「とりあえず姿勢を……」
下を向いたままでは喋る事もままならないので、仰向けになる。
それでも落ちている事に変わりはないが、まぁ気分は悪くない。
それよりもこれからどうしようか。
ある程度の覚悟はしていたものの、何の能力も無い上にここが何処かすら分からないのに空に放り出されるとは。
「やぁやぁ咲くん、調子はどうだい?」
「体の調子は良いけど早速死にかけてます!」
「それは何より!」
落下しているといきなり神様が隣に現れ、話しかけてくる。
最早驚かない。
「このまま落ちてThe endとか無いよね!?」
「あーだいじょぶだいじょぶ!これ落ちてるように感じてるだけだから!」
言われてから改めて下を向いて見ると、確かに地面が全く近づいてこない。
さすが神様というか何というか。
人生初の終わらないスカイダイビングは中々楽しく、しばらくの間回ったり回ったりデ◯モンアドベンチャーのOPごっこをしたりと、色々堪能した。
「吐きそう」
「あんだけぐるぐる回ってりゃそうなるよ…」
楽しかったからね。
仕方ないね。
「さて!じゃあ色々決めてこうか!」
「その言葉が聞きたかった!」
おそらく転生先の世界とかチートとか決めていくのだろう。
うは。夢が広がりんぐ。
「まずは転生先だけど……ここね」
「え?」
「いや、だからここ。今いるこの世界」
「いやそりゃ分かったけどさ。ここどこよ?」
「そんなん教えたらつまらないだろう?とりあえずラノベの世界だとは言っておいてあげるよ」
「ラノベで空中からスタートっつーと……ノゲ◯ラ?」
「残念ながら外れ。言っておくけど、原作知識チートができないようにその作品に関する記憶は消してあるからそのつもりでいてねー」
「そんなー」
出荷される豚の気分だ。
まぁよくある話だし仕方ないかと思いつつ、次の話に入る。
「じゃあ次、能力だけど……」
「待ってました!」
これで普通から脱却できる。
そう思うだけで胸が高鳴る。
「選べる能力は3つと0.3個まで!」
「0.3?」
「僕の神性の高さの問題でね……ささやかな願い程度なら一個だけ後で叶えられるから、とりあえず3個決めちゃってよ」
3個か……
「しばらく悩んでおk?」
「OKOK!但し10分までねー」
原作知識無しで能力を選ばなければいけないとなると、割と悩む。
とは言えやりたい事……というか前世からの妄想で使ってた能力は大体決まっているので、あまり悩まなかった。
「じゃあ1個目……ダブルドライバーとガイアメモリのセットが良いな。可能か?」
「うーーん……うん。大丈夫そう。メモリは26本までだけど」
「そりゃ好都合。AtoZのT2メモリ……って伝わるか?」
「大丈夫だよ!じゃあ2つ目カマン!」
ノリノリな神様を見つつ、想像していた2つ目を頼む。
「相方が欲しい。Wになるには必要不可欠だし」
「相方かー……人間は流石に用意…あ、できる?マジで?」
誰かと話をしているようだ。
話し方が初期に比べてだいぶ人間臭くなってきているが、大丈夫なんだろうか。
「えーと……完全な人間は用意できないけど、半人なら用意できるって」
「半霊は付かないのか?」
斬れぬものなどあんまり無い感じの。
「半人っていうか……ほら今ドライブやってるじゃない?あれのロイミュードの怪人にならない版みたいな感じかな」
「相変わらず曖昧だなぁ……」
とは言え、相方が居るだけでも随分心強い。
ひとりぼっちは寂しいもんな。
……と、ここで大事な事を思い出した。
「ドライブまだ途中じゃん……」
折角あそこまで見たのに最終回はおろか夏の映画まで見れないとは……
「あー……じゃあ仮面ライダーはちゃんと存在するようにしておいてあげるよ。W以外」
「ありがとうございます!!」
仮面ライダーが放送されてないのは中々辛いものがあるから、これはかなり嬉しかった。
「それじゃあラスト、3つ目カモーン!」
お前は戦極ドライバーかと突っ込みたくなるのを我慢しつつ、最後の特典を頼む。
「えーと……ほら、なんて言うか……」
「あー……魔力的な?」
俺が言い淀んでいたので心を読んだらしい。
「そうそう、そんな感じの。ドラ◯ンボールの気みたいなの」
体からエネルギーを放出するってのは男の夢だ。
かめはめ波とか、マスタースパークとか、天撃とか、ペガサス流星拳とか。
アレ正確にはパンチの連打らしいけど、明らかになんか出てる描写があったよね。
「うーん……じゃあ、魔力的な何某っていう名前で登録しとくよ。使い方は自分で学びな」
「了解」
魔力的な何某か。
その気になればスーパーな野菜人にもなれるんだろうか?
