……え?ラウラの性格?
あの子は元々純粋な良い子でしょうが。
入学初日、夜。
既に飯も済ませ、部屋でくつろいでいた。
しっかし大変だった……
「何で飯の時に話しかけてくるかね……話すんだったら部屋に来いっての」
「さ、咲って……意外と怖いところあるんだな……」
「いやあれは全部向こうが悪いだろ。俺何かしたか?」
「強いて言うなら殺気を放ってた」
だってよく考えてくれよ。
食堂に行くだけでキャーキャー騒がれるんだぜ?
珍しいのは分かるけどそんなパンダみたいに扱われたら……なぁ?
不機嫌にもなろうて。
ちなみに殺気の出し方は閣下に教わった。最もあの人のは殺気を超えた何かだが。
何をどうやったら人を言葉だけで眠らせられるんですかね……
英雄度か?英雄度が足らんのか?
「いくら顔が良くてもあれじゃ興醒めだわ。てかラウラの方がよっぽど可愛いし。天使だし。マジ天使だし」
「ラウラって……ひょっとして彼女か?」
「?いや家族だけど?」
「じゃあ、妹さんか?」
「妹……とは違う、かなぁ……」
「……?」
そうこうしている内にも時間は過ぎるもので、一夏を先にシャワー室に押し込んだ。
さて……
「そろそろ入ってきたらどうです?」
「あ、バレてた?」
「食堂から尾けてたでしょうが……」
ドアに向かって話しかけると、開いて1人の女生徒が入ってくる。
水色をした髪が外側にはねていて、顔は……割と美人さんである。
どこぞの氷結の魔女に似てなくもない。
てか割とそっくりだと思う。
「はぁい茅野君?ご機嫌いかが?」
「機嫌は最悪ですね。アレどうにかできないんですか?」
アレとは勿論、大量の女生徒たちの事である。
「乙女の迸る情熱を押さえつけるなんて、例え神でも不可能だと思うわよ?」
「さいですか」
駄目だこの人。早くなんとかしないと。
「っと、話が逸れたわね。茅野君?突然だけど君に頼みが「却下」……即答はちょっと酷いと思うなー?」
「どうせロクでもない頼みでしょう。その口ぶりからして割と偉い人ですよね?だったら俺の頼みも聞いてもらえませんか?実は最近ストーカー被害に悩まされてましてね?」
「え、いや、あの、茅野君?女の子の襟を掴んで一体何を……わ、私はまだ心の準備が……」
「それでそのストーカーが中々部屋から出て行こうとしないんですよ。だから……」
何故か急に顔を赤らめてくねくねしだす変態。
もう呼び方は変態で良いよな。
ドアを開き、外に摘まみ出す。
窓から放り投げなかっただけ感謝してほしい。
「二度と入ってくんな。いいね?答えは聞いてない」
「ちょっ、茅野君!話を……」
扉を閉め、鍵をかけ、チェーンもかける。
ついでに魔力で補強。
なんかドンドン叩かれてるが気にしない。
『よろしかったのですか?』
「ああいう輩は無視に限る。どーせハニトラとかその辺だろ?お約束乙だっての」
『咲様、誠に恐縮なのですが、咲様はまだ童t』
「わーー!!そういう事言うな!!台無しじゃねえか折角カッコつけてたのに!」
相棒のコメントが辛辣すぎて辛い。
スレでも立ててやろうか畜生め。
「咲?シャワー空いたぞ?」
「おおそうか分かった直ぐに入る今すぐ入る!」
クソッ、良い感じに主人公してたのに。
まぁ良い、今に見ていろ……俺が完全無欠のなんかカッコいい系主人公になるその時を!
◆ ◆ ◆
「……と思っていた時期が私にも以下略」
IS学園2日目の朝、クローゼットの中に入っていた制服を着て校舎に向かった。
しかし白すぎて落ち着かない。もっとジャパンの学生服リスペクトしてもいいのよ?
軍服の黒さが恋しい。
ちなみに今朝の食堂では誰にも話しかけられずに済んだ。実にめでたい。
できればこのまま放っておいて欲しい。
おばちゃんの笑顔が眩しかったです。
「全員揃っているな。ではホームルームを始める。先ずはクラス代表決めだ」
先生曰く、要するに学級委員のようなものらしい。
普通と違うところと言えば、一ヶ月後にあるクラス代表戦に出なければいけない事か。
正直やりたい。すっごくやりたい。
折角専用機持ってるんだし。
「自薦他薦は問わないが、推薦された者に拒否権は無いと思え。さぁ、やりたい奴は手を挙げろ」
何故拒否権を無くす必要があるのか。コレガワカラナイ
まぁ良いとして、
「じゃあ俺、自薦します」
「む……茅野か。確か専用機を持っていたな?」
「ええまぁ、一応」
専用機持ちである事をさらっと明かすと、どよめきが起こる。
まぁそりゃそうか。467機しか無いISの一機を所持してる訳だし。
もっとも俺のは束が作ったものではないため、その中には含まれないが。
「じゃあ私は織斑君を推薦します!」
「私もー!」
「ええっ!?俺か!?」
まぁ、うん。知ってた。
お約束すぎて何とも言えんな。
そして2人で熱いバトルを繰り広げるんですね分かります。
いいじゃないの。こういう展開は嫌いじゃないわ。
「ふむ、ではこの2人以外に誰か居るか?居なければこの2人で……」
「はい、
「お前は……イギリス代表候補生、セシリア・オルコットか」
そう言って手を挙げたのは、長い金髪をドリル型に纏めた、何ともまぁお嬢様って感じの奴だった。
というか今袖がチラッと見えたが、何かフリルっぽいの付いてなかったか?
