像が流れ込み、俺は悲鳴をあげる。

 

「クソ……ひょっとしてアレか……能力が手に入る前触れ的な奴か……?」

 

 ありがちだよなこういうの。

 いきなり体に不調が現れて能力に目覚める的な。

 PSY◯EN的な。

 

「にしても収まんねえな……ある程度楽にはなったが……」

 

 映像は既に止まり、今はただ頭痛だけが続いている。

 耐えられないほどではないにせよキツいものはキツい。

 

 

『くっ……静まれ俺の右腕……』

 

 

 

 

 

「……おほぅ!?」

 

 突然目の前に腕付きの光の玉が現れて右腕を左手で抑えていた。

 あまりにも突然すぎておほぅとか言っちゃったよ。

 んほぉとかじゃなくてよかった。

 

『やーやー咲くん、3年ぶりだね。元気してた?』

「……あぁそっか、そういやアンタ日本語で話すんだった」

 

 いきなり日本語で話しかけられ少し戸惑うが、すぐに思い出した。

 来たばかりの頃はクラ姉とよく日本語で話していたが、ドイツ語を覚えてからはほとんど話さなくなったな。

 たまに知らない言葉の意味を聞くときに使うくらいで。

 

『随分染まっちゃって……お母さん悲しいよ……』

「俺の母親は別にいるわ阿呆。んで?何の用だ?プレゼントなら喜んで受け取るからこの頭痛止めてくれないか?てかいつまでも放ったらかしすぎなんだよ馬鹿なの?」

『うわぁん反抗期だぁ』

 

 3年も放置しておくお前が悪いと思う。

 

『まぁ時間も無いから本題に入ろうか。特典のプレゼントに来たってのは当たってるんだけど、ちょっと面倒な事が起きててね』

「面倒な事?」

 

 神に面倒と言わせるとは余程な事と見える。

 

『とりあえず一気に説明するけど、この世界には主人公が元々存在するんだけどさ、そこに君がねじ込まれちゃったもんだから修正力が働いて、元の主人公君が死にかけてるのよ』

「……ハァ!?何?俺以外にも主人公いたの?」

『そりゃあいたさ。ここラノベの世界だもの』

「それは聞いたが元の主人公が居るとは聞いてねえぞこの野郎」

『聞かれなかったからね』

 

 恐らく読んだ事はあるのだろうが、記憶から抜き取られているためどんな作品だったか全く思い出せない。

 無念である。

 

『で、それは困るってことで君に助けてもらいたいのさ』

「あーうん……大体分かった……」

 

 口調が破壊者っぽくなったけど気にしない。

 

「……で、その話とこの頭痛の関係は?」

『んー、あと少しで収まると思うよ?君の予想通りそれは能力が手に入る前触れ的なアレだし』

「mjd?」

『mjd』

 

 言われた通りにしばらく待っていると、なるほど確かに収まってきた。

 さっきまでのが嘘のようだ。

 

『よーし、準備できたね。それじゃあコレ、腰につけてー』

「お、おおおぉぉ、ついに……」

 

 目の前に差し出されたのは、赤と銀の2色で彩られたバックル、ガイアドライバー2G(セカンドジェネレーション)……つまるところがダブルドライバーだった。

 

 玩具と違ってずっしりとした金属の重みがあるそれを言われた通りに腰に装着すると、自動でベルトが巻きつき、マキシマムスロットも展開される。便利なものだ。

 

『それが君の専用IS、名は「ダブル」だ。大事にしなよ?』

「言われなくても大事にするわ!」

 

 念願の夢が叶った。これでやっと俺もIS操縦者に……

 ……アレ?

 今なんて言った?

 

「……コレISなん?」

『?そうに決まってるじゃないか』

 

 何を今更、という感じで答える神様。

 いやちょっと待て。

 

「女しか動かせないんじゃないのか?」

『それが何故か動かせちゃうのが主人公だぜベイビー?』

 

 マジかよすげぇな主人公。

 まぁラノベ的に考えたらそうなるか。普通。

 普通って何だっけ?

 

「まぁISなのはいいとして、メモリは?あと相方は?」

『あーゴメン……それはちょっと待って…』

 

 曰くまだ調整が終わっていないとかで渡せないらしい。無念である。(2回目)

 

『まぁそれだとお話にならないから、はいコレ。一本だけは用意できたからさ』

「これは……おおぉジョーカーメモリ……実物はなんか色々すげぇな……」

 

 T2ジョーカーメモリ。

 劇場版で翔太郎が仮面ライダージョーカーに変身する時に使っていたメモリだ。

 その端子は通常のボディメモリの金色と違い、水色に輝いている。

 

『T2は原作と違って、と言うか元々設定が存在しないからアレだけど組み合わせ自由だ。思う存分やるといいよ』

「ありがとうございます」

 

 しかしここで疑問が発生する。

 ダブルドライバーとメモリ一本、まぁここまではいいとして、

 

「これじゃ変身できなくね?」

『……あぁ!ゴメンゴメン!ちょっとドライバー外して!』

 

 相変わらずというか何というか、どこか抜けている。

 その点だけ見れば母さんにそっくりだな。

 

『えーっと確かこれを……こうするんだよ』

 

 ダブルドライバーの真ん中の部分にある丸いボタンらしき場所―シンキングエンジンと言う演算用回路らしい―を押すと、左側のスロットが消えてロストドライバーに変化した。

 

「スロットが無くなっちゃったわ!」

『これで出来た』

「相変わらずノリいいなぁオイ」

 

 今度溶鉱炉に落としてみようか。

 きっとサムズアップをしながら沈んでいくだろう。

 

『さて、準備は全て完了した。あとは変身するだけだ』

「了解。じゃあ遠慮なく……」

 

 メモリのスタートアップスイッチを押し込み、切り札の記憶(ジョーカーメモリ)を起動させる。

 

【Joker!】

 

「~~~くぅ~~っ!コレだよコレ!」

『感動してるとこ悪いけど早くしてくれないかな?』

「アッハイ」

 

 メモリをスロットに挿し込むと、待機音声が流れ始める。

 さぁ、いよいよだ。

 前世で散々夢見たあの光景を、今、現実に!

 

「変身!」

 

【Joker!】

 

 ドライバーを展開すると旋風が巻き起こり、その強さに思わず目を閉じると、足から装甲が装着されてゆく。

 装着が全て完了すると同時に、目を開いた。

 

「……あれ?」

 

 何か違和感がある。

 まず第一に、視点が高い。

 いつもの1.5倍程度はある。

 そして第二に、目の前を遮るものが何も無い。

 俺は仮面ライダーになったんじゃないのか?

 

 

 恐る恐る下を向くと、そこには――

 

 

「なっ……なっ……なんじゃこりゃあああああぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ――()()()I()S()を装着した自分の姿があったのだった。

 




主人公、ようやくISに乗りました。
次回も説明回になりそうです…
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