これはいけない。
――そんなこんなで。
「一週間経っちまったなぁ……」
「だな……」
特訓開始から一週間、今日はクラス代表決定戦の日である。
あれからは毎日徒手空拳の練習をしつつ、偶に箒さんから剣道を教わったりして放課後を過ごしていた。
俺自身は大して成長していないが、何と言っても一夏がヤバい。
どれだけヤバいかって言うと受け流しをほぼ完璧にマスターしたレベル。
俺あれ完全習得するのに2ヶ月くらいかかったんですけど……
「そういやISは今日届くんだったか?」
「あぁ、山田先生がそう言って……「織斑く〜ん!」っと、来たみたいだ」
今いる場所はアリーナにISを射出する為のカタパルトがある倉庫のような部屋――ピットと言うらしい――だ。
壁やら何やら至る所がメカメカしく思いっきり男心をくすぐられたわけだが、触ろうとしたら織斑先生に止められた。割とやんわりと。
この人こんなに優しい人だったか?
多分負い目を感じてるんだろうけど、俺からしたら既にどうでも良い事なのでとっとと普通の態度に戻って欲しいというのが本音である。
「はぁ、はぁ……お、お待たせしました!織斑君の専用機が、ついさっき……」
「山田先生、取り敢えず落ち着いて深呼吸を」
「は、はい……すぅ……はぁ……」
大きく息を吸って吐くたびに山田先生の胸部装甲もとい主砲が以下略。
眼福眼福。
「では、織斑先生!」
「うむ」
壁のボタンを織斑先生が押すと傍の壁が開き、奥からISが出てくる。
鈍い銀色に輝いていて、かなり渋めだ。
いや嫌いじゃないけど、嫌いじゃないけど……地味じゃね?
あ、京水さんはお帰りください。
「これが織斑君の専用機、白式です!」
「アリーナの使用時間の都合上、フォーマットとフィッティングは試合中に何とかしてもらう。出来るな?出来なければ負けるだけだが」
フォーマットとフィッティング……あぁ成る程。
詰まる所コイツはまだ専用機として完成していないのだ。
しばらく乗っていれば搭乗者に適応した形になるのだろう。良くできてるよなぁ。
「試合の順番だが、一回戦はオルコット対織斑、二回戦はオルコット対茅野だ。奴は代表候補生だからな。万が一お前達二人とも勝ってしまった場合は三回戦を行う」
「お、織斑先生!?アリーナの使用時間の延長は……」
「何か?」
「い、いえ……」
……山田先生、大変だな……
これ個人的には勝ちたいけど山田先生の事を考えると……
まぁいっか。
勝てばよかろうなのだ。
「まぁなんだ、三回戦やりたいから勝て。一夏」
「あぁ、分かってる!」
「ええぇ!?」
この一週間の特訓の成果、見せてもらおうじゃないの。
カタパルトで射出されアリーナに飛び立っていく一夏を見送り、モニターを見つめる。
◆ ◆ ◆
「……一夏君?」
「はい」
「俺の言いたい事は分かるな?」
「はい」
「言わなきゃいけない事は?」
「ホントすいません」
――結論から言うと、一夏は負けた。
序盤は押していたのだ。武装も何も無い状況で手の甲を使った受け流しだけでオルコット……さん?でいいか。オルコットさんのIS……ブルーティアーズのビット兵器から放たれるレーザーを対処していたのだ。大したものだと思う。
そして弾幕を全て受け流してドヤ顔してからの一次移行、ここまでは良かった。完全に主人公してた。UCすら流れてた。
だがその後展開した武装が何とびっくり、自分の
姉である織斑先生の現役時代と同じ武器で興奮したのか、自分のSEが減り続けているのにも気付かず戦闘を続けた結果、エネルギー切れで試合終了、という訳だ。
「お前さぁ……SE減ってんの気づいてなかったの?ねぇ?」
「正直興奮してました。反省してます」
「ハァ……まぁ良い、そこで見ておれ」
「咲……勝つよな?」
「当然。俺を誰だと思ってやがる」
お説教も程々にして、展開準備をする事にしよう。
ISスーツを着ているため手に持っていたドライバーを腰に押し当て、ベルトを巻きつける。
「茅野君のIS……変わってますね?」
「えぇまぁ、ちょっと特殊なもので。ジャーヴィス?」
『準備完了しております』
「そいつは結構」
「しゃ、喋りましたよ?!」
いちいちリアクションが可愛いなぁこの人。いやあざといと言った方が正しいか。
「こういうISなんですよ。じゃ、行くぜ?相棒」
【Joker!】
『了解しました』
【Cyclone!】
相変わらずジャーヴィス側は何処で鳴らしてるのかわからないガイアウィスパーを聞き、右腕をいつもと同じようにして構える。
『「変身」』
【Cyclone!Joker!】
メモリを叩き込んでドライバーを展開、いつも通り装着する。
あ、両手を横に広げるあのポーズも忘れずに。
「これが咲のISか……展開面倒臭くないか?それ」
「ロマンだよロマン。んじゃ、行ってくる」
カタパルトに脚をセットし、空へ飛び立つ。
……そう、飛び立とうとしたのだ。
だが。
『スラスターの損傷が修復されておりません。飛行中止します』
「……は?」
状況が飲み込めず、重力に従って下へ落下していく。
幸いにも真っ逆さまに落ちるようなことはなかったので、周りからはただ着地しただけに見えているだろうが、違う。飛べないんです。あいきゃんのっとふらい。
そこ、しゃるうぃだいぶとか言わない。
「ちょっと待て……自動修復とか無かったのか?」
『その様な機能は御座いません』
ひそひそ声で話しかけると絶望が返ってきた。
ふむ。
……これはちょいと……
「……ヤバいかもしれんね」
頭上に浮かぶオルコットさんを見上げながら、状況を打破する方法を必死で模索する。
そして思いついた方法は――
「……これに賭けるしかない、か」
一発限りの、大博打であった。
次回、いよいよ……?
お楽しみに。