戦姫絶唱シンフォギア~歌わない決闘者系ノイズ目録~   作:特撮仮面

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注意!


この回も多大な遊戯王要素。パトカーよりも速い超展開、おふざけなど多々あります。


覚悟は良いか? ならば――手動でスクロールしろ! 磯野ォ!!


彼とラスボスと決闘と

「きっ、きさまぁ!! なんだ、そのふざけた屑鉄は!?」

「スクラップ・コングだ! てか、ふざけたってヒデェな。格好良いだろ、コング。それに、スクラップ・モンスターは皆こんなもんだっての」

 

 

 スクラップ。デュエルモンスターズにおいてその名前は、どちらかと言えばネタ、面白デッキとして知られている。

 

 皆が廃材を元に組み上げられたような姿をしており、共通効果として、特定条件下で自分、もしくはスクラップと名のついたモンスターを破壊することで、別のスクラップを引き込んでくるというもの。

 

 扱いづらい、そして見た目も格好良いわけではない。だが、それが彼が初めて組み上げたデッキの主力モンスターたち。琰魔竜レッド・デーモンとの戦いによって、己の過去を、一番大事なものを思い出した彼は、今この時を戦い抜くためにあえてスクラップを、自身の過去を用いる。

 

 

「そうだ。そいつ丁度三つ入ってるからさ。クリスと翼、三人で食べてくれよ?」

「三…人……?」

 

 

 首をかしげる響に、ああ、三人だ! そう力強く頷くと、彼はDホイールへと再度搭乗し、決闘盤をDホイールのものと入れ換える。

 

 

『デュエルモード・オン。マニュアルパイロットモード・レディ?』

 

 

 俺だけでは響の瞳に光を取り戻してやることは出来ない。だが、先程も言ったように三人なら、無事で居た天羽奏や小日向未来、学校の級友たちの力があればきっと響は立ち上がることが出来る。そういう子だから。守る理由、戦う理由がそこにあるからだ。

 

 今の彼女は琰魔竜と出会う前、戦う理由を忘れた俺が陥っていたであろう状態の一つ。戦う意味を忘れてしまったがために歌――聖詠、シンフォギアを起動させ、その力を増幅させる歌を歌うことが出来なくなっている状態だ。ならば、自分に出来ることは一つ。

 

 フィーネの腕にくっついた俺の魂を削ぎ落し、少しでも戦力を減少させること!!

 

 

「ライディングデュエル・アクセラレーション!!」

 

 

 別に決闘をするわけではないのだが、これだけは疾走決闘者の端くれとして言っておかなければならない。高出力のモーメントが回転を始め、虹色のエネルギーがDホイールに伝導される。他のどのDホイールよりも高出力に調整された彼専用マシン。昔の英雄の一人の駆っていた馬にちなんで、彼が赤兎と呼ぶそのDホイールが大地を抉り走りだす。

 

 

 始まる決闘。次々と屑鉄を作り、破壊していく彼。地下でその姿を映像として捉えた二課の面々は、一体何が起こっているんだ? と本気で困惑していた。

 

 突然戦場にバイクでやってきた男が、カード片手に召喚だのセットだのとを一人繰り返しているのだから当然だろう。しかし、そんな面々の中で小日向未来と、天羽奏の二人だけは微笑みを浮かべながらその光景を見つめていた。

 

 

「未来君に奏君、君たちはアレが何か知っているのか?」

 

 

 二人の様子に気づいた風鳴司令が二人に声をかける。まあ、そういう文化のことを理解してなければ彼のように困惑してしまうのも無理はない。未来が笑いながら説明をしようと口を開く――

 

 

「えっとですね。彼、遊吾さん――」

「Dホイール…」

「え? ちょ、奏さん?」

 

 

 だが、未来の言葉を遮るようにして、変音器越しながら妙に良い声で奏が言葉を紡ぐ。

 

 

