違うんです、決して白猫で島掘りに集中していた訳ではないんです。
ノアをお迎えしたら投稿しようなんてそんな事考えてなかったです。
「ふっ!はっ!せいッ!」
「踏み込みが甘い、狙いが見え見え、キックは使うなと言った筈だ」
「ちょっ、うぉわっ!」
ゴールデンウィーク初日のパーティが終わり、2日目。
訓練所で閣下と久々の組手をしていた。
組手と言っても、ほぼ俺が攻めて閣下が捌くだけだ。
「痛つつ……普通の人は片手で人の足掴んで投げませんよ閣下……」
「それがどうした、現に今やっただろう」
「ソッスネ」
なんだこの筋肉式言いくるめは。しかもなまじ威圧感があるから反論できないし。
なんなの?俺のアイデアがファンブルでもしてるの?
ダイスの
「咲—!目だー!目を狙えー!」
「股間も効果的ですよお兄様—!」
自分たちの訓練をしつつ俺たちの方も見ているらしいラウラとクラリッサから檄が飛んでくる。
あとお兄様言うな。
「じゃあ遠慮無く!」
「おっと、そう簡単にはやらせんぞ?」
目潰しを繰り出すも容易く避けられる。
だがその仰け反った姿勢なら……!
「よっ、オラァッ!」
「なっ……ぐあッ!」
まるで何かに引っ張られたかのように勢いよく体勢を崩した閣下は、後頭部を思い切り地面に打ち付けた。
別にこの程度ならこの人(?)には大したダメージにならないから気にする必要はない。
「ぬぅ……あの糸で引っ張ったか。しかも今回のは……」
「ええ、見えないようにしてみました。頭は平気ですか?」
「この程度どうという事はない」
一応聞いたが、やはりダメージになっていないようだ。
これだから人外はいけない。
え?ブーメラン?
「さて、まだまだ終わら……」
「やはりここにいましたか閣下。さ、仕事に戻りますよ」
「なっ、もう気づかれ……あはははははは!!!そ、その棒はやめがははははははは!!」
突如として閣下の後ろに現れた人は、電磁くすぐり棒を持った補佐官殿だった。
両脇腹に当てられた閣下は見事に大爆笑している。
あれ実際やられたら相当キツいらしい。
「お久しぶりです、補佐官殿」
「はい、一ヶ月ぶりですね茅野さん。……さぁ閣下、貴方の相手は書類が引き継いでくれます。戻りますよ」
「わ、分かった……分かったからその棒はしまってくれ、頼む」
引き摺られるように本部へと戻っていく閣下を敬礼して見送ると、俺はラウラたちの元へ駆け寄る。
「今日は15分でしたか。また短くなりましたね」
「最初期は2、3時間経ってから補佐官殿が来ていたからな……あの人も苦労しているのだろう」
「まぁ閣下ならすぐ戻ってくるだろ」
いつもあんな調子だがあれでも元帥だ。
やる時はちゃんと仕事をしているし、手際も良い。
「っとそうだ、突然なんだけどラウラに頼みがあって……」
「む?」
「……模擬戦、やってくれないか?」
◆ ◆ ◆
――なんやかんやあって1時間後。
「……しかし驚いたぞ、まさかISの模擬戦を申し込んでくるとは」
「いやぁ、学園だとあまりできなくてな。……色々事件もあるし」
「む、何か言ったか?」
「いんや何も?」
シュヴァルツェ・ハーゼは実戦を想定したIS部隊だ。
故にISを使った訓練はアリーナなどではなく、屋外の演習場で行われる。
日本の自衛隊の演習場みたいなものだ。
秋の夕方とかに行くとススキが綺麗なんだよなぁ。
「ルールは公式戦のものを適用、ただしどちらかの
「大丈夫だ。ラウラに怪我なんてさせたら罪悪感で死ぬ」
「そんな大げさな……ちなみに、私は手は抜かないぞ?」
「望むところだ」
お互いに草原で向かい合い、ラウラはその身に第三世代IS、シュヴァルツェア・レーゲンを纏う。
黒い雨の名を冠するその機体の右肩には、大型のレールカノンが装備されており、他にもワイヤーブレードの射出など様々な戦法を使ってくる。
