【AC4】インフィニット・ストラトス 〜主を失った召使い〜   作:消毒済みの汚物

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#1 異世界に召使いは現る

 

 

 

 

 

 

 

 

(・・・・・・全く、どういう事だこれは)

 

レイレナード社所属、No,12「ザンニ」。ベルリオーズらと共にアナトリアの傭兵に討ち取られ、あの世を彷徨っているであろう人物の一人。そんな彼は、今現在の自分が置かれている状況にこの上無く困惑していた。

 

「人は死んだら、『無の世界』に行くのだよ」幼き頃、今は亡き父が自分に言い聞かせていた言葉だ。天国、地獄という言葉も知ってはいたが、何を基準に召され先を選定されるのか理解し得ない自分にとって、父の言葉が最も信じるに足るものであった。

 

しかし、実際は違った。今、自分が立っている場所は、辺り一面が芝生に覆われている。その上を美しい色の羽をした虫がひらひらと飛び交っている。なんとも幻想的な光景である。

 

(これが天国か。まさか、本当に存在するとは・・・)

 

しばし茫然としていたが、自分の身を確かめることにする。この素晴らしい景色を堪能し続けるのも良いが、生前の感覚が今でも残っていることに気付き、ふと我に帰ることができた。

 

自身の身体をふと見る。社内にいる時のスーツ姿をしていた。洗濯の行き届いた、汚れ一つない清潔感溢れた一着だ。ポケットの中を確認すると、愛煙していたタバコとライター、自社製の拳銃とその弾倉、財布がそれぞれ入っている。普段、社内にいる時の自分の格好そのものだった。

 

とりあえず、変に高揚している気を落ち着けるべく、タバコを取り出し火を点ける。私のことを「リンクスだから」と、人事担当の者がわざわざ用意してくれた高級品だ。中々に風味が良い。素晴らしい景色に良いタバコ、今の精神にこの上無く合っている。

 

「おいそこの男!一体何をしている⁉︎」

 

突然、背後から怒鳴り付ける様に声を発し迫って来る女性が一人。私と同じスーツ姿の、ややブロンドの入った色の髪をしている。眉間のシワと吊り上がった眉が、彼女の今の感情をそのまま顔面に表していた。予想外だな、こんなものが天使だとは。

 

「・・・見ての通り、喫煙しているだけだ。それとも何だ?ここは禁煙なのか?」

 

「とぼけるな!一体どうやってここに侵入した⁉︎カメラもセンサーも反応がなかったところを見ると、それらを掻い潜って来たんだろう⁉︎」

 

カメラ?センサー?何故天国にそんな物があるのだろうか。ふと周囲を見回すと、確かに近くの木に分からない様にカメラが設置されている。ここは権力者の敷地なのか?天国とは名ばかりだな。こんなものでは。

 

それに、侵入したのではない。死んだ瞬間、ここにいたのだ。私自身も現状況がイマイチ飲めていない。天使ならそこのところを教えて頂きたいものだが、これではな・・・。

 

「全くもって言っていることが分からん。逆にこちらからも聞きたいことがある。山ほどな。まず、お前は天使か?そうだとしたら、ここは天国で合っているのか?」

 

「ッ‼︎・・・こちら捜索班。ISを一機要請」

 

女性が表情を変え、トランシーバーで通信先にそう言った。IS?聞き憶えのないものだな。

 

「すぐにISが到着する。貴様が余裕を持ってられるのも今の内だ。全く、大人しく従っていればいいものを・・・」

 

トランシーバーを顔から離した女が、こちらを嘲笑う様に吐く。その態度から、ISというものは兵器の一種か何かと推測する。だとしたら少々マズイ。こちらは拳銃一挺しかないというのに。

 

すると、女の後方から何かが飛来してきた。妙な外見のパワードスーツだ。これは面倒なことになった。先手を打たれた。

 

妙なパワードスーツは、女の後方に着地する。右腕にはライフルと思しき銃を携え、その銃口をこちらに向けた。

 

「最後通告だ。投降しろ。命までは取らん」

 

女が再び言葉を放つ。パワードスーツのパイロットの女は、こちらを見てニヤニヤと笑っていた。まあ無理もない。腐ってもパワードスーツだ。人間程度なら簡単に嬲り殺せる。その余裕綽々とした態度が尚更腹が立つ。こちらが生身なのをいい事に。

 

「やっぱり、男ってのはバカね。この状況でも頑なに態度を変えないんだから。その分、後で痛い目見ちゃうわよ?」

 

「何、生身の人間がいるからまだどうにかなるとでも思っているんだろう。丸腰ではないはずだ。隙を見て私を撃ち殺すつもりらしい」

 

二人で勝手に談笑を始め出したが、生憎そうするつもりはない。射殺したら最期、そのパワードスーツが構えているライフルで肉片へと成り下がるのがオチだ。ここから逃走しようにも、パワードスーツの機動性の前ではどうしようもない悪足掻きにしかならんだろう。すぐに追い付かれ、捕まるのが目に見えている。

 

何にせよ、このままでは最終的にこいつらか、或いは拷問官にでもいい様にいたぶられるのが結末か。

 

「・・・全く動こうともしない上に、何も喋らないのね。じゃあ、これならどう?」

 

ふと、女が左手で髪を掻き分ける。すると、左耳に刺しているピアスが光だし、瞬く間にパワードスーツと化した。飛来してきたものと同型のものだった。

 

