リトルバスターズ! ~理樹くんの異世界モンスターハンター奇譚~ 作:九十九足一
状況は劣勢だった。
ドスジャギィを中心として際限なく増え続けるジャギィの群れに対し、真人も健吾も次第に追い詰められていった。
「――くそっ、ここまでか」
「へっ、なあ健吾っち。最後の前に、一度てめぇとは白黒決着付けたかったぜ」
二人とも、玉砕すら覚悟したような表情を浮かべていた。
そのような場に――僕は不意をついて飛び出したのだった。
「――やあああああっ!」
ズバッ――と、近くにいたジャギィに片手剣の一撃を入れる。
ジャギィたちは驚いて僕から距離を取る。
「理樹……っ!」
「理樹――なのか?」
真人と健吾もまた、突然現れた僕に驚いている様子だった。
「――理樹、恭介はどうした?」
「大丈夫、恭介は平気だよ。今は落ち着いている」
健吾の問いに対し、僕は落ち着き払った態で返した。
叫び声を上げながら包囲網を縮めてくるジャギィを前にして、深く息を吐いた。
僕は二人に呼び掛ける。
「――健吾、真人」
「うん?」
「どうした、理樹?」
僕はゆっくりと語りかけた。
「今まで、ごめん。――僕、戦うよ」
真人と恭介は、驚いた表情で僕を見ていた。
――ギャア、ギャア!
――ギャア、ギャア!
ジャギィたちが吠え掛かり、僕たちに向かってきた。
迎え撃つ形でジャギィたちと対峙する。
僕は目を逸らしたりなどせずに、真っ向からジャギィと向かい合った。
(相手の動きをよく見るんだ。ジャギィたちは僕を取り囲もうとして動いてくるはずだ。包囲して、一気に攻撃を仕掛けてようとしてくる――でも、それは逆を言えば、一匹だけなら決して積極的には攻撃しようとしてこないはずだ!)
なら――と僕は結論を出した。
僕は、足を使ってちょこまかと動き回り、決してジャギィたちに包囲を敷かせる隙を与えなかった。
――ギャア、ギャア!
ジャギィの一匹が僕を足止めしようと回りこんだ。
だが僕が予想したとおり、ジャギィの攻撃はどこか積極性に欠けており、牽制の目的以上で攻撃を仕掛けてなど来なかった。
「…………っ!」
初日にジャギィと対峙した出来事を思い出す。
あのときの僕は、取り乱してジャギィをよく観察するなんてしなかった。
けれど――例えどんなに怖くても、目を瞑ってはいけない。
落ち着いてジャギィを見る。
そうして見てみれば、理解できる事も多かった。
そうだ――ジャギィ自体は大して強いモンスターじゃない。攻撃は大振りだし、動きも直線的で単調だ。大丈夫。これなら、元の世界で、うなぎパイや爪切りみたいなしょうもない武器を装備して喧嘩していた真人や健吾の方が――
「よっぽど――強かったぞ!」
ズバァン!
勢いよく音を立て、僕の片手剣の一撃にジャギィが血を大きく噴出し、地に伏せる。
――ギャ、ギャア!?
ジャギィの群れが僕の猛攻に対して戸惑いを見せ、その動きを鈍らせる。
「――よそ見してんじゃねえっ!」
そこに、武器を持った真人と健吾が襲い掛かった。
「メーンッ! コテェエエエッ! ドオオオォーッ!」
健吾が大きく足を踏み鳴らし、ジャギィの群れに斬り込んだ。
僕たちの攻撃に対して、ジャギィたちは完全に浮き足立ち、瞬く間にその数を減らしていく。
そうして――後にはドスジャギィ一匹だけとなっていた。
――グォオオオッ!
ドスジャギィが叫び声を上げて、僕たちに襲い掛かる。
僕たちは三手に分かれて、ドスジャギィを取り囲んだ。
僕が正面に立ち、真人と健吾はそれぞれ左右に分かれる。それで良かった。盾を持って防御ができる僕に対し、健吾と真人はドスジャギィの攻撃に対して防御手段がない。
それに――僕が危険を逃げ続けるということは、それだけ他のみんなが危険を負うということでもあるのだ。
そんなことは許さない。
みんなを守ると誓ったのだ。
――なら、ここで退くわけにはいかない!
