短いですがどうぞ。
「……暇だ」
あくる日の事。
珍しく閣下から直々に休めと言われ、寮の自室に引きこもらざるを得なくなっていた。
外に出ようにもドイツの地理は分からない。
携帯はこの前ぶっ壊して修理に出してるし……
「……ネトゲでもするか」
一応軍隊に所属している為それなりに金は持っているのだが、いかんせん使い道が無い。
特撮玩具などの類は集めようにもこの部屋はあまり広くなく、ある程度集めた所で棚がいっぱいになってしまったのだ。
そこで無駄にある金を少しでも使おうと、廃スペックなパソコンを購入し夜中などに楽しむことにしたのである。
最近はツイッテーで知り合った「Dan」って人と仲良くなった。
よく友人の朴念仁さに呆れるツイートをしているが、その友人はよほどモテるのだろう。
爆発すればいいのに。
……話が逸れた。
とにかく今はこの有り余る時間を有意義に使うのだ。
スリープ状態を解除し、いざ冒険の世界へ……
「咲、居るか?」
……旅立てなかった。
ドアを開けると、立っていたのはラウラだった。
「おぉ、どうした?……ってか今日ラウラ休みだったっけ?」
「それが何故か閣下直々に……」
「OK把握したわ」
あのジジイめ。
今度補佐官の人に色々言いつけてやる。
「それでなんだが、ほら、これを見ろ!」
「?えーと……オクトーバーフェスト?なんかの祭りか?」
「ああ、毎年この時期になるとドイツでは大きな祭りを開くんだ。まぁ私も行ったことは無いんだが……」
どうもかなり大きい……というか世界規模の祭りらしく、このためにドイツを訪れる人も少なくないとか。
会場ではビールやらソーセージやらが大量に振る舞われるそうだ。
……ビールか……
一応現在の体は元の俺の体が組み替えられただけなので、アルコールの吸収などにはあまり問題は無い。
問題は、無い。いいね?
だがドイツでは飲酒は16歳からと法律が……
……待てよ?
「なぁラウラ、保護者の同伴があれば16歳未満でも酒は飲めたよな?」
「?あ、あぁ……まぁビールに限って、だがな」
「……良い事思いついた」
◆ ◆ ◆
「……それで、何で私なのですか?咲」
「だって一応一番年上だし、隊長やってるんだからストレスだって溜まるだろ?偶には発散しないと」
「全く……いきなり元帥閣下が訓練場に来たから何事かと思いましたよ…」
ちょっと脅しをかけたらクラリッサも休みにしてくれた閣下に感謝しないとな。
「さーさー、早く行こうぜ隊長!」
「はいはい……」
クラリッサの運転する車で会場へと向かった。
◆ ◆ ◆
「お、おおおぉぉぉ……何じゃこりゃあ……」
「人が多いな…祭りとはこういうものなのか?」
会場は人でごった返し、入場するのも一苦労だった。
「私も来るのは初めて……って咲―!」
「おぉ!兄ちゃん若いのにいい飲みっぷりじゃねえの!」
「んっ……ぶはぁ!美味い!もう一杯!」
ジョッキでビールを買い、一気に流し込む。
前世では一口飲んで苦さに顔をしかめていたが、味覚が変わったのか凄く美味しく感じる。
不思議なものだ。
「その服……軍の人かい?」
「あぁ、今日は休憩の日なんだ」
その言葉を聞いた屋台のオッサンがニヤリと笑い、日本語で話しかけてくる。
「じゃあ、明日は?」
まさか、このオッサン……!
いや、確かめなければ……
この返しには、あのセリフを!
「ドイツ軍閉店の日!」
「「はっはっはっはっは!!」」
何と言う事だ、例のアレのネタが通じてしまったではないか。
ISを開発した日本が注目されているのは知っていたが、こんな所にネタが通じる人がいるとは思わなかった。
しかもこんなオッサンに。
「いやあ驚いた、アンタ日本人だろう?なんでまた軍なんかに?」
「それが色々ありましてね……他言無用で頼むよ、もう一杯買うからさ」
「あいよ!楽しんでいきな!」
人の良いオッサンで助かった。
軍服は脱いでくるべきだったか…まあいっか。どうせ番外編だ。
「さ、咲?大丈夫なのか?その……一気にあんなに飲んで」
ちなみに会場で使用されているジョッキはかなり大きい。
「んっ……くっ……ぶはぁ……大丈夫らねえか?ほれちゃんと歩けてふ」
「そっちは壁だ……」
なんだか視界が鮮やかだ。
それにふわふわと気分も良い。
酒ってこんなに良い物だったのか……
「ほら、しっかり掴まれ。座れるところを探すぞ?」
「うぇい……」
ふらふらと千鳥足で歩く咲を、ラウラが脇から支える。
傍から見れば夫婦のようだが、年齢的には中学生だ。
ちなみにクラリッサは鼻を押さえていた。
「……落ち着いたか?」
「あー……うん、多分落ち着いてる。さっきは若干フラフラしたけど」
「全く……いくら飲むのが許可されてるとはいえ、この年であの量は体に悪いぞ?」
「すいませんでした……」
一先ず座り、ラウラに貰った水を飲んだら大分回復した。
どうもアルコールの分解が速い……というか体の異常を強制的に直されているような感じだった。
これも魔力的な何某のお蔭なんだろうか?
「しかし、こんな物のどこが良いんだ?さっき一口貰ったが苦いだけだったぞ?」
「いやアレが良いんだって。というか貰ったって……?」
「?咲の持っていたジョッキにはまだ少し残っていたからな。持たせておいたら危なそうだったから私が飲み干した」
何事も無かったように話すラウラ。
……俺の持ってたやつに口を付けたって……
それってつまり間接…………!!?!?
「む、どうした咲、顔が赤いぞ?」
「さ、酒飲んだからな!ハハハ……」
イカンイカン……何を動揺してるんだ俺は……
ラウラは家族じゃないか……これぐらい普通だ普通……
普通……だよね?
「ほ、ほら、俺は回復したからさ、今度はソーセージ食いに行こうぜ!な!」
「うむ!他にもいろいろ見て回ろう!」
強引に話を逸らし、ラウラの手を掴んで会場内に飛び出していく。
こんな日常がいつまでも続きますようにと、密かに願うのだった。
◆ ◆ ◆
ほんの少しのおまけ
――その後。
「ご来場のお客様に迷子のお知らせを……」
「咲――!ラウラ――!」
自分で書いてて砂糖吐きそうになるとかこれもう分かんねぇな……
ちなみに咲は方向音痴じゃないです。単純に飲みすぎで酔ってました。