【AC4】インフィニット・ストラトス 〜主を失った召使い〜 作:消毒済みの汚物
とりあえず、千冬さんとザンニさんが戦います。
※11/7 読者様からあった誤字の指摘の修正を実施。
⑨
「試合終了ーッ‼︎織斑千冬選手、決勝進出決定ですッ‼︎」
放送席からのアナウンスと共に、会場の観客席から一斉に歓声が上がる。その中央に位置する、球状のバリアが張られた戦闘ゾーンには、2機のISがいた。
膝をつき、事切れている機体と、それを立姿で見下ろしている機体。誰の目から見ても、勝敗の決している光景である。
「放送します。決勝試合につきましては、14時25分から開始致します。繰り返します。決勝試合につきましては・・・」
戦闘ゾーンにいる2機の機体は起動モードを解き、それぞれのパイロットは自分が発進したカタパルト方向へと戻って行く。その後、戦闘ゾーンは決勝戦の為の整備が始まった。
(ふう・・・相手もそこそこやれるものだな)
パシャッパシャシャッ
「織斑選手、決勝進出おめでとうございます!」
「相手選手の実力はどうでしたか?」
「決勝戦に向けての現在の心境を!」
カタパルト位置から選手控え室までの通路で彼女ーー織斑千冬を待っていたのは、日本のテレビ局の報道陣だった。ひたすらにカメラのフラッシュと質問を浴びせられている本人の少々迷惑そうな表情を他所に、それもマシンガンの如く。
「お疲れ千冬姉ぇ!」
そんな中、タオルとスポーツドリンクを両手に駆け寄って来る少年が一人。それを見た千冬の顔に笑みが浮かんだ。
「一夏・・・ありがとう」
少年の名は織斑一夏。その名字が示す通り、織斑千冬の弟である。
「すいませんが、インタビューは決勝戦後にお願いします」
しつこい報道陣の群れの中を、愛する弟の手を引きながら進んで行く。体力と精神力を準決勝戦で消耗しているというのにこのザマである。優勝してもらいたいのならそこのところを気遣ってもらいたいものだ。
何とか彼らを振り切り、控え室に着いた。受け取ったタオルで汗を拭きつつ、スポーツドリンクを流し込む。
「凄かったよ千冬姉ぇ!超スピードでこう、ギューンッていってさ、そしてズバッと!あそこカッコよかったなぁ〜!」
「・・・ふふっ、そうか。そう言ってくれて嬉しいよ」
思ったことをそのままジェスチャーで表現する一夏に、微笑みで返す。愛しい弟の、この素直な感情表現。実の姉として非常に嬉しいものである。
「あと50分後にはいよいよ決勝戦だね!千冬姉ぇ、絶っっっっっっ対に優勝してね‼︎」
「ああ。もちろんだ、一夏」
「そして優勝したら、明日お家に帰って・・・あ、ごめん。ちょっとトイレ」
そう言うとすぐ、慌てて控え室から飛び出て行った一夏。
「・・・ハァ。あんなに駆け足で、他人に迷惑かけなきゃいいが」
やれやれと言った感じで、軽くストレッチを始める。試合開始10分前にはカタパルトに行かなければならないので、そこまで悠長にしてはいられない。
前大会と比較すると、他国代表の選手の技量はそれなりに上昇している傾向にある。まあこの手のものは日進月歩なのだから当然と言えば当然だが、皆臆することなく試合に臨んでいるところを見るとやはり気持ちが良い。
(私のように近接武器一振りで出場する様な者はさすがにいないか・・・いたらいたでそれはそれは見物だったが)
まあ、私の場合は単に飛び道具の扱いが苦手なだけなんだがな。と、内心苦笑いしつつ、試合表に目を転じる。決勝の相手はイギリス代表だ。射撃兵装をメインとした撃ち合いタイプの機体だったはず。
(いつもと変わりはない。隙をついて懐に飛び込み、一撃の元に斬り伏せるのみ)
至極単純だが、故に確実。私の性にも合っている。
(・・・・・・それにしても、一夏のヤツ、まだ帰ってこないな)
先ほどの様子だと“小"の筈だが・・・もう15分は経っているぞ。トイレ自体はすぐそこにあったから、ここまで時間がかかるとは思えないが。
コンコンッ
「?どうぞ」
「失礼します」
入って来たのは、今大会の運営員だった。
「織斑選手、一般観戦者から織斑選手宛に手紙を預かってます」
そう言うと、一つの便箋を差し出してきた。それそのものには名前も何も書かれていない。それだけ渡すと、運営員は退室した。
(・・・ファンからではない様だが)
袋口を破り、中身を取り出す。三つ折りにされた手紙に書かれた文に目を通した瞬間・・・