「Dホイール、それはスピードの中で進化した決闘盤。それを駆り大地を、壁を、空を駆けて行う疾走決闘。そして、疾走決闘を用いて決闘を行う決闘者たちのことを、人は疾走決闘者と呼んだ…」

「疾走決闘者…」

 

 

 画面越しに、彼が更なる展開を見せる。永続魔法、永続罠。先程から彼が声高に自壊を叫んでいる。自壊、とだけ言えば聞こえは悪いが、要はスクラップたちの自壊と言う一見デメリットの効果を、魔法や罠と言ったモンスターカードとは別のカードを活用することで自身のアドバンテージに、メリットに変化させているのである。

 

 と、そこで弦十郎は気づいた。

 

 

「な、なぜ奏君が此処に!? 今日は町に買い物に出るとか言っていなかったか!?」

「ああ、買い物済ませたからDホイール整備しようと思って早めに帰ってたのさ。そしたら、何か学校吹っ飛ぶし、格納庫の中で隠れてたら突然火の手が上がって、そしたらあいつが炎の中から飛び出してきて――ってさ。もう、何が何だか…」

 

 

 どうやら彼は、一度格納庫に現れて、彼女からたい焼きとDホイールを受け取ってから外に出ていったらしい。と、そこで弦十郎が気づく。

 

 現在、地上へのゲートはロックがかかっていて到底開くようなものではない。開く為にはパスワードを入力する必要があるが、現在二課本部の電源は落ちているために本部のメインコンピュータを動かすことは出来ず、パスワードの入力は出来ないはずである。

 

 首を傾げる弦十郎に、奏が笑いながら言った。

 

 

「ぶち抜いてた」

「は?」

「流石に直下は拙いって言って、市街地に通じる方のゲートをフィールでぶち抜いてたよ」

「都市直下地震にすら耐えうるあのゲートを――って、ぶち抜いた!?」

「うん!」

 

 

 語尾に星がついていると錯覚してしまうような楽しげな声と笑顔に、弦十郎が思わず額に手を当てた。

 

 D-noise遊吾・アトラスの戦闘、及びその周辺被害額は大変高い。基本的に火力が高いせいで、攻撃を当てなくても踏み込みを行い、力を振るうだけで道路が砕け散るのだ。D-noiseが出現するだけで修繕費などが嵩む嵩む。いくら国から補償金が下りているとはいえ、限界がある。

 

 しかも、地下通路のゲートとなればどれだけの金額することやら…。もう考えたくないと頭を抱える弦十郎。それを見て奏が笑いながら言った。

 

 

「大丈夫! あのバイクの大きさ+一、二メートルくらいしか穴開いてないから!」

「十分だ!?」

 

 

 本当に何をやっているんだ…。嘆く弦十郎に、部屋に集まった皆は思わず表情を引きつらせるのであった。

 

 

「司令! 近隣のシェルターからの避難民を保護しました!」

「おお、そうか――」

「あ! 格好良いお姉ちゃんとお兄ちゃんだ!!」

「あ、こら!?」

 

 

 緒川が連れてきた人々の中から飛び出す一人の少女。それは、響がシンフォギアを初めてまとったあの日に守った少女であった。

 

 少女は通信画面に映し出されている、疾走決闘を用いてフィーネと対峙する彼を見、そして紙袋を胸に置かれて地面にあおむけに倒れている響を見て、言った。

 

 

「お姉ちゃん、元気ない? 元気に出来ないの?」

 

 

 どうやら、子供心ながらにどのような事態であるかを察したらしい。

 

 少女の言葉に言葉を詰まらせる。確かに少女の言う通り、響が気力を取り戻せばこの窮地を脱するに値するかもしれない。しかし、こんな地下から何をすればいいのか…。考える弦十郎たち。そんな中で未来が何か思いついたらしく、大きく手を挙げた。

 

 

「あ、あの! こういうことが――」

 

