あとサブタイの通り……ね。
「……そちらの様子はどうだ」
「異常無し、引き続き出入り口と思しき場所の監視を継続する」
「了解」
太平洋のとある場所に位置する名も無い無人島……いや、今は8人ほど人間が居るが、その島の中心には現在、真っ白な立方体が居座っていた。
一辺の長さはおよそ50mあり、内部からの音は完全にシャットアウト、耐火性対爆性ともに万全、窓は存在しないが内部には陽光が差し込む部屋も存在する謎仕様。
要するに束のラボである。
「……なぁ」
「……」
「……オイ」
「……」
「……老けg「何か言ったかなぁ?」
椅子に座る俺と、その傍で作業に没頭する束。
正直暇で暇でしょうがないです。はい。
「一体何時になったらこっから出してくれんだよ……もう一ヶ月だぞ?」
「そうは言ってもねぇ……まだまだあと二ヶ月は無いと解析終わらないし、どうせ君も暇だろ?」
「だから一刻も早く帰りたいっつってんだろ……」
大掛かりな機械の中心には、俺のISの本体?であるダブルドライバーとジョーカーメモリが置かれている。
神が造ったISを解析しようとしたところ厳重に厳重を重ねてその上に厳重で更に駄目押しに厳重を重ねたようなプロテクトがかかっていたようで、かなり苦労しているらしい。
あの束が一ヶ月かかっても解析しきれないだけの事はある。
「今のところ判明してるデータはほとんど役に立たないものばかりだし……コア・ネットワークには一応繋がってるみたいだけどさ」
「えぇっと、ISの相互情報交換の為のデータ通信ネットワーク……だっけ?」
「そうそう、なんだけどねぇ……必要最低限の情報以外は発信してくれんのよこの子。照れちゃって可愛いんだからまったく」
「さいですか」
機械オタの考える事はよく分からない。
「それよりもさぁ」
「んだよ」
「さっきから外にいる奴らが煩くってしょうがないから、片付けてきてくれない?」
「外……?」
ラボ内にいる為に外の様子なんて確認しようもないのだが、監視カメラでもあるんだろうか?
「まぁ行かなくても別にいいけどねー。そのうちくーちゃんが全部やっつけちゃうし」
「やっつけるって……」
「?普通に殺すけど?」
――ダッシュで外に向かう。
例え関係無い人だとしても殺すのは良くない。
よっぽどの極悪人ならともかく、こんな島まで来たということは調査団か何かだろう。
何の罪もない人をみすみす殺させるほど俺は腐っていない。
何と言っても主人公ですから。
……自分で言ってると虚しくなってくるな。
一応顔を隠すためにバイザーを装着し、外に向かう。
どうかまだ、クロエ……さんが気付いていませんように――
◆ ◆ ◆
「……」
「「「「「……」」」」」
――なんだこの状況。
クロエさんとシュヴァルツェ・ハーゼのみんなが睨み合い、お互いを牽制し合っている。
ちなみに俺はそこから50mほど離れた木に隠れてます。
まだ戦闘は始まっていないようだけど……
「……」
「……」
ラウラが思いっきり怪しげな目で睨んでる……
並び立つと本当にそっくりだよなぁ……
そりゃ気になるわ……
結局その後10分、両者一歩も動かない状況が続いたので強硬手段に出ることにした。
一先ず近くの木によじ登り、そこから音を立てないよう慎重に前方の木へ飛び移る。
「よっ、ほっ、と」
木の上を移動し続け、やがて現場に到着したので、
「とうっ!」
「なっ!?」
「……」
なるべくカッコよさそうな声で叫びながら飛び降り、間に割って入る。
「争いはやめたまへ!私の顔に免じて!」
一応今はバイザーで顔が隠れてるから、バレてはいない……よね?