バンッ
手紙を机に叩きつけ、即座に控え室を飛び出した。そして、この手紙を持ってきた運営員を呼び止める。
「おい‼︎この手紙を誰から受け取った⁉︎」
怒鳴りつける様に呼び止められた運営員は、千冬のその形相に一瞬肩をビクリとさせた。
「えっ⁉︎だ、誰って、黒いスーツ姿の男性です!少々怪しいとは私も思ったんですが・・・」
「そいつはどこへ行った⁉︎」
「あ、あっちに・・・早足で」
運営員は、会場入り口の方を指差す。それだけで、その男は会場内にはいないと千冬は察した。
それだけ知って、千冬はウィンドブレーカー姿のまま駆け出した。
「お、織斑選手⁉︎どちらへ⁉︎」
「後を追う!決勝試合は棄権すると伝えておけ‼︎」
ええっ⁉︎と躊躇する運営員を尻目に、会場を後にする織斑千冬。控え室の机の上に置き去りにされた手紙には、たった一文だけ、英文が書かれていた。
『Your brother is secured.』とだけ。
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「な、何者だテm「パンッ」エェッ・・・」
「クソが、嗅ぎつけられてんじゃねえかッ!」
倉庫の中は複数人の武装した男達と、それに対し拳銃1丁で優位に戦っている男とで銃撃戦の最中だった。当初6人いた武装組は、今や2人にまで減っている。他4人は頭や胸に拳銃弾を撃ち込まれて事切れていた。
(所詮は素人か・・・話にならん)
身を守る遮蔽物があってもカバーの仕方がヘタクソなものだから、そこを狙い撃ちすればいとも簡単に仕留められる。
「・・・チッ、お前は左に回り込め!クロスファイアだ!援護は任s「パンッ」ゴハッ・・・」
(頭が飛び出てんぞ素人)
AMSの所為で、私自身は常人とは比較にならない反射神経を持っている。射撃しようと身を乗り出したところを先制射撃するなどそこまで難しいものではなかった。
(あと1人は・・・尋問だな)
「ウオアアアッ‼︎」
何を血迷ったか、こちらに突っ込んできやがった。弾切れか?
パンッ「ガアッ⁉︎」
膝に9mm弾を受けてしまってな…てか?ド派手に転倒した男が持っていたサブマシンガンを奪い、弾倉を外して本体とは別々に放り投げる。さあ、尋問開始だ。
「・・・いくつか聞きたい。まず一つ。ここで何をしている?」
「るせえっ!テメェには関係「パンッ」ヌアアァッ⁉︎」
もう片方にも9mm弾を…と。
「言え」
「〜〜〜ッ、人攫いだ。織斑千冬の弟を誘拐しろってな」
(織斑千冬?知らんな)
人攫いか・・・。一見平和そうに見えて、そうでもないな。この世界は。
「誘拐の理由について教えてもらおう。吐かんならもう1発プレゼントだ」
「理由は・・・知らねえ。ただ攫ってこいと言われただけだ!本当だ!」
ナルホド。男はあくまでも下っ端扱いか。可哀想に。今この状況も含めて。
「命じたのは誰だ?」
「ッ、そ、それは・・・」ドンッ
ビチャッ
突如、響く轟音。と同時に、尋問していた男が目の前で突如ミートソースに早変わりした。突然の事態に驚いたが、状況を理解するのはそう難しくはなかった。
(本命のご登場か・・・)
倉庫の入り口には、見覚えのあるシルエットーーISが立っていた。ラファールとか言ったかコイツは。
「ったく、男ってのはどうしてこうも使えない連中ばっかなんだろうね。救出に来たヤツ1人も止められず、余計なことを漏らそうとするし」
パイロットは柄の悪そうな女性。その性格は髪型からも察せられる。右手にはマシンガンと思しき銃を所持している。
「勇敢にも単身でここに乗り込んできたアンタに告げるわ。アンタの人生もここで終了。天国の階段を・・・なんてね。あ、男だから天国に行く権利なんて無いわ!地獄に落ちるのよ!ッハッハッハッハッハ!」
(・・・人の心を逆撫でするのはそこそこ出来るな)
「おい、クソアマ。一つ・・・いや、二つ教えてやる」
私の発言に、ラファールのパイロットの表情が変わった。アイツの喋り方は私もたまにイラッときたからな。
「あ?何よ?」
「教育事項その1・・・もっと現実を見ろ」
(ラフカット起動)
自身の身体を、淡く発光する緑色の粒子が包み込む。そして、先程まで人型だった男は、濃紫の甲冑に覆われていた。
「・・・⁉︎なっ、なっ⁉︎」
「教育事項その2・・・」
ACに変わると同時に、OBのノズルを解放。コジマ粒子を充填する。