 

 こうして彼らは動きだす。少女が助けた人々が、今度は少女を助ける為に動きだした。そこには年齢も、性別も関係ない。人々の想いがあった。

 

 

 

※※※※※※

 

 

 

「くぅっ、猪口才な!!」

「っとぉ! 罠カードオープン! 逆さ眼鏡!! 表側表示のモンスターの攻撃力を半減させる!!」

 

 

 だが、彼のフィールドに存在する屑鉄は容赦なく破壊される。

 

 当然だ。元々フィーネのステータスの方がスクラップモンスターたちよりも上。全体の攻撃力を半減させるということは、つまり自分達にも影響が及ぶということ。半減させたところで、その差は埋められない。容赦ないダメージが彼を襲う、がそれも彼の計算のうち。

 

 フィールドの屑鉄の竜が爆発。数百程度のライフダメージなんて問題ないさ! 彼は宣言する。

 

 

「スクラップ・ドラゴンは、自身が破壊されたとき、墓地のスクラップモンスターを特殊召喚する! 現れろ、スクラップ・ゴーレム! さらに、俺のフィールドのモンスターが破壊されたことで、永続魔法、補給部隊の効果が発動する! 俺のフィールドには三枚の補給部隊。よって俺は三枚ドロー!!」

 

 

 彼の手札が急激に増える。今までにないほどのデッキの動き。六十枚。紙束のようなデッキであったが、その一つ一つが、まるで過去を思い出し、再度零から始めようと決意した彼を歓迎するように理想的な動きをし続ける。

 

 カウンターが溜まる。自分のターンだ。この戦闘は正式な疾走決闘で無いこともあり、相手は態々ターン宣言などを行う必要が無い。

 

 なので本来なら決闘は成立しないのだが、現在、彼が自分のターン終了を宣言して三分ほど経てば次のターンを行うことが出来るというシステムが構築され、それを活用することで決闘を行っていた。

 

 また、これは現実の戦闘であることもあり、モンスター同士の連携であったり、彼による戦闘介入も可能。普通の決闘とは違う変則的な戦いであったが、彼は見事に順応して見せる。

 

 

「俺のターン、ドロー!! …来た!!」

 

 

 彼の求めていたカードが手札に来る。あとはあのフィーネの腕を吹き飛ばすだけ。

 

 Dホイールを加速させる。フィールを高め、このワンターンに全てを賭ける。

 

 

「俺は手札から、スクラップ・キマイラを通常召喚! こいつが通常召喚に成功したとき、墓地からスクラップと名の付いたチューナーを特殊召喚できる! 来い、スクラップ・ビースト!!」

 

 

 彼の声に応え現れる、獅子の頭に蛇の尻尾、鳥の翼。ずんぐりむっくりとした胴体の、屑鉄のキマイラ。キマイラが吠えると同時に空間に大きな穴が開き、そこからタービンやコードが丸出しの、左右非対称の屑鉄の獣が姿を現す。

 

 彼のフィールドのモンスターは四体。スクラップ・キマイラ、そしてキマイラの効果で蘇生されたスクラップ・ビースト、安全ヘルメットと赤く光るモノアイ、丸出しのエンジンと細い四足が特徴的なスクラップ・ソルジャー。そして、電子レンジと冷蔵庫を合わせたような四角い身体が特徴的な、スクラップ・ゴーレム。

 

 彼から数えて七ターン目。スクラップモンスターたちの攻撃と、スクラップの切り札であるシンクロモンスター、スクラップ・ドラゴンによる破壊効果。ほかにも魔法や罠などの効果で彼女にダメージを与えてきた。

 

 彼女のシンクロ、そしてネフシュタンの鎧は強力だ。下手な攻撃では逆に返り討ちにあってしまう。だが、彼はこれまでの戦闘でフィーネのシンクロについて一つの仮説を立てた。いや、恐らくはこれが正解だ。

