【AC4】インフィニット・ストラトス 〜主を失った召使い〜 作:消毒済みの汚物
(・・・なんだぁ、ありゃ?)
アンシールの視線ーー047AN02のカメラーーが、束とクロエを乗せた浮遊物体へと向く。その人間が乗る物にはどう見ても見えないソレに、?マークが頭に浮かぶ。
一方でIS委員会のエージェントはと言うと・・・皆唖然として、開いた口が塞がらないでいた。彼らにとって、常識を余りにも逸脱したシロモノがそこにいるのだ。
ヤツの攻撃対象となった束のISを瞬く間に無力化した火力。『最強の兵器』たるISが、これまで陸戦の主力であった戦車を蹂躙したかの如く、ヤツはそれをやってのけた。攻撃を受けたIS残された、たった2発の弾痕がその威力を物語っている。
それにもまして、更に威圧を与えるのがその“見た目”だ。ISと比較すると、より“兵器”と言った表現が似合うその外観。金属味を帯びた装甲、PICの存在を無いものとしているかの様な、安定性溢れる4本脚。そして何より、パイロットの素肌を第1世代のISよりも見せていない、“完全な”全身装甲。
一部の者は、テクノロジーの時点でこの世の物ではないのではないかと思考する。また一部の者は、どこかの国が極秘裏に開発した物だと。束が引き連れているISを攻撃した時点で、彼女の所有物ではないと言うのは判明しているが、これほどの物を造ることが出来る人間が束以外にいるだろうか。
委員会のISはと言うと、こちらもまた呆然としていた。ISをいとも簡単に撃破した、存在を認めるのは2体目のISモドキ。ザンニのそれは資料でのみ確認しているだけで、別物とは言えど、こうして生で見るのは初めてである。
「ふ〜ん、まさかもう一機いるとは思わなかったわね。このままじゃ、この身も五体大々満足で帰れるのも時間の問題か。ここは潔く引き下がるとしましょう。みんな!じゃね〜〜〜」
そうこうしているうちに、束は去っていった。飄々とした表情こそいつも通りであったが、こめかみに一筋の汗をつたわせて。
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この騒動の主な元凶である篠ノ之束が去ったことで、とりあえず事態は収束・・・したかに見えた。だが、一時の平穏はすぐに破られた。
「あのヘンなのは何だったんだよ、ったく・・・まあいい。残る獲物はあと2体。サッサと片付けて帰っか」
4本脚の巨人の目が、ゆっくりとISの方を向く。そして、それに続く様に向けられる、右腕に握られた長銃身の火砲。たった2発でISを無力化した物の傍らである。
「「「⁉︎」」」
武器を指向されたISはそれに対し、反射的に各々の兵装を構えた。パイロット達の顔には、緊張、怯え、畏怖の表情が浮かんでいる。
それをニヤつきながら眺めているアンシール。スナイパーライフルの銃口をISのパイロット3人それぞれに移らせていた。ナイフをチラつかせて弱者を脅すチンピラそのものである。
「ケケッ、イイねェ〜その顔。最強の兵器が易々とブチ壊されていくサマを見せ付けられた気分はど」
ドドドドドドドドドッ
「ウアアアアアァァァァァッ‼︎死ねっ、死ねえぇぇっ‼︎」
自身に銃口を向けられた途端、撃たれると思ったのだろう。パイロットの1人が、いきなり構えていたマシンガンを乱射しだした。多量の弾丸が吐き出され、その全てが目の前の4本脚の巨人に向かって飛翔していく。だが、
(無駄なことを・・・)
ザンニとアンシールは知っている。“そんなもの”ではダメージはおろか、機体表面の塗装すら剥げ落とせないと。
案の定、弾丸は相手の機体に着弾する直前で、ボロボロに風化するかのごとく劣化し、霧散した。
それでも、パイロットは射撃を止めなかった。効かないと分かっていても、恐怖に支配された精神が、射撃の中止を受け付けない。
「ヘッ、ザコが。効かねぇっつってんだろ‼︎」
そして、攻撃されている側も動き出す。スナイパーライフルの銃口がゆっくりと、パイロットに向けられる。狙うは頭部。狙撃銃の十八番であるヘッドショット。
腰だめで撃ち続けていたマシンガンも弾切れを起こし、それでも無意味に引き金を引き続ける、軍人らしさなど最早感じられない哀れなパイロットの頭部を。
「うぁ・・・あ・・・」
「その綺麗な顔を吹っ飛ばしてやる!」
直後、低い発射音が響いた。
「そこまでだな。大人しくしろ」
発射された徹甲弾は、明後日の方向へと飛んで行った。ISのパイロット達は、目の前の光景に呆然としている。男性エージェントも同様にだ。
4本脚の巨人のすぐ横に、複雑な、あまりにも歪な造りをした2本脚の巨人がもう1体。スナイパーライフルの銃身は、2本脚の巨人が右手に持つ銃に抑えられ、左手に持つ銃を、黒い機体の中で一際異彩を放つ赤い頭部に突き付けられている。
「⁉︎・・・何だテメェ?」
(どっから、いや、いつの間に現れやがったんだコイツ?しかもこの見た目・・・ISか?)