「かかって来い! ドスジャギィ!」
僕は叫んだ。
ドスジャギィが吼える。
その凶暴な面構えが、押さえ切れないほどの殺意を伴って僕を睨み付ける。
――怖い。
――怖い。
――怖い!
ドスジャギィに睨まれつつ、僕は自分の中にある恐怖を確かに感じ取っていた。
けれど、と、僕は臆病な自分と対峙する。
――戦わなければならない。
今はまだ、弱くていい。力がないなら、その分、頭を使えばいい。今の自分にできることが、必ずあるはずだ。
己が持つ全てを尽くして、戦う。
みんなを守るため――
みんなで生きて帰るため――
鈴や小毬さん、来ヶ谷さんに葉留佳さん、西園さんやクドと、再び生きて会うため――
もう一度――あの馬鹿を続けていた日常に戻るため――
「僕たちは――死なない! 生きて元の世界に帰るんだ! こんな所で、お前なんかに負けられない!」
*
目の前の人間が、何かを叫んでいる。
ドスジャギィである彼には、人間の言葉は理解できない。
それでも――その人間の表情を見て、全てを察する事ができた。
目の前の人間は決して退く事はない。
闘志に満ちたその瞳――揺るがぬ決意を持った者だけが持つ顔。
それは――かつての自分と同じだった。
生きるために――ただ生き延びるために、決して諦める事をしなかった若き頃の自分。
自然界のピラミッドの最下層に生まれ落ちたという己が運命に対して、屈服することを必死に拒み続けた無窮の精神。
そう――今、自分が敵対しているのは、ただの人間ではない。
目の前にいるのは、一人の
*
ドスジャギィが咆哮を上げて襲い掛かってきた。
僕は横合いに飛んでドスジャギィの突進を避ける。
するとドスジャギィは、僕の回避を読んでいたかのように、尻尾を繰り出した。
慌てず、僕はジャンプする事で、それを避ける。
尻尾が空振りする事で、ドスジャギィの近くにあった崖に命中し、崖が崩れ落ちた。
(あれだっ――!)
その光景を見た僕は、その閃きを信じる事にした。
「うぉおおおおおおっ!」
僕は雄叫びを上げてドスジャギィに突貫する。
ドスジャギィは、僕を迎撃するように大口を空けて、噛み付こうと牙を繰り出してきた。
(――今だ!)
僕はタイミングを合わせると、すぐさま飛び込むようにドスジャギィに足元に滑り込んだ。
ドスジャギィの牙が宙を切る。
僕は立ち止まらなかった。
ドスジャギィの背後にある、崩れ落ちた崖へと向かう。
ドスジャギィの尻尾の攻撃を受けた事で、小高い崖は、ちょうど階段のような形状となっていた。
僕は一気にその崖を這い上がった。
そして、ある程度の高度を確保すると、攻撃を外して僕を見失っているドスジャギィに向けて、その背中へと飛び乗ったのである。
――グォオオオッ!?
ドスジャギィが、突然背中に飛び移った僕に驚き、振り解かんと必死で暴れまわる。
それでも僕は離さなかった。このチャンスを逃してはならない。絶対に。
「――っぅああああああああああああああ――っ!」
力の限り雄叫びを上げ、しがみ付きつつ、僕は手に持った剣をドスジャギィの背中に突き入れた。
――ザシュッ!
赤い鮮血が宙を舞い、ドスジャギィが痛みに更なる悲鳴を上げる。
――ザシュ、ザシュ、ザシュ、ザシュ、ザシュ!
僕は一度だけでなく、何度も何度もドスジャギィの背中に剣を突き入れた。
――ザシュ、ザシュ、ザシュ、ザシュ、ザシュ、ザシュ!