ちなみに今のは日本語で言いました。念のため。
「……咲?」
「ッ!?」
「その反応……やっぱり咲か!無事だったんだな……良かった……」
「ちょッ、あの、だ、抱きつかないで……」
名前を呼ばれてつい反応してしまい、俺に気づいたラウラが抱きついてきた。
あああ女の子の体が俺の体にていうかいい匂いするしああああああ。
てか俺の精神年齢的に考えるとこれ犯罪にならないだろうか。
俺はロリコンじゃない。恐らく。多分。
「捕まったって聞いて……行方もわからないって……もう……会えないんじゃないかって……」
「あぁ……うん、ゴメンな。心配かけて」
抱きしめ返すのは流石に俺の脳がオーバーヒートする気がするので、頭だけ撫でる。
こんな小さい子泣かせるとかアホか俺は。
「茅野様のお知り合いでしたか……ですが、侵入者は全て排除しろと束様から仰せつかっています。そこを退いてください」
「断る。みんな俺の大切な家族だ。そっちがその気なら全力で抵抗させてもらう」
「……」
「……」
――沈黙が流れる。
みんなが居る手前思いっきり強がってしまったが、ISが無い今の俺ではクロエさんに勝てないだろう。
魔力強化だけで……5分保てば良い方か?
無理矢理にでもドライバーとメモリを持ってくるべきだったか……
だが今は退くわけにはいかない。
この世界で右も左も分からなかった俺に優しくしてくれたこの人達を、全身全霊を賭けて守る。
それが今俺にできる……精一杯の事だ。
『…………よく言った、咲くん』
「!?今の声……ってコレ……!」
突然頭の中に声が響き、俺の目の前にはラボに置いてあるはずのドライバーとメモリが現れた。
慌てて掴み取って腰に巻きつけると、更に別の声が聞こえてくる。
『始めまして、私はジャーヴィス。貴方のIS「ダブル」のコアとして、貴方の相棒として、誠に勝手ながら仕えさせて戴きます』
『……なんかいきなり色んなことが起こりすぎて、言いたい事は山ほどあるが……この場面ならアレを言うべきか?逆かもしれんが聞いてくれジャーヴィス、いや、相棒』
『何なりとお申し付けください。ご主人様』
『……悪魔と相乗りする勇気、あるか?』
『私の魂は常に貴方と共に。どこまでもご一緒させて戴きます』
『そいつは何より……んじゃまぁ、よろしく頼む』
『畏まりました。【Cyclone!】』
「さ、咲、何だそのベルトは……」
「あーー……詳しい事はまた後で話す。取り敢えず今は……【Joker!】下がっててくれ」
あまりに突然すぎて色々と混乱しているが、今はまぁ、盛大にカッコつけさせてもらおうか。
頭の中では仮面ライダーWのオープニングテーマが流れ始め、まるで体温が上昇していくような感覚を覚える。
ジョーカーメモリを持った右手を顔の左側に構えあの時と同じように、今度は二人で――叫ぶ。
『「変身!」』
いつの間にかベルトに装填されていたサイクロンメモリを奥まで押し込み、ジョーカーメモリも装填、ドライバーを展開する。
【Cyclone! Joker!】
一ヶ月前のあの日と同じように旋風が巻き起こり、装甲が装着されていく。
ただしあの時とは何もかもが違い、左半身は黒く細身、右半身はメタリックグリーンで左側と比べるとほんの少しゴツく見えるデザインと、ISにしては珍しい左右非対称型になっていた。
額にはダブルフィーラーが付き、1人だけで変身した時よりも仮面ライダーWらしさが上がっている気がするが、見た目はやはり普通もISである。
「……やっぱまだ駄目か……まぁいいとして、クロエさん?」
「……何でしょう」
クロエさんは突然俺がISを装着した事にあまり動じた様子は無いが、背後にはきっと目を丸くした隊のみんながいるんだろうな。
さっきの台詞が恥ずかしすぎるから絶対振り向かんけども。
とりあえず今は目の前の事に集中しようと、一歩ずつクロエさんに近づきながら喋り続ける。
「……一つ、俺は隊のみんなに嘘を吐いた」
「……?」
「二つ、警察及び機動隊の方々に迷惑をかけた」
「そして三つ、女の子を……泣かせてしまった」
「……一体、何が言いたいのですか?」
意味が分からない、と言いたげな表情で問いかけてくるクロエさん。
まぁいきなり言われたら意味が分からないのも無理はないだろう。
「……俺は自分の罪を数えたぜ。さぁ、クロエさん……いや、クロエ・クロニクル」
左手を前に突き出して相手を指差し、決め台詞を口にする。
「お前の罪を……数えろ!」
……さぁて、ご都合主義のタグを追加してこなくては……