知らぬ傷み 知る悲しみ   作:花色 央人

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連続投稿です。


2章 天使見習いフロン

2章 見習い天使フロン

ネロがラハールの家臣となり早3か月、ネロの仕事は最初は主に雑用だけだったが一度書類仕事をやらせてみるととんでもなく有能だったため、魔王城の仕事はほぼネロが受け持っている状態となっていた。

「プリニーさん これを議会に提出しておいてください」

「アイアイアサー」

「殿下 おやつは自費で払ってくださいといってるはずですが」

「いいだろう!俺様の金だ!」

「では、殿下のお小遣いから引いておきます」

「エトナさん プリニーさんの給料を勝手に割り引かないでください」

「えーいいじゃん。」

「よくありません。プリニー斡旋所から苦情が来ていますよ」

「ゲッ・・・」

・・・・・・・・・・

「ふぅ・・・やっと一息つきました。殿下たちの無駄使いを抑えるのも大変ですね」

夜12時を過ぎて仕事が落ち着いたネロは魔王城の周りを散歩していた。

中庭を通り広間を通りそして外に出た。

外から眺める魔王城は物静かで周りのマグマに照らされているところは神秘的だ。

「・・・・・・・」

そんな魔王城を眺めているネロの頭の中はいつもモヤモヤと霧がかかっていた。

(何も思い出せないとはこんなにももどかしいこととは―)

自嘲気味にネロは笑う

この3か月の間で思い出せたのは自分の戦い方のみ。

そんなものネロからしたらどうでもいいことだ。

(早く何もかも思い出したいですね・・・)

ネロは夜の散歩を終え、広間に戻ると見慣れない人影がネロの前方を走り去る。

その人影はどう見てもラハールの部屋を目指しているため、ネロはすぐに人影を追いかけた。

「ふふふ、私ったら忍者になれるかもしれませんね」

ネロが到着した時、先の人影と思われる少女がラハールの寝床の横で笑っていた。

「残念ながら忍者はあんなに音を立てて走りませんし、しゃべりません」

「ヘッ!?誰ですか!?」

驚いてすぐにこっちを振り向く少女にネロはバスターソードを向ける

「それはこちらのセリフです。殿下への面会時間は過ぎてますよ。もっともそんなものありませんけど」

少女は慌てて杖を取り出す。

 

「害意があると言うのならそれ相応の対応はさせていただきますよ。」

ネロの身体から闘気が溢れ出し、少女はつい後ずさりをしてしまう。

 

「ちょっと待って下さい!貴方は人間じゃないですか!なんでこんなところにいるんですか!?」

 

「そういう貴方は天使じゃないですか。天使が暗殺とは世も末ですね。」

 

対して少女は何かを言おうとするが、その言葉を飲み込んで杖を構えた。

 

「」

 

少女が呪文を唱える前にネロのバスターソードが少女の杖を弾き飛ばし、喉元にバスターソードを突きつけた。

あっけない終わりだと思われた。が

 

「うるさいぞ!お前ら!!!!」

 

ネロは突如発生した魔法をバスターソードで切ったが、少女はよけ切れず、そのまま魔王城の外へ飛ばされてしまった。

 

「・・・殿下。寝ぼけて魔法を打つのはやめて下さい。」

 

「お前らがうるさいのがいけないのだ!」

ラハールの触覚が伸び切っていることでラハールの怒り具合が伺える。

 

「しかし、殿下の命を狙う天使が飛んで行ってしまいましたよ。」

 

「・・・なに?そんな奴がいたのか?」

 

「はい。さっきまでそこに」

そういいネロが指をさした先にはラハールが吹き飛ばした壁の残骸があった。

 

「・・・探しに行くぞ!俺様の命を狙うとは!とんでもなく馬鹿な天使がいたようだな!エトナ起きろ!」

 

「何ですかー殿下ー。こんな真夜中に・・・」

 

「俺様の命を狙う天使が現れた!さっさと探しに行くぞ!」

 

「えー、本当ですか〜それ?

もし、そうだとしてもネロが捕まえてるんじゃないですか?」

 

目を擦りながらエトナがネロの方を見る。

 

「・・・ネロにだってミスはあるのだ!行くぞ!」

 

そんなラハールの様子を見たエトナがラハールの後ろにあった瓦礫に気づいて、察したのかニヤニヤし始めた。

 

「はいはい。行きますよ〜。おいプリニー共、殿下が飛ばした天使を探しにいけ!」

 

エトナの言葉に顔を真っ赤にさせるラハール。

 

「殿下。私はどうしましょうか。」

 

「・・・お前がいると俺様が活躍できないからな。お前はいつも通りにしていろ」

 

「わかりました。」

 

そうしてラハールたちはネロを置いて時空の扉に向かって行った。

 

 

残されたネロは自分の感情に戸惑っていた。

 

あんなに強く言うことは普段ではありえないのに。自分は何故あの天使にこれだけ怒りを感じているのだろうか。

 

「・・・私らしくないですね。

いや、これが私なのでしょうか。

それさえも自信が持てないなんて、人としてどうなのでしょう」

 

ネロは悲しげに自分の手を見つめ、

その場を立ち去った。


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