グォオオオッ、と突然ドスジャギィの体勢が崩れ落ちた。
崩れ落ちた勢いで、僕はふっとばされるけれど、僕が作った隙を逃がさず、丁度そこに武器を持った健吾と真人が斬り込んだ。
「―――イヤアアアアアアアアアアアアッ」
健吾が太刀を構え、地面を滑るように移動する。
そのときであった。
その刀身が突如として光輝いたのだった。
例えるなら――まるでどこかのロボットアニメに登場するビームサーベルのように、太刀が太く光輝いている。
――そのときの僕には知る由もなかったけれど、健吾の持つ『太刀』という種類の武器には、使い手の『練気』と呼ばれる気力のようなものを溜め込み、開放することで威力を格段に向上させる力を備えていたのである。
そして今や、最大まで溜め込まれた健吾の練気が、刀身に新たな輝きを宿していたのであった。
「メェエエエエエエエエン! メン! メン! メンッ! ――ッメェエエエエエエエエエエンッ!」
連続で太刀が繰り出され、ドスジャギィがかつてないほどに苦しい呻き声を上げる。
――そこに、ドスジャギィを挟んで反対側から、ハンマーを構えた真人がやってきた。
「おりゃあああああっ! 筋・肉・大・旋・風――――っ!」
真人の自慢の筋肉が、限界まで唸りを上げて、溜めに溜めた勢いでドスジャギィのどてっぱらにハンマーの直撃を入れる。
ドガアァアアアアアアアッ!
凄まじいまでの大音量が響いた。
――グォオオオッ!
驚くべきごとに、ドスジャギィのあの巨大な身体が、真人のハンマーの一撃を受けた事で吹っ飛ばされたのだった。
――グ、グォォォ……。
だがその一撃を受けても、ドスジャギィは倒れなかった。僕たちの攻撃をあれだけ受けても、立ち上がったのである。
その様子は――誇りとか、執念とか、一言では表せない何かの力で支えられるかのようで、僕たちが思わず慄くほど鬼気迫る様子だった。
「――こっちだ、ドスジャギィ!」
そこに、突如として声が響き渡った。
「恭介!」
僕たちは一斉に見やる。
そこには、ボロボロの様子の恭介がいたのだった。
回復薬グレートによって一命は取り留めた様子だったが、それでも全身フラフラだった。とても戦える様子には見えない。
そこにドスジャギィが、牙を構えて恭介に向かっていった。新たに現れたこの邪魔者を攻撃する事に決めたのだった。
「いけない! 恭介、逃げて!」
僕は叫ぶが、恭介は逃げなかった。仁王立ちのまま、不敵に立ち尽くしている。
――ズボォッ!
その時、ドスジャギィの足元に突如として巨大な穴が出現し、ドスジャギィの下半身がそこに飲み込まれた。
驚きに叫び声を上げるドスジャギィ、だが驚いているのは僕たちも同じだった。一体、何が起こったというのだろうか。
「こんなこともあろうかと、調合で作っておいたんだよ。対モンスター用の即席『落とし穴』だ!」
――二日前、恭介はクエストで持ち帰った素材と、バルバレの店で市販されていたトラップツールを組み合わせて、ハンターが狩りに使う『落とし穴』を作っていたのだった。
作動させれば、あっという間に土を掘削し、傍目にはまったく判らないほどの精巧な落とし穴が作成できる。そこに見事にドスジャギィは引っ掛かったのだった。
ドスジャギィは、落とし穴から脱出できずにもがいている。クモの糸を重ねて作った粘着力のあるネットから、簡単に抜け出せるモンスターはそういなかった。
「今だ! 理樹!」
恭介が叫ぶ。
僕は躊躇わずに、疾風のごとく駆け出した。
「――ぉおおおおおおおおおっ!」
大地をしっかりと踏みしめて駆け抜け、坂道を駆け上がり、ジャンプすると同時にドスジャギィの頭部に向けて、全力で剣を振り下ろした。
ズバアアアアアアアアアアッ!
その巨大な襟巻きごと、ドスジャギィの頭部が切り裂かれる。
――グォオオオオオオオオオン!