 

 フィーネ、彼女のシンクロは完璧ではない。何故なら、シンクロの概念はあくまでも彼ら決闘者特有の物だからだ。シンクロには明確なイメージが、進化する先のイメージが必要となるのだ。だが、彼女にはそれが無い。それが無いから自分が使用していたレッド・デーモンズ・ドラゴンの能力を使用していたにすぎない。

 

 つまり、彼女はシンクロを使えるだけで、使いこなせているというわけではないということだ。 

 

 何故そのようなことが分かるのか。無論、決闘をしていて気づいたことである。しかし、それ以前の戦闘、彼があの謎の遺跡で雪音クリス、そして風鳴翼の歌を聞き、その結末をほんの少しとは言え確認したから言える。もしもシンクロモンスターの力を完全に理解しているのであれば、ネフシュタンの鎧の能力と合わせて使用して彼女たち三人を瞬間的に葬り去ることもできたはずだ。

 

 それが出来ていないこと、さらにもう一つ、決定的なものがあった。

 

 彼女の腕は彼の身体、つまりはチューニングしていたとしてもその本質はフォニックゲインの塊であるノイズだ。しかも、あくまでも彼の抜け殻を無理矢理シンクロして引っ付けている以上は、彼女からフォニックゲインの供給を行うことが出来ない。故に、地道に彼女の左腕を削っていけば脆くなっていく。

 

 そう、少しずつであるが、彼女の腕の力が弱まっているのはそのためである。だから、そこに付け入る隙がある。

 

 

「俺は、レベル4のスクラップ・キマイラに、レベル5、チューナーモンスター、スクラップ・ソルジャーをチューニング!!」

 

 

 屑鉄どもが夢の跡。廃材の中より生まれ出よ、進化せし双頭の竜! スクラップ・ツイン・ドラゴン!!

 

 

 屑鉄の複合獣は、五つの星となった屑鉄の戦士と一つとなる。彼の口上とともに大地を砕き現れる、屑鉄の双頭竜。

 

 スクラップ・ツイン・ドラゴン。不格好で左右非対称な屑鉄の竜が全身を震わせ雄叫びをあげる。いや、スクラップ・ツイン・ドラゴンに明確な発声器官は無いため、それは全身の屑鉄を起動させた音。

 

 屑鉄、ポンコツ。一つでは道程フィーネに敵わない彼らは、彼らの力を結集することで、完全聖遺物すらも越える力を発揮する。

 

 

「スクラップ・ツイン・ドラゴンの効果発動! 俺のフィールドのカード一枚を破壊し、相手フィールドのカード二枚を手札に戻す! 俺が破壊するのは、スクラップ・ビースト。手札に戻させるのは、貴様が奪った俺の腕と、フィーネ、貴様自身だ!」

 

 

 ツイン・ドラゴンが吠える。ビーストの身体が爆発すると同時に、ツイン・ドラゴンの口蓋部から超音波が放たれる。

 

 フィーネを効果の対象にしているが、今回はフィーネ本体は二の次。メインの目的はあくまでもレッド・デーモンズ・ドラゴンの腕なのだから。

 

 

「ぐぅ……私の腕がっ!?」

 

 

 超音波によって吹き飛ばされそうになるフィーネであったが、鞭を地面に打ち込むことで身体が吹き飛ぶことは避けた。しかし、自分の身体にのみ意識を向けていたがために、断続的なダメージによって乱れていたフォニックゲインの波長が完全に乱れた。

 

 ツイン・ドラゴンの力から逃れられず、レッド・デーモンズ・ドラゴンの腕が彼女から外れた。それは呆気なく外れたそれは、彼の掲げた左腕にすっぽりと収まると、その身を炭化させる。

 

 フィーネの左腕はネフシュタンの力により再生。だが、問題ではない。腕さえ捥いでしまえばこちらのもの。

 

 