4本脚の巨人の4つの目が赤く光る。それに呼応するかの如く、2本脚の巨人の電光掲示板の様なカメラが明滅する。共に対峙した状態のまま、ピクリとも動かない。
「・・・以前共闘した味方も覚えていないとはな。見下げ果てたものだ、BFF所属のNo,15」
「なっ⁉︎・・・待てよ、その機体は⁉︎」
(ようやく感付いたか。遅ーよ)
「ISのパイロット、ISを非起動状態に戻せ。そうしなければコイツはずっとこのまんまだ」
聞き覚えのある声が、そう働き掛ける。当然委員会側の人間全員が躊躇する様な顔をするが、
「・・・2人とも、ISを解除しよう。あの男に従った方が良さそうだ。さあ」
パイロットの内隊長格と思われる1人が、配下の2人に指示する。
「ッ、隊長本気ですか?此方が待機状態に戻した瞬間攻撃してくる可能性は考慮しないと?」
「ISだろうが生身だろうが、相手にとっては大差ないのだろう。どの道一撃だ。なら、従ってみようじゃないか」
「分かりました。アンジェリカ、ほら」
「・・・了解」
3機のISがその形を失い、元の3人の女性に姿を変える。委員会側は対抗する戦力を封じ込めたことで、皆がより緊張した空気を醸し出す。
「ほら、さっさとしろ。ガキの様に駄々をこねるなら、力尽くでやるぞ?」
「うっせぇっ!分ーかったって!誰がガキだ!ックソッ」
次いで、2体の巨人が淡い緑の粒子に包まれていくと、強い光を発すると共にそれが消え、2人の男がその場に残っていた。1人は、数十分前から一緒にいたスーツ姿の男。もう1人は、パンクな服装に身を包んだ、ソフトモヒカン頭の男だった。
「ま・・・また、男だと⁉︎」
「やはりあれは、ISではないのか・・・」
騒めくエージェントとISパイロット。そんな中、アンシールはバツの悪そうな顔をして1人愚痴を零していた。
「ったく、何で俺がIS委員会に顔出さなきゃなんねぇんだよ・・・そもそも何でアイツがここに・・・ブツブツ」
(コイツも何か知ってそうだな・・・聴き出しとくか)
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篠ノ之束によって移動用の車をベコベコにされた為、市街中央を出発するのにさらに25分程要した。ISの様な結構ハイテクな兵器があるにも関わらず、その辺はまだそうでもないらしい。ヘリは無かったのか。
リムジンの中は、たまに此方をチラチラ見てくるエージェントとISパイロット、目を合わせようともせず、只々外の景色を見続けるアンシール、目を瞑ったまま静かに佇むザンニ、と言った構図。誰も一言も喋らず、静寂に包まれていた。
(どうにか付いて来させはしたが、いつまで大人しくしていてくれるものか・・・)
ザンニ的には、人の多い所でネクストが暴れるのは少々控えておきたいのだ。中身が自分だと分かると、目撃者からどういった風評被害を被るか分からない。危険人物だと取られると、生活にも支障を来す。既に何度か街中で派手に暴れたが、それを見たと思われる住民が不安を漏らしていたのを目撃したのだ。いずれ自身が特定されたら、公安からマークされ追われる身となる可能性もある。あまり神経をすり減らしたくはない。
「・・・間も無く、委員会本部に到着します。前方の建物です」
出発して約1時間、想像していたより、本部は目立たない建物だった。地下施設の広そうな予感がする。
正面ゲートを通過し、真っ直ぐ先に見える一際大きいビル。恐らくここが本部だろう。その正面入り口の脇にリムジンが停車する。
「ここからは徒歩になります。と言っても、エレベーターまでですが」
案内役の女性の目は泳いでいた。その上妙に緊張している。周囲の人間も、此方を見てきてはいるが目を合わせようとする者はいなかった。明らかに警戒されている。
とりあえず、情報収集と私の存在の認知がメインだ。武力をチラつかせてでもやってやろうか。
迷走しだしてきたかも・・・