3回のリセマラでSSR蘭子をお迎えした私は勝ち組だと信じたい。
――第二回モンドグロッソ決勝戦から、2日が過ぎた。
あの日、織斑選手が棄権という扱いになった為に大会の優勝は自動的にドイツに決まってしまい、全世界の人々が日本政府、ひいては織斑選手にもブーイングを送った。
ドイツは頭を抱えた。
しかしどこから嗅ぎつけたのか、一社のテレビ局が織斑一夏誘拐事件の一連の騒動を纏めてニュースとして放送。
その内容は瞬く間に世界中に広がり、これまでブーイングを送っていた人々は一斉に掌を返し、大会二連覇の可能性を捨ててまで弟の元に向かった織斑選手を褒め称える声が上がり始めた。
……ちなみに、一連の騒動を撮影し、送りつけた人物はこう語ったという。
※音声加工済み
「いや、これ渡しておかないと後で何て言われるか分からないし……いやいや、こっちの話だよ。別に一々ダメ神だの何だの言われるのがうざったいって訳じゃなくてだね……」
※長すぎるため割愛
後日、このインタビューの内容を収録しておいた媒体からはデータが消え、インタビューに関わった全ての人間の記憶からも抹消されてしまったらしいが、それはまた別のお話である。
――そして世間が騒ぎ続ける中、こんな声も上がり始める。
『結局織斑一夏を誘拐したこの犯人は何者なのか』と。
ニュースで使用された動画では、建物から出てきた織斑一夏を姉である千冬が抱きとめ、その後更に建物から出てきた犯人と思しき男を拘束するところで終わっていた。
だがしかし、確保されたその日のうちに犯人が脱走。
顔などはともかく、名前などが全く分からない状態で逃してしまった為に素性を調べることも出来ず終いだったらしい。
――そして、その犯人()は今。
「何やってくれてんだよあんの大馬鹿神があぁぁぁぁ!!!!!」
ただひたすらに己の不運を嘆いていた。
まさか全世界に顔が知れ渡った挙句、織斑選手から優勝を取り上げた極悪犯みたいに騒がれるとは。
こいつぁ1本取られたぜHAHAHA。
笑い声じゃねえよアホ。
「なんでわざわざこんなシーンだけ切り抜いて……助け出したのは俺だって言ってんのにてめえら話聞かなかったじゃねえかこんのマスゴミに無能警察があああぁぁぁ!!!!!」
「まーまーさっくん、一旦落ち着いて」
「これが落ち着いていられるかこん畜生オオオオオオオォォォ」
心の底から叫んだのはいつ振りだろうか。
……割と最近だった。
「ハァー……ハァー……オーケィ落ち着け俺……クールに行こうクールに…」
「そうそう、落ち着いてこれでも飲んで♪」
「おぅサンキュ……!!?!??!!!!???」
渡されたカップの中身を一息で飲み干すと、まず喉が焼けつき、焦点は定まらなくなり、瞳孔は開き、全身から汗が噴き出し、10秒ほど痙攣したのちに……
「あ、美味い」
「くーちゃんが作ったものが不味いわけがないのだよ!」
何と言うか……全身から邪気が抜け出たような気がする。
言うなればあれだ。ジョジョ4部のトニオさんの料理みたいな。
一度食ってみたいとは思っていたがこんな形で叶うとはな。
ちなみに味は完全にオレンジジュースでした。
一体何が材料になっているんだろうか……
「さて、落ち着いたところで話を戻そうか」
「了解……俺の今後について、だよな?」
「そうそう、君がまぁ転生者?って奴で、男なのに何故かISに乗れる上に専用機まで持っちゃって……」
「万が一身バレしようものならドイツがヤバいんだよなぁ……どうしたもんかねコレ……」
今回の騒動の結果ドイツが優勝してしまった為に、この犯人はドイツの回し者なのではないかという推測も挙がっている始末。
あながち間違っていないのがまた恐ろしいところである。
「このまま束さんの研究材料になってくれるなら別に構わないけど?」
「それだけは絶対に嫌だ。俺は何が何でもドイツに帰る」
きっと隊のみんなも心配しているだろう。
ちなみに携帯は自室の机の上に置いてあった為今は持っていないし、ISで連絡を取ろうにも向こうの番号を知らない。八方ふさがりである。
だったら飛べばいいだろとか筋肉モリモリマッチョマンの変態あたりに言われるかもしれないが、それこそあっという間にとっ捕まってしまうので駄目だ。
戦闘機と鬼ごっこなんてしたらまず負ける。
主に俺の経験不足が原因で。
「う〜〜ん…………あっ!じゃあこうしよう!」
「何か良い案があるのか?」
「フッフッフッ、この束さんを侮っちゃあいけないぜ。IS学園に入っちゃえばいいんだよ!」
「IS学園って……あの女だらけの夢の国とか呼ばれてる?」
「まぁIS動かせるのは普通女性限定だからねー。君のそれが本当にISなのかはともかく。ひょっとして君女の子だったりしない?」
「生憎だがちゃんとついてる」
驚いたことにIS学園の中では治外法権が適用されるらしく、一先ず入ってしまえば日本政府も俺に手出しは出来なくなるんだとか。
だが……
「入学試験とかの段階で捕まるんじゃないか?」
「うーーん……その可能性はほとんど無いんじゃないかな」
俺の予想と正反対の事を口にする篠ノ之博士。
「顔は割れてるし、こんだけ騒がれてるんだから絶対捕まるって。てか最悪の場合処刑されるまである」
「いや、忘れてるかもしれないけど君、現時点で世界に1人の男性操縦者だよ?それを普通に警察に引き渡すような大馬鹿はいないんじゃない?この世のほとんどの奴らは馬鹿だけど」
「……あー……そういやそうだった……」
となるとアレか?
女子しかいない学校に1人だけ男子が入ってそこからハーレム王に俺はなる的な展開になっちゃうのか?
生憎俺はハーレムは苦手だし、この世界に来てからラッキースケベが発生した事は一度も無い。念のため。
というかその役はあの主人公君、もとい一夏君の役目だろう。お好きなだけToLOVEるして、どうぞ。
「まー入ったら入ったでハーレム作るなり何なり好きにすればいいさ。とりあえず今は……」
「今は?」
「さっくんを納得いくまで調べ尽くさないとねーーーー!!」
「ちょ、おまっ、馬鹿どこに手ェ突っ込んでんだ離せ!年増の癖にベタベタくっつくんじゃねぇ!」
「ハァ!?束さんまだピチピチの23歳だよ!?」
「あぁそりゃ失敬随分と老け顔あだだだだだ!」
……ちなみに咲の精神年齢は一応束より年下である。
一歳だけだが。
細胞レベルでオーバースペックな科学者と魔力強化によって耐久力だけはやたらと高い転生者の争いは、クロエが夕食の用意を完了させるまで続いたのだった。
◆ ◆ ◆
――そしていつも通り、ドイツでは……
「……発信機の反応は?」
「ある地点から突然反応が途絶えている……恐らくこの地点の周辺にいると考えて間違いないだろう」
「……大丈夫かしら……」
「信じよう、咲を」
下らないケンカの裏側で、何やら大事になりつつあった。
次回、お姉ちゃん達が頑張る……
かもしれません。
ここまで読んでくださった方、闇に飲まれよ!
……なんつって。