ズシィィン、と大きな音を立てて、ドスジャギィが倒れた。
しん、と辺りが静まり返る。
誰も一言も発せずにいた。
僕は、はあはあと息を荒げて膝をついていた。
――ザッ、ザッ、ザッ。
そこに、いつの間にか足音を立てて恭介が近づいてきた。
「――やったな、理樹」
僕は恭介の言った言葉が一瞬理解できず、彼の顔を見上げる。
「え――恭介、それじゃ……」
「ああ、ドスジャギィ、討伐完了。この戦い――俺たちリトルバスターズの勝利だ!」
そこでようやく――僕、真人、健吾は顔を見合わせた。
そして――
「――よっっっしゃああああああああっ!」
「ぃぃぃいいやゃっほぉおおおう!」
真人と健吾が、歓喜のあまりに手を合わせ鳴らせる。
これ以上ないほどの喜びようだ。元の世界にいたときでさえ、これほど喜ぶ二人を見る事は稀だった。
僕もまた、彼らに混ざって喜びたかったけれど――正直、疲れてそれどころじゃなかった。
「や――った――よかっ――」
その言葉を最後に、僕は疲労のあまりに倒れた。
そのまま、深い眠りに陥っていった。
「――それでは、我らリトルバスターズの勝利を祝して、乾杯!」
かんぱーい! と、恭介の音頭に応じ、全員がグラスを打ち鳴らせる。
その夜――僕たちは盛大に宴会を繰り広げていた。
ドスジャギィ討伐の報奨金を貰ったことで、ユイコさんを始めとするみんなが用意してくれたのだった。
あの後倒れた僕は、真人に背負われて運ばれ、キャラバンに戻ってきていた。日が落ちるまで、僕はベッドで眠り続けていたのである。
目を覚ました僕は、夜になって宴会に参加していた。全員そろったところで、先ほどの恭介が乾杯を上げたのだった。
「おっまたせー! はい、はるちんの特製の料理ですヨー」
ハルカさんが両手に大皿を持ってやって来てくれる。
わあ、と女性陣から歓声が巻き上がった。
ネコ飯とは違い、美味しそうな料理が湯気を伴って立ち並ぶ。
「うむ、じゃあ、おねーさんも一つお祝いするとするか」
そう言って、ユイコさんが何かを取り出してきた。
それは大きな瓶だった。コルクで詮がしてあり、中には液体が詰まっている。
「ほえ? なあに、それ?」
「ジュースだ。特製のな。甘くて美味しいぞ」
「ほんと~! じゃあ欲しい!」
「うむ、全員に行き渡るよう、コップに分けよう」
ユイコさんは、そこで八人分のコップを用意すると、均等に分け、全員に配った。
みんながそれを口にする。
「――あ、おいしい」
「…………!」
「わあ、ホントっすネー」
女性陣が口々に褒め称える。
「おっ、確かにうめえな」
「ふむ……」
真人と健吾もまた、同様の感想を漏らした。
そのまま一気飲みする人間もいたほどである。
僕もまた、コップに注がれた液体を口にした。
ほどよく甘みと苦味が合わさり、堪らない味となっている。一口飲むほどに、身体がぽかぽかとして、脳内で多幸感が満ち溢れるようだった。
「――って、ちょっと待った! これ、お酒じゃないの!?」
すぐさま気付いた僕に対し、ユイコさんはどこか可笑しそうに含み笑いを漏らしていた。
「幸せになるジュースだ」
「いやいやいや、そんな酔っ払いのおっさんが言い訳に使うような呼び方しなくても――」
「えへへ~、リキくぅ~ん」
その時、コマリさんが、すっかりふやけきった表情で、背中から抱きついてきたのである。
「うわっ、コマリさん!」
「えへへ、リキくんもほら、飲んで飲んで~」
擦り寄るように抱きついてくるコマリさん、背中に膨らみが当たるのを感じて、僕は凄く困った気持ちになっていた。
「いや、駄目だよ! コマリさん! これは僕たちにはまだ早いって――」
「リキくん、わらしのジュースが飲めないの~?」
ぷんすか怒った表情を浮かべる。
うわぁ、コマリさん絡み酒だ!
