稚拙な文ですが楽しんでいただけたら幸いです。
1章 鎖の中で
魔王クリチェスコイ死す。
偉大なる魔王の死に魔界全体が揺れていた。
魔王を慕っていたものは嘆き、魔王を敵視していたものは歓喜した。
そんな中、魔王の息子ラハールが眠りから目を覚まし、新たな魔王を名乗り出す。
それから数ヶ月後のある日、魔王城を歩いていたラハールとその家臣であるエトナは隠されていた扉をみつけた。
「殿下ー。どうしますー?どう見てもあやしげな階段が続いてますけど」
「決まっているだろう。俺様の城だ。何があるか見なければ気が済まん」
「ですよねー。それにしても、クリチェスコイ様は何故こんなところを作ったんですかね?」
「知らん。親父のことだ。所詮ろくでもないものがあるのが山だ」
ラハールとエトナは話ながら階段の降り始めた。
階段は螺旋状になっており下を覗いてもまったく地面が見えないほど深く作られていた。
「長い・・・長すぎる!どういうことだ!どう考えても魔王城の下にあるマグマに入っているだろう!」
「殿下ー多分この空間はクリチェスコイ様の空間魔法がかけられてますよー多分さっきの扉もクリチェスコイ様の血族しか開けられないような仕掛けでしたし」
「・・・なるほど。しかしそれにしても厳重だな。親父はそこまでして何を隠したかったのだ。」
そういい面倒臭くなったラハールたちは階段を飛び降りた。
長い間空中をさまよって、ようやく地上に着いたラハールたちが見たのは白い空間であった。
白い床白い壁、どこも白に幾何学的な模様が描かれていて、まるで異世界に来ているような錯覚が起きるようである。
「なんだこの気色の悪い場所は。」
「本当ですねー。しかし、クリチェスコイ様がこんな場所を作るなんて、、、」
ラハールたちが真っ直ぐ続いている廊下を歩いていくと一つの白い扉に辿り着いた。
「・・・む。」
「魔法がかけられていますね。
これは随分また緻密なものをクリチェスコイ様も作りましたねー。」
「・・・」
エトナが扉に書けれていた魔法の模様に感心している間、ラハールはその模様が頭の隅に引っかかるものを感じた。
「エトナどいていろ」
「はい?」
そういいエトナを離れさせ、ラハールは扉の模様とまったく同じ模様の魔法式を編み出す。
「凄いですよ殿下!どうしたんですかその魔法は!?」
エトナが心底おどいているとラハールは腕を組んだまま考え込んでいる。
「・・・わからん。」
「はい?」
「分からんと言っているのだ!」
「でも今できてたじゃないですか。」
「知らん。やろうと思ったらできただけだ。とにかく扉が空いたのだ中に入るぞ」
そういい中に入ったラハールたちは中に入り絶句した。
「こ、これは」
「・・・なんだと」
扉の中は鎖が部屋の中心から広がっていた。
その鎖に吊るされている物は。
「人間・・・?」
エトナが拍子を抜かれている中、ラハールはずんずん人間に近づき、
鎖を引きちぎった。
「え、殿下いいんですか?そんなことして。」
「いいも何も、この城は俺様のだ。何もしようと俺様の勝手だ。
」
そう良いながらラハールは他の鎖を引きちぎり始める。
そしてすべての鎖を引きちぎったところで人間が目を覚ました。
「・・・ここは」
人間は男だった。背は170cm程で、
綺麗な黒髪を肩まで下げ、垂れ目気味のせいか端正な顔立ちはどこか病弱そうに見える。
「ここは魔王ラハールの城だ!
人間よ!ここで何をしていた!」
「殿下ーどう見たって監禁されてたんですから何をするもないじゃないですかー?」
「うるさいぞ!エトナ!」
そんなやり取りを見た男は突然頭を抱え始めた。
「、、、ダメだ。ダメだダメだ。
何も思い出せない。
私は誰だ。どうしてここにいる。
ラハール。エトナ。懐かしい響きなのに何故思い出せない」
「なに?貴様は俺様たちの名を知っているのか?」
「分からない。分からないから困っているんだ。私は何も思い出せない」
男の様子を見て、ラハールたちも男が嘘をついていないことが分かった。
「どうします殿下ー。めんどくさいですし、殺しちゃいます〜?」
エトナの提案にラハールは少し考え込んでから否定した。
「いや、こいつは俺様たちのことを知っているようだ。思い出したら何か親父のことで使えるかもしれん。」
「クリチェスコイ様のことですか?」
「そうだ。親父がこいつをここに封印してたってことはこいつと親父はなにかしら関係あるはずだ。それにこいつがこんなところにいたのもまだわかっていないからな。」
自分の命運を目の前で話されている中、男は自分の手を見つめていた。
「?何をしているのだ」
ラハールの問いに答えたのは突然男の手に現れた、無骨なバスターソードだった。
「!?貴様!なんのつもりだ」
突然の出来事にラハールは後ろに下がる。
「・・・驚かしてすまない。今私が思い出したのは私がこれを使うことができるということだ。」
そう言うと男の背の丈程あったバスターソードが一瞬で消えた。
「どういうことだ。貴様は本当にそれしか思い出せないのか」
未だに敵意を消さないラハールに男は両手を上げ、無抵抗なことを表す。
「すまない。本当に私はこれしか思い出せないようだ。」
男の雰囲気にラハールたちも戦闘体制を解いた。
「ふむ。貴様は人間の癖にそこそこできるようだな。面白い!いいだろうお前を我が家臣にいれてやるぞ!」
「え!いいんですか殿下!?こいつめちゃくちゃ怪しいじゃないですか!?」
エトナは説得を試みるがラハールは逆にムキになり男を家臣にしようとした。
「ふむ。私があなたの家臣になるのはいいでしょう。しかし」
そんな中、男はラハールに一つの願いを伝えた。
「なんだ?」
「私に名前をください」
男の提案に心底どうでも良さげにラハールは頷いた。
「いいだろう、そうだな貴様の名は・・・ネロだ」
名づけられたネロは満足そうに頷いた。