「“油断大敵”とは?」
OB発動。ブースターから生まれた推力で、機体が一気に音速を突破。そしてその勢いを活かし、相手に強烈な蹴りを入れた。
「ッ⁉︎ガハッ」
けたたましい衝突音と共に、向かいの建物に蹴り飛ばされたラファールがめり込む。パイロットの身体部分に、高機動型のISの瞬時加速すら凌駕する速度で放たれた蹴り。SEが大きく削られ、建物に衝突した衝撃でパイロットにもダメージが加わった。
そこにすかさず追撃。右背部のASミサイルを発射。射出されたミサイルは目標を自動的に補足し、飛翔していく。そして、敵が起き上がる間もなく着弾した。
ラファールは建物にめり込んだ状態で、ピクリともしない。パイロットは気絶した様だ。
「・・・呆気ない。こんなものか」
やはりACとISとでは機体性能に差がありすぎるということか。パイロットも人を殺したことの無い様なヤツばかりでは、たかが知れている。
(さて、捕まった子供はどこか・・・)
脅威は排除し終えたので、捕らえられた少年でも探すことにしよう。倉庫内のオフィスの扉を探すが、すぐに見つかった。
ACから生身に戻り、オフィスのドアを開ける。すると、目と口をガムテープ塞がれた少年が椅子に縛り付けられていた。左の頬には殴られたであろう痣が残っている。
とりあえずガムテープを剥がし、縄を解くことにする。
「大丈夫か?」
「・・・ウッ、ケホッ・・・あ、ありがとうございます。助けてくれたんですか?」
「・・・まあ、そんなとこr」
ズガガガッ‼︎
「「⁉︎」」
突然の轟音。しかも近い。倉庫からか?
「ここにいろ!デスクの下に隠れていろ!」
少年を避難させ、オフィスから飛び出す。飛び出した直後、まず目に入った光景は
刀を持ったISだった。
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(一夏・・・無事でいてくれ!)
会場から出て、すぐにISを展開。上空を飛翔しながら、弟の行方を探す。見つけなければならないのは一夏を乗せた車だが、そう簡単に見つかるだろうか・・・。
(熱源反応だけでは判別がつかない・・・クソ、何でこんなことに)
市街地上空から地上を走る車という車をしらみつぶしにチェックしていくが、全く分からない。
(このままでは・・・どうすれば)
ドゴオッッ
「⁉︎」
悩んでいたその時、爆発音が聞こえた。何事かと思って音の発生源へと視線を向ける。
その先にはーー建物にめり込んだISが1機。機種はラファールだ。だが、見たことの無いカラーリングをしている。大会では見られなかった見た目だ。
(軍のISではない・・・まさか!)
千冬の直感が瞬時加速をすぐに発動させ、現場に急行する。距離が近づくにつれ、ラファールの外観がよく分かる。フレームやウイングは亀裂が走り、パイロットは気絶している。建物への衝突方向からして、向かいの大型倉庫に何かがいるはず。そこまで推測出来た。
(あの倉庫の中か?)
ハイパーセンサーを利用して、倉庫の中をサーチ。すると、倉庫の横に突き出た事務室と思われる中に、2つの熱源を感知した。距離200メートルまで接近すると、中にいる熱源の大きさまで分かる。その内片方は、中学生と思われるサイズ。
(間違いない・・・!)
「一夏ぁぁぁぁぁぁっ‼︎」
倉庫の天井を雪片で斬り刻み侵入する。事務室側を向くと、既に開いているドアの向こうには、2人の人間がいた。
1人は、大切な愛して止まない弟。もう1人は、スーツに身を包んだ短髪の男性だった。
(スーツの男・・・あいつが、一夏を攫った・・・許さん‼︎)
雪片を握る手に更に力がこもる。大切な弟を連れ去った者に対し、この上ない殺意が芽生える。
「一夏に何をし・・・なっ⁉︎」
雪片の切っ先を男に向け、何をやったか尋ねようとした。だが、その時異変が起きた。
目の前の男が、全身装甲のISに変わったのだ。
(一体、どういう・・・‼︎)
理解不能な事態に直面した瞬間、目の前のISは右手に持つ銃をこちらに向け、即座に発砲した。
すぐさま横にダッシュし回避する。驚きに反応が遅れて1発被弾したが、これで察することが出来た。
(そこまでして・・・上等だ。蹴散らす‼︎)
相手は見る限りだと、両方の腕の異なるデザインの銃器が主武装だろう。ならば、戦法は変わらない。懐に飛び込む。そして零落白夜で一撃で沈める!