「まあいいんじゃないのか、理樹」
「いやいやいや、恭介も見ていないで、止めてよ! 僕たち、まだ未成年だよ!」
「別にここは日本じゃないんだから、日本の飲酒法を持ち出してきたって無意味だ。どうせなら、楽しんだ方がいいだろ」
「うむ、キョウスケ氏はよくわかっているな。ほら、もう一杯」
「サンキュー」
ああもう――年長者としてそれでいいのか、と僕は内心恭介に毒づいた。
「ふぇぇ、なんか、熱くなってきちゃった……」
「わあっ、コマリさん、こんなところで服を脱ごうとしないでよっ!」
脱ごうとするコマリさんの服を、必死で抑える僕。
「筋肉、筋肉~」
「筋肉、筋肉~」
向こうでは、真人と健吾が上半身裸で踊っていた。
その目はすでにどこかイッちゃっていて、すっかりヘベレケになって出来上がっている。
ちなみにリンはというと、最初の一杯目でダウンしていた。ハルカさんは、蚊取り線香のようにぐるぐるになった目で、キッチンに向かって料理を作っては、失敗してキッチンを爆発させていた。
「あっはっは、いやあ、実に面白い」
一人勝ち組のユイコさんだけが、心から楽しそうに笑う。
「あー、もう! みんな、酒弱すぎだよっ!」
僕は一人嘆いた。
とはいえ――本心から嫌がっていたかというと、そうではなかった。
そのような馬鹿騒ぎが楽しくて――こっちの世界に来てから、本当にまいる様な毎日だったけれど、それでも僕は、その日は久し振りに心から笑えるようになっていたのである。
みんなの笑い声で、その日はひたすら夜が更けていった。
――次の日、僕はコマリさんに呼ばれていた。
コマリさんの仕事場である鍛冶工場にたどり着く。
「あ、リキくん、来てくれたんだー」
コマリさんが笑顔で迎えてくれる。
「呼ばれたからね。それで、渡したいものってなんなの?」
「うん、これだよ!」
コマリさんの指し示す方向を見る。
――そこには、紫色の鎧一式がそろっていた。
はじめて見る装備であるが、その表面の色を見て思い出す。それは――昨日激闘を繰り広げた相手と同じ色をしていた。
「ドスジャギィの素材から作った装備、ジャギィシリーズ一式だよ。ジャギィヘルム、ジャギィメイル、ジャギィアーム、ジャギィフォールド、ジャギィグリーヴ。一式で装備すると、研磨のスキルと気絶確立半減のスキルが発動するんだ。防御力だって、今のリキくんの装備よりも格段に優れているよ」
「ひょっとして、これを僕に……?」
「うん、キョウスケさんたちも、リキくんにって」
コマリさんが笑顔で答える。
僕は改めてそのジャギィシリーズを見た。
立派な鎧だった。まるで、昨日戦ったドスジャギィの勇壮な魂が、そのまま宿っているかのようにも思える。
「モンスターの素材で作った一式装備っていうのはね、そのモンスターを倒したという称号のようなものでもあるんだ。ハンターにとっては、その装備を身に纏うというのは名誉な事なんだよ」
「うん……わかった。ありがたく装備するよ。――でも、コマリさんすごいね。昨日、あんだけ酔っていたのに、今日でこんな装備が作れるなんて――」
「わあああああああっ! わああああああ! お願いだから、昨日のことは忘れてっ!」
昨日の醜態を思い出したのか、コマリさんが慌てふためいた。
「うえーん~、私もうお嫁にいけない~」
「大丈夫、大丈夫だから! 肝心なところは見えていなかったし! ギリギリセーフ! まだイエローカードだよ!」
泣きべそをかくコマリさんに、必死で宥める僕。
そうして――僕はそのジャギィシリーズを装備した。
同時に、初めてこの世界に来たとき、集会所で出会ったハンター達を思い出していた。
あの時ぶつかったハンター達を見て、僕は最初、怖いと思った。
けれど、同時に心のどこかでは、『かっこいいなー』と思ったのだ。
憧れたのである。あのような強さを持った人たちに。自らの力で自分の運命を切り開いている人達に。僕も、あんな風になれたら――誰かを守れるような強さを持てたならば、と思ったのだった。
けど、今はもう、思うだけじゃない。
僕は――強くなる。みんなを守れるような強さを手に入れる。そのためならば、どんなことだってやってみせる。
そうして――絶対に生きて元の世界に戻るんだ。
僕は決意を新たに、そのジャギィシリーズに袖を通したのだった。
第二話:了