「スクラップ・ゴーレムのモンスター効果、発動! 一ターンに一度、自分か相手フィールドにスクラップモンスターを特殊召喚できる! こい、スクラップ・ゴブリン!!」

 

 

 水道の蛇口にカメラの胴体、そしてフォークの腕とクリップの脚。漆黒の穴が再び開き、そこからスクラップ・ゴブリンが彼のフィールドに現れる。

 

 ゴブリンが跳ぶ。同時にそれは三つの光の輪となりゴーレムを包み込む。

 

 

「俺は、レベル5のスクラップ・ゴーレムに、レベル3のスクラップ・ゴブリンをチューニング!!」

 

 

 レベル8。出すべきは彼自身? いや、違う。今出すべき存在は――

 

 

「王者の鼓動、今此処に列を成す!! 天地鳴動の叫びよ、響け!! 現れよ、俺の魂! レッド・デーモンズ・ドラゴン!!」

 

 

 再誕の王者。歓喜に吠える深紅の竜。その瞳に光を宿し、巨竜は咆哮する。

 

 

「俺は手札より装備魔法、愚鈍の斧をレッド・デーモンズ・ドラゴンに装備!! さあ、バトルだ!! 俺は、レッド・デーモンズ・ドラゴンでフィーネ、お前にダイレクトアタック!! アブソリュート・パワー・フォース!!」

 

 

 レッド・デーモンズ・ドラゴンの腕に鋼鉄の籠手が装備される。巨竜が嘶き、世界が震える。その拳に力が宿り、爆炎となってフィーネを襲う。

 

 下からの抉り込むような一撃。咄嗟に防御態勢に入るフィーネ。彼女には勝算があった。仮にあのシンクロが彼と同じような波長のシンクロであった場合、ノータイムでそれとシンクロすることが可能だからだ。仮に波長が違っていたとしても、確実に奪う方法はある。

 

 だが、ここでフィーネは一つの勘違いをしていた。彼が行っているのは確かに戦闘であるが、ソレであると同時に彼が行っているのはどうしようもないほどに決闘であるということを。

 

 彼女は、彼が前と同じように防御無効化効果を使用してこちらの防御を剥ぎ取ると考えていた。それは正しい。レッド・デーモンズ・ドラゴンの表側守備表示モンスターの破壊は強制効果。普通なら防御された時点でその能力が発動しなければなら無い。が、彼がそれを起こさせない。

 

 

「装備魔法愚鈍の斧は、装備モンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせるかわりに、その効果を無効化する。つまり。レッド・デーモンズ・ドラゴンの効果は無効となる!」

「なに!? なら――」

「そう! 防御を無効化するのはこいつ自身の効果だ! だが、その効果が発動しない以上、こいつの攻撃力3000に1000を足した、純粋なパワーで相手をさせて貰うぞ!!」

 

 

 彼がニヤリと笑う。フィーネがレッド・デーモンズの効果を利用してシンクロモンスターの力を奪おうと考えていることなんて筒抜け、いや、彼女ならそうするというある種の信頼をしていた。どうやら彼の信頼は確かだったらしい。

 

 目を見開いて驚愕するフィーネの身体を掬い上げるようにして、レッド・デーモンズの拳が彼女の防御を真正面から打ち砕く。

 

 

「ステュピディティ・パワー・フォォオオス!!」

 

 

 純粋なる攻撃力4000。フィーネの鞭が作り上げた堅牢な壁はまるで濡れた和紙のように軽々と引き裂かれ、彼女の身体がカタパルトに乗せられた戦闘機めいて打ち上げられる。

 

 あまりの衝撃にネフシュタンの鎧をもってしても修復が追いつかない。いや、追いつかないどころかネフシュタンが悲鳴を上げる。強すぎる衝撃によって天地すらも分からなくなった彼女の視界の隅で、紫電が奔る。

 

