テストなんて無かったんや……
ドイツ軍IS部隊、シュヴァルツェ・ハーゼ。
その部隊のメンバーはわずか5人のみであり……え?今までに4人しか登場してないだろって?
……まぁもう1人はそのうち出てくるだろう。そのうち。
そしてその部隊について最近、妙な噂がある。
ある者曰く、犬を飼っていたとか。
ある者曰く、幻の6人目が存在したとか。
ある者曰く、黄金の戦士を見かけたとか。
一つ目はともかくとして二つ目と三つ目はなんだ。
超次元バスケでもおっ始めようというのか。
もしくは宇宙の帝王とでも戦うのだろうか。
……話を戻そう。
とにかく、隊員以外の人間が居る可能性がある、と報告を受けた。
もしそうならば一大事だ。ISを取り扱っている部隊に万が一部外者が入り込んでいた場合は、然るべき処置をせねばならない。
ドイツ連邦軍元帥、名もなきオッサンは、その鋭すぎる眼で壁を睨むのだった。
◆ ◆ ◆
「……噂?」
「ああ、どうも咲の姿を最近視察に来た上官数人に少しだけ見られてしまったらしくてな。色々な噂が上層部で飛び交っているそうだ」
とある日の事。
朝飯を食いながらラウラと話していると、とても胃によろしくない話をされてしまった。
とは言っても確信的な証拠を掴んだ者は居ないらしく、犬だの影だのカカロットだの言われているらしい。
若干不服だがバレるよりはマシだろう。
「それで、俺はどうしたらいいんだ?」
「別に気にする必要は無い。普段通りにしていればいい」
「そうは言ってもなぁ……」
もしバレたら速攻撃ち殺される事もありえなくは無いだろうに。
ほら、汚物は消毒的な感じで。
あれは火炎放射だが。
「どうしても心配なら……屋内の射撃訓練場でしばらく過ごせば良い。それなりのスペースはあるし、なんなら銃の扱いでも覚えるか?」
「勝手に触らせていいのかよ銃とか……」
「咲は既にこの部隊の一員、家族同然だ。文句を言う奴など居ないさ」
……ラウラさん、その言葉はオラの涙腺にダイレクトアタックですわ。
いやね?向こうの世界で親に別れを告げて早1年と数ヶ月、その間家族が居ない事に寂しさを覚えることは何度かあったのよ。
まぁそれは仕方ない事だし諦めてたんだけど、こうして面と向かって言われるとこう……色々ぐっとくるものがある訳で。
「……ラウラはほんと良い子だなぁ……」
「む……何故上から目線なのだ」
その少し膨れた顔がもうね。堪らないよね。
子ども扱いされた事に若干ぷんすかしているラウラを宥めつつ、最近食卓に並ぶ頻度が高くなりつつある味噌汁を啜るのだった。
◆ ◆ ◆
そしてそれからの数日間、俺は言われた通り射撃訓練場で活動していた。
組手をやれるだけのスペースは普通にあったし、筋トレもできた。
ただ走り回るのは場所的に不味かったので、代わりに射撃訓練をやらせてもらった。
勿論撃った人間の記録の偽装など色々手回しはしてくれたらしいが。
頭が下がります。
そして、そんな生活が始まった5日目の事だった。
「今日こそ的に当ててみせる……」
「そう焦らずとも、初心者が1週間で銃の扱いをマスターするなど、普通ありえない事ですよ?咲」
「……でもラウラは完璧じゃん」
今日はクラリッサに訓練の監督をしてもらう日だった。
意気込む俺を宥めるように話しかけてくる姉(精神年齢的には同い年)に対し、少し反抗してみる。
「うっ……か、彼女は特別ですし……何より年季が違いますし……」
「それだよ。前々から聞こうとは思ってたけど、ラウラのあのウルトラスペックには訳があるんだろ?」
「それは……」
言葉を詰まらせるクラリッサ。
彼女としてもそろそろ話すべきだとは思っているのだろう。
と、その時だった。
「ほう……まさか本当に居たとは」
「「!?」」
背後から突然ダンディな声で話しかけられ、振り返る。
「……スネーク?(cv杉田)」
「……?誰だ、スネークとは?」
「あ、いえ、人違いでした」
皺は少し多いがパワフルさを感じさせる顔つき、濃いめの髭、右目に着けられた眼帯、オールバックに近い髪型、どれを取ってもそっくりだ。
喋っている言語は英語ではなくドイツ語だし、バンダナも着けていないのが残念なところ。
「ささささ咲?こ、このお方は……」
「……このお方は?」
多分偉い人なんだろうが、ここまで怯える必要があるのだろうか?