「じゃあ最後の最後、ちょっとしたお願いだけど……」
何が良い?と困り顔()で聞いてくる神様。
ささやかな願い……ねぇ……
「あ、じゃあ他の人より比較的運が良いとか……できるか?」
「問題ナッシング!ホント若干になるけど良いかな?」
「普通じゃなければ良いさ」
これで特典は全て言い終わった。
「んじゃあ最終段階、君の身体の改造を始めようか」
「……は?」
一瞬耳を疑った。
え、改造って言った?
ねぇ今改造って言ったよね?
「今の身体だと色々不都合があるから……ねっ!」
ボキリ、と嫌な音が聞こえた。
痛みは感じないが、明らかにどこかが折れて……いや変形している?
ぼんやりとした感覚だけが残っている為かーなーり気持ち悪い。
「ちょ、ちょっと待ってくれ……そんなの聞いてな……」
「聞かれなかったからね。はーい、力抜いてー」
「ちょ……待っ……アッーー!」
◆ ◆ ◆
「もうお嫁に行けない……」
「ハイハイ。身体の調子はどう?どこか痛い所とかは?」
「特に無いです……」
(魔)改造を受けた俺の体は、まず身長が縮み、顔も幼くなり、体重も減り、細胞の年齢が若返り……要するにショタと化していた。
年齢は恐らく10歳くらいだろうか。
「今の改造で魔力的な何某も使えるようになったから、有効活用してねー」
「ハイ……」
もうなにもこわくないや。あはは。
「さて、僕の出番はここまでだ」
「っ……そうか……」
なんだかんだで6年間信じ続けた神様だ。
少しだけ涙が出そうになったが、
「さて……これであの部屋のコレクションは僕の物に……」
一瞬で引っ込んだ。
「聞こえてんぞオイ……」
「聞こえたところで君に出来ることは何も無いからねー♪」
この神、最初からこれが目的だったのか。
クソッ……済まない俺の
「まぁなんだ……咲くん」
「んだよ」
身体に合わせて高くなった声をできる限り低くし、唸る。
「君の歩む主人公ロードがどうなるか、楽しみにしているよ。それじゃ、バイバーイ!」
「……は?」
その言葉と同時に神様の姿は消え、先程まで落ちているように感じているだけだったのが、今度は本当に落ち始める。
「……オイオイオイ待て、ウェイト、お願いします待ってください!」
地面が近づいてくる。
「どうするどうする……そうだ、こんな時こそ魔力的な何某を開放して……フオオオオオオオ……」
全身に力を込めるが、顔が赤くなっただけで何も起こらない。
「だあぁクソ!使えねえ!どうすんだよマジで!」
こうしている間にも、地面はどんどん近づいてくる。
あと1分もあれば激突してミンチになるだろう。
あぁ、これ死んだわと思いながら、咲の意識は徐々にブラックアウトしていった。
◆ ◆ ◆
――咲が落ちている地点の丁度真下にて
「親方!空から男の子が!」
「何を馬鹿な……ラ◯ュタを観たばかりでネタを言いたい気持ちは分かるが、現実にそんな事は「良いから早く!お姉様!」分かった分かった……引っ張るんじゃない」
落ちた所はまぁ……ハイ。あそこです。あそこ。