 主たる決闘者の指示よりも早く、スクラップ・ツイン・ドラゴンは動いていた。全動力を口蓋部に集中。己の全てを用いて彼の敵を打ち砕かんと、巨大なライトで空中のフィーネを睨み付ける。ツイン・ドラゴンの胴体から悔いが射出され、彼の身体を地面に固定。臨界を超えたエネルギーの迸りは、彼の雄叫びと共に撃ち放たれた。

 

 

「スクラップ・ツイン・ヴァアスト!! ニレンダァ!!」

 

 

 いや、二連打出来ないから!? 一瞬スクラップ・ツイン・ドラゴンの目が抗議するかのように彼の方を向くが、それも一瞬。標的を照準したツイン・ドラゴンの口からそれ以上の大きさの破壊力の奔流が空を焼いてフィーネに迫る。

 

 直撃。青白い光の中にフィーネの身体が消える。だが、ツイン・ドラゴンはそれだけでは終わらせない。

 

 動力炉フル稼働。全エネルギーを砲塔へ。これが俺の全力だ!! そう言わんばかりのダメ押し。身体への負荷を無視した砲撃出力の増加。放たれたエネルギーは、その衝撃でスクラップ・ツイン・ドラゴンの身体をドンドンと後退させ、濁流となったエネルギーは天を焼き、雲を吹き飛ばす。

 

 砲撃終了。排熱によって大気が焼ける音が響き渡る。

 

 

「お、俺はいつリミッター解除を発動したんだ…」

 

 

 最早超展開に負けはしない、そんなことを考えていた遊吾であったが、流石にツイン・ドラゴンが自らの意志でニレンダの如く破壊力を増加させるなんて想像していなかったのだろう。茫然とした様子で抉り飛ばされた大地を眺める。

 

 

「ま、良いか。ありがとな、お前ら」

 

 

 レッド・デーモンズ・ドラゴンは戻ってきた。フィーネはあの様子ならば消耗は避けられないだろう。どちらにしても彼の仕事はいったん終了。モンスターたちを労わりながら決闘を終了させる。

 

 レッド・デーモンズの4000はまだしも、ツイン・ドラゴンの攻撃力3000とは思えないあの一撃。流石に身体が蒸発しているんじゃあないか。そんな心配すらしつつ、彼はDホイールから降りて響の元に向かおうとした――

 

 

「ま、まだ、だ。まだ負けてはいないッ!!」

 

 

 少し離れた場所で黄金の鎧を纏ったフィーネが立ち上がる。どうやらあの一撃を受けて尚立ち上がるだけの力が――いや、あの様子では力、と言うよりは意地か。幾星霜の時を経て手に入れたチャンス、それを逃してなる物かという意志。そして何よりも、彼女の言うあのお方にこの心を伝えたいという想い。

 

 これは強敵だ。彼は苦笑する。だが、何も彼だけが戦うわけではない。気を楽にしながら彼がフィーネに問いかける。

 

 

「フィーネ。本当に勝てると思ってんのか?」

「何が言いたい!!」

「お前のシンクロは既に越えた。今の俺は人間だが、別にこの姿でノイズの時みたいなシンクロが出来ないわけじゃない」

 

 

 悪いが、お前の三歩先を行っている俺が、負ける道理は無い。

 

 

「ふざけるな! 高々ノイズ一匹何ができる!! 聖遺物すら持たぬ貴様が!!」

「決闘なら出来るぜ? 今みたいなのがよ」

「ぐっ…」

 

 

 忌々しい。歯ぎしりを止められないフィーネ。

 

 自分よりも圧倒的に年が下の餓鬼に何故気圧されるッ! 己を鼓舞しようとするが、彼のそのあまりにも不敵な笑みと自信満々な態度が、何か仕掛けられているのではないか、奥の手をまだ残しているのではないか、と彼女の頭に様々な可能性を考えさせる。

 