ひょっとしたら現実じゃ有り得ない制服改造が許可されているのかもしれない。
後で聞いてみるか。
代表候補生についての説明を先生がしてくれたが、まぁ文字通りその国家の代表になるかもしれない人間だそうだ。
中には専用機が与えられている者も居るらしく、他のクラスにも何人か居るとの事だ。
「ではこの三人で後日、ISを用いたクラス代表決定戦を行う。日程は分かり次第連絡する。良いな?」
「「「はい」」」
そういや一夏って専用機……持ってないって言ってたな。昨日。
大丈夫だろうか。
「では授業に入る。山田先生?よろしくお願いします」
「は、はいっ!」
そんなことを考えていると、教室のドアが開いて新しい先生……先生?が入ってきた。
髪の色はこれまた珍しい緑色で、かなり小柄な体格はまるで小動物のよう……だったが、一部だけ百獣の王もびっくりのサイズだった。
束とほぼ同レベル。
「え、えぇっと……副担任の山田真耶です。みなさん、よろしくお願いしまひゅ!」
(((((噛んだ……)))))
赤面してプルプルと震えている山田先生。
一瞬でクラスの人間を和ませるのはある意味才能と言えるだろう。
◆ ◆ ◆
まぁその後は特に変わった事は無く、偶に噛んだりする山田先生を見てほのぼのしながら1時間目が終わった。
「んで一夏君?どこが分からないって?」
「いや、ほぼ全部ってさっきも……」
さっきの授業中判明したのだが、コイツ結構抜けている。
入学前に渡された(らしい)参考書を捨ててしまっただの、山田先生に分からないところを聞かれれば全部だだの。
「俺も予習はしてないが流石にここまでは分かるから……帰ったら補修な。覚悟しとけ」
「うぅ……面目無い……」
何故か今のやりとりを見たクラスメイトが騒がしい。
腐った人が混じってるんだろうか?
これが本当のぞんぞんびよりってか。何も嬉しくないわ。
なんて馬鹿な事を考えていると、
「ちょっといいか?」
「少しよろしくて?」
いきなり2人に話しかけられた。
一人はあの金髪ドリルっ娘、もう一人は……知らんな。誰だ?
「箒……?お前、箒か?」
「知り合いか?」
「あぁ、幼馴染だ。」
同じクラスなのに何で今気づいて……あぁ、昨日は俺が乱入したんでした。
咲くんうっかり。てへぺろ。
「あれ、咲……顔色悪いぞ……?」
「いや大丈夫、ちょっと自分に対して吐き気がした」
似合わない事はするもんじゃないね。
「それで、その箒さん?は良いとして、オルコットさんは何の用?」
「私は茅野さんに用がありますの」
「私は一夏に……」
結局、一夏は箒さんとやらに廊下に連れて行かれ、後には俺だけが残った。
とりあえずこっちから話しかけるか。
「んで、何の用だって?」
「少しお聞きしたいのですが、貴方もどこかの代表候補生の方なのですか?専用機をお持ちになっていると聞きましたので」
もっとも、男の代表候補生など聞いた事がありませんが、と付け加えられる。
まぁ大体言いたいことは分かった。正直に答えよう。
「いや、俺は今の所どこの国にも属していない。勿論、日本にもな」
「……?では専用機をどうやって手に入れられたのですか?」
「コイツは束から貰ったモンだ。IS開発者の、な」
そう言ってドライバーを取り出して見せると、またも教室からどよめきが以下略。
目の前のオルコットさんも俺の台詞に少し驚いた様子を見せたが、直ぐにいつもの澄まし顔に戻った。
「……成る程、そういう事でしたか」
「あぁそういう事だ。まぁ専用機持ち同士仲良く……」
差し出そうとした手は、直ぐに払われた。
まぁ予想はしていたが、これだけの美少女にこんな扱いをされると色々内面にダメージが来る。
絶対に顔には出さないようにしつつ、一応問いかける。
「……何でこんな扱いされなきゃいけないのか、一応聞いてもいいか?」
「そんなの決まっていますわ。貴方が男で、しかも力を手に入れて調子に乗っている、最低最悪の人間だからです」
蔑んだ目でこちらを見るオルコットさん。
やだそんな目で見ないで興奮しちゃう。しません。
「私と同じ代表候補生であれば少しは見直そうかとも思いましたが、どこの国にもついていない上にISは篠ノ之博士に貰った?巫山戯るのも大概にしたほうが良いですわよ?」
取り敢えずこの人が男嫌いの高慢ちきだという事は大いに分かった。
あとついでに相手の力量も測れないらしい。
「束に貰ったのは本当なんだがなぁ……まぁ良い、ここで口喧嘩しててもらちがあかん。という事で拳で語り合いましょうやオルコットさん。もし俺がアンタに勝ったら、さっきの最低最悪発言は取り消してもらおう。OK?」
「まさか、私に勝つつもりですの?」
「そりゃ勿論、俺負けるの嫌いだし」
目線と目線がぶつかり合い、火花が散っているように見える。
結局休み時間の終了を告げるチャイムと同時に、オルコットさんは席へ戻って行った。
同時に廊下から一夏も帰ってくる。
「咲、結局あの人と何話してたんだ?」
「んーー……宣戦布告?」
作戦練らないとなー、と呟く咲の口元は大いににやけていた。
ここのセシリアは多少は常識があります。
他国をいきなり貶すような事はしませんが、男嫌いは相変わらず、といった感じです。