戦姫絶唱シンフォギア~歌わない決闘者系ノイズ目録~ 作:特撮仮面
なあ、ヒビッキー?
「何ですか…」
たい焼き食べるか? 美味いぞ?
「…貰います。……ぶふっ!? な、なんですかこれ!?」
え? 知らねぇ? チーズバターカレー味。この公園に時々来るタイ焼き屋のおっちゃんが売ってる裏メニュー。美味い――というか濃いだろ。
「そ、そうだね……うん、何だろうこの味の暴力」
お、俺もそう思ったんだよなぁ。でさ、もう一つあるんだけどいる?
「あ、は――あの、それこれと同じ味ですよね?」
…ちっ。
「ちょっ!? これ以上何を食わせようっていうんですか!?」
え? ああ、最近考案されたらしいたい焼きおむすび味をな? たい焼きの中にホカホカで塩味の効いた白米が入ってる。
「…ご飯は好きですけど、それ別々にできなかったんですかねぇ」
まあ、あのおっちゃんだしなぁ。
「ですねー。…あ、そろそろ帰らないと…」
そっか、確かにいい時間かもしれねえしな。…それで、まだ続いてんのか?
「はい…でも、変わりません! 私は私ですから!」
…そうか。まあ困ったら呼べよ? 俺はいつでもここで待ってるからさ。
「はい! それじゃあ!!」
…行った、か。本当に、なんであんな好い子がいじめに会うのかね…。俺だったら迷わず求婚してるぞ。あの安産型な腰つきといい、これからも成長が期待できる豊満な胸といい。というか、それよりもなによりもあの子すごく可愛いのに本当にいい子なんだよなぁ。
…嗚呼、マジで完全な人間になりたい。てか、決闘がしたい!! 人間で居られる残り時間伸ばせないかなぁ。
※※※※※※
随分と懐かしい夢を見た。で、あれはいつの話だっけかねぇ…。あれは確かに年前くらいだったっけな? …さて、現在の俺はそんなことを言ってられないという状況なわけだ。
そぉい!! そんな掛け声とともに目の前のブヨブヨしたスライムのようなノイズを殴りつける。ノイズの波長をチューニング、そのまま殴りつけたノイズとシンクロ。チューニングの時点でのレベル帯は1~3、反映できる変化先は――レベル7、真紅の鬼の如き豪勇、ジャンク・バーサーカー。
丁度デカ物も出てきたところだし、丁度いい!
芋虫? といえばいいのか、馬鹿でかい幼虫のような形をしたノイズは面倒なので放置。どうせ後で粉砕することは確定しているので、とりあえず数が多い人間大のノイズやスライム共を先に処分しておかなければ話が始まらない。
身の丈以上ある巨大な両刃のバトルアックスを両手で構え――腰を据えて一気に回転させる。縦から横へ、横から斜めへ、そしてそれは巨大な竜巻のように周囲のノイズを巻き込み徐々にその規模を大きくしていき、そして彼は全身の筋肉を躍動させて己を軸に高速回転。バーサーカーと呼ばれるにふさわしい巨大な四肢が大地をえぐり、空を捻じ伏せ周囲のノイズを粉微塵にする。
そしてその死の暴風は飛びかかるノイズたちを纏めて細切れにしながら大型ノイズに迫る。そして――
砕けチレェえええええええええええ!!
雄叫びと共に飛び上がるバーサーカー。超高速回転しながらそれは大型ノイズの頭を飛び越え、身体を折ることで回転を縦から横に、背面の噴射機構を発動。回転の勢いは更に増し、黒と赤のギロチンとなって振り下ろされる。今まで高まるに高まった遠心力、そして巨大な身体から繰り出される圧倒的パワーが合わさった文字通りの必殺の一撃が大型ノイズを襲う。
身の危険を感じたのか、ノイズは反射的に防御姿勢を取ろうとする――が、狂戦士を前にそれは愚策であった。
防御など関係ないと言わんばかりに、バターでも切るようにあっけなく一刀両断される大型ノイズ。バーサーカーが着地した地点が巨大なクレーターとなっていることで、その威力の凄まじさが垣間見えるが、バターのように両断できたのは、その圧倒的破壊力だけではなく、ジャンク・バーサーカーの持つ固有の能力、防御態勢をとった敵を問答無用で粉砕するという力による部分も多い。
周囲のノイズの処分が完了したため、彼は急いで残ったノイズの残骸――ノイズは、この世界に一定時間以上発生しているか、人間に接触するか、絶命するか、この三つのどれかの条件が満たされることで炭素となる――をかき集め、それを身体に取り入れる。
既にシンクロの効果は切れ、人形のノイズがそこにいる。
彼は、元々人間だった。人間だったはずなのだが、色々あって彼はノイズとなっていた。
彼は現在、こうしてノイズを殺し、自分が吸収するという生活を送っている。ノイズは一定時間この世界に存在しているか、絶命、人間と物理的接触をすることで炭化してしまう。それは彼とて例外ではない。だが、彼は他のノイズを吸収することで限界時間を引き延ばすことが可能であり、それを利用して生きていた。
ノイズとして死んでしまった場合どうなるか。そんなことは全く分からないまま彼は我武者羅に戦い続ける。その先に何かがあると信じて。
あー、とりあえず少しずつでもレベルアップはしてるみたいなんだが…。これからどうしようか?