 彼は策略を考えるのが得意ではない。寧ろ脳みそ筋肉なのだが、三歩先を行く、などと言った発言や、先程の愚鈍の斧による初歩的な戦術が、彼女という天才の頭脳によって過大評価され疑心暗鬼にさせているのだ。

 

 予期せぬところで時間を稼ぐこととなった彼の耳に、一瞬の甲高い音が響き、続けて心が温まるような歌声が聞こえてくる。

 

 それは、避難した人々と、リディアン音楽院の生徒たちによる校歌斉唱。

 

 

「ッ耳障りな、何が聞こえている」

 

 

 不快そうに顔を顰めたフィーネが辺りを見渡す。

 

 だが、ノイズや奏者、そして彼との戦いによって荒廃しきった敷地から、しかももうすぐ日が昇るようなそんな暗闇の中で放送用スピーカーを見つけることなんて出来るはずが無い。

 

 

「何だこれは。貴様、何をした?」

「さーてね。お兄さん何も分かんねぇ」

 

 

 肩を竦めて彼が言う。それは事実だ。実際彼はこんな放送が流れるとは聞いてないし、知らない。いや、正確に言えば忘れている。

 

 だが、分かることは一つ。大勢の声の中でも分かる優しい少女の声と、そこに込められた想い。

 

 

――なるほど、考えたな未来。

 

 

 なんて暖かい歌なのだろうか? 大勢の人々がこれほどまでに誰かを想って歌うことがあるだろうか? この歌には血が通っている。誰かを想い、繋げる暖かな血が、この歌にはある。

 

 気づけば彼も同じように鼻歌で流れる校歌を歌っていた。自然と惹かれる。この歌を知らなくても、分かる。

 

 地上に少しずつ光が宿る。暖かな光。それは太陽や月、星の輝きではない、光。

 

 リディアン音楽院に所属する生徒は皆、シンフォギア奏者の才能を持った少女たちである。で、あるならばその歌はフォニックゲインに作用することは当然の話だ。

 

 適性がある者、適性が無い者、様々居るだろう。だが、この歌にはそんなものは関係ない。誰かを想って歌う歌に、才能が関係あるだろうか? いや、あるはずがない。

 

 フォニックゲインの煌めき。蛍のように儚くも、陽だまりのような光。

 

 

――聞こえる…。皆の声が…。

 

 

 響の身体に血が通う。

 

 

――私を支えてくれている皆は、いつだって私の傍に――

 

 

 彼女の胸に灯が灯る。

 

 

「なあ、響。お寝坊さんのお前らにゃ良い目覚ましだな」

 

 

 聞こえる軽口。だが、それは響が、響たちが目覚めることを確信しているが故の言葉。

 

 

――寝坊って、それは遊吾さんの方でしょ…。

 

 

 なんてことを言うんだ、まったく。クスリと笑みがこぼれる。

 

 

――皆が歌っているんだ…。

――だから、まだ歌えるっ。

――頑張れるッ!

「戦えるッ!!」

 

 

 太陽が昇る。空が黒から青へと色を変えていく。

 

 少女の胸に歌が宿る。

 

 ゆっくりと立ち上がる響。その周りにはリング。フォニックゲインがシンフォギアを展開している証拠だ。

 

 強い意志を宿した瞳に射抜かれて、フィーネが初めて狼狽える。

 

 

「まだ戦えるだと…ッ!?」

 

 

 理解ができない。

 

 

「何を支えに立ち上がる…ッ!?」

 

 

 遊吾・アトラスか? いや、違う。それだけではない。それだけならば先程遊吾が現れたタイミングで立ち上がっていても何ら可笑しくない。つまり、遊吾だけが支えではない。遊吾だけで成り立っているのではない。

 

 

「何を握って力と変える…ッ!?」

 

 

 その強い意志の源は何だ? その瞳は何を宿す?

