【AC4】インフィニット・ストラトス 〜主を失った召使い〜 作:消毒済みの汚物
いつの間にやらこんなにも月日が流れていたとは・・・面目ねぇ限りでさぁ。
ようやく学園に入りましたで御座います。
「・・・なぁ」
「・・・何だ?」
「どういう状況だよ、こいつはよぉ?」
「・・・・・・出頭命令?的なヤツだ」
「・・・・・・ああそう」
ハァ〜〜、とため息をつくアンシール。まぁ気は察するがな。俺も2回目だが正直この空気が好きじゃない。これからの事を考慮すれば仕方のない事だが。
エレベーターの中は付き添いの者を含め9人。窓の外は美しい夕焼けが広がっている。元いた世界よりも大気が澄んでいる分、その色彩が非常に鮮やかだ。
暫くしてエレベーターの上昇する速度が遅くなっていく。34階に到達するとエレベーターが停止した。ドアが両サイドにスライドした先に見えた光景は・・・
(またこの光景か・・・)
真っ暗な部屋、ドーナツ型の巨大なテーブル、そしてその中央にて青白く光を放つ、デジタルな世界地図。この前の施設よりも上級の組織なのだろう、ホログラム上のジャーナルの量が遥かに多い。
「ようこそお二方。まずはそこの席について貰おうか」
中央奥の男性から促されるがままに、示された席に腰を下ろす。すると、テーブル中央のホログラムの映像が変わった。映し出されたのは、どうやらザンニとアンシールのプロフィールの様だ。
「秘密裏に我々のエージェントが、君ら二人についての情報をかき集めていたのだが・・・とりあえずそれに目を通して見てくれ。間違いはないかね?」
一通り目を通して見たが、よくもまあここまで調べ上げたものだ。そこまで興味を持って頂けるとは何とも。
「まあ早速だが本題に入ろう。単刀直入に言う。君ら二人を、我々IS委員会の一員として迎え入れたい」
(・・・大方予想通りだな)
「イヤだね」
隣のアンシールは即否定した。
「一員だぁ?表ではそう言っておいて、蓋を開けたら人体実験のオンパレードじゃねぇのかよ?」
吐き捨てる様に言うアンシール。だが、委員会のお偉いさんは、顔色一つ変えずに続ける。
「安心してくれ。その様なことを君らにはしないさ。そもそもISでさえまだ未知の塊なのだ。それすら解析出来ずしてどうして君らの謎を知ることが出来ようか」
ISがこの世界の主たる兵器であるのに、委員会はそれが真に何なのか分からないでいる。コイツらの科学技術力がその程度なのか、はたまたISがそれだけ未知の技術の塊なのか・・・。確かに兵装を何もない空間から具現化するのは元いた世界では不可能なことだが。
「我々が君らに協力を仰ぎたいのは、純粋に二人の機体の戦闘力に着目した結果だ。訓練された各国軍の兵士の駆るISでさえ、君らの機体の前では無様に足掻くことしか出来ないでいた。それは二人も周知の事実だろう?」
「まあ、その通りだ。つまり、委員会もしくは軍隊では手に負えない連中がいると・・・そしてその相手をしてやれ、と言うことか?」
「その通り・・・と言いたいところだが、半分正解だ」
「次にこちらを見て欲しい」
アンシールの右に座っている男性がキーボードを操作すると、ホログラムに別の画像が映し出される。比較的大きな施設だ。
「“IS学園”・・・君らに頼みたいのは、この施設の警備だ」
IS学園・・・ISと名が付くということは、ここはパイロットの養成機関だろうか。画像を見た限りでは、近未来的デザインの校舎に運動場やらプールやらが立地した、一般的な教育学校と大差ない。
「知っての通り、世界中で違法にISを入手したテロリストによる活動が小規模ながら頻発している」
「このIS学園自体は発足してまだ間もない上、場所が日本というのもあって現時点では安全であると言えるだろう。しかし、それもいつまでそういられるかは分からん。まあ、そういうことだ」
確かに、この場所がテロの犯行現場となれば多数の犠牲者が出るのは想像に難くない。ましてや、ISの操縦のイロハを学んでいる最中の女子訓練生など、人質として格好の的だ。
「従って、我々は二人がこの任務にこの上なく適していると判断した。委員会一同、どうか承って頂きたい所存だ。よろしく頼む」