瞬時加速を機動し、相手との距離を一気に詰める。多少の被弾は気にしない。こちらの攻撃は当たれば終わりだ。
相手は倉庫内の空間を上下左右にと飛び回りつつ、右手の銃を連射してきた。被弾しそうなものだけ切り捨てる。が、
(なんて威力だ!既存のISの主砲にも匹敵するぞ⁉︎)
斬り払う度に、強い衝撃が手を襲う。それでも前進を止めない。徐々に、徐々にと、相手を倉庫の隅へと追い詰める。そして、相手が床に着地した。
(今だ!零落白夜機動!)
雪片の刀身が変形し、巨大なエネルギー刃が形成される。相手のISはそれを見てより一層警戒したのだろう。後方に下がり距離を取った。が、
(失策だったな。隅だ。もう逃げられん!)
「ハアアアアアァァァッ‼︎」
雪片に更なるSEを出力し、零落白夜の刀身を形成。そして、相手の右下方から抉り込む様に逆袈裟に斬り裂いた。
(・・・馬鹿な)
しかし、手応えは無かった。千冬の正面には、巨大な斬撃痕を残した倉庫の壁があるだけ。
相手はーー後方。いつの間にか背後を取られていた。ヤツは、横、前、横と、コの字を描く様に瞬時加速で私の背後を取ったのだ。
(ありえん・・・チャージングしている様には見えなかったぞ!それになんだ⁉︎なぜ左右にも瞬時加速出来るんだ⁉︎)
このコンマ数秒で亜音速には達する速度まで、まさに一瞬で加速した。尚且つ、多角的にそれで動いた。ハイパーセンサーすら、それを捉えきれなかった。
(火力も、機動力も、大会出場者のISの比ではない!一体どこの機関が開発したのだ⁉︎そもそもコイツはISなのか⁉︎)
ハイパーセンサーが後方の映像を映し出す。相手は左手の銃器をこちらに構えたまま、しかし、一向にそれを撃とうとしない。
「千冬姉ぇ、その人は悪くないよ!俺を助けてくれたんだ!」
ハッと我に帰ると聞こえる弟の声。この様子だと、どうやら無事の様だ。
「一夏!無事なのか⁉︎」
「大丈夫だよ千冬姉ぇ!だから、その人を攻撃しないでよ!」
連れ去られた本人が言うのだから、おそらくは間違いないだろう。そう確信し、ゆっくりと反対を向いた。
「・・・そちらを攻撃する様な真似はしない。弟の目の前で殺人などするつもりはない。ISを解除してくれないか?」
とりあえず、脅威をなくすためにそう要請した。すると、相手の機体が淡い緑色に発光し始める。やがて眩しい程に一瞬光った後、そのISは消えた。そこには、先程の男が立っていた。
(・・・ん?この男、何処かで・・・ハッ!)
思い出した!昨日の深夜に行ったBARにいたバーテンダーだ!
「・・・ヤツの増援かと思って攻撃してすまなかったな。安心しろ。この少年に危害は加えていない」
自分が驚愕しているのに対し、男は謝罪してきた。
「・・・こちらこそ申し訳なかった。一夏を助けてくれてありがとう」
こちらも礼を言うと、男は踵を返してその場から立ち去り始めた。倉庫の入り口まで行くと、再び先程のISを展開。次の瞬間、チャージ音が聞こえたと同時に、衝撃波が伝わった。
(今のは・・・瞬時加速か⁉︎速度も加速力もバカげてるぞ⁉︎)
レーダーの反応がみるみる遠ざかっていく。地面から離れたと思った瞬間には音速を突破していた。最高速度はマッハ3はいっているぞ⁉︎
「・・・なんなのだ、あれは」
ISを解除することも忘れ、千冬はただ、呆然と立ち尽くしていた。
『戦い』と言うほどじゃない?
戦闘シーンこれだけ?
タイトル詐欺だろ。
そう思った方、いらっしゃると思います。そんな貴方に一言。
騙して悪いがs(コジマパンチ炸裂☆