今回も時間飛びます。
超飛びます。
――俺がこの世界に落ちてきてから、三年の月日が経った。
時の流れは早いというが本当にその通りだった。
当時10歳相当だった俺の肉体も成長し、現在は13歳、要するに中学2年生にあたる年齢である。右腕は別に疼かない。眼帯もしてない。
身長はだいぶ伸び、筋肉も体力もついた。
ちょっとつき過ぎた気もするが、仮にとはいえ3年間軍隊式のトレーニングをしていたのだ。嫌でもこうなる。
そして今は10月半ば、日本と違って既にかなり肌寒く、外出時は上着が手放せない時期である。
そして今日はIS操縦者の世界王者を決める戦い、モンドグロッソが開催される日だ。
とは言ったものの1人だけテレビに張り付いているわけにもいかず、今日も訓練に励む。
「折角の大会なのに……よっ!」
「私だって見たいさ、織斑選手の活躍は……なっ!」
「づぉっ!?……っと、まぁ前回の優勝者らしいしな。同じ日本人として誇らし「貰った」あ
軽口を叩きながら組手をする俺とラウラ。普段通りの光景である。
「痛ってえ……目潰しは卑怯だろ流石に……」
「……私としては今のを食らって平然としてるお前の方が怖いんだが」
「そこはほら、俺の専売特許だし」
「ハァ……本当に反則級だな。ソレは」
3年もあれば能力もかなり使いこなせるようになるわけで。
現在は連続15分まで全身を強化できるまでに至った。
全身の場合15分しか保たないのであって、一部に纏うだけなら消費が少なくて済むと分かったのは割と最近の話である。
更に発動速度も短縮し、突然の目潰しにも対応が可能だ。まぁ痛いっちゃ痛いが。
「反則で結構、チート万歳。てか、ラウラのソレだって十分反則だし、そもそも俺からしたら性別だけで反則だわ」
「そ、それは確かにそうだが……」
ラウラ……というかシュヴァルツェ・ハーゼの全員が、今は左目に眼帯を着けている。
1年前に軍が行った手術で「
何の補助も無い状態でも2km先の目標を撃ち抜けると聞いた時は驚いた。
俺には何の知らせもなく……まぁ表向きには軍の関係者じゃないんだから当然だが、朝起きたら誰も居なかったあの恐怖は忘れられない。
帰って来たみんなは眼帯を着けており、何故かと聞けばどうやら移植された目の色が変わってしまったらしく、金色に輝いていた。
正直カッコいいと思った。
眼帯をする理由は隠すためではなく、単純に見えすぎる上に目立つからだそうだ。
訓練すればそれも抑えられると聞いて安心した。
ちなみに、「単純にこの方がかっこいいでしょう?」とも言われた。
俺の心配を返せ。
「初期は適合せず大変だったがな……」
「あぁ、あの時のラウラ相当荒れてたよな……」
「ばっ……それは言わない約束だろう!?」
「そうは言ってもなぁ……事実だし」
そう。ラウラだけは拒否反応が出て、移植される前よりも能力が落ちてしまったのだ。
その時の落ち込みようは半端ではなく、自室に閉じこもって出てこなくなったほどだ。
……まぁドアをぶっ壊して外に連れ出した訳だが。
鬱要素?なにそれおいしいの?
「と言うか、あの時の咲のセリフも相当こっ恥ずかしかっただろう。確か「あーーー!!!聞こえないーーー!!!俺は何も言ってないーーー!!!」
外に連れ出す時に何か言ったような気がするが覚えていない。
覚えていないったら覚えていない。
「ほぅ、訓練中に私語とは随分偉くなったな、ボーデヴィッヒ大尉?」
「っ……!?げ、元帥閣下!?こ、これはその……」
いつものように気配無く現れたスネーク元帥。
偶に姿を現し、こうしてちょっかいをかけてくる。俺はもう慣れた。
ちなみに初めて会ってから1年以上経った今でも本名を知らない。何故か隊のみんなも知らない。謎である。
「まぁそう硬くなるな。それよりも咲?組手の相手には困っていないか?」
「お、相手になっていただけるので?」
まだまだ元帥閣下には全く敵わないが、相対する事で学べる事もある。
と言うのもこの人、原作通り(?)にクロースクォーターズコンバット…要するにCQCが異様に強いのである。
拳2発に足払い1発で何故か誰も逆らえずに転ばされてしまうから不思議だ。
大勢で囲んでも、目にも止まらない速さで全員投げられてしまった。
しかもたまにホールドして「言え!」とか言ってくるし。
アレか?ブーメランパンツを履いて夕暮れの砂浜に立てばいいのか?
