いやぁ長かった……
さぁ次はぽいぽいだ(白目
「……咲の奴、なんで飛ばないんだ?」
「あれも作戦……なんでしょうか?」
「…………」
――言えない。
まさか自分が投げつけた石が原因だなんて絶対言えない。
いつも通りの凜とした表情に見える千冬の内心は正直ヒヤッヒヤであった。
「……すまん、茅野」
試合が終わったら謝ろう。
そう決意した千冬だった。
◆ ◆ ◆
「……さてジャーヴィス、今からやらなきゃいけない事は……分かってるよな?」
『成功率はおよそ50%ですが、本当に実行されるのですか?』
「当たり前だろ。つかこの状況で他にどうしろってんだよ」
『……畏まりました』
状況は絶望的だ。
空を飛べるか飛べないかだけで、戦いには大きな差が生じる。
ましてや相手は遠距離タイプだ。このままハメ殺されてもおかしくは無い。
よって今の俺がする事はただ一つ。
そう。
「……オルコットさん、少しは男を見直す気になったか?」
「……ええ」
――時間稼ぎである。
確かに賭けに出るとは言ったが、それにも時間が必要なのだ。具体的に言うとあと10分くらい。
汚いと言われても構わない。俺だってあの子の気持ちを利用するのは卑怯だと分かってる。
だがしかしあれだけの啖呵を切ってしまった以上、勝たなければ今後の俺の学園生活に大きな支障をきたす。
代表候補生にケンカ売ってボロ負けしたんだってーwwwとか言われたら二度と立ち直れない。断言する。二度と立ち直れない。
よって俺は勝たなければならない。俺自身の未来の為に!
『失礼ですが咲様、とても格好悪いです』
「るっさい」
相棒からのツッコミはさて置き、依然として上に浮かぶオルコットさんと少しでも長く話すべく口を開く。
「さっきの戦闘で分かった筈だ。男だからってだけで見下すのがどれだけ馬鹿な事か」
「……ええ、確かにあの人は強かったですわ。彼があと三十分だけでも長くISに乗っていたら……きっと負けていたでしょう」
「まぁ慢心して負けたけどな。そこは否定しない」
「ぐふっ……」
「お、織斑君?!」
「だが次はああは行かない、決着をつけようじゃないかオルコットさん。俺が只の力に溺れた馬鹿な男なのか、否か!」
「……ええ!全力でお相手させていただきますわ!」
敵IS、射撃体勢に移行。
空中に浮かぶ文字を眺めながら、次の行動の準備をする。
「たったの数分しか稼げんかったが……どうだ?ジャーヴィス」
『PICは正常に機能しています。ですが……』
「何だ、はっきり言ってくれ」
『スラスターだけでなく反重力翼も片方損傷しています。飛行は絶望的です』
「なっ……ひょっとして一発目に貰ったアレか?二箇所もぶっ壊されてたのかよ……」
クソ、せめてアレだけでも生きてれば上に飛ぶ事は出来たのに。
まぁ無い物ねだりのI want youしてても仕方がない。
会話を終え、空から飛んでくる無数のレーザーを躱し、受け流し、更に時間を稼ぐ。
受け流すだけでも
「先程から何やら独り言を言っているようですが……飛ばないのはハンデのつもりですの?」
「色々事情が……あるんですよッ!」
本来ならサイクロンメモリの力を引き出せばスラスターがどうのこうのは無視して空を飛べる筈なのだ。
ただでさえ強力なガイアメモリ、しかも強化版であるT2メモリを使用しているにも関わらずそれができないのには訳がある。
「ジャーヴィス、まだか?」
『残り二分です。耐えて下さい』
「了解……!」
先程の一夏と違い、俺はとにかく避ける。避ける。偶に受け流す。
逃げに徹する俺の姿に観客席のクラスメイトはざわつき……というか非難の目を向け始めた。ごめんなさい、精神的に来るからやめてください。
「くっ……いつまでも避けていられると思ったら大間違いですわ!」
レーザーの速度が更に上がり、とうとう自分の速度に追いつかれた。
脚から腰にかけて被弾し、SEを大きく削られる。
「ヤバッ……」
「捉え、ましたわっ!」
食らった際の一瞬の隙を見逃さず、レーザーの雨が咲に降り注ぐ。
◆ ◆ ◆
「咲!」
「か、茅野君……」
「……ハァ……機体に救われた、と言うよりは狙っていたな?アイツは」
「「……え?」」
◆ ◆ ◆
「……な、何ですの、この風は……」
大量のレーザーが咲に当たる直前、突如咲を中心として爆発的な風が巻き起こった。
ビットすら吹き飛ばしたその風はやがて収束し、中心から現れたのは――
「フゥーー……間に合った……」
先程までと変わらず、緑と黒の二色で彩られたIS……いや、非対称だったデザインが纏まり、完全なる左右対称になっている。
淡い光を放ち、機体からは常に風が噴出していた。
「ま、まさか……貴方も?」
「……ずっと不思議だったんだよ。どう考えてもスペックが弱すぎてな」
初めて装着した日も、束のラボでジャーヴィスと出会った時も違和感を覚えていた。
馴染むようで馴染まない、微妙な感覚。
それは今や完全に取り払われ、身体は心地良い全能感に包まれている。
IS「ダブル」の
「さて……と」
ドライバーを展開前の状態に戻し、オルコットさんに正面から向き合う。
「じゃあ改めて、見せてやるよ……俺の……変身!」
【Cyclone!Joker!】
腕をクロスさせて再度ドライバーを展開すると、ダブルの装甲はバラバラになり、身体と完全に一体化していく。
脚、腰、胸、腕……己の肉体を地球の記憶の強大なエネルギーによって変質させていく。
顔には変身時特有の紋様が浮かび、真紅の複眼が目立つ仮面を纏って変身が完了した。
「ダブル改め『
右手を構え、ジャーヴィスも一緒に決め台詞を叫ぶ。
『「お前の罪を……数えろ!」』
ようやく変身まで辿り着きました。時間掛け過ぎた気もしますが後悔はしていません。
そして最近UA数が2万を超えました。ありがとうございます。
これからもよろしくお願い申し上げます。