戦姫絶唱シンフォギア~歌わない決闘者系ノイズ目録~ 作:特撮仮面
「お前、馬鹿だろ!? いや、馬鹿だと言ってくれ頼むから!!」
「えっと、その、ごめんなさい!!」
未来を助けた彼が行ったのは、説教だった。致し方なし。彼からすれば無謀も無謀。ここで死んだらどうするんだと烈火のごとく怒る。
確かに彼女の気持ちも分かる。響、親友が笑顔で居られる場所を守りたい、親友も戦っているのだから、自分も何かしたい。それは尊く、美しいものだ。だが、その良かれと思って! という行動が、二度と取り返しのつかない事態を引き起こすかもしれない。
だから彼は彼女に熱血指導を行うのだ。
「今回、もしお前があのまま死んでたらどうする? いや、どうなる?」
「あ、うん…で、でも!」
「でもも蟹もレバニラ定食も無いんだよ! 分かるか? 二次災害ってのが一番怖いんだ。現実じゃン熱血指導だァ! とか、食らえ八百のダメージを! とかやったらやべぇんだよ、分かるか?」
「えっと、その、え?」
「だから、二度とこんなことするなよ!」
「は、はい!」
蟹? レバニラ? てか熱血指導? 彼のあまりにも独特な例えに疑問符を連続して頭に浮かべるも、ようは兎に角危険なことは止めろ、二度とするな、と言うことらしい。
声を張り上げて頷く未来であったが、その表情は暗い。自分の行動で誰かを悲しませたかもしれないと後悔しているのだろう。はぁ、とため息を吐くと、彼は前のように彼女の頭に手を置いて言った。
「ま、でも未来のお陰で被害が少なくなってンのは事実だ。そこは認めなきゃいけねえ」
「響の帰ってくる場所、護ってくれてありがとな」
「あ、…はい!」
パッと花開く。やはり行動の理由の一人に肯定されたことがすごく嬉しかったのだろう。頬を染めながら笑顔に変わる彼女の表情を見て、二人の世界から外れている緒川がほー、と感嘆の息を吐く。
「な、なんだ?」
「いえ、これが人心掌握術なのかと」
「え?」
人心掌握術? なんじゃそりゃ? と首をかしげる彼。だが、緒川の言っていることも間違いではない。
人間のコミュニケーションには、上げて落とす、つまり相手を誉めておいて、そこから扱き下ろすと言った術が存在している。
ようは、誉められて上がっていった気分を叩き落とすことで、その差分のダメージを相手に与えるといったもの。これなら、普段言葉が響かない人でも結構へこんでしまうものなのだ。
彼が行ったのはその逆。相手を落としてから持ち上げる。
否定しかされなかったと思っていたのに、実は理解されていたと言う差が喜びとなるということだ。しかも、今回の未来の場合、真剣に怒る=彼女のことを本気で心配しているということにも繋がるため、更なる上昇が見込めるということなのだ。
「まあ良い。あんた、こいつのこと頼むわ」
「はい。構いませんが…貴方は?」
「ん? 俺は――」
ちょっとあそこで暴れてる腐れ雑音どもを蹴散らしてくる。
そう言って彼は窓硝子を突き破り外へと飛び出す。
俺は、レベル2のノイズ二体にレベル3の自身をチューニング!
漆黒の翼翻し、嵐となりて敵を討て! シンクロ、レベル7! BF― アーマード・ウィング!!