 

 

「鳴り渡る不快な歌の仕業か…?」

 

 

 この歌はフォニックゲインを活性化させている。それは周囲の状況を見ても明らか。だが、こんな微弱なフォニックゲインで何ができるというのだ?

 

 

「そうだ、お前が纏っているモノは何だ…ッ?」

 

 

 彼女が生みの親だからこそ分かる。それの変化が。シンフォギアではない。そう錯覚させるほどの力強さ、輝き。

 

 

「心は確かに折り砕いたのに、なのに何を纏っている?」

 

 

 シンフォギアは装着者、奏者の心象風景を現実に反映させる。それは歌も同じ。ならば、心を折り砕けばそこに心象風景は浮かばず、シンフォギアを纏うことは不可能のはずだ。だが、彼女は纏おうとしている。

 

 

「それは私が作ったモノかッ?」

 

 

 だが、それを聞く彼女が一番知っている。それが彼女の作ったFG式回天特機装束、シンフォギアであるということを。

 

 

「お前が纏うモノは何だッ――何なのだッ!?」

 

 

 彼女は科学者故にソレを理屈として、理論として理解しようとする。故に理解できない。追随するように赤、蒼の光の柱が出来ていることも、彼女たちの胸の歌に全ての答えがあることも。

 

 

「シンッフォギ――ヴウワァアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

 世界に轟けと言わんばかりに響が叫ぶ。

 

 同時に彼女の元に現れる赤と蒼、雪音クリスと、風鳴翼。

 

 彼女たちのシンフォギアは、以前確認したモノと大きく変化していた。装甲や武装もそうだが、何よりも色合い。天ノ羽々斬、魔弓・イチイバル、そしてガングニール。どれもが純白と明るい彼女たちの色合い。

 

 宛ら戦の為のドレス。青空を背にフォニックゲインの翼を広げる姿を見て、彼はボソリと呟いた。

 

 

「天使っつうか、女神っつうか――」

 

 

 とりあえず、響たちが無事だからもう嬉しくてどうにかなりそうだ。

 

 落ち着く為に気になったことを言うとしよう。

 

 

「おーい、ビッキー!! たい焼きの紙袋片手に叫んでもちょっと格好悪いぞー!」

『今言うセリフか!?』

 

 

 誰もが心を一つにそう叫んだ。同時に響も叫ぶ。

 

 

「投げたら勿体無いじゃないですか!! というか、倒れてる間中胸にたい焼きの袋置かれてたせいで無茶苦茶熱かったんですよ!?」

「なら払いのけろよ!?」

「身体に力が入らなかったんです!! 火傷してるかもしれないんで、傷物にした責任を取ってください!!」

「後で火傷してないか確認するから!!」

「分かりました!!」

『お前らは何の話をしているんだ!?』

 

 

「クリス!!」

「な、何だよ」

「結婚しよう!!」

『どうしてそうなった!?』

「な、な、おま、なに言って!?」

「というか信仰させてください!!」

「何でだよ!?」

「その装備のクリスが恐ろしく可愛らしい天使だからだ!!」

「まるで意味が分かんねえよ!?」

「遊吾さん、駄目です!!」

「お、お前――」

「先にお話ししたり一緒にお風呂入ったりするのは私です!! 遊吾さんはその後です!!」

「なん…だと…。くっ、これが同性ゆえのアドバンテージの稼ぎ方だというのか――」

「こいつら何なんだよもぉおおおおおおおおおおおおお!?」

 

 

「風鳴翼!!」

「な、何だ!!」

 

 

 この話の流れで自分にどんな話が来るというんだ。誰もが息を飲んで見守る中、彼が大きく息を吸いこみ、言った。

 

 

「俺とお前でシンクロするぞ!!」

『どういう…ことだ…』




何故人は、この作品を遊戯王の二次創作だという…。

こうなれば、この小説を更なる混沌に落とし、シンフォギアの二次創作だということを皆に知らしめてくれるわッ!!
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