短い上にほぼ説明回ですが。
「……広くね?」
「……だな」
場所は変わって寮の部屋の中、想像していたよりだいぶ広いことに驚いていた。
シュヴァルツェ・ハーゼの自室の2.5倍はありそうだ。
ベッドも高級ホテルのようにモッフモフである。手入れ面倒臭そうだな……
「さて、一夏よ。今からやる事は分かっているな?」
「ああ……悪いが本気で行かせてもらうぜ?咲」
ドドドドドドと周りに効果音でも発生しそうな状況下、俺と一夏は同時に右手の拳を握り後ろに引き、戦闘態勢を整える。
「じゃあ……行くぞ……」
「……来い!」
深く息を吸い、同時に叫ぶ。
「「最ッ初はグー!ジャンケン……」」
拳を突き出して引いたこの瞬間、魔力で視神経を強化し、一夏の右手に全ての意識を集中させる。
微妙な筋肉の動き、指の開き方、勢い……幾つもの要素を検証し、相手の手を予測。
こいつは……間違いなくパーを出すッ……!!
「「ポン!!」」
「いよっシャアアアアァァァ!!!」
「ば、馬鹿な……俺の必殺のパーが……」
結果は勿論俺の勝ちである。チート万歳。
「んじゃあ俺窓際な!文句は言わせん!」
「くっ……無念だ……」
まぁ何を決めてたかと言えば、自分のスペース決めである。
この部屋は南向きだったからどうしても窓際に陣取りたかったのだ。
「さて……次だ。もう話していいぞ、ジャーヴィス」
『おはようございます。咲様』
「え!?なんだよ今の?」
懐に入っているドライバー……ジャーヴィスに話しかけると、どうやらスリープ状態だったらしく返事が返ってきた。
そして一夏は驚いている。
「あぁ、こいつだよ。俺の専用機、中にサポート用のAIが入ってるんだ」
ドライバーを取り出し、一夏に見せる。
本当はAIじゃないが、こう言っておけば納得するだろう。
「せ、専用機って……ひょっとしてどっかの国の代表なのか?て言うか、俺を助けてくれたのって2年前だったよな?その時から持ってるのか?」
「質問が多いな……まぁ順に答えていくぞ、まず俺は……」
◆ ◆ ◆
ここに来るに当たって、俺は自分の身元を説明する言葉を色々考えていた。
一応閣下とも相談した結果、自分の事をこう自称する事にした。
「ど、ドイツ軍の生体兵器って……それ本当なのか?」
「あぁそうだ。ちなみに2年前助けたのはアレだ、日本政府に依頼されてな(大嘘)。」
これである。
ドイツ軍の研究によって生まれたISを使える男(特殊能力付き)という名目で、学園には話が通っているのだ。
出身がドイツなのも妙な力を使えるのもこの説明でゴリ押すことができるのだ。
あとは何故日本人の名前なのかだが、ISの開発者が日本人だったからそれをリスペクトしましたー、とでも言っておけば大丈夫だろう。
そして専用機は俺に目をつけた束から押し付けられた、という設定にしてある。
色々と現存するISとは違うところがあっても、あの天災が作ったとなればみんな納得する筈だ。
万事抜かりは無い。筈。
「ほれほれ、指の先から謎の光〜」
「うおぉ……」
ちなみにこれらの設定は最重要機密として扱われ、決して外部の人間には伝わらないようになっている筈だけど……大丈夫だよな?信じてるぞIS学園。
「まぁ作られたとはいっても俺は俺だ。ちょっと特殊な普通の人間。ビバ日本文化。って事でよろしく頼む」
「……ああ!改めてよろしくな!咲!」
嗚呼美しき友情。
ぶっちゃけ女しかいないこの学園で男友達ができるっていうのは本当に良いことだ。
今だけは神に感謝しておく。
「……さて、俺の事も話し終わったところで、だ。もう終わったな?ジャーヴィス」
『室内に計36個の盗聴器、及びカメラを確認しました。どうなさいますか?』
「壊すに決まってるだろ。どこだ?」
『ではご案内「ちょ、ちょっと待ってくれ!盗聴器?それにカメラって……」
当たり前のように動き出した俺に向かって、一夏がツッコミを入れる。
いや、待てって言われても……
「お前は世界初の男性操縦者だぞ?いやまぁ俺もだけど……まぁ何にせよ監視されてるに決まってるじゃねえか」
「か、監視……」
話してる間にもジャーヴィスの案内を聞きつつ、一つの盗聴器を見つけ出した。
「……こんなちっさいのか……ほれ一夏、何か言いたい事あるか?」
「えっ、いや、急すぎて何とも……」
「そうか、じゃあ言わせてもらおう。こんな事するくらいなら正々堂々インタビューでも来やがれクソ野郎。以上」
指で潰して粉々にし、ゴミ箱に捨てる。
「よーしこの調子でどんどん行こうか。一夏も手伝えー」
「……あ、はい……」
結局全て見つけ出した時には夕方になっており、自分の時間を潰された俺はかなりイライラしたのだった。
犯人分かったらとっちめてやる。絶対にだ。
◆ ◆ ◆
「……せ、生徒会予算で買った高性能盗聴器に超小型カメラが……」
「会長、何をブツブツ…………はぁ……ちょっとお話ししましょうか?」
「ちょ、待って虚ちゃん、これには深い訳が!」
「問答無用です」
その日、学園にとある女生徒の悲鳴が響いたとか。
ジャーヴィスマジ有能。
こんな執事がいたらダメ人間になる自信があります。