もう一つ厄介な能力があるが……まぁ何とかする。
「さて、これを見せるのは初めてだよな。最初から飛ばすぞジャーヴィス」
『了解』
【Cyclone!】
【Joker!】
『「変身!」』
【Cyclone! Joker!】
この身体が変質していく感覚にもだいぶ慣れた。
いつも通りに変身し、風の力で宙に浮かぶ。
「それは……」
「まぁ話は後ってことで、来いよラウラ!」
「フッ……悪いが武器は捨てないぞッ!」
ネタにしっかり反応してくれたラウラはワイヤーブレードを射出し、俺を捕らえようと狙ってくる。
この装備にはある程度の追尾性があるため、逃げても追ってくるのだ。
とすればここは……
「いつも通り、突っ込むべし!」
ブレードは方向を変え、ラウラの方に突っ込んでいく俺を後ろから追いかけてくる。
そして恐らくラウラは……
「またか……すぐ突っ込むのは悪い癖だぞ、咲!」
ビンゴだ。
右肩に装着された大口径のレールカノンが俺を捉え、チャージを始めている。
そう、恐ろしいほどの速さと破壊力はあれど、チャージの時間だけは無防備になる……筈だ。
そしてここを狙って……!
「ぶっつけ本番……やるぞジャーヴィス!」
『出力調整はお任せください』
一瞬でサイクロンメモリを抜き取り、マキシマムスロットに装填する。
【Cyclone! Maximum Drive!】
前々から気になっていた事が一つある。
サイクロンメモリは風の記憶……つまるところ風を操る事ができるメモリなのだが、その風を操るとは具体的にどういうことなのか?という事だ。
風というのはそもそも気圧の変化によって生じるもので、つまるところ風を操る=気圧を操るという事になる。
そして気圧を操作できるならば、当然こんな技だって使えるのだ。
『「サイクロンディフェンス!」』
「なっ……レールカノンを防いだ!?」
強大な圧力によって空気を圧縮し、超が付くほど頑丈な盾を作り上げる。
大抵の攻撃は受け付けない上に、ここから……
「吹き、飛べぇ!」
「うわあぁっ!」
圧縮した空気を一方向に向けて解放し、ラウラを遠くへ吹き飛ばす。これこそ、ジャーヴィスと考えた攻防一体のマキシマムだ。
ちなみに殺傷力はゼロに等しい。後ろから何かぶつけてやればダメージは入るかもしれないが、今は空中だ。ただ吹き飛ぶだけで終わる。
「隙が出来た今なら……!」
【Cyclone!Gene!】
今日のメインテーマ、ジーンメモリへと切り替える。
体勢を立て直そうとしているラウラに左手を向け、ジーンメモリを右手で引き抜いてマキシマムスロットへ。
二連続のマキシマムだが……まぁ大丈夫だろう。
出力も控えめにしてもらってあることだし。
【Gene! Maximum Drive!】
ボディサイドで増幅されたエネルギーは左手に集中し、暗い緑色の光が槍の形をとる。
「くっ……させん!」
「悪いがもう遅い!」
「『ジーンインヴェイジョン!』」
1メートル程度しかない小さな光の槍は猛スピードでラウラに迫り――
「なっ、速……」
――吸い込まれるように消えていった。
「……ふぇ?」
「さて、上手くいくかどうか……」
一瞬の間があり、基地の方から終了を知らせるサイレンが響く。
「えー、そ、そこまで……。シュヴァルツェア・レーゲンのSEが残り49%となったので、この勝負は咲の勝ちです……?」
「…………えぇ?」
「無事成功か……流石だジャーヴィス」
『恐縮です』
かくして、ラウラに一切ダメージを与えずに勝つという目標は見事達成された。
達成されたのだが……
「咲!今のはなんだ!説明!」
「わ、分かった分かった。あと日本語片言になってるからラウラ」
「お兄様、私にも説明を……」
ラウラとクラリッサの両者に詰め寄られ、やはり説明を余儀なくされたのだった。
ここ最近咲のチート化が進んでいる気が……
そろそろ壁にぶつけきゃ(使命感)