彼のこの世への発生は完全にランダム。自分の意志で転移することは叶わず、いつも突然意識を失い、意識を取り戻したら戦場に居る、という生活を繰り返している。
また、この戦闘が終了した無駄な時間も自分の限界時間を削っているので、出来ることなら早くこの世から去りたいものなのだが、今回は少々長いらしい。
…まさかだけど、このまま続けて戦闘とか無い、よな?
連続戦闘のことを思いだす。最近は少ないのだが、少し前まではノイズとの戦闘終了後、結構な頻度で軍やシンフォギア使いに何度か襲われたのだ。
彼は一回も人間を襲ったことは無いのだが、まあ人類からすれば彼もノイズ。敵であることは変わりなく、そう、このように奇妙な殺意が彼を貫き――
うぉおおおお!? 何かガリアンソード的な何かが飛んできたぞ!?
突如飛んできた謎の攻撃を反射的にその場から飛び退くことで回避。彼が数秒前に立っていた場所は完全に抉り取られており、その前に一瞬だけ見えた赤紫の刃を思いだしてそれが明らかな原因であると推測する。
上空からの一撃、そう判断した彼は即座に戦闘態勢を整えて上空を見て――身体を固まらせた。
そこに居たのは少女。銀色のアーマーに身を包み、健康的な南半球が思わず視線を惹きつける。
雪音クリス。戦姫絶唱シンフォギアに置いてヒロインの一人で、ツンデレかつあざとい。いや、本人に自覚は無いのだろうが、第二期のクリスとか可愛過ぎだろおい。
つまり、今の彼にとって天敵である。幸いなことに現在の彼女は歌を歌っているわけではないので逃走は可能だが、彼女の纏っている白い鎧は、ネフシュタンの鎧と呼ばれる、現存している聖遺物の中でも特に珍しい、原型が残っている完全聖遺物と呼ばれている代物。
さて、これどうしようマジで…。彼の能力はノイズだけではなく、ほかの物質を利用しても問題は無い。だが、この敵がシンクロの時間を稼がせてくれるのか、駄目なら融合やエクシーズと言う方法はあるのだが、特に融合は逆に彼の寿命を縮めてしまうので却下。使えるとすればシンクロかエクシーズだが…、何にせよまずは彼がシンクロできる状況を作れるような隙を彼女がつくってくれなければ――隙を作る?
そこで彼の脳裏に稲妻が走る。そう、隙があれば良いのだ。隙があれば。とある伝説の戦闘術は、自ら相手に隙を作らせるように動くことで確実に相手を仕留めると聞く。ならば、それに倣って彼女に隙を作らせるのだ。
「……ku…」
「なに?」
ノイズは発生を行うことは出来ず、ノイズたちが発する音は只の雑音でしかない。だが、彼はそれを利用して音を作る。完全な言葉には出来なくても、それっぽい音にしてしまえば彼女は反応するはずだからである。
「…ku……ku、risu…」
「!? な、なんであたしの名前を!?」
彼の用いるのは日本語であるため、正確な発音ではないが、それっぽく聞こえたことで目の前の少女は動揺する。そう、これを狙っていた。だから彼はもうひと押しする。これで彼女が動揺すれば彼が生還できる可能性は飛躍的に上昇するからだ。
「ku、kurisu……」
油断なく構える彼女に、彼は放つ。更なる隙を生み出すための言葉を!!
「……o、opaaaai!!」
「…お前は何を言ってるんだぁああああああああああああ!!」
「gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!?」
適当に言おうとしたら、あまりにも最低なことを言っていた。気づけば彼は、顔を真っ赤にした彼女の鞭のような鋸状の刃によって滅多打ちにされ吹き飛ばされていたのであった。
※※※※※
「な、なんなんだよあのノイズ…」
雪音クリスが肩で息をしながら言う。
ノイズがノイズと戦闘を行っている。普通ではありえない状況に、彼女の保護者である人物からの依頼で、謎のノイズの正体及び可能ならばその捕獲を依頼されたのだが――そこでクリスは気づく。
反射的に吹き飛ばしてしまったものの、あのノイズは独自に言語を放っていた。あれが件の特殊なノイズだろう。あれは他と違って一撃をくらっても炭化していなかった。ならば、アレは生きているはずなのだが、その反応が一切感じられないのだ。
つまり、あのノイズが逃げたということ。慌ててノイズを吹き飛ばした方向へと向かう――のだが、そこに残されたのはノイズのものと思われる地面に空いた穴と、隣に書かれた文章。そこにはこう書かれていた。
『セクハラして御免なさいテヘペロ☆』
「………野郎ぶっコロッシャアああああ!!」
思わずと言った風に空に向かって放たれたクリスのそんな雄叫びと共に振るわれたネフシュタンの力によって地面が大爆発を起こすのであった。
その後、拠点に帰還したクリスを待っていたのは、任務を失敗したことへの叱責などではなく、今まで生きてきたなかで恐らく初めての、保護者からの同情の視線と、死ぬほど優しい言葉であった。
嬉しいッ! 嬉しいはずなのになんか違うよこれッ! とクリスは思わず涙目になってしまうのであった。
まだ彼女は知らない。これからも彼にあの手この手で翻弄され、その度にからかわれると言うことを…。