BF、ブラックフェザー。漆黒の翼をもつ人形の鳥のような姿のモンスターが特徴であり、その疾風のごとき展開力と、嵐のような攻撃力によって他を圧倒する制圧力。シンクロ召喚を行うデッキカテゴリーの中でも有名なカテゴリーのひとつ。
鋼鉄のような漆黒の翼、深紅の宝玉を宿した顔、力強く脈動する四肢。BFが誇る切り札の一体が今、戦場に解き放たれた。
「さ、僕たちも急ぎましょう!」
「はい!」
二人も学院地下にあるシェルター目指して行動を開始する。しかし、この時の二人は知らなかった。この先に待ち構える最悪の結末を…。
「撃て! 撃つことを止めるな!」
学院の敷地内で死闘が――いや、一方的な蹂躙が行われていた。
人間による必死の抵抗。しかしそれらはノイズたちの身体を次々と貫通するだけで、その身体にダメージを与えられていない。
人が減り、弾が減り、徐々に劣勢になっていくにも関わらず、ノイズたちは侵攻を続ける。
「大型ノイズ、体内より小型ノイズ生成! 数八!」
「まだ増えるか、化け物め!!」
伝令の言葉に部隊長が吠える。
次々と炭化する隊員たち。それに比例――いや反比例するように増えるノイズ。絶望。負け戦などとも呼べない、狩り。ノイズによる人間狩りだ。
しかし、負けがわかっていても彼らは逃げるわけにはいかなかった。
彼らの背には人が。守るべき一般市民がいる。ここで彼らが抵抗を止めてしまえば、ノイズたちは瞬く間に一般市民を襲うだろう。
未来ある若者を守るためにッ! 必死の抵抗を続ける隊員たち。そして、そんな彼らに更なる絶望が襲いかかる。
「大型ノイズ出現! 数は――二体!」
「……もはや、ここまでか……」
部隊毎に切り離され、周囲をノイズに囲まれていると言うのに、奴等は更に増援を呼ぶのだ。
絶望し、涙が止まらない。だが、引き金を引くことだけは止めない。それだけは止めてはいけない。一人が吠えた。
突撃。ノイズに近接攻撃など前向きな自殺でしかない。だが、弾が切れてしまった彼にできることはそれだった。
部隊長が静止を叫ぶ。だが、彼は止まらない。止まらぬまま身体ごとノイズにぶつかっていき――。
「おいおい、なに満足してんだよ」
風が、吹いた。
彼らの目の前で黒い旋風が巻き起こり、瞬く間にノイズたちを切り刻んでいく。
一体何が!? 困惑する隊員たち。一人が天を仰いで叫んだ。
鴉だ!
誰もがその声に天を仰ぐ。
太陽を背に立つ漆黒の影。大翼を羽ばたかせ、腕を組み仁王立ちするその姿は人形の鳥。いや、それは烏。部隊長が思わず呟いた。
「八佗烏…」
八佗烏。日本に古来から伝わる伝説上の生き物。三つ足を持ち、それが飛ぶ戦場では神風が起こり、どのような戦ですら勝利できるとされる、神の遣い。
烏が羽ばたく、同時に残るノイズたちに次々と楔が突き刺さり――
「そら! へばってねえで撃て撃て撃て! 今ならノイズにダメージを与えられる! 撃って撃って撃ちまくれ!!」
楔が炸裂すると同時に、先程まで透明だったノイズに色が宿る。
彼の言葉を聞いた瞬間、隊員たちの動きは素早かった。流れるような構え、発砲。仲間の装填時間をカバーし、次々とノイズを破壊していく。
アーマード・ウィングの効果。相手モンスターに楔カウンターをのせ、それを一斉に剥がすことで相手モンスターの攻撃力、守備力を零にする。
これの再現により、ノイズたちは一時的に自分達の力を失い実体化。呆気なく破壊されているのだ。
無論、隊員たちに任せて彼がなにもしていないわけではない。縦横無尽に天地を駆け巡り、次々と隊員たちが破壊するのが難しい大型ノイズを優先的に狙い、破壊していく。
しかし、いつもの一人の戦いと違い今回は隊員たちと共に戦わなければならない。そのため、シンクロモンスターという強力な力をセーブして戦わないと彼らを巻き込んでしまう。
何かと自由に戦ってきた彼にとって、これは中々厳しい問題であった。
「うわぁ!?」
「ちぃっ!」
ノイズの飛びかかり。踏みつぶされそうになる隊員。羽を飛ばしてノイズを砕く。
いかに強力な力を持っていたとしても、その力が振るえなければそれは宝の持ち腐れ。戦況を覆す力も抑えられてしまえば他と変わりない。
小手先の技で何とか急場を凌いでいるものの、そろそろ隊員をフォローし、楔を打ち込む余裕も無くなってきた。このままではジリ貧。いっその事周りを気にせずに暴れるか? そこまで考えた彼に、隊長の声が響く。
「構いません! 自分たちのことは気にせず一思いにやってください!!」
その瞳に宿る覚悟。どうやら彼の動きを見て本来の力を発揮しきれていないことを察したらしい。
笑う。どうやら自分は本当に分かりやすい人間らしい。思わず笑い、そして天に向かって飛翔する。
「さあ、ノイズ共よ…。俺を、満足させてくれよぉ!!」
ブラック・ハリケーン!!