両方の機体に言えることだが、何故かパイロットの身体が剥き出しになっている。あの部分に被弾したら即死ではないのか?何故そんな意味不明な造りをしているのか。今まで撃破してきたパワードスーツとの違いといえば、飛行能力を備えていること位の様だが・・・。

 

クソッ、こんな時に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラフカットがあれば・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

ISの出動要請が発せられた。たかが侵入者一人程度、男共に任せておけばいいのに。何故私が行かなくちゃならないのよ。一応仕事ではあるけど。

 

「・・・あれね」

 

捜索員のリディアと、侵入者の男が見えた。スーツ姿の男はリディアと対面したまま、タバコを燻らせている。

 

「リディアも舐められたものね。侵入者にあんな態度取らせちゃって」

 

情けない・・・。そう思いながらも、彼女の後ろに着地する。男と目が合ったかと思えば、男はまるで見たこともないモノを見る様な目をした。軍事施設にISがいるなど、もはや常識だというのに・・・。とても滑稽だ。

 

「最後通告だ。投降しろ。命までは取らん」

 

投降を促すリディア。射殺すればそれで終わるのにね。テキトーに理由つければ上も納得するんだし。

 

(さては惚れたのかしら?中々いい顔してるしね笑)

 

「やっぱり、男ってのはバカね。この状況でも頑なに態度を変えないんだから。その分、後で痛い目見ちゃうわよ?」

 

「何、生身の人間がいるからまだどうにかなるとでも思っているんだろう。丸腰ではないはずだ。隙を見て私を撃ち殺すつもりらしい」

 

そりゃ、貴女のハートを撃ち抜くには十分過ぎるわ、あの男。それにしても珍しい色の髪してるわね。まるで吸い込まれそうな深い蒼色の髪。

 

「・・・全く動こうともしない上に、何も喋らないのね。じゃあ、これならどう?」

 

すると、リディアもISを起動した。捕まえて持って帰るのかしら?まあ、それでもいいけどね。

 

リディアを茶化そうと、彼女ーーナターシャはコア・ネットワークで喋ろうとした。

 

だが、その余裕も一瞬で無くなった。

 

 

 

 

 

 

目の前に、異形のISが出現したから。

 

 

 

 

 

 

 

「「‼︎?」」

 

危機的衝動に駆られ、二機は構えたライフルを何のためらいも無く発射した。静かだった基地内に、二つの射撃音が響く。たかがIS一機にライフル二挺の同時斉射。少々過剰火力だと思われるこの攻撃であるが、数秒後にその真逆であることを二人は理解する。

 

「なっ⁉︎き、効いてないだと⁉︎」

 

「な、何よ、あれ・・・」

 

目の前のISに向かって放たれた銃弾は、目標に着弾する直前に消滅していた。よく見ると、目標の周囲に薄っすらと、淡い緑色をしたバリア状の膜が展開されている。ライフル弾がその膜に届いた瞬間、まるで溶ける様に消えていくのだ。

 

目の前のISはその場を動こうとしない。何やら、自身のボディを確認する様な行動を取っている。挑発しているのだろうか。“そんなものは効かない”とでも。

 

「くっ、この距離だ!これなら!」

 

ナターシャは新たにショットガンを展開、ライフルとの同時攻撃を試みる。ライフルよりも低い銃声が響くが、効果は全く変わらなかった。

 

「ナターシャ落ち着け!まずは増えn」

 

ドドドドドドドドッ

 

「・・・え?」

 

突如耳に入った、我々のものとは異なる銃声。ナターシャに増援を要請すべく敵から一瞬目を離した隙に、それは聞こえた。

 

僚機の、ナターシャの機体は、自機の数十メートル後方にあった。装甲が悉く破壊され、本人は気を失った状態で。

 

「な、何が・・・ハッ⁉︎」

 

状況からして、ナターシャを攻撃したのはヤツだ。間違いない。改めて敵機の方を見る。

 

敵機は、銃声の産みの親であろう物をこちらに向けていた。鋭利な、刺突武器の様なデザインの銃。その外観からも、高い攻撃性が伺える。

 

(そんなったった数発連射しただけで、ラファールが・・・ありえない)

 

勝てない。やられる!死ぬ⁉︎最悪、殺される⁉︎

 

恐怖が、身体を包む。ライフルの引き金を引くという行為を、身体が、頭が、精神が、それを拒絶する。寒くもないのに、歯が勝手にガチガチと音を立てる。身体が勝手に震え出す。今すぐ逃げ出したいのに、足が思考に従ってくれない。

 

只々、目の前のISを見つめることしか出来ない。

 

すると、目の前の悪魔がこちらにゆっくりと歩いて来る。その体躯の中でも最も異形の、鳥の足にも似た関節の脚部を動かして。

 

自機のすぐ前まで来たところで、悪魔が左手をこちらに伸ばした。何をされるか分からない恐怖から、目蓋がが勝手に視界を塞ぐ。直後、グシャリと音が聞こえた。

 

右手に持っていたライフルの銃身を握り潰したのだった。

 

悪魔の頭部と思われる部分が、私の顔の前まで近付く。

 

「殺しはせん。その代わり、一つ要求がある」

 

(この声・・・先程の男の・・・)

 

「この基地の最高責任者の元まで案内して貰おう。死にたいのならその限りではないが・・・いいかな?」

 

死の恐怖を前にして、私はコクリと、頷くしかなかった。




ザンニさんて、どんな性格してるんですかねぇ。没ボイスとか聞いても、アタシにゃ全然想像つきませんわ。
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