「今日は新技を試そうと思ってたんで、ちょっと受けてもらえますか?」
「ふむ……いいだろう、かかってくると良い」
仁王立ちをしているだけでかなり威圧感があるが、それをなるべく気にしないようにし、集中する。
男なら誰しも1度は練習した事があるだろうあの技……今なら使えるかもしれない。
開いた両手の手首を合わせ、指を曲げて体の右側に構える。
「かぁ……」
いつもは体に張り巡らせる魔力的な何某を手だけに集中させ、さらに固めていく。
「めぇ……」
圧縮されたエネルギーは徐々に光を発し、存在感を増してゆく。
「はぁ……」
……説明することが無くなったな。
「めぇ……」
限界まで引き絞った両手に、最後の仕上げとばかりに力を込め、一気に……放つ!
「波あああぁぁぁッッ!!」
青いエネルギーの奔流が手から発射され、真っ直ぐ元帥に向かっていく。
だが……
「ふん」
それを真正面から手で受け止められ、やがて消えてしまった。
「……これで終わりか?」
「お、終わりです……」
確かに出た。エネルギー波は出た。
だがその太さは精々10cm程度であり、本家と比べたら月とすっぽんである。
「まぁなんだ、そう落ち込むな」
「今ならイケると思ったのに……」
orzの体制をとる咲。
ちなみにこの他にも色々試したが、どうも本格的にエネルギー波として放つには体内の魔力的な何某の量が足りないようだ。
そもそもコイツがどういう原理で発生しているのかもサッパリ分からないため、対処のしようがなかった。
「だがまぁ、牽制には使えるだろう。精進すると良い」
「ありがとうございました……」
去り際にラウラは投げられていた。
◆ ◆ ◆
その日の夜。
「いけっ!そこだ!ああもうなんで避けないんだよ普通に見えてるだろ!?」
「なぁ咲、何で織斑選手を応援しないんだ?」
俺の部屋にて、録画してあったモンドグロッソを隊全員で見ていた。何故かテレビがこの部屋にしか無いのだ。
今はアメリカと日本が戦っているのだが、咲が応援しているのはアメリカ側だった。
質問してきたラウラに対し、咲は、
「何でって……絶対勝っちゃう方応援してもつまんないじゃん?」
「あぁ、確かに」
日本代表、織斑千冬選手。
専用機「暮桜」と刀一本で準決勝まで勝ち進んでおり、その全てが一撃必殺というとんでもない人だ。あと美人。すっげえ美人。クールビューティーって奴?
どんな相手も一撃で堕としてしまう為、見てる側としては少しつまらなかった。
「この調子なら明日の決勝も……まぁ一撃は無いと思うけど圧勝だろうな」
「あぁ、我らがドイツ代表は踏み台にされてしまうのか……」
一応ドイツも決勝に進んではいるものの、織斑選手の前には紙クズ同然だろう。
ちぎってポイされるのが目に見えるようだ。
「お、攻めてる攻めてる……なっ、今瞬間移動したよな!?」
「
アメリカ側が攻め込んでいたように見えたが、気が付いたら織斑選手が刀を振り終えていた。
まぁアメリカ側も1発は耐えたのだから充分凄いと言えるだろう。
「いやー終わった終わった。明日の決勝どーなるかなー」
「結果は目に見えているが……万が一の可能性を信じよう」
自分の国の代表にその扱いはどうかと思うが、あの鬼神を前にして勝てる気がしないのも事実なので、黙っておいた。
3発ぐらいは耐えられるだろうかなどと呑気に考えながら、部屋に戻っていくみんなを見送るのだった。
――明日、何が起こるかなど知る余地も無く。
さて、次回はいよいよ原作におけるあのお話…
どうなるんでしょうか。