黒い旋風は漆黒の彗星となりてノイズたちに降り注いだ。
※※※※※※※
「な、何だ!?」
私立リディアン音楽院高等科地下。そこには広大な施設が広がっている。
特異災害対策機動部二課。その本部があるからだ。何故、そのような国家所属の組織の本部がこんな場所にあるのか。それは、リディアン音楽院の本来の運営目的にある。
シンフォギア奏者の選抜。それがリディアン音楽院の真の姿。シンフォギアと適合の可能性の高い少女たちを入学させ、その学生の中から適合者を選抜する。歌がキーになるというシンフォギアの特性を利用した方法だ。
日本の、二課しかシンフォギアを取り扱っていないがゆえの処置。
そのような理由によって、二課本部はリディアン音楽院高等科の地下にあるのだが、今その地下では壮絶な戦いが終結した直後であった。
櫻井了子、フィーネの襲撃である。
ノイズは囮。本命はネフシュタンの鎧、完全聖遺物を纏った彼女が二課の最深部から完全聖遺物デュランダルを回収することにあった。
その為の陽動、だったのだが、それは二課司令、風鳴弦十郎の気転によって逆に利用されフィーネは二課最大戦力たる風鳴弦十郎の前に炙り出された。
弦十郎は強かった。完全聖遺物を纏うフィーネを己の拳でギリギリまで削りきった。しかし、彼は大人であると同時に、どこまでも優しき男であった。
「弦十郎君!」
フィーネの表情が鋭いものから一転、彼らの最もよく知る女性、櫻井了子のものへと変化する。
拳が鈍る。いくらフィーネが相手であっても、その身体は櫻井了子のもの。そして、彼女は二課創設時から弦十郎の相方として共に戦ってきた大切なパートナー、仲間だった。
一瞬の迷い。それが彼の命運を分けた。
ネフシュタンの鞭、鋸状のそれが彼の身体を貫いた。
流れる大量の血液。腹部を貫かれ、弦十郎の身体が地面に墜ちる。敗北。心臓を貫かれたわけではないのでまだ息はあるが、少しでも時間をかけてしまえば死んでしまいかねない、そんな傷。
緒川は歯噛みする。自分にフィーネをどうこうする力が備わっていない以上、未来という重荷もあり逃げるのが定石。が、弦十郎を置いて逃げるわけにはいかない。
絶体絶命。そんな時、彼らの頭上が再度爆発。そこから黒い風が駆け抜ける。
「ぐぅっ!?」
弾き飛ばされるフィーネ。弦十郎を抱え、小川の元に来る風。
巨体を窮屈そうに縮める鳥人間。アーマード・ウィングだ。
どうやら地面をぶち抜いてここまで飛んできたらしい。
「あの糞ババアは任せときな。風鳴指令のこと頼むわ」
「はい。…すいません」
「気にすんな。好きで首突っ込んでるだけだ」
緒川が後方で隠れていた未来と共に離脱を開始する。同時に壁にめり込んでいたフィーネが動き出す。
「きっさまぁ…」
「…なあ、フィーネさんよ。未来を殴ったのはあんたか?」
忌々しい、ハッキリと嫌悪の浮かぶ声に彼が静かに言葉を紡ぐ。
それがどうした。ニヤリと笑いながらフィーネが言った瞬間。通路がはぜた。
フィーネが迷わずに鞭を振るう――が、それは巨大な腕に捕まれる。
「地下駐車場もそうだが、ここは狭い。もっと広いフィールドに行こうぜ? 大空とかなぁ!!」
ロケットめいた加速。天井を突き破り、メインシャフトを縦横無尽に駆け巡りながら彼は一路地上を目指す。
これを受けたフィーネはたまったものではない。彼が無軌道に飛び回るせいでシャフトに何度も打ち付けられ、その度にシャフトの内壁が砕ける。
鞭を切り離せば――そう考えたフィーネだが、彼がその隙を狙っていることは分かりきっていた。何故なら、まるで獲物を狙い姿勢を低くした烏のように彼がこちらの様子を伺っているからだ。
ネフシュタンに飛行能力はない。万が一にも空中で手を離してしまえば、それは彼女自身の終わりを意味する。