あれか、個人的に弱みを握られてるのか。
くっ殺せと叫ぶ女騎士クラリッサ……アリかもしれん。
「このお方は、現ドイツ連邦軍元帥閣下だ……あぁ、バレる可能性はあったがまさかこのお方が直々に来られるとは……」
顔を手で覆い嘆くクラリッサ。
「……えーと?」
つまり?
さいこうにえらいひとで?
そのひとにばれて?
おれしんで?
………
「嫌だアアアア!!!死にたくないイイイイイィィ!!!!」
「おいおい、そう慌てるな」
回れ右をしてダッシュで駆け出そうとした俺を難なく捕まえるスネーク元帥。ちなみに声は完全に大塚さんだった。
てか捕まるなんて絶対嫌だ。俺の主人公ロードはまだ始まってすらいないんだ。こんな所で死んでたまるものか。
「クソッ……そっちがその気なら……セイッ!」
「むっ……ほぅ……」
咄嗟に全身を強化し、肩を掴んだ手を払いのけて思い切り距離を取る。
魔力で強化しないと振り払えない手ってどんなだよ。
「この俺の手から逃れるとは……中々手応えがありそうだな」
「生憎男色の気は無いんですよ……見逃してもらえませんかね?」
「それは困るな。こちらも仕事でね」
言い終わると同時に姿が掻き消える。
「なっ……」
「フゥン!」
瞬間、腹に強烈な衝撃が撃ち込まれる。
……ナニコレクッソ痛え。
と言うか気持ち悪い。
「うっ…ぷ……あ、危ねえ……出るところだった……」
数歩後ずさり、口を抑える。
強化を施した体にこれ程のダメージを与えられたのは初めてだし、何より腹パンされるのが初めてだ。
一瞬頭に某ニーサンが浮かんだ。
もっとも今はネタを言ってる場合ではなくガチで吐きそうなわけだが。
「ふむ……普通なら出た上で気絶する筈なんだがな……」
「もうやだ……ゲホッ、この人怖い……」
俺のライフはもう0よ、勝負はついたのよ。
「まぁ前置きはここまでにしておいて……」
「前置きと言いましたか?人に【自主規制】出させかけといて前置きと言いましたか?」
こんな人間が元帥やってんのかよ……
さすが二次元……
「まぁ許せ。IS部隊に犬が紛れ込んでいると聞いたものでな、どう噛み付いてくるか確かめたわけだ」
「……はぁ、そうですか」
犬扱いされているのは気にしない。
実際今遊ばれてるわけだし。
「野良犬に名前はあるのかね?」
「……一応、咲って名前がありますが」
「サキ……咲……ふむ、なぜ日本人がここに居るのかとか、子供の癖に身体が頑丈なのかとかは敢えて聞かん」
「そうしていただけると大変助かります」
説明しても納得する人はそうそう居ないだろうし。
「というわけで咲よ、ドイツ軍に入らんか?」
「わぁお唐突ぅ」
話し方はもう吹っ切れた。
偉い人だろうが何だろうがどうだって良い。
「その妙な力は戦力になる。それに、部外者をこのまま放置する訳にもいかん」
傍で魂が抜けかけているクラリッサは放置され、どんどん話が進んでいく。
戸籍やら何やら色々な都合上正式に所属させるわけにはいかないらしいが、有事の際はその力を振るえとのことだ。
正式に所属してない人間が戦に参加して良いのかは甚だ疑問だったが、戦場で味方をしている人間に手を出す馬鹿は居ないだろうと言われて引き下がった。実際戦争があるのかはともかく。
と いうかISがあるんだから既存の兵器なんてゴミ同然だろう。
そして待遇だが、今まで通りの生活を保障してくれるらしい。ありがとうございます。
とりあえず今はIS部隊に身を置き、力を磨けと言ってスネーク元帥は去っていった。
後ろ姿だけでもカッコ良さが滲み出ていた。
「……………ハッ!咲!このお方は……あれ?」
「……もう話は終わったよクラ姉」
その後、クラリッサは説明された内容を聞いてまた気を失ったのだった。
というわけで咲、お偉いさん公認になりました。
いやぁこれからどうなるんでしょうね。
……どうなるんですか?