全員が頭を下げる。内容的にも確かに理にかなっていると言えるだろう。
「・・・アンシール?」
「ケッ、オレに振ってくると思ったぜ。要はそこに居座ってりゃいいってか?それはそれで退屈ってもんだ」
「3食しっかり食えてシャワーもベッドもあるのにか?」
そう耳打ちして隣の女性に目をやると、咳払いした後に口を開く。
「・・・勿論、衣食住すべて完備されているわ。学園の非常勤講師ということでそこに滞在して貰うことになっているから」
「だそうだ」
するとアンシールはバツの悪そうな顔をした。
「チッ・・・わーったよ、行きゃいいんだろ?でもタバコは吸わせろよ?あと酒も。いいな?」
それくらい外の飲食店に行けばいいだろうに・・・タバコは同意するが。
「・・・まあ、そういうわけだ。案内してくれ」
直後、会議室内は大きな拍手が鳴り響いた。
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三年後。
この日のIS学園は朝からいやに騒々しい。それもそうだろう。今日は新入生の入学式。校舎の中がざわつくのは学校と名が付く所ではどこも同じである。
だが、ここ1年1組は・・・女子のヒソヒソ声ばかりが目立つ。何故か?理由は明白。
一人だけ男子がいるから。
(・・・ヤバい。想像以上にキツい)
教室の中で周囲からの視線を一様に浴び続けている男子ーー織斑一夏は、その気まずさから左右後方の様子を伺うことすら出来ないでいた。隣の幼馴染みにすら目を背けられる始末である。
「皆さん入学おめでとうございます!このクラスの副担任を務めます山田摩耶です!よろしくね!」
意気揚々と教室に入って来たのは、1組副担任である山田摩耶先生。小柄な先生である。
しかしながら、教室内の生徒はそれを呆然と見ているだけ。出だしからすべっている。
「・・・あはは、そ、そうですね!とりあえず皆さんの自己紹介から始めましょう!その方が楽しいもんね!」
涙目で自己紹介を促す山田先生。
(ヤバいよ、早速始まっちまったよ〜。こんな中で自己紹介とかマジ無理なんですけど・・・)
「・・・君?織斑君?」
「あっ、は、ハイッ!」
名前を呼ばれていることにようやく気付き、慌てて席を立つ。
「あ〜・・・えっと、お、織斑一夏です」
そこまで言ったところで、周りの「次は?次は?」と目で訴えてくる女子にビビり、
「・・・以上です」
何の気なしに口から出た言葉に大半の生徒がずっこけた。
「⁉︎・・・あ、あーと」
バシィッ
「いぎっ⁉︎」
「お前は自己紹介すらロクに出来んのか?」
何やら聞き覚えのある声。恐る恐る声のする方向へ顔を向けると、そこには見覚えのある顔があった。
「ち、千冬ね」スパァンッ「おふぅっ」
「織斑先生だろうが。ここは学園だぞ」
そう、織斑千冬。俺の姉だ。そりゃもう色んな意味で有名なこの人だ。
「キャーー‼︎織斑先生だわ‼︎」
「このクラスの担任⁉︎やった!人生で一番ツイてる‼︎」
「入学して早速こんな幸運に恵まれるなんて・・・うぅっ、ウゥッ」
「もう卒業したら死んでもいいかも・・・」
生徒達からの夥しい程の歓声を受けて、千冬は大きく溜息をつく。毎年毎年こんな感じらしい。
「私が1組担任の織斑千冬だ。まずは入学おめでとう。だが課目が始まってからは厳しくいくから覚悟しておけ。さもなくばコイツみたいに引っ叩くからな」
とても初対面の新入生に対する挨拶ではないが、喋り終わるや否や、再び教室が歓声に包まれる。内容については一夏がドン引きする程のコトなので割愛。
「・・・それとだ。今回、このクラスには特別講師がいるぞ。女ばかりのお前達には丁度いいスパイスだ。先生、どうぞ」
その一言で教室が静かになる。生徒の多くは期待の眼差しを前方のドアに向けている。一夏も興味をそそられたのだろう、同じくドアに注目する。
そして入って来たのは、蒼い短髪が特徴のスーツ姿の男性だった。歳は30手前くらいだろうか。千冬よりは年上だとわかる。
「初めまして皆さん、このクラスの特別講師のザンニ先生です。ヨロシク」
またまたの歓声にザンニも一夏も耳を痛めた。
時系列に矛盾が生じる。
アンシールのキャラがブレる。
世話ねぇなこりゃ。