だから離せない。再生能力があれど、痛みはある。何度も何度も壁に叩き付けられ、痛みに表情を歪めながらフィーネは思った。こいつ死ぬほど性格悪い、と。
ついに彼が地上へと飛び出す。だが、そこからが本番。彼はハンマー投げの選手めいて身体を高速回転。鞭を握りしめ彼自身が竜巻となる。
「俺自身が――竜巻となることだぁあああ!!」
風を読み、風を纏い、アーマード・ウィングが方向と共にフィーネを地面に向かって投げ飛ばす。
隕石めいた加速。遠心力とアーマード・ウィング自身のパワーに、重力が追加された殺人的な投擲は余すことなくその力を伝え、彼女を地面に叩きつける。
普通だったらそれだけで不格好な地上絵が出来上がるところなのだが、完全聖遺物を身に纏っている以上はこの程度でやられるはずはない。簡単な話だ。LP、ライフポイントが4000ある決闘者がアーマード・ウィングの2000ちょっとのダメージを受けたところで負けない。
「ぐっ、う…」
ひしゃげた身体を再生させながらフィーネが立ち上がる。
流石の再生能力。完全聖遺物と完全に融合することで、その性能の全てを引き出しているのだ。
彼が地面に降り立つ。相対するのは一瞬。言葉は要らなかった。
「はぁあああ!」
「その程度、当たるものかと!」
鞭が唸る。羽ばたきにより突風が巻き起こる。
全力で空を駆ける彼の背に、ネフシュタンの鞭が迫る。宙返り。鞭の機動を逸らし逆に背後をとった彼が反転、フィーネに迫る。
しかし、それはフィーネも想定済みだ。彼の法則性のない機動によって宙に残った鞭を引き寄せる。たったそれだけのアクションで無秩序に延びていたと思われていたネフシュタンの鞭は彼を捕らえ、肉を削ぎ落とす為の檻へと変貌する。
巨体を器用に畳んで隙間を通り抜ける。速度は落とさない。背後には既に軌道修正を終えた鞭の先端が迫っているからだ。
彼が隙間を器用に飛び抜け翼と楔を飛ばす。楔が当たれば彼女を仕留めることができる。牽制と的確な射撃を織り混ぜ、当たる瞬間を待つ。彼の楔が如何なものか理解しているフィーネはそれを避け、隙有らば彼の身体を貫かんと檻を操り虎視眈々と彼が罠にかかるその時を待つ。
互いに互いの動きを待つ。読み合い。久しぶりのギリギリの、己の全てを賭けた戦いにどちらも自然と口許を緩め、気を抜けば大笑いしそうだった。
それほどまでに愉快、痛快。
「嗚呼、くそっ思ったよりも楽しませんじゃねえかババア!」
「はっ、貴様こそ中々楽しませてくれるな小僧!」
軽口の応酬。受けとれとばかりにうち放たれる楔と鞭。弾き、弾かれ彼らは加速する。
千日手なれどその均衡は何か切っ掛けがあれば瞬間的に崩れ去る。そして、その時が訪れた。
地面に突き刺さる数多の楔。彼はそれを一斉に炸裂させた。攻撃力と守備力を零とする力は、大地から活力を失わせるという結果を招く。
突如として地面がドロドロと崩れ出す。フィーネの足がとられる。ヒール。ネフシュタンの足に装備されたヒールが泥に捕らわれたのだ。
彼女のバランスが崩れる。解れる檻。狙うのは今! 猛禽めいたパワーダイブ。咄嗟に掲げた彼女の腕。無駄だ! その程度の防御で! 彼が吠える。
「唸れ、ブラック・ソニック!!」
拳が彼女の腕にぶつかる。一瞬の拮抗。
「ぎっ、ぐわぁあああ!?」
だが、苦悶の悲鳴をあげたのは彼。アーマード・ウィングの身体が炭化し、彼が吐き出される。
一体何が起こったのか。彼は自分の体内で乱れるフォニックゲインを感じとり理解した。
「波長を乱し、シンクロを解除させたかッ!?」
「ご明察。この私が何も考えずに行動するとでも?」
「ぐっ……」
まるで腹の中に手を突っ込まれて内蔵をぐちゃぐちゃにかき混ぜられているような不快感と激痛。だが、彼は立ち上がる。
これで彼女がシンクロを会得していることが確定した。ならば、なおのこと自分が、この世界で唯一シンクロを知っている自分が止めなければならないっ!
「俺は、レベル4の大地に、レベル4の俺自身をチューニング!」
大地が抉れ、彼が光と変わる。
王者の鼓動、今此処に列を為す! 天地鳴動の叫びよ、響け!!
顕現する王者。深紅の悪魔にして絶対なる王者の降臨。しかし、そんな中でもフィーネは余裕を崩さない。
「ふん、幾らシンクロしたところで私には無駄よ!」
「そんなもの、やってみなけりゃわかんねえだろうが!!」
彼が吠える。今までにないほどのフォニックゲインの燃焼。ここでケリをつけるつもりだ。
彼の拳が爆炎に包まれる。一撃必殺、絶対王者の拳。
「アブソリュート・パワー・フォース!!」
踏み込みで大地が抉れ弾け飛ぶ。拳が放たれ大気が焼ける。全てを打ち砕くための拳。王者の拳がフィーネに迫る。
しかし、フィーネはあくまでも冷静に振る舞った。焦りのない防御体勢。無駄だ! 彼が吠える。
「王者の力を前に、防御など無意味! ひれ伏せィ!!」
「はたしてそうかしら?」
「なに!?」
デス・メテオ。防御体勢の敵を一撃のもとに葬り去る能力の具現。だが、彼女はどこまでも冷静であった。
爆発で視界が塗り潰される。
彼は見た。自分の懐に飛び込んだ、片腕を失った彼女の姿を。
「あ、がっ!? アギ、あアアアアアアア!?」
彼の身体に突き刺さったフィーネの腕。彼と彼女を包み込むように緑色の輪が産み出される。
決死の抵抗。彼はシンクロをキャンセルし強制的に身体を自由にしようと動いた。だが、それが間違いだった。
彼のチューニングを乱す彼女のシンクロ。それはフォニックゲインの逆流という形でノイズ体の彼に襲い掛かった。激痛なんてものではない。魂が押し流されそうなほどの、人間が関知できる限界を越えた衝撃。
雑音の混じった絶叫が戦闘の終息しつつある学院に響き渡った。
「これが、これがシンクロ! 素晴らしい、これがあれば私は――!!」
フィーネの歓喜の雄叫び。
夕日のなか、小さく何か砂のようなものが崩れ、地面に落ちる音が微かに響いた。
「悪い。どうやら――」
「え? 遊吾、さん?」
「どうした立花?」
「どうしたんだよ」
「え、えっと、今遊吾さんの声が――」
鳴り響く携帯端末の音。響がその音に気づいて通話ボタンを押した――
『助けて響! 学校をノイズが――ゆう――』
電波が乱れている。ブツッという音と共に切れた通話。
急ぎ学院へ向かうシンフォギア奏者三人を待ち構えていたのは――
「あら、遅かったわね」
櫻井了子。しかし
「了子さん、何ですか? その、腕…」
「ああ、これ? 貰ったのよ。自称王様に、ね」
レッド・デーモンズ・ドラゴン、それの身体についていたものに類似した腕。
悲鳴が夜の空を引き裂いた。